岡本正史の新作”I will forget”は、カラフルな表紙の絵本のような装丁の写真集で構成されるインスタレーションです。それぞれの写真集は、作家自身が滞在した世界各地のスナップによって構成され、滞在地ごとにまとめられています。何気ない旅先でのスナップ。それらは、その地での作者の経験を、気負うことなく淡々とつぶやきます。丁寧な装丁を施されたそうしたイメージ群は、旅を慈しむセンチメンタルな感情や、その地での経験を懐かしむ一種のノスタルジーを感じさせます。けれども、そうであるにはまりにもカラフルで、子供向けの絵本のように過度に純粋を装ったデザインは、静かに疑念を浮上させます。岡本は、そうしたセンチメンタリズムやノスタルジーを、子供じみたものとして突き放そうとしているのかもしれません。幼子をあやすような岡本の手つきは、やがて見るものに微かな苛立ちさえ覚えさせることになります。