トラックに積まれた石炭の山から
人間の“腕”がゴロリと出てくる冒頭から引きつけられる。
猟奇殺人というより、ただの異物混入のような。
恐ろしく即物的に感じられるところが今の中国っぽい。
遺体の切片は6つの都市にまたがる複数の石炭工場で
同時多発的に発見される。
事件とは直接関係ないけれど、
食堂の湯麺の丼からも目玉がデロンと出てくる。
中国ではこんなのは日常茶飯だと言わんばかり。
説明を排した、ぶっきらぼうで詩的な語り口が新鮮。
それでいて息苦しいほど白熱したサスペンスがある。
妻に捨てられ、刑事の職も失った主人公は、
まるですべての鬱憤を晴らさんとするかのように
連続殺人事件の真相究明に取り憑かれ、
薄幸の女が放つ魔性に魅入られていく。
地味顔のファムファタールを演じるのは、
「藍色夏恋」の透明感あふれる美少女、グイ・ルンメイだ。
あれからもう10年経ったが、驚くほど変わってない。
あばらが透けて見えそうな薄い体に
いつもハイゲージのタートルを着ているのが妙に色っぽい。
女と主人公が無言で駆け引きする観覧車のシーンが凄い。
その後のあっけない幕切れに物足りない思いでいたら、
最後にうれしいサプライズがあった!
やるせない男心を映す見事なエンディングだ。
白日烟火 Black Coal, Thin Ice
2014年/中国・香港合作/106分
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