レコード・ビジネスへと本格的に乗り出すきっかけとなったのが、イギリス、ジャマイカを行ったり来たりしながら作品をプロデュースしていたジョン・ドレッド(John Dread)との出会いだった。 友人の紹介で知り合ったピンチャーズ(Pinchers)は、彼のプロダクションに'Me Love Me Like Me Enjoyment'をレコーディングし、これが記念すべきデビュー作となった。 ジョン・ドレッド・プロダクション(John Dread Prodctions)はイギリスを拠点にリリースしていたレーベルだった事もあり、ピンチャーズ(Pinchers)の作品はジャマイカよりも先にイギリスにて発売される事に。
そんな彼の大出世作となったのがエクスターミネーター(Xterminator)レーベルの前身、フィリップ・ファティス・バレル(Phillip Fatis Barrel)のヴィーナ(Vena)からの'Lift It Up Again'である。 1985年に島中を駆け巡ったこのチューンは、ギリギリまで削ぎ落とされたソリッドなリズム、アンサー(Answer)に乗せたダンスホールのアンセムである。 この曲以降のピンチャーズ(Pinchers)の勢いは凄まじく、様々なプロデューサーの元から数多くのヒットを放っていった。 同じくヴィーナ(Vena)からはダディー・フレディー(Daddy Freddie)とのコンビネーションで'Joker Lover'、そして'Grammy'。ジョージ・パン(George Pan)のパワー・ハウス(Power House)からは'Don't Distress'、トミー・コーワン(Tommy Cowan)のシュプリーム(Supreme)からの'Return Of The Don'、サンダー・ボルト(Thunder Bolt)からの'Rough Neck'と怒涛のヒットを連発。 押しも押されぬトップ・スターへの階段を一気に駆け上がっていった。
その他'Agony'、'Call Upon Mi God'、'Don Is Don'、'Sit Down Pon It'といったレコードによってピンチャーズ(Pinchers)は大きな成功を手にし、これらのチューンは今尚絶大な人気を誇るダンスホール・クラシックとして君臨し続けている。
90年代に入ってもディジタル・B(Digital B)からの'Enemies'や'Send Another One Come'、ペントハウス(Penthouse)からの'She's Coming Back'等のヒットをチャートに送り込み、コンスタントな活躍を見せる。その後リリースも落ち着き、目立ったヒットからは遠ざかっていたピンチャーズ(Pinchers)であったが、近年は定期的に新作が届けられ完全復活を予感させる