研究会で話題になった、ケインズと「モラル・サイエンス」との関わりを論じる際に頻繁に引用される引用文です.『一般理論』出版から2年を経た1938年7月4日にケインズがハロッドへ宛てた手紙です.
「経済学とは,現代社会に関連する様々なモデルを選択する技術と結びついた,モデルを用いた思考の科学(a science of thinking in terms of models)であります.それ〔経済学−引用者〕がそう〔モデルを用いた思考科学−同〕でしかあり得ないのは,経済学が典型的な自然科学とは異なって,多くの面で時間を通じて斉一的ではない事象を扱わなければならないからです.あるモデルを立てることの目的は,一時的,流動的な諸要素の中から比較的恒常的な要素を分離することによって,そうした半永久的な要素についての論理的思考法を展開しようとすることにあります.
正しい経済学者は稀です.なぜならば,最良のモデルを選択するために『注意深い観察』を行なう天賦の才能は,高度に専門化された知的技術を必要とはしませんが,非常に稀な才能であるように思われるからです.次に,ロビンズとは違って,経済学は本質的にモラルサイエンスであって自然科学ではありません.すなわち,経済学は内省と価値判断を用いるのです」(Keynes(1938)pp.296-297.)
(1938)Letter to R.F.Harrod. in JMK(JMK=ケインズ全集).Vol.14.pp.295−297.