この度、第14回MMD杯選考委員になられた森江春策P、その名探偵としてのデビュー作が創元推理文庫入り。
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488456054
京都にある洋館「泥濘荘」、そこは若人集う学生寮にして文芸系ミニコミサークル・オンザロックの拠点でもあった。その住人たちを見舞う連続殺人、そして誘拐事件…
舞台は80年代初頭、あの当時ならでは文化現象がトリックにも関わるこの作品、さすがに2度目の文庫化にあたって、さすがに注記の量も増えています。また、前の文庫化以降に公表された森江青年の事件簿に関わる記述もさりげに本文に加筆されているのはご愛嬌。
旅行中だった森江青年が泥濘層に帰ってくるのと同時に一転する事件の様相、すでに名探偵としての森江春策氏を知っている人にはインパクトが薄れるのではないかと思ったのですが、きちんと練られた構成の妙の前にはその心配は不要でした。本書だけ未読だった最近の森江氏ファンもこのあざやかな手並みにかつての私と同様、驚かされるかと思います。
なにより青年時代の森江青年の初々しさと彼を囲む青年群像は本書が青春小説としてもすぐれた作品であったことを改めて思い知らせてくれました。
余談ながら私の過去の著書には、サブタイトルに本書へのオマージュを込めた本があったりします(思えば私にあの本を書かせた事件も「館」への探検で大団円を迎えたんだっけ)。
…さて、この作品、書かれたのは25年以上も前ですが、最近一部で流行っている言葉が示す概念がきちんと描かれています。その意味ではこの度の文庫化は実にタイムリーと言えるでしょう。その言葉というのは…
オタサーの姫
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