ビニール袋、風に舞い飛んだ…

先週、また被災地にボランティアに行った時、

早く現地に着いたんで、ちょっと辺りを周ってみた。

そこにはまだ手付かずの瓦礫と破壊された町の名残があった。

瓦礫の向こうから波の音が聞こえる…

…

いくつかの写真を撮った。

これが今の日本だ。

紛れもないひとつの現実だ。

…

何度目かの被災地ボランティアだけど、

実は被災地をちょっと奥に入っていって写真を撮ったのは初めてだ。

なんてゆーか、

今まで、なんかできなかった。

…

オレになんか本当の辛さはわかんないかもしれない。

もしかしたら被災者の方たちだって、一緒にされたくない、わかったような顔して踏み込んでほしくない、って思ってるかもしれない。

そう思ってたりした。

…

でも、少しだけ、

そろそろ少しくらいは、自分もこの町の仲間になれたんじゃないかなって感じ始めた。

その辛さを、このどうしようもない現実を、被災者の方々と共感する資格くらいは、オレにも与えてもらえるんじゃないかなって。

かんちがいかな？

…

何度も現地に行って、被災者の方々と同じ風を感じて、その町の一員になろうとして、そして喜びも辛さも少しでも分かち合いたかった。

でも、やっぱり、

たぶんまだまだだから。まだまだこの震災を語る資格なんてオレにはないから。わかったふうな顔はできない。

だからまたきっとこの場所に帰ると思う。

…

１日のボランティア作業を終え、

現地ボラセンのセンター長のおいちゃんと話してた。

不意に、

目の先の駐車場に白いコンビニ袋が舞い上がった。

どこから飛んできたんだろう。

しばらくほっとく。

べつにそのままでいいのかな？

その辺の誰かが気付いて拾うかな？

ビニール袋があてもなく舞ってる…

…

ふと、おいちゃんが足を踏み出す。

ん？

と、同時にオレも動く。

ちょっとだけだけど、ずっと気になってたビニール袋へ向かって走りだす。

捕まえた。

｢これどこのですかねえ？｣

おいちゃんに聞くと、

｢ゴミ袋のために誰かがここに着けたんだと思うよ。｣

ボラセン外の水道蛇口にまた袋をぶら下げる。

…

もしかしたら、

オレのやろうとしてることもこんなことかもしれない。

舞い上がったビニール袋に気付かない人もいる。

見て見ぬふりの人もいる。

気付いたけど他のことで手が出せない人もいる。

目には入ったけどいつのまにか忘れてしまった人もいる。

でも、

誰かが捕まえないと、いつかそれはゴミになってしまう。

風に舞うちっさなビニール袋を捕まえることが、その時の自分にできることなら、オレはやっぱり追いかけてみようと思う。

そんなふうにオレは、

いくつもの舞い上がったビニール袋を追い続けてる。

つかまえてもまた飛んでいくものもある。

見失ってしまったものもある。

そしていつか、一緒にオレも飛んでいっちゃうかもしれない。

それでもオレは…

…

こないだは、

おばあちゃんが一人暮らししてる家にボランティアにいった。

庭の小屋が崩れた後の瓦礫をかたずけた。

それはもうかたずけられるべき瓦礫なのかもしれない。

でも、おばあちゃんにとってはとてもとても思いがつまった歴史。

しかしこの災害で、それはまるで風に舞うビニール袋のように飛んでいってしまおうとした

うちらはそれを一生懸命捕まえようとしてた

初めて会ったメンバー同士で、協力して、相談して、力を合わせ、汗を流し、

そして、時には笑顔を交わした。

作業を終え、なんとかだいぶ庭は落ち着いた。

おばあちゃんはメンバーのひとりひとりに、涙ぐみながらお礼を言ってくれた。

オレもなんだか涙が出そうだった。

…

ビニール袋

風に舞い上がる

運命に翻弄され

荒野を舞う無数のちっさなビニール袋がオレには見える

それはその者の

歴史であり

生活であり

夢や希望であり

様々な思いであり

家族であり

愛する者であり

かけがえのない命であり

守ってきた大切なもの達なんだ

今までたくさんの

どっかから舞い飛んでゆくビニール袋を見てきた

肌の色も宗教も国境も関係ない

きっとどこかの誰かの大切なもの

本当は飛んでいっちゃいけないもの

オレはそれを追い続けてる

いくら拾い上げたってきりがない

もしかしたら無駄なことなのかもしれない

それでもオレは手を伸ばす

ちっぽけな力でせいいっぱい

ひとつひとつ捕まえて

またもとの場所に戻す

たとえちっさなビニール袋の中にだって

そこにはたくさんの思いや歴史が詰まってる

喜びも涙も

悲しみも辛さも

そして

たくさんの笑顔も…

…

これからもずっと

オレは

追い続ける…