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開催終了第一回リレー小説「秘密基地」

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2008年10月26日 21:10 更新

(作 ゆり@Nightmare)

僕が始めて由美と会ったのは、幼稚園の時だった。
一緒にやって来た母親の手が離れると、いつも沈んでいた。
「寂しいの?」
「寂しくなんかない」
力無く呟く。
「だって、泣いてるじゃないか」
僕のこの言葉に由美は、笑おうとしたんだろう。
口元を引きつらせながら、ちょっと困った顔で僕を睨んだ。
「泣いてなんかいない」
中学生になった今でも由美は、ちっとも素直じゃない。

コメント(20)

  • [1] mixiユーザー

    2008年10月26日 21:11

    (作 ヤスさん)

    何故…由美は素直になれないのだろう?
    僕は誰よりも由美を知っている…一緒に過ごした時間は長いはずだから。
    「何してるの?」
    「何もしてない」
    最近の由美は僕に『何か』を隠している。
    初めて会った時から素直じゃないのは分かっていたけど、隠し事までしなくたって良いじゃないか…。
    僕はどうして、こんなにも気になるんだろう?
  • [2] mixiユーザー

    2008年10月26日 21:13

    (作 まちゃりんさん)

    ここ数日モヤモヤ気持ちの中、僕は、由美のことを考えていた。
    何で由美は素直に話してくれないんだ?
    中学に入り余計に距離を感じていた。何かあるのか?
    その理由を知りたくて、夜中とっさに携帯で電話をかけた。
    「もしもし」由美の眠そうな声に戸惑いを感じつつ
    「あのさ・・・」と声をかけると
    「何」とそっけない返事の後に沈黙が続き
    「やっぱりいいや」の一言を告げて電話を切った。
    何故、そんな態度をとったのか分からない。
    そこには、初めての由美に対し素直になれない自分がいた。
  • [3] mixiユーザー

    2008年10月26日 21:13

    (作 チーフちゃん)

    「由美に対し素直になれない自分がいた、だってお前小説書いてんの?」
    「あっ、他人(ひと)のパソコン勝手に開けるな」
    「この由美ってのは、オレの事か?リュウジロー、女らしさを求めても駄目だかんなー。オレに惚れるなよ」
    「だ、誰がお前なんかに。千里(ちさと)お前も女の端くれなんだから、自分の事オレとか云うなよ」
    僕、小柴竜二郎は、勝手に上がり込んで、他人のベッドの上で漫画を読んでいる幼馴染の岡江千里にそう云った。
    「もしここで、僕がお前を襲ったらどうすんだ」
    「オレ合気道の有段者だもん」
    「うぅ。」
    「それも、この間、初段から2段になったんだぜ」
    「うそ!」
    ソフトボール部の練習で日焼けした千里の横顔を盗み見た。小学生から体力で彼女に勝った事は無い、むしろイジメられている所を助けられた事もある。だから
    苦手なのだ。
    しかし、リュウジローは良いよなぁ。こんな広い家に一人住まいなんて」
    仕方無いだろう、おやじの海外赴任に母親も付いて行ったんだから」
    「仲良いよねー」
    「子供をほっといて、普通行くか?」
    「そこが、普通の夫婦と違う所だね」
  • [4] mixiユーザー

    2008年10月26日 21:14

    (作 ウォーリアさん)

    結局千里は夜遅くまで僕のベッドで漫画を読み、「じゃね」とひょうひょうと帰って行った。
    「同じ幼馴染みでもこうも違うものかね?」
     僕はため息混じりに自室に戻った。
     1人になりベッドに横になると、どうしても由美のことを考えてしまう。『何を』隠してるんだろう…? そして僕は一体何故これほどまでに気になるのだろう…。考えながら僕はゆっくりと眠りに落ちていった。

     翌朝、朝のルーティンワークと化した歯磨きや朝食を済ませ学校へと向かった。まだ由美のことが腑に落ちない。考えながら歩いていると…。
    「おはよー、小柴くん」
     同じクラスの高瀬が声をかけてきた。考え事をしていたので僕は思わず体がビクッとなってしまった。
    「あ、あぁ、おはよう高瀬」
     高瀬は小学校5年の頃からの付き合いだ。兵庫県の「姫路」というところから転校してきたようだが、関東と関西では「姫路」のイントネーションが違うらしく、言葉にする度もれなく高瀬には訂正される。あと高瀬の関西弁は一向に関東の言葉に馴染む様子はない。
    「どーしたん? 何か神妙な顔で歩いとったけど?」
     そんなに深刻な雰囲気だったのだろうか。平静さを装い答える。
    「た、大したことじゃないよ」
    「あ、何かはぐらかしたな。ん〜、恋か、恋やろ!?」
    「ば、バッカ違うよ!」
     否定はしたものの、動揺で一瞬で顔が赤くなってしまった。
    「えぇか? 恋は当たって砕けるんやで!」
    「…砕けじゃダメじゃないか…」
    「大丈夫や、体は粉々になっても魂は残るんや!」
     関西人とはみんなこんなのだろうか…。僕が返答に困ってる間にも高瀬は続ける。
    「で、相手は誰? 幼馴染み?」
     こいつはエスパーか? 僕は更に返す言葉を失ってしまった。
    「ちなみに幼馴染みって子供の頃はどんな感じやったん?」
    「う〜ん…。普通に遊んでたよ。外で走り回ったり。あぁ、夏は水風呂に入ったりしてたなぁ。ママゴトなんかにも付き合わされたよ…泥で作ったおにぎりは地獄だった…」
     由美、千里と遊んでいた日々を思い出しながら言葉を紡いでいた。しかしふと横を見ると高瀬が上を向いて鼻をつまんでいる。
    「ど、どうした高瀬?!」
    「あかん、そんなベタベタな幼馴染みが小柴くんにはおったなんて…羨ましすぎて鼻血が出そうや。いや、目や耳からも何かが出てきそうや」
    「目は分かるけど耳からってのは何だよ?!」
    「耳から出るから耳汁やろー」
    「そんなの聞いたこと無いぞ…」
    「まぁ実際無いからなぁ」
     相変わらず関西のノリには付いて行けない…。「突っ込んでくれなー」と不満の声をあげる高瀬をよそに、ふと高瀬が遅刻常習犯であることを思い出した。慌てて時計を見ると、案の定歩いて行くと遅刻の時間だ。
    「やばい! 遅刻だ!」
     僕は高瀬を置いて走り出す。だが、高瀬は運動神経が良いためすぐに僕に追い付いてきた。
    「小柴くん、そうや! その速さや! それで当たって砕けたらえぇんや!」
     もういちいち突っ込むのも馬鹿らしくなったのと遅刻の危機が迫っていたため僕はぜぇぜぇと呼吸をしながらも、ギリギリ校門をくぐることができた。
    「その意気やで。大丈夫、砕けたら骨は拾ったるから」
     まるで疲れていない様子で爽やかに高瀬が言った。

     恋…か…。
     幼馴染みで子供の頃からの付き合いなので実感がない。が、とりあえず由美が何を隠しているのかは知っておきたい。
     肩で息をしながら高瀬と二人、僕たちは教室へ入っていった。
  • [5] mixiユーザー

    2008年10月26日 21:16

    (作 ゆり@Nightmare)

    「オッス!」
    酸欠状態でぼーっとする頭を振り顔を上げると、今日も朝からテンションが高そうな千里の笑顔があった。
    「お……おはよ……」
    「遅刻ギリギリじゃん。昨日、夜行ったのマズかった?」
    「千里!おはよっ」
    後からやって来た高瀬が千里に抱きついた。
    「うわっ!お……お前、ちょっとやめろって!」
    「久し振りに遅刻せんかったんやから、祝ってくれたってええやろ」
    一緒に走って来たとは思えない元気っぷりで、千里にまとわりついていた。
    「なんや。小柴くんの寝坊の原因は千里やったんか!?」
    「ちがーう!ちょっとヒマ潰しに行っただけだ!!」
    「え〜……そらないやろ。正直に話してまえ〜!」
    高瀬の目が輝いている。
    これは近付かない方が無難だ。
    「朝練終わってシャワーでも浴びたん?千里、いい匂いやなぁ」
    「リュウジロー!お前、見てないでなんとかしろよ!!」
    「千里。ファイトだ」
    僕は千里にエールを送ると、自分の席を目指した。


    後ろの席を振り返ると、相変わらず無表情な由美がいた。
    高瀬と千里の騒動も上の空で、分厚い装丁本を読んでいる。
    多分、フランス語の原書なんだろう。
    タイトル自体、僕には読めもしなかった。
    「由美。おはよう」
    「おはよ」
    本からは目を離さず、反射的に返ってきた。
    こういう性格だって分かってはいるんだけど、毎朝僕は凹まされる運命にあるわけだ。
  • [6] mixiユーザー

    2008年10月26日 21:17

    (作 ヤスさん)

    授業中、高瀬から手紙が回って来た。

    「小柴くんへ
    恋してる幼馴染みって…千里なんか?…なんか違うわー。他にも幼馴染みいてるんやろ?
    この学校におる?うちの知っとる子?
    ここ最近、ぼーっとしとるから気になるやんか〜。
    まぁ気が向いたら教えてや!

    高瀬 より」

    手紙を読んだ後に高瀬を見ると、期待を込めた瞳で僕を見ていた。
    反応に困り、どうする事も出来ないまま視線をそらした。

    僕は、そんなにぼーっとしていたんだろうか…?
    由美の事を考えて…いや、由美の隠している「何か」が気になって考えていたんだ!そうだ、そうだよな…由美が隠してるからだ。
    それにしても女の直感ってのは鋭いんだな…。考えて事=恋って直結するのは納得しないけど、高瀬は凄いな。僕は感心していた。
    そういえば、僕と千里は幼馴染みってみんな知ってるけど…僕と千里と由美の三人が幼馴染みって事を誰も知らないんだよな。

    僕と由美しか知らない事実。
    千里は知らない事実。
  • [7] mixiユーザー

    2008年10月26日 21:17

    (作 まちゃりんさん)

    そう。僕と千里と由美は幼稚園からの幼馴染みであり、現在は、同じ中学のクラスメイトだ。
    千里は、男っぽい性格ながら明るい性格で、気を使うこともなく、本当に付き合いやすい奴だ。
    一方の由美はと言えば無口、無表情、無愛想で今でも謎が多く何かと言えば、僕に突っかかってくる考えただけで腹が立ってくる。退屈な授業の中、僕はそんなことを考えていた。
  • [8] mixiユーザー

    2008年10月26日 21:18

    (作 チーフちゃん)

    今日は、寝坊してしまった。夏休みに入って一週間が立つ。
    朝食兼昼食を食べに「異火座」に行く。この店は、千里の親父がやっている西洋風居酒屋だった。夕方までは、専ら珈琲と料理の店に早変わりする。以前に親父さんに聞いたらスペインの「イビッサ島」から名前を取ったらしい。ログハウスっぽい、丸太作りの店だ。
    「おはようございます」
    「おはようじゃあ無いだろ、もう昼だよリュージロー」
    千里が口うるさく云った。
    「あれマスターは?」
    今日は、年に一回の異火座会だと云っていそいそ出かけたよ」
    「異火座会?」
    親父の若い頃のバイトやお客さんで作っている会だよ」
    「ふーん」
    この店が、阿佐ヶ谷北の地に根付いて大分経つらしい。僕達が生まれる前だ。
    だから、千里とは阿佐ヶ谷保育園、本天沼(ほんあまぬま)小学校、現在阿佐ヶ谷北中学校とずっと一緒だ。
    由美は小学三年の時に海外の日本人学校から転校してきたのだった。
    「リュージロー、親父が何時から皿洗いしてくれるんだって聞いてたよ。どうしたんだよ」
    うん、ボウリングで皿洗いとひと月分の飯代と賭けたんだよ」
    「ナニ、あいつ自分がボウリング部出身って云う事を黙っていたのかよ」
    「聞いた」
    「じゃあ、どうして」
    「マスターって運動神経無さそうだろ。それに笑いながら小鼻を膨らませて云うんだよ。何時ものホラだと思ったんだよ」
    「それで、ハンデ無しでやったのかよ」
    「途中で45ピンのハンデ付けてくれたよ。頑張って198ピン打ったけど、256ピン打たれたらいくらハンデあってもだめだね」
    「じゃあ、諦めて皿洗いしな」
    仕方無しに明日から皿洗いをすることにしたけれども、少し手伝って貰おうと
    思い由美の携帯に電話しようとした。
    あれっ、無い。小鳥遊(タカナシ)由美で検索しても抜け落ちている。
    「千里、由美の携帯の番号知らないか」
    「由美?誰それ」
    「幼馴染のタカナシユミだよ」
    「夢でも見ているんじゃないの、リュージロー」
    一週間前までは、後ろの席にいたのに。
    「高瀬に携帯で聞いてみるよ」
    「もしもし、高瀬。携帯の番号教えて」
    「誰やそれ、何寝ぼけてんねん」
    僕は何が何やら分からずに部屋に戻った。
  • [9] mixiユーザー

    2008年10月26日 21:19

    (作 ウォーリアさん)

    翌日、僕は由美のマンションへ向かった。
    「(由美は…いない…?)」
     そんな馬鹿な。僕は確かに由美の幼馴染みだ。無口、無表情、無愛想。『何か』を隠していて、追求すると僕に突っかかってくる、由美は確かに、『いた』。

     道中、高瀬が向かいから歩いてくるのが見えた。
    「オッス小柴くん」
    「よっ」
     涼しそうな水色のワンピースを着た高瀬が先に口を開いた。
    「昨日の電話なんやったん?」
    「いや、由美だよ。いただろ? いつも後ろの方の座席で本を読んでいた、由美」
    「う〜ん…。いつの話? 何年の時?」
    「今だよ。同じくラスじゃないか」
     高瀬は難しい顔をしている。…頼む、思い出してくれ。「影薄いから忘れとったわー」と言ってくれ!
    「んー、小柴くん疲れてるんちゃう? おらんよやっぱり」
     返ってきた答えに僕は落胆した。
    「そんな…馬鹿な…」
     狼狽えてる僕に高瀬はいきなりチョップを僕の脳天に叩きつけた。
    「いてぇっ! 何するんだよ!」
    「残酷チョップや! 皿洗いさせたれてた上にこの暑さやー。何か勘違いしとるんやろー」
    「…いや、勘違いじゃ…イデェッ!」
     またもチョップを喰らった。
    「今のは『真・残酷チョップ』や。喰らえば最後、脳髄まき散らしアベしやっ! しかしこの技を受けて立っていたのは君が…初めてやで?」
     右手を胸の辺りに構え、またもボケ始める。
     高瀬がボケている。ということは高瀬は嘘をついていない。なぜなら高瀬はいじめを苦にして転校してきたのだ。今の姿からは想像も出来ないが、陰湿なイジメを受けていたらしい。だから、高瀬はこういうことには決して嘘はつかず、ボケたりもしない。

     いじめについて高瀬はほとんど喋りたがらかなったが、少しだけ内容を話してくれたことがある。それを聞いて。
    「リュージロー、いっちょシバきに行くか」
    「おぉ、名案だ」
     僕と千里は、今すぐにでも高瀬の前の学校へ報復しようと立ち上がった。だが、高瀬は目に涙を溜めてやめてくれと懇願したので報復は無しになった。
     だからこそ、高瀬は意地の悪い嘘は絶対につかない。

    「小柴くん、突っ込みどころがいっぱいあるやろー。何をボーッとしとるんよ」
    「悪い、ちょっと急いでるんだ」
     高瀬を置いて僕は由美のマンションへ向かって走り出した。
    「小柴くーん、気分悪くしてもたんならごめんなー!」
    「気にしてねーよ! またな!」
     僕は由美のマンションへ向かって、走った。

     マンションに着き、由美の部屋番号を見る。…郵便受けはテープで留められている。これは空の部屋の郵便受けにチラシを入れられないようにしているものだ。
    「そんな…」
     僕は大家さんのインターホンを押した。間もなく大家のおじいさんの声が返ってきた。
    「はいはい、何でしょう?」
    「403号室は空きになっているようなんですが…」
    「えぇ、ここ一年以上空きっぱなしですねぇ。入居希望ですか?」
     また、僕は混乱した。
    「あ、いえ。昔の友達がこの辺りに住んでたと思ったのですが間違いだったみたいです。すみませんでした。」
     言うや否や僕は混乱したままの状態で帰途についた。

     由美の痕跡が無くなっている。だが、僕は由美を知っている。妄想・幻覚・幻聴だったのか…? いや、違う…確かに僕は由美が『いた』事を知っている。
     帰り道何気なく携帯で撮った写真を順に眺めていった。案の定由美はいない。千里や高瀬と遊んでいる写真ばかりだ。
     しかしひとつ気になる写真があった。日付は5/4。GWだ。何をしていたのかはよく分からないが僕はその写真を開いてみた。

    「この画像ファイルは壊れています」

     こんなこと今まで無かった。5/4…。何があった? どうしても思い出せない。僕の携帯からは由美に関するメールなどは全て消えている。だが、壊れた写真なんて今まで無かったはずだ。

    「5月4日…何があった…。ちくしょう! 思い出せよ俺! ちくしょう!」

     この画像ファイルは何の時に撮ったものだろう。少なくとも僕は画像ファイルが壊れていたらすぐ消すはずだ。なのに残っている壊れた画像ファイル。
    「由美……。どこへ、どこへ行ってしまったんだ…。」
     『何を隠しているのか』が知りたかった。
     でも今は、はっきりと自覚できる。失った今だからこそ、由美が途方もなく愛おしく感じられた。
    「由美…。」
     僕は夕暮れに染まった空の下、帰途についた。この写真が、何かを解く鍵なのかもしれない。そして僕は思い出さなければならない。『5/4に何があったかを』。
  • [10] mixiユーザー

    2008年10月26日 21:20

    (作 ゆり@Nightmare)

    帰宅し、二階の自室まで駆け上がる。
     汗ばんだシャツを脱ぐのももどかしく、パソコンの電源を入れる。
     起動時間が途方も無く長く感じられ、つい殴りたくなる衝動を必至で抑え、テキストファイルを開いた。一昨昨日書いた日記だ。
    「由美に対し素直になれない自分がいた」
     
     そこにはまぎれも無く、由美の存在がある。
     何を聞いても、なんでもないとしか応えない由美。
     一緒に遊んでても、楽しいと笑わない由美。
     誕生日にプレゼントをあげても無表情な由美。

     でも、由美は僕の事を嫌ってるわけじゃない。遠足でも修学旅行でもそうだったし、授業が終わると必ず僕の後ろにいる。
     一緒に帰ろうかなんて言ってはいけない。そんな事を口走ると、素直じゃない由美は決して付いて来ないから。
     体育会系の千里は、由美を上手く扱っていた。
    「リュージローと一緒に帰るんだけど、由美は図書館寄ってくんだろ?」
     一緒に帰っているのか定かじゃないけど、こう言われると由美は無言で付いて来るのだ。傍から見れば苛められてるのにも見えなくは無いが、幼稚園からの幼馴染は案外、上手くいっていた。


     千里が、由美の存在を忘れるなんておかしい。そもそも僕の日記を盗み読みした時になんて言っていた?
    「この由美ってのは、オレの事か?」
     苛められていた過去を振り切って、友達百人作ると笑った高瀬。そんな誰彼構わずネタにする高瀬も、由美を知らないなんて在り得ない。
     そして、由美の住んでいたマンションに、由美はいない……
     今朝だって、僕は後ろの席に座る由美におはようと言った。相変わらず無愛想で無表情な由美が、確かにそこにいた。
     
     何かがおかしい。まるで、僕の目にしか由美の存在は映っていないみたいじゃないか……
     僕はパソコンに向き直り、5/4の日記を探した。
  • [11] mixiユーザー

    2008年10月26日 21:21

    (作 ヤスさん)

    「5月4日…5月4日…」

    僕は探した…5月4日の日記を。
    「あれ?…5月5日からしか日記が…ない!?」
    僕は混乱した。ずっと日記をつけていたはずだったのに…。これも僕の勘違いなのか?
    「なんでた?ずっと日記をつけてたはずだろ!?5月5日からなんて嘘だろ!!」
    いくら探してもそれ以前の日記が見当たらない。
    消してしまったのか?それとも消されてしまったのか?そもそも、僕の記憶が間違っているのか?

    「本当に…何があったんだよ…5月4日に!!」

    知りたかった次の日からつけ始めている日記。
    きっと『何か』があったからつけ始めたんだ…日記を。

    「由美…今朝だって、僕の後ろの席にいて…おはようって…?…ん?…あれ?…今朝だって?何言ってるんだ?もう夏休みだし、学校に行ってないじゃないか!」

    何を言ってるんだ…僕は。僕は何がなんだかわからなくなった。
    でも…知りたい…由美の事、5月4日の事、そして由美の隠していた『何か』の事。
  • [12] mixiユーザー

    2008年10月26日 21:21

    (作 まちゃりんさん)

    僕は、その日も記憶をたどりながら街中を一人歩いていた。
    その時、目の前に見覚えのある女性がいた。
    それは、由美ではないか!由美は、男性と親しげに腕を組み笑顔で楽しそうにこちらに向って歩いて来る。
    これが隠し事なのか!僕は、どうしようかと身構えたがその場から動けなかった。しかし、由美と男性は、僕の隣を他人のように通り過ぎていくではないか!
    僕は、何とも言えない気持ちでその場を逃げ出した。
    その時、多量の汗と共に目が覚めた。「夢か」と安堵感と解決しない悩みに「フゥ〜」と僕は溜息をつきながらその言葉を呟いた。
    しかし、僕はこの夢に何か意味があるような気がして仕方なかった。
  • [13] mixiユーザー

    2008年10月26日 21:23

    (作 チーフちゃん)

    問題はゴールデンウイークかと、僕は思った。
    今年のゴールデンウイークはどうしてたかな?
    異火座へ千里に聞きに行った。
    「千里、今年のゴールデンウイークは、どうしてたっけ」
    横目で僕の顔を見た千里は、
    「馬鹿かお前は!うちの親父が臨時休業して、スペインに皿や小物を買いつけ
    に行くと云った時、お前とこの一家も便乗したじゃん」
    「あっ、そうだ。二回目の新婚旅行だって喜んでいたなー」
    どうして忘れていたんだろう。
    「リュージロー、あの時スペインで同級生の女の子がアベックで歩いているのを
    見たと云って興奮してたじゃない」
    そうだ、イビッサ島で由美が日本人の男の子と歩いているのを見たのだった。
    どうして今まで思い出さなかったのだろう。
    そういえば、ゴールデンウイークの2、3日前から由美は欠席していたのだった。
    ゴールデンウイークが明けに学校へ行った時は、しっかり居たけれども。
    「しかし、あの時は参ったね、リュージロー。親の都合で学校休まされて、
    先生に怒られたら知らん顔だもんなー」
    千里が笑いながら云った。しかし、体育系の千里が一番喜んでいたのを、僕は知っている。
    「あの時リュージロー、マドリードの日本人学校へ行きたいって、言ってなかったっけ?」
    「でも時間の都合で行けなかったんだよ。うちの両親が自分たちの都合ばっかりで、観光するから」
    「仲良いもんなぁ」
    「良過ぎだよ。息子の事も少しは考えて欲しいよな」
    隅で高瀬早苗がマンガを読みながら、
    「そやけど、二人は仲ええよね」
    「良くないよ」二人声を揃えて云った。
    「それそれ、それが仲ええちゅうねん」
    「なんだよそれ」
    千里が少し口を突き出して云った。
  • [14] mixiユーザー

    2008年10月26日 21:24

    (作 ウォーリアさん)

    異火座を出て僕は自宅へ戻った。結局手がかりは何も無しだ。
    『由美は確かにいた』
     本当にそうだろうか。僕は不安と共に疑問が湧いてきた。もしかすると…もしかすると、本当に僕の思いこみだったんじゃないだろうか? 自分でも知らない内に、架空の幼馴染みを現実と妄想を一緒にしてしまっていたのかもしれない。
    「疲れてるのかもな…」
     これだけ記憶を頼りに駆けずり回って何も痕跡がないんだ。だから…。

    「由美はいないんだ」

     声に出して、少し気分が楽になった。あり得ないよ、人が忽然と消える何てさ。千里と高瀬を振り回して悪かったなぁ…。
     今日はシャワーを浴びて寝ることにした。明日からはいつもの日常が始まる。いや、明日もいつもの日常なんだ。安らかに、僕は眠りに落ちていった。

     ───────。

     夢を見た。
     二回目だ。だが、不思議な夢だ。僕は今夢を見ていることを自覚している。
     夜の繁華街で由美が見知らぬ男性と腕を組んで歩いているのが見えた。
    「由美!」
     夢の中で僕は叫んだ。だが、由美は気づかない。腕を組んだ男性と楽しそうに笑っている。あんな笑顔、僕は最近見たことがない。
     いや…でも、これでハッキリしたような気がした。由美はやはり僕の妄想だったんだな。
     由美はすれ違ったときもこちらは見向きもしなかった。
    「さようなら、由美…」
     僕はぼやけていく風景の中、振り返った。そこには、同じくこちらを振り返り、涙を流している由美がいた。口が動いている。だが声は聞こえない。何を言っているんだ? 口の動きを眺めながら、僕は目が覚めた。

    『さ よ な ら』

     目覚めたとき、僕は泣いていた。そして夢で見た由美の口がそう言っているように見えた。
     ただの夢だ。由美のことを考えながら寝たから、こんな夢を見てしまったんだ。そう自分に言い聞かせてみるも、僕の鼓動は早くなるばかりだ。
     枕元の携帯電話を見る。「AM5:30」。早くに目が覚めたな。だが胸の鼓動は収まらない。僕はそのまま壊れていた5月4日の画像ファイルを開いた。

    「嘘だろ…?」

     由美と僕のツーショットが映っていた。僕が携帯を持ち、自分たちに向けて撮った写真だ。
     由美は、笑っていた。夢で見たような、楽しそうな笑顔。

    「由美…」
     鼓動は早さを増すばかりだった。恐怖は感じない、だが、とても、とても、哀しい。何故…写真が…由美が…。訳が分からなかった、ただ、僕の涙はとめどなく溢れるばかりだった。
  • [15] mixiユーザー

    2008年10月26日 21:24

    (作 ゆり@Nightmare)

    水シャワーを浴びると一瞬、頭の中で煙っていた霧が晴れた気がした。でも、すっきりした気分は束の間でしかなかった。 
     風に靡く長い黒髪も、甘ったるいシャンプーの香りも、誰も寄せ付けない孤高な光を宿した瞳も。歯磨き粉も大人用だとぴりぴりするという理由で子供用の「いちご味」を使っている事も、珈琲にはミルクと砂糖をどばどば入れてカフェ・オレにしてしか飲めない事も、みの虫みたいに人見知りする事だって。
     愛想も素っ気もない、どうしようもなく厄介な幼馴染の事を、僕が忘れられる訳なんてない。
     僕はこのまま毎日、由美の幻影にうなされるのだろうか。
     何故、僕だけに由美との思い出があるのだろうか。
     僕はもしかして、僕の知らない間に由美に呪われているのかも知れない……

     異火座にでも行こうと思い、掛け時計を見た。
     漫画雑誌やコンビニの袋が散乱する、男の一人暮らしを象徴したかのような僕の部屋には、到底似つかわしくない馬鹿面の黒猫がいる。天井すれすれの壁に掛かったそいつは、去年の十二月二十四日から秒単位で尻尾を振り、刻一刻と僕の寿命を削っていた。
     クリスマス・イヴで、誰しもそれどころではない僕の誕生日に由美がくれたプレゼントだった。僕には未だ、全くこいつの魅力は理解できそうに無かったが、由美はえらく気に入っていたみたいで、当時の僕の目の前であげようかどうか迷うといった奇妙な行動に出た。
     最終的には眉間に皺を寄せ、いやいや差し出しているとしか思えない顔をして僕に差し出した。ありがとうとだけ云い、僕はそれを受け取った。
    「大事にしないと許さないから」
    「分かった。こいつは家法にするから安心しろ」
     そんな馬鹿な約束をして、黒猫時計は僕の部屋の住人になったのだ。
     黒猫のお腹に満月みたいな白い円があって、そこが文字盤になっている。尻尾の動きと連動して秒針が進み、丁度六時になった。異火座に行くには早過ぎる。
     愛想の欠片も無い由美に似た黒猫の瞳を見詰め、また気分が重くなるのを感じた。公園にでも行こう。
     ぶらぶら散歩して適当に時間を潰して、その足で異火座に行けばいい。朝っぱらから千里と馬鹿な話でもしよう。

     五分も歩くと汗だくになった。安物のTシャツが体にへばり付き、実に気持ちが悪い。
     五枚千円で買ったそいつについて、高瀬が激しく突っ込んでいた事を思い出した。確か放課後の公園で、千里と三人でアイスをかじっていた時だった。
    「そんなやすもん、一回洗濯したら溶けてしまうで!そんなん平気で着てる小柴くんは変態やな」
     高瀬が大声で叫び、通り過ぎる人にクスクス笑われた恥ずかしい体験談だ。今日、高瀬に会ったら間違いなく突っ込まれるだろう。
     気付くと一人で笑っていた。傍から見たら、今度こそ本物の変態にされてしまう。慌てて周囲を見回した。

     振り返った視線が捉えたものに、僕は…・・・

     足の力が抜け、暑い地面に尻餅を着く。
     額から止め処なく、冷たい油が流れる。
     聞きたい事があるのに、口が震えて声が出ない。
     生ぬるい風が吹き、彼女の長い黒髪を靡かせる。甘ったるいシャンプーの香りが僕の鼻腔を擽った。
     孤高な光を宿した瞳で、上目遣いに僕を見下ろす。歯磨き粉も「いちご味」を使っているに違い無い。
     珈琲にはミルクと砂糖をどばどば入れてカフェ・オレにして飲むだろうし、みの虫みたいに人見知りするに決まっていた。
     真っ白なワンピースに水色のスカートで長ベンチに腰掛け、分厚い装丁本を膝の上で開いている。僕の目にそれは、聖書を手にした天使に見えた。
    「何がそんなに面白いの?」
     天使は僕に問いかける。
    「知ってる?もうすぐ世界は終わるのよ」
     口元に微笑を浮かべ、彼女は言った。冷めた視線が突き刺さり、自分の体が凍り付いたみたいだった。
     聞きたい事はある。どうしても聞かなくてはならない事だ。
    「きみはだれ?」
     錆び付いたような喉から言葉を振り絞る。
    「きみは由美?」
     彼女は視線を離さず、膝の装丁本を閉じる。

    ――パタン――

     その瞬間、何かが終わったのかも知れない。
    「始まりは終わり、再び終わりが始まるんだよ」
     彼女の口元は変わらず微笑を保ち、僕を諭すように呟いた。
    「きみは由美?」
     僕はまだ、夢を見ているんだろうか。実は、今まで見ていた由美のいない世界が夢なんだろうか。
     僕の視界全部に、彼女が映る。風が吹けば触れそうな場所に、彼女の顔がある。
     恥ずかしくも照れくさくも無かった。幼馴染の由美が、ただそこにいた。
     僕は不思議な安堵感に包まれ、空も飛べそうな気分になる。ゆっくりと、由美が言葉を紡いだ。
  • [16] mixiユーザー

    2008年10月26日 21:26

    (作 ヤスさん)

    「あなたはどっちを望む?」

    天使は表情を変えないまま、僕の問い掛けには答えずに僕に問い掛けた。
    「えっ…どっちって…何が??……きみは由美なんだろ?」

    冷や汗がまた流れ出した。鼓動も早さを増し始めていた。そして、蝉の五月蝿い鳴き声も聞こえなくなっていた。

    「どっちを望む?運命はあなたが握っているのよ?」
    「僕が?…何故?」
    由美に似た天使は、僕に何を望んでいる?いや…僕は何を望んでいるんだ?
    そもそも、僕が運命を握っているって…可笑しくないか?

    「まだ…時期が早かったようね…。よく思い出して…そして、考えて…。」

    天使は公園から去ろうとベンチから立ち上がり、歩き出した。僕はまだ尻餅を着いたまま、動けずにいた。

    「まっ…待って!何を思い出せって言うんだよ?」

    動けない変わりに、声をふり絞って聞いた。天使は白いワンピースをふわりと翻しながら振り返り、微笑みながら言った。

    「小さい頃の約束…そしてあの場所を見つけて…」

    そう告げると、天使は公園を後にした。僕はまだ動けずにいる。
  • [17] mixiユーザー

    2008年10月26日 21:26

    (作 まちゃりんさん)

    雨が降り始め僕は、公園からの家路を急ぐ中で、天使の言葉の約束、あの場所について考えを巡らせていた。確か初めて会ったのは、幼稚園で母親に手をひかれ、母親の手を離れると泣いていた。気丈に振る舞うその姿に何かを感じていた。しかし、その後の記憶を辿ろうとしたその時、それを妨げるかのように頭に電気が走り痛みを感じた。そして、僕はその場にうずくまった。それからどれほどの時間がたったのだろうか、目を開けると雨はやんでいた。そして僕は思い悩んでいた。「何がいったいどうなっているんだ?僕は、病気なのか?記憶喪失なのか?由美は、実在する人物なのか?、約束ってなんだよ!訳わかんねぇよ。」僕は、誰も頼ることができないその怒りをどうする事も出来ずに「うぁー」と叫んだ!
  • [18] mixiユーザー

    2008年10月26日 21:27

    (作 チーフちゃん)

    自分の部屋で僕は考える。
    小さい頃、神社の裏で良く千里なんかと遊んだ大木の祠があった。
    あの中に由美はいたのだろうか?
    3人か4人で、漫画などを持ち込んで遊んでいた覚えがある。
    しかし、千里しか思い出さない、誰だっただろう。
    僕は、異火座に向かった。
    「千里いる?」
    「何だよ、リュウジロー」
    「ちょっと、付きあってくれよ」
    「お!デートに誘うか?」
    「そんなんじゃねえよ」
    二人は店を出て、
    「何処へ行くんだよ」
    「昔、良く遊んだ祠覚えてるか」
    「駅の裏の神社か」
    「あっ!そうか」
    僕の頭の中に少しずつ、映像が結び始めた。

    神社に着くと二人で早速祠に向かった。
    中を覗きながら、
    「リュウジロー、思った以上に狭いな」
    昔は、この空間が無限に感じられた、今は大人三人で一杯になるぐらいの
    広さだった。
    二人で中に入って座り、足を伸ばした。
    何故か、僕は眠くなり、その場で浅い眠りに入った。
  • [19] mixiユーザー

    2008年10月26日 21:28

    (作 ウォーリアさん)

    千里はしばらく懐かしんでベタベタと周りを触っていた。
    「懐かしいなぁおい、なぁリュージロー。…リュージロー? …何でこんなとこで寝るのかなー? まぁ涼しいけどさ」
     ぼんやりと千里の声が聞こえる。どうやら千里は僕を起こす気はなく、飽きたのか祠を出て神社の外をブラブラ歩き出した。ふぅ、と息を付き、僕はまた眠りに入っていった。

     ─────────。

     由美が消えた現実。世界は終わると告げた天使。現れた5/4の写メ。
     ぼんやりと由美に似た人物、いや、由美に似た天使が現れた。
    「思い出した?」
    「あぁ…大体…な」
     寝ぼけたような声で僕は答えた。
    「由美、君は…死んだんだったんだよな」
    「…うん」
     GW目前。由美は登校途中に車に轢かれ、死んでしまった。
    「でも何で5/4にまた現れたんだ?」
    「わたしは違う時間軸から来たの。この世界ととても似た時間軸。でも、わたしの時間軸ではわたしじゃなくて竜二郎が車に轢かれて死んじゃったんだよ」
    「へぇ、そっか…」
     あの日、ちょこんと後ろを付いてきていた由美を残して、僕は忘れ物を取りに自宅へ引き返した。そしてそのまま1人で登校していた由美は、死んでしまった。
    「じゃあ由美の世界では逆か? 由美が忘れ物を取りに帰ったとか?」
     由美は、哀しげな、だがどこか憂いを帯びた顔で首を振った。
    「違うよ。わたしの世界では竜二郎はわたしを突き飛ばして、代わりに轢かれちゃったの」
    「そっか。男らしかったんだな、僕は」
    「うん、少しも躊躇わず、わたしを守ってくれたよ」
     由美の頬に涙がこぼれる。
    「わたしは世界を否定したの。竜二郎のいないわたしの世界を」
    「随分非科学だな」
     しかし不思議な感じはしない。僕も、由美のいない世界を否定したんだ。
    「奇跡…というやつかな?」
    「そうだね。わたしと竜二郎がお互いの世界を否定したから奇跡は起こったのかもね。自分の時間軸を捨てて、わたしは時間軸を渡り歩いて一番わたしの世界に近いこの時間軸に来たのよ」
    「だからGW前に数日休んでいたのか。」
    「うん、時間の流れは一定で不可逆だからね。多分わたしは四次元か五次元の道を歩いてきたの」
    「他の世界はどうだった?」
    「一言では言い表せないな…。極端な世界では人じゃなくて鼠みたいな生物が文化を築いている時間軸もあったし、竜二郎もわたしも存在しない時間軸もあったよ。あと、既に地球が滅んでしまった時間軸もあった…。」
     疲れたような顔で由美は見てきた世界を語った。きっと必死に探したんだろう、僕が生きている世界を。眠りもせず、探し続けたんだろう…。
    「この世界を見つけたときは嬉しかったよ。竜二郎が生きている。そしてわたしもかつて生きていた世界」
    「でも、由美の痕跡が消えていってるんだ。高瀬も千里も、みんな由美のことを忘れてしまっている」
     由美の顔に哀しみの色が走った。
    「うん、結局ね、やっぱり時間軸を超えてやってきても、わたしは他の時間軸では生きていけないんだ。だって、死んだ私が生きて存在するんだもの。それに、千里さん。わたしの世界では存在しない幼馴染みだったんだよ。限りなく似ていても、やっぱり矛盾だらけの世界だったんだよ」
     ここから先の言葉は聞きたくなかった。だが、聞くしかなかった。
    「これから、どうなる?」
    「竜二郎の決断に寄るのよ。」
    「つまり、僕は僕の世界に生きるか、由美と二人で時間軸の狭間で生きていく…か。というところか」
    「うん…」
    「由美が僕の世界に留まることは出来ないんだよな」
    「うん、矛盾がたくさん生じてしまうから、多分本当にわたしの存在がどの時間軸にも存在しなくなっちゃうと思う」
     僕の答えはほぼ決まっていた。だが、もう少し質問をすることにした。
    「僕がこの世界に残ることを選択すれば、由美はどうなる?」
    「竜二郎が死んだ世界に引き戻されると思う」
    「そっか…」
  • [20] mixiユーザー

    2008年10月26日 21:29

    (作 ウォーリアさん)

    しばしの沈黙。
    「どうする…?」
     天使の姿をした由美が、申し訳なさそうな顔で問いかける。
    「由美」
    「うん?」
    「GWから夏休みまで、楽しかったか?」
    「うん。だって、一度は失った好きな人と同じ世界で生きていけたんだもの。とても、幸せだったよ」
     そう言って由美は微笑んだ。
    「僕も、同じだ。幸せな日々だったよ」
     僕も微笑み返す。そして由美の手を取りこちらに引き寄せた。
    「由美、あるべき時間軸に戻ろう。そして、お互い好きな人を失った悲しみを、ちゃんと受け入れよう」
    「…うん」
     由美の頬を涙が伝う。
    「ありがとうな、僕のために…必死に探してくれて…。」
     由美の涙を手で拭いながら僕は言葉を紡いでいた。
    「ありがとう、竜二郎。あなたもわたしを想ってくれていたから、奇跡は起きたんだよ」
     僕たちはしばしの間、潤んだ瞳で見つめ合った。

    「じゃあ、そろそろ行くね」
     由美の姿が薄れ出す。帰ってしまうのだ、僕の死んだ世界へ。そして僕を置いていくのだ、由美が死んだ世界に。
    「半分こだな」
    「え?」
    「由美は置いていく悲しみ。僕は置いて行かれる悲しみ。半分こ」
     もう涙は抑えきれなかった。溢れる涙を拭いもせず、僕は由美を見つめていた。
    「そうだね、半分こ。悲しみも半分こ」
    「そして僕は由美が生きている世界があることを知った。由美は僕が生きている世界を知った」
    「もう決して会うことは出来ないけれど、お互いが生きている世界を知っている」
    「だから僕たちは、僕たちの世界で歩き続けよう。お互いの生きている世界が存在するという事実を糧に」
     由美の姿が薄れていく。
    「うん、ありがとう竜二郎。…大好きだよ」
    「あぁ、僕もだ。小さな頃から、ずっと」
     薄れていく由美を抱きしめ、僕たちは最初で最後のキスをした。軽く唇が触れあうだけの、簡単なキス。
     世界がぼやける。由美が帰って行く。そして僕はここに残る。お互い笑顔で最後の言葉を交わした。

     さよならじゃない。

     『またね』

    ───────。

     そして僕は目を覚ました。たった一つの奇跡の証、5/4の写メを開いてみる。由美と僕。幸せそうな二人の写真。
     僕はもう大丈夫。この写真があれば、好きになった人と添い遂げることは出来ないけど、どこか遠くの世界で生きていることが感じられる。
     悲しみも半分こ。僕は祠を出て何故か木に登っている千里に声をかけた。
    「千里、行くぞ」
    「ん? どこへ?」
    「自分の道を歩くんだよ」
    「なんだそりゃ? ま、異火座へ寄って行けよ」
    「あぁ、そうするよ。」

     僕は、歩き出した。
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