初演以来もう数十回も演奏して来ました人気の『をとこ・をんな』ですが、東京では数年ぶりです。音楽之友社から出版（1989）もされています。この機会に二十世紀のスタンダードを聴いてみて下さい。

『をとこをんな』
　吉原幸子の詩に新実徳英氏が作曲した女声合唱、三味線、コントラバスのための『をとこ・をんな』。1988年「彩の会」（現在は『彩』『九月の風』の二つの合唱団に別れて活動）と指揮者・栗山文昭氏により委嘱、初演されてから、再演回数数知れず、場所もイタリアにまで及んでいる。
　曲は静寂の中から、cbの高いHのハーモニックスで始まる。それが一瞬ふわっと膨らんで消えると、その陰から同じ音でヴォカリーズが聞こえる。その音は透明で、真直ぐ伸びて行くが、耐えきれずに少し滲み、揺れ、やがて落ち着く。今度はコントラバスが、その声に絡み付き、ゆさぶり、叫び声をあげてクライマックスを作る。しあししれは、いきなり強い三味線の音で断ち切られ、間髪を入れず合唱、「きっつあん！」「きっつあん、ひさしぶりだねーえ」・・・吉蔵と、定（さだ）の、世にも切ない物語が始まる。
（拙著『こんとらばすのとらの巻き』より）

2007、3/5（Mon）19：00 紀尾井ホール
田中信昭指揮、東京混声合唱団
三味線／野澤徹也、コントラバス／KEIZO
予約問い合わせ／東京コンサーツ　03-3226-9755
URL:http://www.tokyo-concerts.co.jp