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開催終了そこは、ドラゴンの舞う世界だった

詳細

2014年03月09日 23:39 更新

遠い昔、深い森の奥にドラゴンが住んでいた。
はるかな未来、銀河の彼方をドラゴンが飛んでいた。
近所の神社の裏手で、小さな龍の目撃情報があった。
ある朝、庭に目をやると、そこには一匹の竜がいた。

と、いうわけで。
ドラゴンの登場する作品を創ってみませんか。
小説、詩、イラストなど、カテゴリー無制限。
条件はただひとつ、本当のドラゴンが登場すること。

んで、ドラゴンってどんな存在?
その答えは、皆さんの想像力の中に眠っているはずです。

2014年6月10日 締め切り

コメント(269)

  • [246] mixiユーザー

    2014年06月03日 07:23

    >>[245]
    わたし、大人になってからは、こんなに長い小説書いたことないですよ!
    これだけ長い小説連載しつづけられるの凄いです!
    このペースだと、6月10日までには完成しそうですね♪。
    続き楽しみです♪。でも、焦らず、楽しみながら書いてくださいね♪。この話、読んでて書いてる人の楽しさ伝わってくる作品なので、最後までそうなるの楽しみにしています♪。
  • [249] mixiユーザー

    2014年06月04日 02:04


        短編集 ドラゴンは笑う

     2 メラノーラドラゴン

     剣士ガロウドは、ドラゴンが棲むという洞窟にたどりついた。
     ガロウドは、その国で一、二を争う剣豪だった。何年か前にあった大きな合戦を境に、戦乱の時代はひとまず終止符を打ち、巨大な国家が広大な土地を支配する時代がやってきた。安定した時代がやって来ると、軍組織の弱体化がはじまる。侵略戦争の末に得た国土だけに、反乱分子への警戒も必要になってくる。そこで、闘技を娯楽として普及させた。
     ガロウドもまた、その闘技で高い名声を得ていた。
    「我が名はガロウド!」
    ガロウドは、洞窟の前で名乗りを上げた。
    「洞窟の主、メラノーラよ! 姿を現せ! 我は、貴様を打ち取って名を上げるため、やってきた!」
     大きな剣を振り上げ、張りのある声で叫ぶ。瞳は炎を宿すようにぎらぎらと輝き風になびくマントさえ覇気をまとうよう。大地は震え、大気に熱が満ちる。
    「戦の神、メラノーラドラゴンよ! よもや怖気づいたのではあるまいな!」
    「誰が怖気づくと言う」
     暗い洞窟の奥から、風景を冷たく凍りつかせるような声がした。ガロウドでさえ、一瞬身がすくみ、呼吸が止まった。
    「今度は何だ、このわしの眠りを妨げる者は。ここしばらく、眺めて面白い戦争も起こる気配もあるまいに」
     闇の奥から、そう言いながら真っ黒なドラゴンが姿を現した。牛や馬の数倍はある。それがガロウドの前で、後足で立ち上がり、巨大な黒い翼を広げた。立ち上がったそれは、また一段と巨大。ガロウドの見上げる視野の半分が、その漆黒の生き物に覆われた。
    「わしを倒すと言うのか」
    「貴様に恨みはないが、わけあって、俺は貴様を倒し名を上げねばならん。覚悟!」
    「覚悟が必要なのは貴様のほうだろう。来い、貴様の覚悟を見せてもらう」
     しかしガロウドは、またたくまにねじ伏せられてしまった。一太刀も浴びせることなく、虫の息に。這うように逃げるガロウドを、ドラゴンは鼻で笑って、また洞窟へ戻って行った。
     だが、ガロウドは再びドラゴンのもとを訪れた。傷も癒え切ってないのに、再び剣を振りかざしてドラゴンに立ち向かう。ドラゴンのメラノーラは、再び氷のような冷徹さで、ガロウドを叩きのめした。それでもまた何日かすると、ガロウドはメラノーラのところへやってきた。
     メラノーラはその日、ガロウドに尋ねた。
    「なぜ、そこまでわしの命にこだわる」
     ガロウドは剣を構えたまま、しばらく黙ってドラゴンを睨みつけていた。だがひとつ大きく息をしてから、剣を地面に投げ、巨大なドラゴンの前にどっかと腰を下ろした。
    「俺は、ガロウド。剣士をしている。王国の闘技場で戦い、見物人を喜ばせるのが、俺の仕事だ。はじめから闘技場のピエロだったわけじゃない。戦争にも行った、多くの敵を倒した、俺は強かった。でも、今は戦争がない。俺は、戦うことでしか生きていけない。そうして生きてきたからだ。だから、闘技場の剣士になった」
    「勝てたのか」
    「ああ。俺は、無敵だった」
    「なかなかやるじゃないか、人間」
     言って、メラノーラも腰を下ろした。翼も畳み、猫のように。
    「だが、一度だけ負けた」
    「ほう」
    「そいつは、ただ一度だけ俺と対戦した」
    「ほほう」
    「そして俺は、初めての戦いで、俺は負けた」
    「実力の違いだな」
    「そうだ。運ではない」
     ガロウドは、ドラゴンを睨みつけた。
    「その男の名は、サルバーン。ドラゴンに、稽古をつけてもらったそうだ」
     ドラゴンはぐっとガロウドに顔を近づけて言った。
    「ああ。知っているさ、その男なら」
     ガロウドは片膝をつき、ドラゴンの大きな顔と向き合った。
    「俺にも、稽古をつけてはくれないか。奴に、何をやった。どうしたら、強くなれる。俺より強い奴がこの国にいるのが、信じられない。認められない。俺は、認めない」
    「強くなりたいか、人間」
    「強くなる。俺は、強くならなければいけない。でないと、闘技場には戻れない。この国に俺より強い人間はいない。だから、ほかの人間から稽古をつけてもらうことはできない。ただ一人、サルバーンだけは俺より強い。だが、奴に教えを乞うわけにはいかない」
    「なるほどな」
    「頼む、ドラゴン。俺に、稽古をつけてくれ」
    「楽な話ではないぞ。死ぬかもしれない、それでもいいか」
    「かまわない」
    「いいだろう」
     ドラゴンは言って、立ち上がった。

     つづく
  • [250] mixiユーザー

    2014年06月04日 02:06

    つづき

     それから一番変わったことと言えば、ガロウドに対するメラノーラの手加減がずいぶん甘くなったぐらい。完治に何日もかかるような怪我を負わせることがなくなった、という程度のもので、メラノーラの強さは圧倒的だった。
     それでもいつしか、まったく手も足も出なかったのが、少しずつだが手ごたえのある立ち合いができるようになってきた。メラノーラも、時として大きなアクションでガロウドを弾き飛ばすようになってきたのだ。手加減する余裕が、一瞬だが、なくなっているのだ。
     もちろん初めからその気なら、メラノーラはいともたやすくガロウドを殺すことができただろう。圧倒的な強さの差があって初めて、ガロウドほどの剣士が全力で稽古をつけてもらえる。人間相手ではすでに稽古にならないというガロウドの言葉は、この国では決して大げさなものではなかった。
     毎日、手合わせを繰り返しているうち、ガロウドは少しずつメラノーラの気持ちがわかってくる気がしていた。メラノーラは、何の義理で、こんなに弱いガロウドの相手をしているのか。正直、最初は不思議というより不気味だった。楽しんでいる風でもないし、バカにしている様子もなく、ただ淡々と手を抜いてガロウドの相手をしてくれていた。だが、メラノーラは戦の神とも言われる、戦いの好きなドラゴンだった。ガロウドにとって奇妙にさえ思えるのは、メラノーラにとって相手を打ち負かすことにはさほど興味なく、戦うことそのものを楽しんでいるようだった。もしもメラノーラがガロウドを殺してしまっては、戦う相手がいなくなる。きっと、暇つぶしのおもちゃを壊さないように、大切に扱っているような気分なのだろう。メラノーラドラゴンにとってガロウドは、その程度の存在なのだ。きっと。
     人間とドラゴンの感覚がズレているのはしかたないとして、しかし無表情のドラゴンが自分にある種の愛情を注いでくれているのではないかと、ガロウドは感じ取っていた。そんなドラゴンの懐を借りる形で、ガロウドは日々確実に実力を高めて行っていた。
     実際は、何度か死にかけた。やりすぎた、と気づいたメラノーラは、なんの前触れもなく戦うのをやめて、黙って洞窟の奥へこもってしまうのだった。ガロウドは持ち前の精神力と執念と、もともと鍛え上げられた国一番の強靭な肉体でもって、どうにか一命を取りとめて奇跡の回復を繰り返していた。ガロウドは毎日、全身に生傷が絶えなかった。
     皮肉なもので、ガロウドが力をつければつけるほど、ドラゴンのほうにも手加減する余裕がなくなっていく。手加減する余裕がなくなっていくと、ガロウドが生死の境を彷徨うような大けがを負わせてしまう。ガロウドが強くなればなるほど、ドラゴンはガロウドを殺してしまいそうになるのだ。
     それでもガロウドは、今となってはメラノーラに心から感謝していた。確実に自分が強くなっていっているのがわかる。初めてであった時、メラノーラはいくらでも自分を殺すことができただろう。そうしなかったのは、理由はどうあれ、メラノーラが何度も自分と戦いたいと願ったからだ。メラノーラに、何度も戦う相手として認められたことも、ガロウドには嬉しかった。
     すでにガロウドは、ドラゴンを倒せるなどという考えなど持っていなかった。このドラゴンと何度も戦えることが、楽しくさえあった。さほど言葉も交わさないが、ガロウドはドラゴンに親近感さえ抱き始めていた。

    つづく
  • [251] mixiユーザー

    2014年06月04日 02:07

    つづき

     その日もガロウドは、全身ボロボロになって、倒れた。息が荒れていた。意識を保つのもやっと。あばらも、やってしまってるのがわかる。しかし、気分は晴れ晴れとしていた。
     ふと洞窟のそばを見ると、不自然に土が盛ってあるのを見つけた。そこだけ、洞窟の岩壁とも、森の下草に覆われた場所とも、まったく違うことがわかった。ずっとここにいて、まったく気が付かなかった。なんでもないのかもしれないが、ガロウドはなんとなく気になった。ガロウドはよろめきながら剣を杖にして立ち上がり、それを見に行った。
    「メラノーラ、なんだ、これ?」
    「うん? ああ、墓だよ」
    「墓?」
    「ああ。サルバーンの墓だ」
     ガロウドの頭の中は真っ白になった。
     サルバーンを倒すため、次に出会った時に勝つため、ここで稽古をつけてもらっていたのだ。サルバーンが死んでいるのなら、いったい自分は何のために今まで戦っていたのかと。
     確かにサルバーンが闘技場に姿を見せたのは、ただ一度、対戦した時だけだった。その後、姿を見せることはなかった。強さを求めて、再びメラノーラの元をおとずれ、そしてある強さに到達したとき、メラノーラの攻撃にサルバーンの肉体は耐えられなかった。ガロウドには、そんなシナリオが想像されていた。
    「お前はサルバーンよりもタフだ。まだ続けられるだろう。いくらでも稽古をつけてやる、傷が癒えたらまた来るがいい。逃げ出すなよ」
     そう言って、メラノーラは初めて笑った。くちばしの端をひねりあげるように、ニヤリ、と。
     ガロウドは、剣を取り落した。

     おわり


  • [252] mixiユーザー

    2014年06月04日 10:52

    >>[250]
    読んでます! 続き楽しみにしていますね♪。
    色々なんと言うか、わたしが深読みしすぎてるのか、続き読むの怖いですけど!
  • [253] mixiユーザー

    2014年06月04日 11:08

    >>[252]

    ページをまたぐと、そこに最終話が(;^_^A。
  • [255] mixiユーザー

    2014年06月05日 01:01


        短編集 ドラゴンは笑う

     3 ラルガドラゴン

     金物職人のマルードは、困り果てていた。
     長年愛用してきたハンマーが壊れてしまったのだ。ハンマーが壊れるのはこれが初めてではなく、マルードの使い方が荒いせいもあるのか、柄の部分が折れてしまったのだ。名のある鍛冶師が作ったハンマーで、最高の使い心地とバランスが気に入っていた。
     問題は、その柄の部分も含めて絶品であること。適当な柄をあしらえて間に合わせるというわけにはいかない。並みの鍛冶師では、それに合う柄を組むこともできない。そして、そのハンマーを作った鍛冶師というのが、すでに他界してしまっているのだ。
     マルードは、もうほかのハンマーで仕事をする気はなかった。それほどのハンマーだったのだ。これで道具を変えたら、仕事の質が落ちる。そうマルードは思っていた。頑固で、まっすぐで、職人気質で、仕事の質には高いプライドを持っていた。
     それからしばらくマルードは、ハンマーを使わない仕事まで請け負うのをやめていた。新しい道具を作るのも、壊れた道具を治すのも、断っていた。これでマルードの仕事は評判が良く、マルードが仕事をしないとなると困る者たちも少なからずいたのだ。マルードもそのことを知らないわけでもないのだが、しかし半端な仕事をするのはプライドが許さず、すっかりかたくなになってしまっていた。
     そんなマルードのところに、どんな道具も望みのまま作ってくれるドラゴンがいるという噂を持ち込んだ者がいた。あるいは冗談半分だったのかもしれない。そんなドラゴンがいるとして、マルードの願いを聞き届けるとは限らなかった。だが、それでもマルードは早速荷物をまとめて、ドラゴン探しに出かけて行った。
     ドラゴンが棲むという丘にたどりつくと、それは、すでにそこにいた。
    「待っていたぞ、マルード」
    「俺が来るのを知っていたのか」
    「道具を必要としているのだろう。そういう者がいれば、私にはわかるのだよ。人間ごときが、このあたりの仕組みを理解する必要はない」
     マルードは、屈辱は感じなかった。ただ、ハンマーが治るのかどうかだけ興味があった。ハンマーの頭の部分を、バッグから取り出して差し出した。
    「これを、治してほしい」
    「無理だ」
    「なに? 話が違う」
    「私は職人ではない。道具を治すことはできない」
    「なら、なんのために俺の前に姿を現した」
    「私は魔法を使って、道具を作り出すことができる」
     そう言うとドラゴンは、前足をマルードの前にさしのべて、そこに光の玉を出現させた。マルードは、魔法なんてものを見るのは生まれて初めてのことだし、そもそも魔法が本当になるなんて実は内心信じてはいなかった。自分の工場を閉めて旅に出てきたもう一つの理由は、ただその場を逃げ出す言い訳でもあったのだ。
     光の玉の中から、ハンマーが一本、姿を現した。ふわっと舞い降りてきたそれを受け止めると、マルードがそれを手に持った瞬間、ずっしりとした重みが出た。いまこの世に生まれたばかりの真新しい道具がまとう、無垢な輝きを帯びている。それでいて、何年も使い込んだ道具だけが持つ、手になじむ世界でただひとつの手ごたえや個性までもが、それにはあった。マルードが何年も使い込んで、ようやく手になじんだハンマーの、その手ごたえだった。
    「これが、魔法か」
    「便利なものだろう、人間。くれてやる」
    「何が代償だ。金なら、ほとんど持ってない。それでもよければ、今ここにあるありったけをくれてやってかまわない。それだけの価値が、こいつにはある。必ず良い仕事ができる」
    「見返りなど何も望まんよ、人間」
    「本当にいいのか」
    「もちろんだ。人間の損得勘定になど興味はない、とでも言えば、私の気持ちも少しぐらい伝わるかな。私は、ラルガ。また私のことが必要になったら、いつでも頼って来るがいい」
     マルードは何度も礼を言い、ドラゴンのもとを離れて工場へ戻った。
     ラルガドラゴンから受け取ったハンマーは、本当に良い品物だった。マルードはその使い心地に満足し、注文のたまっていた仕事を次々とこなしていった。


    つづく
  • [256] mixiユーザー

    2014年06月05日 01:03

    つづき

     ところが、そのハンマーが良すぎるせいか、マルードは作業台のわずかなガタつきが気になり始めた。今までのハンマーでは気が付かない程度の小さなガタつきだ。それほどまでに正確に、思ったままの作業ができるのだ。はじめマルードは、その程度のガタつきならば気にしないつもりだった。だが、一度それに気づいてしまうと、気になって気になってしかたがなくなった。それで、新しい作業台を探して、行きつけの道具屋を見て回ったのだが、ハンマーの性能に見合う作業台は見つからなかったし、そんな精度の良い作業台を作れる職人もいなかった。
     そんなマルードが思い出したのは、ラルガドラゴンの言葉だった。マルードは再び工場を閉めて、ドラゴンの丘へ向かった。
     ラルガは、やはりそこで待っていた。
    「先日は本当に助かった。仕事もはかどっている」
    「かまわん。社交辞令に興味はない。それよりも、必要な道具があるのだろう」
    「お見通しか。そうだ、少しだけ困っている。お前に作ってもらったハンマーがあまりに精度が良くてな、それに見合った作業台が必要になっている」
    「わかった。くれてやろう」
     ラルガドラゴンは、また光の玉の中から作業台を出してみせた。その作業台は、見るからに丈夫そうで、天板は鏡のように凹凸がなく、足もしっかりしていた。それでいて、どうにか背負って帰れるほどには軽く、これほど軽くて丈夫な台がどんな素材でできているのか、さっぱり見当がつかなかった。マルードは今度もラルガに何度も礼を言い、それを大切に持ち帰った。
     それ以来、マルードは必要な道具があるたびにラルガの元を訪れるようになった。ラルガは何を求めるでもなく、出来のいい道具を次々とマルードに与えてくれた。マルードの工場はますます評判を上げ、ずいぶん遠くからも仕事の依頼が来ることもあった。
     良い道具は、仕事を楽にしてくれる。それまで10回たたかないと形が整わなかった鍋も、良いハンマーなら5回で形が作れる。半日もこすらないと輝きが出なかった金属器が、ラルガの布でこすればまたたくまに磨き上げられる。どの道具も、マルードの手になじみ、ほとんど何も考えなくても狙った通りの仕上がりになるのだ。
     実際、作る金物に合った道具さえ手にしてしまえば、あとは何も考えずにただその道具の誘うままに手を動かせば良いのだ。気が付くと、思ったものが仕上がっている。
     鍋を作るなら、鍋を作る専用の道具。鎌を作るなら、鎌を作る専用の道具。馬具を作るなら、それぞれのパーツごとに専用の道具。いつの間にか、マルードの工場には無数の道具がそろっていた。それらの道具は、不思議とマルード以外の者が使ってもそのようにはならず、だからマルードの腕前が良いからだと、誰もが思っていた。

    つづく
  • [257] mixiユーザー

    2014年06月05日 01:04

    つづき


     その日も、マルードはラルガのもとを訪れていた。
    「わかるぞ、マルード。お前は、必要としている道具がある。だから、私のところへ来た」
    「違うんだ、ラルガ。今日は、違う」
    「何が違う」
     マルードは力なくうなだれ、ため息をついた。
    「俺は、どうにも、妙な気分なんだ。自分で、自分のこの手で、仕事をしている気がしない。道具が良いのは間違いないんだ。だけどそれだけなら、ほかの誰かが使っても、良い仕事ができるはずだ。ラルガ、あんたに作ってもらった道具をうまく使いこなせるのは、俺だけだ。俺の腕があって、俺のこの手で使ってこそ、良い仕事ができる。そういうことなんだろうと思う。だけどな、最近、どうにも違和感が」
    「違和感か。使いにくい道具でもあるのか」
    「違う。それどころか、道具が俺の体の一部のように、しっくり来る。だが、なんというか、俺が道具を使っているのではなく、道具が俺を使っているように思えてならない。俺が俺に合った道具を使っているのではなく、道具が道具にあった俺を使っているような、そんな気分なんだ」
     マルードがその複雑な気持ちをどうにか打ち明けると、ドラゴンはうなずいた。
    「その通りだ。私が作った道具だからな。お前が使いさえすれば、道具は作った通りの働きをする」
    「すると、何か。俺は、ただ道具を動かす歯車に過ぎないというのか」
    「お前が使わない限り、役には立たない道具だ。最高の道具というのは、そういうものだ」
    「ラルガ、お前はなぜ俺にそんな道具をよこす。無償で」
    「ならばマルード、お前はなぜ良い道具を求める。なぜ良い道具を使おうとする。お前のその手で、良い道具を使いたがるのだ」
     マルードはこの時になると、もう、何が良い道具なのか、なぜ自分が良い道具を手にしたいのか、答えることができなかった。何もわからなくなり始めていたのだ。
    「私には、誰が所有しているからどうという考えなど、はじめからない。ただお前の手に、私の作った道具が、言うなれば私の一部が置いてあるというだけのことだ。たとえこの世の果てにあったとしても、私の道具は私の一部だ。お前が良い職人だから、私がお前を使ってみたかった。その気持ちだけは、あるいは、お前と同じなのかもしれないな」
    「そうか。そういうことだったのか」
     マルードは、立ち上がった。そして、ラルガに背を向けた。
    「今までのことは、感謝している。だが、俺はもう、ここには来ないよ。あんたにもらった道具も、申し訳ないが、もう使うことはないだろう」
    「そうなるだろうと思っていた」
     言うと、ラルガは前足を前にかざした。
    「待て。俺は、もう道具は必要ないと」
    「だから、作るのだよ」
     ラルガの生み出した光の玉から、作り出されたそれは。
     人間だった。
     その人間は、誰あろう、マルードだった。
    「お前はもう道具は使わないのだな。ならば、こちらのマルードに使わせることにする」
    「なんだって?」
     そのとき、マルードの脳裏には恐ろしい可能性が思い浮かんでいた。いまラルガに作られた偽のマルードが、自分の使わなくなった道具を使って仕事をするということは。これから並みの道具で仕事を続けようとしている自分では、絶対にかなわない。どんなに腕を上げても、どんなに良い職人から道具を提供されても、ラルガの作った道具を使う偽マルードには絶対に勝てない。そのことは、他の誰よりもマルード自身がよく知っている。
    「それは、困る」
     震える声で、マルードは言った。
    「ダメだ。それは、ダメだ」
     マルードは、偽マルードに近づいた。バッグの中には、ここに捨てていくつもりだったラルガの道具がいくつか入っている。はじめに作ってもらった、ハンマーも。いつしかマルードの手には、そのハンマーが握られていた。
    「殺してやる」
    「なんだ、お前、何をする」
     偽マルードが驚いて言った。
    「偽物のくせに、口をきくな」
     マルードが叫んで、ハンマーを振り下ろした。
    「うわあ、助けてくれ」
     そう言いながら、偽マルードは転がってよけた。
     転がった先に、マルードのバッグがあった。
     バッグの中には、他の道具も入っていた。
     偽マルードの手にも、道具が握られた。
    「くそ。お前こそ、死ね」
     マルードと偽マルードは、ラルガの道具を手に、殺し合いをはじめた。
    「いいぞ、やれ、もっとやれ、道具をうまく使え、どっちもがんばれよ」
     二人の殺しあう様子を眺めながら、ドラゴンは楽しそうに笑った。

     おわり


  • [260] mixiユーザー

    2014年06月05日 09:48

    >>[258]

    小さい子供が砂場で遊んでいるようなものかもしれません。
    小さなお城を作ったり、砂団子を作ったり、トンネルを作ったり。最後は全部壊して、きゃはきゃは喜んでいる。ドラゴンにとって、人間はその程度の存在です、という世界を描いてみています。
    読んでいただき、ありがとうございました。
  • [261] mixiユーザー

    2014年06月05日 10:03

    >>[259]

    年月が過ぎ、すでに周りの風景と同化しているけれど、他にも墓がたくさんあるのかもしれません。
    あまりにも圧倒的な力を持つドラゴンは、ただ生きるだけならなに不自由なく、人間の道徳観のはるか外側の存在と、このシリーズでは位置付けています。
    そんなドラゴンにとって、人間をいじり眺めるのは絶好の娯楽です。

    人間は、ドラゴンはもっと人間の価値観に近い存在だと、勘違いしています。どうにかして、自分たちに都合のいいように利用できないかと、あの手この手でアプローチしてきます。勝手に神格化し、思いを馳せ、親近感さえ抱きます。

    だけど、だんごむしを転がして遊ぶ子供に、だんごむしの価値観や倫理観がどれほどの意味を持つでしょう。だんごむしのお墓に、どれほどの感慨を抱くでしょう。
    そういうスケールの差がある、ということをイメージしながら描いてみました。

    私にとってドラゴンは、それほど超越的な存在なんです。人間の価値観や倫理観がなんの役にも立たないような、そんな凄さを持つドラゴンに、とても魅力を感じます。

    読んでいただき、ありがとうございました。
    とりあえずこの短編集は、この三本で完結とさせていただきます。
  • [262] mixiユーザー

    2014年06月05日 15:56

    >>[251]
    >>[253]

    終わったー!? びっくりしました、書き込んでる間に終わったのですね><。
    でも、予想とちがってました! 全然予想と違いましたよ! まさかこういう落ちだとは><。
    悲しい話だと思ったら、怖い話だったのね、何と言うか、ドラゴンらしいですね><。
    凄く良かったです♪。ほんと、ドラゴンな作品でした!
  • [263] mixiユーザー

    2014年06月05日 16:00

    >>[254]
    第二部、楽しみにしています♪。
    のんびりペースでもいいので、ぜひ続けてくださいね♪。
    でも、一ヶ月連載してたのですよね、ちょっと毎朝読む楽しみがなくなっちゃったのは残念です><。
  • [264] mixiユーザー

    2014年06月05日 16:04

    >>[257]
    ドラゴン、怖いです!
    ますます怖くなりました><。
  • [266] mixiユーザー

    2014年06月05日 17:34

    >>[262]

    一作目で城主を丸焼きにしたんで、それよかかわいいものかなと(笑)。
    とにかくドラゴンって、私にはこれぐらいの超越感です。
  • [267] mixiユーザー

    2014年06月05日 17:37

    >>[264]

    なにしろドラゴンですから。
    畏怖の象徴なのが、本来なのでしょう。

    ランチさんみたいのは、珍しいほうで(苦笑)
  • [268] mixiユーザー

    2014年06月10日 23:12

    >>[137] otoya様こんばんは。とうとう最終日になってしまいました。
    実は長い間、この『夜明け』に対するなんらかの返歌が詠めないものかと考えつづけてきましたが、なにをもってきてもこのあらゆる展開を生み出しうる一瞬のごとき永遠の無風状態には及ばぬことを痛感しました。
    見事です!
  • [269] mixiユーザー

    2014年06月11日 09:31

    >>[268]

    おはようございます( ´ ▽ ` )ノ
    MFさんにそこまで褒めていただけるとは…!
    ありがとうございます♪
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