要旨:特定のコミュニティにおける識字層の史的変化を解き明かすための有効な方法の一つとして、センサスに代表される定期的な大規模調査の「識字」項目の集計結果を活用し、数値から証明を行う方法がある。しかし、センサスが行われていない、もしくはセンサスの質問項目として「識字」が盛り込まれていない空白期が長期間に渡って存在する上に、その空白期に戦乱・政変などに因る大規模な人口流動が生じている場合には、期間前と期間後に行われたセンサス2回の比較のみに頼っての証明は困難であり、次善の策を練る必要がある。 第二次世界大戦を跨ぐ期間の香港は、まさにこれに該当するケースと言える。本報告では、2005年に報告者がHong Kong Public Record Officeで発見した数点の新資料を用い、センサス不在の1931-60年、特に戦後の1945-60年について、識字層がどのような属性を有していたかについて考察を行う。