九段の花の下より
陸軍兵長 志水 正義 命
昭和二十年六月三十日 レイテ島にて戦死
熊本県天水町出身 三十五歳
政子、その後元気ですか。
私も至極元気にて戦地に向かひます。男子の本懐これにすぎざるは無し。
海上無事に行き着いたれば希も半分は達し得たのだ。
戦地は覚悟の前、病気で倒れるのは残念に思ふから充分身体には注意し、花々しい戦死を希んでいる。
地球上に生を得て、一度は死なねばならぬお互だ。
御国の為に戦死致し、神として靖国神社に祭られ同胞より拝しられるとはなんたる幸福であらう。
お前の名誉とも思ふ。しかし其の反面には、いい知れぬ淋しさ、悲しさがあると深く信じ切つている。
これも定まった運命なのだ。
人間の力では、如何とも出来ないのだ。
願くは志水政子となつた以上、可愛い子供の養育に務め、成長するのを楽しみに志水を立派に立ててくれる様に願ひたい。
淋しいから又再婚すると申せば俺は何ともいはず九段の花の下よりお前の幸福を祈つている。
然し子供の事は末々まで幸福で暮す様願ひたい。
一人の子供は台湾の兄様に貰つてもらひなさい。
この度の子供が男の子であればと何時も願つている。
御両親様の事はくれぐれも頼む。
お前も充分身体に気をつけて元気にて暮らしなさい。
ではこれにてお別れ致します。
志水正義
政子 殿
[昭和四十一年三月靖国神社社頭掲示]
「九段」 英霊来世
http://www.youtube.com/watch?v=8XJvvq2rUDc&feature=youtube_gdata_player
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