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2007年02月05日18:40

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映画【世界最速のインディアン】考

先週の土曜日に、久しぶりにナイト上映で観た映画が、忘れら
れません。

【世界最速のインディアン】は、バート・マンローという人物
の老年の半生を綴った物語です。
そのあらすじは、ニュージーランドの片田舎に住むバイク好き
の爺さんが、自慢のバイク【インディアン】で、カッ飛びバイ
ク世界一を目指し、アメリカが誇るスピードの聖地【ボンネビ
ル塩湖】まではるばる旅をする、というロードムービーです。


さて、作品を観て、私が感じたことを表現する上で、劇中の、
詳細な描写に触れねばなりません。
ネタバレを嫌う方は、この先を読まないで下さい。


※ この先に、映画【世界最速のインディアン】のネタバレ記
  事が含まれます。
  ご注意いただくと共に、ネタバレを嫌うお方は、この先を
  読み進まないよう、お願いいたします。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



1_バイク野郎必見作品

【世界最速のインディアン】。
このフレーズを一般の方々が耳にすると、アメリカ先住民は、
そんなに足が速かったのか!! みたいな誤解を生じかねない
タイトルですね。

私は、根っからのバイク野郎の為か、予告編の出だしで真っ白
な地面を見て【ボンネビル】を直感し、スピードアタックを連
想し、タイトルを見て【なんでインディアンでだよ!!】とス
クリーンに突っ込みを入れてしまいました。

インディアンとは、今は亡き、いにしえのバイクメーカーで、
その昔は、ハーレーと並んでアメリカンバイクの代表格だった
オートバイの事です。

早い話、インディアンは、どちらかというと人生の友みたいな
匂いのバイクであり、ハーレー以上に自由と開放の象徴として
のスタンスを感じます。
歴史的には、マン島レースを制した名車と言われながらも、そ
れは、すでに第一次世界大戦以前のお話です。


てか、ぶっちゃけ、そんなに性能良くないし、古いし、振動多
いし、「なんでそれで、ボンネビルだよ!!」「正気っ!?」
というのが、バイク野郎の普通の感想でした(過去形)。


しかし、モノを知らないとは、まさにこういうことで、今を去
ること40年程前に、その、【ボンネビル】で世界最速記録を
叩き出したのは、この【インディアン】であり、その記録は、
未だに破られていないのでありました。



2_チョイ悪なんてメじゃないゼ

さて、劇中の主人公バート・マンローを演ずるは、名優・怪優
アンソニー・ホプキンス御大。
「羊たちの沈黙」のレクター博士のイメージがあまりに強すぎ
るためか、【ブチ切れバイク爺】的な先入観が生じてしまった
のですが、ご心配なく。

自宅兼ガレージというか、ガレージそのものに住みつき、寝て
も冷めてもバイクいじりに精を出して、庭の雑草は伸び放題、
自作のピストンを焼きいれした水でお茶を沸かし、ご近所から
の苦情に応じて、庭の雑草をガソリンで焼き払うこと以外は、
極めて普通の【いいお爺ちゃん】でした。

年金を切り詰めて改造しまくったバイクは、若い頃に手に入れ
て以来、40年のお付き合いという代物で、クラシックを通り
越してビンテージの域です。

そんな名物爺さん、一歩間違うとどこぞの「騒音お●さん」の
様に迷惑至極の存在ですが、このお爺さんは、朝の6時過ぎか
ら、エンジンを吹かすにも関わらず、ちゃんと地域になじんで
います。

そんなお爺ちゃん、年金事務所の受付嬢(?)をナンパして、
自分の誕生日パーティに招いちゃうわ、そのパーティーでは、
血気盛んな暴走ヤングから果たし状をもらってしまい、浜辺で
賭けレースをしちゃうわ…。
もう、白髪の間からアドレナリンが噴出しているのではないか
と思えるほど、魂は若くてエネルギッシュです。

結局、その受付嬢(?)とは一夜を共にし、暴走ヤングからは
餞別をもらい、一路、アメリカを目指します。

アメリカでも、持ち前のポジティブキャラクターで、モーテル
の受付嬢(?!)とも仲良くなり、バイク輸送用に値切り倒し
た中古車の販売店で、法外に値切った見返りに店中の車のエン
ジンをメンテナンスして蘇らせ、旅の途中で出会った農場の未
亡人(年齢相応)と一夜を共にし…、と、なんか、この展開は
【俺の空】みたいではないですか。


モテモテですよ、お爺さん。スゴスギます。



3_バイク野郎以外の方もどうぞ

全編を通して、ホンワカした雰囲気の中で物語が進み、道中、
お爺ちゃんが、色々な人々に出会うエピソードが織り込まれま
すが、それぞれは、単体では非常に散文的です。

ボンネビルに到着してからも、誰からというわけでもなく、自
然に参加者の面々が、お爺ちゃんを取り囲んでしまい、いつの
間にか人の輪の中心になっていきます。

主人公の明るい性格と揺ぎ無い情熱に、周囲が巻き込まれてい
く様子や、全体を通して、旅行者や外国人に寛大であるという
のは、今ほどにギスギスはしていなかった古き善きアメリカへ
の憧憬ともいえます。

ただし、結局のところは、お爺ちゃんに相応の能力があったこ
とが、全ての根本といえます。

バイクをより速く走らせる為に、必要な部品は手造りします。
走りに関係ない部分は徹底して削ぎ落とし、オイル注入部の蓋
は、ブランデーボトルのコルク栓。
タイヤのトレッド面をナイフで削って、スリックタイヤまで自
作してしまう姿は、周囲から見ればキチ●イ沙汰でしょう。

しかし、必要は発明の母であり、無い物は造るというのが、進
歩の原型と考えると、このお爺ちゃんの場合は、単にその特異
な才能を開花させる環境が整うまでに、たまたま60年かかっ
てしまったというところなのでしょう。


それこそ、好きこそモノの上手なれであり、芸は身をたすくを
地でいくお爺ちゃんの波乱万丈の老年の輝ける1ページ。
爺ちゃん曰く、【心は、いつでも18歳】なのだそうです。

この作品、ちょと元気のない一般の皆様方、バイク野郎以外の
方々にも自信をもってオススメいたします。
ちなみにこのお話は、老年の輝ける数ページの内の1ページ目
とだけ申し上げておきましょう。


バート・マンロー。
まさに伝説のバイクじじい(誉め言葉)なのでございます。


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