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2006年11月14日 15:19 更新

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コメント(6)

  • [1] mixiユーザー

    2006年11月14日 20:22

    ゾクゾクゾクと薄の穂ゆれる。満月。夜はトロリと油を流したように暗い。空を二つに分けて白い細い雲が横切っていた。ぽつりぽつりと彼女は語る。薄の穂はザラザラ揺れる。満月が白々と白い。風が渡っていくのが見える。遠くまで草原、空気は固く冷えて僕を凍えさせる。遠くの街の灯りがふんわりと空に光をまき散らしている。ざわざわという草鳴りと彼女のぼそぼそという声以外聞こえない。「父を殺しました」軽い声澄んだ声、内容を頭に入れる前に声の甘さだけを僕は噛みしめる。殺されたと聞いてもなにが出来るわけがない。僕は無力で駄目な人間だから、彼女の強い視線に負けて目を逸らす。「良いんです、あなたがなにも出来ないことは知っています」凛とした声で言う。「車の中に死体があります。冷凍マグロのように父は固く冷たくなっています」彼女は一歩僕に近寄ってくる。「あなたは駄目な人です。なにも出来ない人です。でも、私がここで死んでいくのを見ることが出来ます。私の事をずっと覚えていてくれる事が出来ます」なにかに憑かれたような目、ガラス玉みたいな目。手にはナイフではない、包丁。台所に在るような不器用で無骨な包丁。「すぐに忘れてやります。一生覚えていろと言うのは無理です」彼女は眉をひくりと動かす。「日々の生活に追われましょう。すぐ僕はあなたの事を忘れましょう。ゲームをしても、アニメを見ても、音楽を聴いても忘れましょう。創作をして変形させて昇華させ、あなたの存在を痕跡も無く忘れましょう」彼女は包丁を下ろす。しみじみと僕を見る。「本当に駄目な人ね」「死んでも良いですよ、僕は痛く在りませんし、悲しくもありません」「あんなに愛し合ったと言うのに」「僕が快楽を貪っただけの話です。あなたと出会ったというのはあなたの錯覚です。あなたが思っているよりも、ずっとずっと僕の駄目さは深いのです」けろけろと彼女は笑い出した。「ではあなたと一緒に死出の旅をするというのはどうでしょう?」「それも意味のない話です。冥界があるのかどうかも解りませんし、僕は移り気で落ち着きがないのです。ずっとあなたと一緒にいく自信はありません」彼女の目が曇る。傷ついたような表情を浮かべる。空には満月が輝く。風が川から重油の匂いを運んでくる。彼女は包丁を真っ直ぐに上にふりあげて、喉を掻き切る。僕はそれをずっと見ている。遠く犬が吠える。犬がやって来たら怖いなと僕は思って、約束通り彼女の事を忘れた。
  • [2] mixiユーザー

    2006年11月15日 00:00

     天は地に沈み世界には暗黒くんがやってまいりました。暗黒くんには時速300Mくらいの力でニッポニアニッポンを押せる力があったので世界は瞬く間に闇っぽくなりました。ぽいだけですから意外に住みにくくは無く、相手の姿を確認する時に多少苦労するくらいで懐中電灯が必須なのでした。でも必須なのは懐中電灯だけでした。だからまあ暗黒くんを殺すほどではない。とみんな考えていたのですが実は問題はそれほど簡単ではなく、暗黒くんがくん付けで呼ばれている理由を悟った一人の霊能力者が「あれはハンドパワーだ!」などと叫びながら火山の中へ飛び込むという一世一代のパフォーマンスを繰り広げましたが誰も見てはいなかったのでした。憤怒に駆られた霊能力者はマグマにダイブする直前にその持てる力を遺憾なく発揮して霊的なビームを手から発射しました。これもハンドパワーだ! 目には目を! 何てことを考えたかどうかは私には分かりませんが、とにかくそのビームはひゅおんと捻じ曲がりながら飛んで行き、最後のニッポニアニッポンを串刺しにしました。何とニッポニアニッポンは伏線だったのです! ニッポニアニッポンのいなくなった地球上では暗黒くんもなすすべなく、仕方なしに世界は氷河期へと突入しました。これはもうどうしようもない。何をしようとも関係ない。実は暗黒くんが女神にも等しい存在だと知った私たちは帰っておいでーなどと口々に叫びましたが暗黒くんはまだ帰っていなかったのでどうすることも出来ませんでした。怒ったのは私たちです。非常に自分勝手ではありますが、確かに私たちは怒ったのです。怒っただけですが。そのとき火山が噴火しました。霊能力者の魂はそれなりに重かったのです。だだだだだと機関銃のように繰り出されるマグマや焼けた石に飲み込まれて私たちの殆どが死んでしまいました。運良く私は生きていませんでした。だって仲間はずれはいやですからね。私たちのタマシイは地中深くへ潜り潜り潜りそしてついには裏っ側に突入しました。そこは全てが反転する世界。暗黒くんは明白くんになって明白な事実を吐露しています。私たちはそこを桃源郷とすることに決め、様々なプールを造って何時までも何時までも遊んでいるのでした。マル。
  • [3] mixiユーザー

    2006年11月15日 00:31

     雨が降っていた。細かくはない、けれど、強くもない雨。中途半端だと思った。それは、まるでボクのようで。だから、傘も差さずに歩く。それでも、服も、髪もそれほど濡れることはない。いくら書いても、いくら殴りつけても、まったく誰の心にも届かないようなボクの文章と同じ。そう、同じ。いったい、どうすれば人の心に届くのか? その問いに答えるには? 誰が答えてくれる? 文豪たちの名作を読んでも、答えは得られない。ドイツ女を捨てて帰ってきたからと言って、そこに何があるのか? 石炭をばはや積み果てつ? だからどうした? これが名文ならば、三歳児が書く文章の方がよっぽどましだ。いや、違う。冷静になって考えてみろ。思考するんだ。冷静沈着に。騙されるな。雨で、気分が嫌になっているだけだ。漢文調のリズムもある、良い文章じゃないか? はっ! だからどうした。だからどうした? 鴎外の文章が素晴らしいことはわかった。だから、どうした? 彼の文章がボクの心に届いているのか? 違う。きっと、まともな人間であれば、彼の文章が描く、時代に、世間というものに流されるしかない、一個人の悲しみが、切ない別れが理解できて、胸を打ち、涙を流すのに違いない。ならば、ボクは? なぜ、彼の文章を理解できない? 頭が悪いのか? それとも、彼の文章とボクの心のインターフェースが違うのか? ああ、先ほどから疑問符ばかりだよ。まさに謎ばかりだ。だから、考えろ。考えるんだ。どうすれば、文章が書けるのか? そもそも、ボクは文章が書きたいのか? 答えはイエス。だから、こうしてキーボードに指を這わせている。これが、文章を書くという以外のなんという行為であろうか? 書きたくないのならば、とっととノートを閉じて、Macをスリープさせてしまえばいい。テキストエディタなんて、killしてしまえばいい。なのに、こうしてだらだらと書いている。それは、ボク自身が文字を書くことを望んでいるからに他ならない。ああ、ボクは何を書きたいのだろうか? 美しい物語? 読めば、誰もが涙する、美しい物語? 雄大な舞台、繊細な心情、スリリングな展開、目を見張る名文。そんなのは他の誰かが書くことだ。ボクが書くことじゃない。ボクが書くのは、ただただ汚辱にまみれた文章。ボクは、いつか見た/まだ見ぬ金髪の少女のために、それを書くのだ。──自意識過剰だ。誰だ。誰なんだ、ボクにとってのエズミは。大体が、文章に、小説に、何かがあるなんてまだ信じているのか? そうさ、信じている。音楽。ボクにとって、音楽と同じくらいに大切なもの。いや、もはや手に届かないものとなりつつある音楽よりも、まだ、何とか、かろうじてボクの手の中にある小説。それだけが、ボクを救うもの。助けて欲しいのか。救いが欲しいのか。ならば与えん。文字を。言葉を、文章を。そして、小説を。まだ雨は降っているのか? 並べろ、言葉を。それを、輝かせろ、辞書の中よりも輝いて、隣の小説よりも、美しく。──違う。こういうことを言いたくて、文章を書いているんじゃない。生きる。それがボクにとっては書くと言うことなのかもしれないから。もっと単純なんだ。答えは、美しい答えは、いつでも単純。純粋。始まりは静かに。徐々に盛り上がる中盤。狂ったようなソロ。アウトロは、いつまでも余韻を。雨音が聞こえる。耳を打つ。痛い。耳が痛い。音が痛いのか。アスファルトが濡れていく。しっとりと、濡れた地面。泣いている、なんて言いたくはない。これは、ボクだけのために降る雨なのだろう。一点の曇りもない、きれいな雨。打て。雨打て。電車が駆ける。轟音とともに、踏切が揺れる。揺れているのはボクの視界か。聴覚は意味をなさず。飛ばされる意識。体言が脳裏に浮かぶ。これを書き留める。それが、ボクから浮かぶほんとうの言葉。真実だ。小説にはならないかもしれない。ましてや、詩歌など! 季語も韻律も、何もかもを無視した言葉の羅列。意味? そんなものはこの自動的な言葉の流れの前には必要ない。ボクの頭から流れる言葉には、ひとつの流れがあるのだから。全く別の言葉が、次々と連なり続ける。細い糸が、綾なす。文章は、ひとつの織物。──意味のない比喩だな。しかも陳腐だ。空が泣いているような雨、ボクの心の闇のような夜。陳腐だ。怖いのは、言葉が止まること。この頭から言葉が出なくなるのが怖い。いつか、そんな日が来るんじゃないのか? ストーリーが出なくなるのは怖くはない。しかし、言葉が出なくなるのには、恐怖を覚えるのだ。だから、続ける。止まらないように、停滞しないように。そう、停滞。動き出すためには、何をすればいいのか? ああ、言葉が止まろうとしている。止まるな止まるな止まるな。無意味でも良いから続けろ。意味を持って書くのではない、書いたものに意味を付けるんだ。裏読みなどは、好きなやつにやらせておけばいい。そいつらとボクは違う。ボクは、言葉の裏まで読めない。単純に、言葉を綴るだけだ。意味の表面すらなぞらない。出てくる言葉に意味などないのだから。言葉が出てくることにこそ、意味があるのだ。だから、書き留める。「雨、まだ降っている」「だから、今日は月が見えない」。──いつもは月も見ないくせに。この街でも、オリオンが見えることに気が付いているか? 冬の空に輝く星座たち。空に上げられた英雄。ボクは、地面に這い蹲って、キーボードに蹲り、液晶に目を近づけて、ただただ文字を綴るのみ。──雨は、まだ降っている。
    "Rain Rain Rain" is over.
  • [4] mixiユーザー

    2006年11月16日 00:40

    オレンジ色の光がゴツゴツと山並みをえぐっていた。太陽がもうすぐ山の端に隠れようとしていた。カラスが頭の上を飛んでいる。夏。歩いていた。ザックを担ぎ、登山靴。暑い暑い。もうすぐ麓につく。下山をしている。そう高い山じゃない。里山だ。小学生が遠足に行くような山。でも、山は山だ。空気は綺麗で気持ちが良かった。これから下山して電車に乗って街にもどるんだ。ふと目を落とす。赤く動く物。赤い鞠。ころころと薮の中から転げ出してきた。赤い着物。おかっぱ頭。女の子。びっくりしたような目で僕を見る。下山中だけどまだ山の中だ。ここらに離れた家があるのかな。ときどきびっくりするほど高い場所に人家があったりする。赤い赤い浴衣。僕は立ちすくんでじっと女の子を見る。女の子もじっと僕の方を見る。見つめ合い、変な空気がながれる。「君は、ここらへんの子かい?」あたりはだんだん暗くなる。太陽は山に半分噛み砕かれて僕と女の子のいる森はひっそりと暗くなり始めていた。逢魔が時。って言うんだよな。と不意に思い出す。それではこの子は狐かね? 今時珍しい鞠を持っていた。カラーボールなどではない、和風の鞠。「街からきたのか」「うん、歩きに来た」女の子は頷く。「なんとまあ、街では変な格好が流行っているのだな。兵隊さんみたいだぞ」兵隊さんねえ。山歩きの格好を見ればそう見えなくも無さそうだ。「僕は学生だ君は」女の子は答えない。鞠を抱くようにじっと僕を見る。「おまえ、似てるな……」「誰に」「待ってるんだ」「待ってる?」「ずっと」「誰を?」女の子は答えない。じっと下から僕を見る。柔らかそうな白い肌だった。真っ黒で光るような髪だった。「遊ぶか?」不意に女の子は言った。「今から? もう日が暮れるよ」「日が暮れてからの遊びだ」女の子は帯をずらし前を開く。白いお腹が暗い森に輝くようだ。僕は喉を鳴らす。鳴らす。この子は何だ? 笑みを浮かべて少女は僕を見る。「来い」そして薮の中に飛び込んでいった。僕は思わず追いかけて行く。体の中心が固くしこって熱を持ったようになっていた。追いかける。少女は着物をはだけ、走る。笑う。笑い声が風に溶ける。日は落ちる。夜の闇が駆け足でやってくる。森の中は暗い。少女の肌だけが白い。「来い、来い、来いっ」僕を呼ぶ、僕を呼ぶ。河に出た、渓谷に出た。岩の上に彼女は立ち大人のような目で僕を見る。「抱け」赤い浴衣が風に乗って飛び、沢に流れる。僕は女の子の肩を掴んだ。冷たくてすべすべした肌。下から女の子は嫌な感じの目で僕を見上げる。「名は?」「義郎」「そうか、私は志乃」慣れた感じで志乃は僕の体にからみつき、まさぐり、舐めあげていった。いつの間にか僕も全裸になり、岩の上で志乃の体を抱きすくめている。夜風が肌を刺し、志乃と接した皮膚だけが燃えるように熱い。ゆるゆると二人で溶け合う。椿油のような匂いがする。沢の水の音にまじり志乃のあえぎが甘い。「よう帰ってきた」「帰ってきた?」「汝は帰ってきた」「僕はこの山は初めてだ」「では、汝の兄か」「兄はいない」「父か」「父は」いる「どうでもよい、血を引いているなら同じ事。帰ってきたのだ」「いつ頃の事だい」「遥か昔だ」「おまえは……」ゆっくりと志乃の中で果てる。体液が吹き出した感触共に志乃の体が溶けるように消える。気がつくと一人。渓流の中州の岩で全裸で中腰だった。志乃の瞳孔のように丸い月が頭上で僕の尻を照らしていた。
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