■映像作品上映と討論 ○第1部 13時-14時30分 発表者 新井一寛 氏(映像人類学) (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究科博士課程修了) ・エジプト青年の『Young Shaykh and Followers in the Jazuliya Sufi Order』、および同居者を撮った『同居とカメラ』、二つの映像作品をもとに、フィールドの撮影者と被撮影者の関係性、映像実践、映像作品、それらとの相互反照的かつ相互侵食的な変容過程をおもなテーマとして討論する。『同居とカメラ』は、撮影者と被撮影者の関係だけではなく、日常生活に舞い込んできた撮影・編集・上映によるコミュニケーションによる影響過程も含んだ、「おわりなき作品」である。
1.『Young Shaykh and Followers in the Jazuliya Sufi Order』 (約8分、エジプト、2006特別編集版) 同作品のおもなテーマは、エジプトのスーフィー教団、ジャーズーリーヤ・シャーズィリーヤ教団の次期教団トップ(Shaykh:シャイフ)となる青年の「カリスマとしての成長過程の姿」である。 上記教団の次期教団トップによる地方支部視察の旅を扱った作品の特別編集版。同教団の宗教儀礼の様子も記録。同作品は次の出版物に添付されており、同作品については同書が詳しい。『見る、撮る、魅せるアジア・アフリカ−映像人類学の新地平−』(新宿書房、北村皆雄、新井一寛、川瀬慈編、2006年)。 2.『同居とカメラ』(約38分、京都、2007−) 同作品は、撮影者と被撮影者、および両者の関係性(「現実」)と映像実践、映像作品との相互反照的かつ相互侵食的な変容過程をおもなテーマとしている。また、撮影者の思いつきとそれに応じた被撮影者の日常生活における「ミクロ」なやりとりが、学術的な場でどのように装飾・加工され、研究上意義のあるものとして、「マクロ」な理論生成空間に参与するのかについても、同作品のテーマである。 2007年4月から7月末まで同居していた友人を被撮影者とした映像作品。同作品は、作品への出演依頼交渉からはじまる。撮影者と被撮影者の関係は、日常生活に舞い込んできた(埋め込ませた)撮影・編集・上映によるコミュニケーションに、次第に影響を受けていく。また、同作品は、「おわりなき作品」の手法を採用しており、作品の上映風景を撮影しそれを被撮影者にみせ、その被撮影者の様子もまた撮影して作品に取り込んでいる。さらに、同作品を上映した研究会の様子も撮影し、作品に取り込んでいる。 本報告では、『同居とカメラ』の「物語」の生成過程における撮影者と被撮影者の語り、行為、関係性や、「物語」生成と「現実」との相互侵食過程などについて討論したい。また、『同居とカメラ』とYoung Shaykh and Followers in the Jazuliya Sufi Orderとを比較するかたちで、上記の諸事項について討論したい。
○第2部 発表者 大石高典 氏
(仮題)「撮ることと撮られること:フィールドの映像記録に見る調査者と被調査社会の相互作用」 『採る、捕る、獲る、ドンゴを撮る! "Bisso na Bisso (Among us)": Gathering, Catching, Hunting, Filming and Beyond in Ndongo village."』(約15分、East Province of Cameroon、2007)