mixiユーザー(id:3700229)

2015年05月10日16:32

546 view

「私の少女」

女性の監督ならではの繊細さと強さ。静かな映画なのに、韓国社会の深い闇を抉り出し、弱者を鼓舞しようとする強い意志が鮮烈に感じられる。さすが、あのイ・チャンドンがプロデュースするだけのことはあります。アート系韓国 映画が好きな方はお見逃しなく。

主人公(ペ・ドゥナ)は海辺の村に赴任してきた警察官。左遷とはいえ本庁のエリートだから、いきなり署長。訳あって心を閉ざしている彼女は、その村で、父親や祖母や学校の同級生からボコボコに殴られている一人の少女に出会う。

この少女を演じるのが、『冬の小鳥』『アジョシ』の名子役キム・セロン。
本作の彼女はただ健気で可哀想な子どもじゃない。幼い頃からずっと暴力にさらされて育ったがゆえに、暴力への耐性がつきすぎて、マトモじゃないところがある。

初めのうちは少女の無邪気さに救われていた署長も、だんだんそれに気づいて、距離を取ろうとするのだが、少女にとって彼女は地獄に垂らされた蜘蛛の糸なのだから、必死でしがみつく。そして、都会から来たお堅い女性署長を煙たがる村で、気がつけば署長は絶対絶命の窮地に・・・。

韓国の女性蔑視と暴力容認体質を抉り出す映画には「ビー・デビル」という隠れた名作があるが、本作もじつにジワジワとイヤ〜な感じが迫ってくる。

そのイヤ〜な状況の中で、弱さを武器に闘う小さな怪物を演じるキム・セロンちゃんの圧巻の演技。彼女に出演を断られた後、500人の子役をオーディションして再びオファーした監督の粘り腰に敬服だ。

感情の起伏を面に出さない主人公を演じるペ・ドゥナの入魂の演技もすばらしい。
恋人にすら心を開かなかった孤高の主人公が、少女をまるごと受け入れるラストでは、原題の”A Girl at My Door”が心に染み入る。

『ビー・デビル』
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1698369168&owner_id=3700229

A Girl at My Door
2014年/韓国/119分
監督・脚本:チョン・ジュリ
撮影:キム・ヒョンソク

ユーロスペース

0 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する