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開催終了ボランドール劇団・第30回記念公演 〜一夜の夢・ストラディ そしてまた貴方は行くのね〜

詳細

2009年02月06日 18:56 更新



 窓を開け放つと、刺す様な冷たい空気が一斉に部屋に拡がった。
 凛とした空気に自然と背筋は伸び、私は朝の空気を目一杯吸い込んだ。
 いつもより早く目覚めた朝。窓の外では早起きスズメが愛らしく鳴いている。


「さて、ゆっくり用意しますか。」


 私は弾む心に急かされる様にいそいそと準備を始める・・・

 と、突然風が勢い良く吹き込む。私は急いで窓を閉めた。目を落とすと床に何かが落ちている。
 それは一葉の写真だった。突如、私の脳裏に鮮やかに甦るあの日の記憶・・・。


 そう、これは私とストラディの出会いの物語り。


    ◆◇◆◇◆◇◆◇


 その頃、私はシャンゼリゼ通りで歌い日銭を稼いでいた。
 稼いでいたとはいっても世は不況のさなか・・。簡単には稼げず、毎日、毎日、砂埃の舞う雑踏の中、物売りの喧噪をかき分け、酔っぱらいの相手をしながら歌っていた。

 それでも私はいつか『皆の魂を揺さぶる歌』を歌えると信じ、灼熱の太陽が照る日も、雨の降る日も雪の降りしきる夜も街角で歌う日々を送っていた。

 そんな日々の中、それは晴れた麗らかな日に起こった。

 この日も私は街角に立って歌っていた。晴天にも恵まれ、通りには人が溢れている。

 私は、声にありったけの魂を乗せて歌っていた。あっという間に人だかりができ、沢山の拍手が降り注ぐ。
 あぁ私はこの為に唄っているのだ!!満ち足りた幸せな気持ちの中に私はいた。

 あの一言を聞くまでは・・・。


「君は・・・まぁ歌はうまい・・・ただ・・・俺の四弦を歌わせるまでには及ばないな・・・ヒック・・・」


 酔った男は、若いくせにやたら貫禄のある口調で、見透かしたような眼でギロリと睨みながら言った。


「なんだって?」


 私は自惚れを見透かされた気になり、語気には今にも消え入りそうな気持ちが顕れていた。私はそんな気持ちを打ち消すように叫んだ!


「どうゆう事だ!?この酔っぱらい!」


 男は私の質問には答えず、千鳥足で売り子にちょっかいを出しながら人ごみの中に消えていった。

 その後、すぐに追いかけたが結局見つけられなかった。私の頭からは、それ以来男の一言が焼きついて離れないでいる。

 何をしていても、歌っている時でさえも・・・。


     ◇◆◇◆◇◆◇◆


 それから、数日もせず意想外に、あの男の素性は知れた。偶然そこに居合わせた一人がその男のことを知っていたのだ。
 彼曰く、その男は小さい頃から神童と呼ばれ、名声を欲しいままにしていたヴァイオリニストらしい。名はストラディ。
 いつしか彼の名を聞く事は少なくなったようだ・・・。


「結構才能あるヴァイオリニストだったんだけどなぁ。なんかまともな歌を歌う奴がいない!なんつって弾くのを辞めちまったとか聞いたぜ。」


 それで昼間から飲んだくれてたのか・・・。

 私は、居ても立ってもいられず、即座に彼の行きつけだという酒場へ足を運んだが、酒場に行っても彼に会うことは出来なかった。
 それから私はその酒場に通いつめる事となった。

 そして、それはある雨の晩のこと・・・。

 私は諦めかけ少しヤケになっていてその日は少々飲み過ぎていた。
 カウンターに突っ伏しながらワイルドターキーを煽った瞬間・・・ 勢い良く店の扉が開いた。


「コオニじゃ・・コオニがおる・・・パズーによく似たコオニじゃなぁ・・・
君かい?俺に会いたいって変わり者は?」


 とりあえず私はパズーではない。
 ではないがともかく、彼には会えた。

 改めて聞いた彼のその声は、一種の威厳があった。
 抑揚のとれた端正な良く通る声。
 語尾には感情の豊かさを感じさせる淡いビブラート。

 その瞬間、私が何故彼をこんなにも探したのか、その答えが分かった。まだ聞かぬはずの彼の音色に、私は惚れたのだ。
 音楽とは不思議なもので弾き手の技量とは関係なく、人と人との感性が響きあう。

 私は、彼に「一緒にやりたい」と申し出た。

 が、彼は首を縦には振らなかった・・・。


「以前言っただろ、君の歌はとても光るものがある。ただ、曲がそれに負けちまってる。
どうだ?一曲他人の歌じゃなく自分の歌で勝負してみてはどうだい?俺を唸らせる曲を持ってきたらやってやらないでもないぜ?」


「わかった・・・臨むところだ。」


 私はそれから憑かれたように作曲に没頭した。

 瞬間的に浮かぶメロディ、そのしっぽを掴みとり天秤にかけてゆく。頭に浮かんでは消える、そのいくつものメロディを心の琴線に弾かせ、彼を唸らせる究極の楽曲を探し出す。

 それから一月近くだろうか、飲まず食わずで私の技量、魂、あらゆる感情を込めた渾身の楽曲、『人生哀歌』がついに完成した。

 すぐさま私は彼の元へと向かった。
 そして、彼の前で、私は持てる全ての力で歌い上げた・・・。手応えは十二分にあった。

 後は、彼の言葉を待つだけだ・・・。


「セイジの時はラーメンじゃったな。
雫さん・・・、貴方の『原石』見せて貰いましたよ。」


 とりあえず私は雫ではない。
 ではないが、とにかく、それから私と彼は同じ道を歩む事になった。


「早速その曲をお披露目に行こう!」


 彼は、子供の様にはしゃぎ、私達が初めて出会った街角まで一気に駆けていった。
 こうして、初めての舞台の幕は開いた。


 私が歌いだすと、彼は流麗な旋律をそれに乗せる。たちまち歌声は、色を帯び光を放ちだす。
 私と彼の感性が互いに刺激しあい、歌が命ある物語のように進んでいく。
 街行く人が、歌に魅せられていくのが手に取る様に伝わってくる。これこそが音楽の本当の素晴らしさだ!!
 泣き、笑い、驚き、希望、絶望。それは、一つの劇の様に様々な表情を見せ、曲は終わった・・・。

 私は終わっても未だ、昂ぶったままだった。心が震えていた。私達は、いつの間にか大きな拍手に包まれてる事に気付かなかった。

 鳴り止まない拍手、雨あられ。
 我に戻り、私達は最高の笑みで観客に応えた。


    ◇◆◇◆◇◆◇◆


「二人とも子供みたいな笑顔だな。」


 私は写真をそっと元の場所に戻す。その仕草だけでそれをとても大切にしているのが分かる。
 その出会いは、それ程に大切なものだったんだろう。

 私は、沸々と沸き起こる胸の高鳴りを隠せなくなっていた。
 これまで人生は平坂なものではなかったけれど、そのたびに私はかけがえのないものを得てきたように思う。
 今日、この一日がいつも今までの集大成だ。
 それの正否は終わってみないと分からないけど、胸に誇れるものが、なにか一つあればそれはそれで良いのではないか。

 そして私は今日、それを迎える。

 
「さて、今日も頑張らなくては」


 今日は彼の復活祭。
 私は高鳴る鼓動を胸に今日も、今日だけの舞台に向かう。


「今宵は貴方達に忘れられない夜を御魅せしましょう!!」





 作・演出
   ボランドール劇団(HP:http://1st.geocities.jp/bolandoll/)



    ◇◆◇◆◇◆◇◆



2009年2月12日(木)

  ボランドール劇団・第30回記念公演
    〜一夜の夢・ストラディ そしてまた貴方は行くのね〜
                 ゲスト 高嶋英輔(style-3!)

  @横浜7th AVENUE
     http://www2.big.or.jp/~7th/contents.html

  チケット:当日2,000円 予約1,800円、1ドリンク別途。
  我々は3番目20:10〜の出演でございます。

  皆様のお越しを心よりお待ちしてます。

コメント(4)

  • [1] mixiユーザー

    2009年02月06日 19:16

    是非お邪魔させて頂きたいと思います〜。


    素敵な思い出ですねぇ〜(笑)ボランドール劇団の公演は2度目の参加ですが、宜しくお願いします〜。
  • [2] mixiユーザー

    2009年02月12日 00:39

    style-3!コミュのみなさん、えーすけさんが参加される「ボランドール劇団第30回記念公演」の日がやってまいりました!

    本日はライブハウスへの予約などはしなくても、「ボランドール劇団を見にきた」と言って頂ければ予約料金で入れます。お仕事帰りにでも時間が合えばふらっと立ち寄っていただければOK!みなさんのおこしをお待ちしております!!
  • [3] mixiユーザー

    2009年02月12日 03:01

    今回ばかりは無理をしてでも行きますよぴかぴか(新しい)

    いよいよ今宵楽しみですハート
  • [4] mixiユーザー

    2009年02月12日 22:21

    今日はたくさんのお客さんにご来場いただきまして、公演も大盛況のうちに幕を下ろしました。

    お越し下さったみなさま、本当にありがとうございました。また次回公演もステキなステージになりそうですので、ぜひぜひお越しください!!
mixiユーザー
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  • 2009年02月12日 (木) 20時10分
  • 神奈川県 横浜7th AVENUE
  • 2009年02月12日 (木) 締切
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参加者
3人