キーボード、ギターなどを操るマルチ・プレイヤー、プロデューサー/DJ。青年期にビートルズやスティービー・ワンダーを聴いていた大の音楽ファンの彼は、大学の頃に耳にしたデリック・メイやマッド・マイク等のデトロイト・テクノに触発され、95年にMemory Tree名義による“Memory Tree ep”でデビュー。90年代前期に英国で巻き起こったデトロイト・テクノ・リヴァイヴァルの影響を受けて登場した数多くアーティスト中でも、最も突出した才能を発揮。96年にFeroxレーベルから出世作、“Monkey Jazz ep”とアルバム“Desert Scores”をリリース。この頃は自他共に認めるマッド・マイクのフォロアー的作品が多く、URの「〜2〜」シリーズ直系のサウンドであった。そのアルバムの冒頭を飾った“Mad Mike Disease”は、完全にその信仰心あっての作品といえる。また97年の“My favorite key”は打ち込みで全く新しいファンク・グルーブを打ち出しており、ジャズを昇華したテクノを表現している。そして、名門レーベルPeacefrogへ移籍し、比類ない才能を発揮。フュージョン、ファンク、エレクトロ、アンビエント等の要素を取り入れることでフォロアーの域だけに留まらない活躍をみせた。特に最重要作品とされる“Eden ep”は、ローズを絡ませたトライバル・ビートに、ギター、フルートなどの生楽器も多用したコズミック・ジャズ“Yemura”や、ハーモニックなシンセのアンビエント“Eden”等を収録し、70'sジャズと現代テクノの融合「ハイ・テック・ジャズ」が表現された傑作である。盟友チャールズ・ウェブスターのリミックス・アルバム“Remixed on the 24tth of July”への参加も注目を浴びた。そして、2008年8月には、Octave-LabレーベルのミックスCDシリーズ“Mi Mix”をリリースし好評を博している。現在のクラブ・シーンで、“本物志向”のクリエーターは、悲しくも多いとは言い難い。そんな中、彼のように個性を尊重し、心に残る作品を世に送り出せる人物は貴重な存在だ。テクノの領域を超え、孤高の宇宙観を湛えた唯一無二の「IAN O'BRIENワールド」を彼は確立したといえよう。