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2017年10月11日14:23

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考えるより先に体が動いて 地下鉄駅ホーム転落救助

30秒間で成し遂げられた「奇跡」 ─産経ニュース / 2017年10月11日 11時2分 http://www.sankei.com/west/news/171011/wst1710110003-n1.html


 地下鉄が到着する寸前、アクション映画さながらのギリギリの救出活動は複数の乗客の勇気ある行動により、30秒間で成し遂げられた。今夏の夕方、視覚障害のある高齢男性が誤って駅のホーム下に転落した際の一瞬の出来事だ。京都市の男性会社員は騒ぎを目にするや、すぐさまホーム下に飛び降り、男性を抱え上げ、他の乗客とともに男性を救出した。一歩間違えば自らも危険な状況。「助けよう、という気持ちで下りたというよりも、体が勝手に動いた」と振り返る。奇跡ともいえる電光石火の救出劇が成功したウラに何があったのか。

2分前に出発した電車が迫る中…

 8月3日午後5時半ごろ。京都市の会社員、伊藤優太さん(29)は、友人と大阪府内で開催されるライブに行くため、京都市営地下鉄烏丸線の北大路駅(同市北区)に来た。目の前に人だかりがあり、駆け寄ってのぞき込むと、高齢男性がホーム下の下り線路に落ちていた。

 「危ない」

 考えるより先に体が動いて、約1・3メートル下の線路に飛び降りていた。

 転落したのは、同市右京区の視覚障害者の男性(70)。市営地下鉄の時刻表によると、転落した時間ごろに下りにやってくる電車は、直前の北山駅を午後5時28分に出発した国際会館発新田辺行き普通電車(6両)。北大路駅には午後5時半に到着する予定で、まさに寸前だった。

 「男性が電車にひかれるイメージが頭に浮かんで、それは嫌だと思って飛び降りた」と伊藤さん。とっさの行動だったが、無謀なチャレンジでもなかった。

 「次に到着する電車のライトが見えなかったのでいけると思ったし、最悪ホームに上がれなくても、ホーム下のスペースに隠れれば助かると思っていた」

友人が待ち合わせに遅れ「運命的」

 伊藤さんが線路に下りると、男性は青ざめた様子だった。すぐに抱え上げると、ホーム上にいた複数の乗客とともに助け出した。この間、約30秒。駅の防犯カメラ映像を確認した京都府警北署幹部も「1人飛び降りて救助する姿に感動した」と話す。

 会社員として高所でのビルのガラス清掃の仕事をこなす傍ら、京都・嵐山で人力車を引く車夫の仕事もしているという伊藤さん。ヨガも趣味だといい、体を使うことは得意で、「足のバネを使って男性を持ち上げられたし、自分も線路からホームにすぐ上れた」と振り返る。

 救出された男性は左腕や背中の打撲などで軽傷。伊藤さんの友人が「もう大丈夫ですよ」などと声をかけて男性をリラックスさせ、居合わせた看護師も介抱したりしたという。

 実はこの日、友人が待ち合わせに遅れてきたため、乗ろうと思っていた電車を1本遅らせていた。この偶然がなければ、もしかしたら−。伊藤さんは「運命的なものがあったのかもしれない」と話した。

 伊藤さんには後日、北署と市交通局、北消防署から感謝状が贈られた。

視覚障害者の転落事故、年間69件

 転落した男性は、この日は普段持ち歩いているつえではなく傘をつえ代わりにして歩いていたといい、北署に対し「方向感覚がなくなって落ちてしまった」と話した。

 京都市営地下鉄では、過去5年間で、視覚障害者がホームに転落する事故が3件発生。だが近年は、全国で視覚障害者の転落事故が相次いでいる。

 国土交通省によると、平成28年度の1年間に視覚障害者がホームから転落した事故は全国で69件。このうち3件では転落した人が死亡している。8月、東京メトロ銀座線青山一丁目駅(東京都港区)▽10月、近鉄大阪線河内国分駅(大阪府柏原市)▽今年1月、JR蕨駅(埼玉県蕨市)−での事故で、いずれの駅でも転落防止のホームドアは設置されていなかった。

 今月1日夜にも、ホームドアが設置されていないJR阪和線富木駅(大阪府高石市)ホームから転落した視覚障害者の男性が快速電車にはねられ死亡した。

 今回事故が起きた北大路駅も同様だ。京都市交通局によると、市営地下鉄は、東西線では全17駅で転落防止のホームドアが設置されているが、烏丸線では京都、四条、烏丸御池の3駅のみしかない。

 交通局の担当者は「1日あたりの利用者数が10万人以上の駅にホームドアを設置するよう勧める国土交通省の指針に沿って、ホームドアの設置を行っているため、客数が多い駅から設置している」とする。

 今回北大路駅で転落事故が発生したが、「駅員による声かけや見守りを徹底していく」(市交通局)とし、今のところ、全駅でホームドア設置を行う計画はない。

ホームドア整備目標、国は前倒し

 社会福祉法人「日本盲人会連合」(東京)が28年12月に行った調査では、回答した視覚障害者222人の30%超にあたる70人が、ホームからの転落経験があることが分かった。

 転落を防ぐため効果的だと思う対策を尋ねると、ホームドアの設置(206人)▽第三者の声かけの普及(170人)▽駅員の増員配置(161人)▽点字ブロックの敷設(148人)−の順になった。

 北大路駅で転落男性を救出した伊藤さんは、その後、駅でホームの端を歩く人が目につくようになったといい、「ホームドアはあった方が絶対安全だと思う」と話す。

 ホームドアのない駅は視覚障害者にとって「欄干のない橋」ともいわれる。国交省は今年、事故多発を受けて、ホームドアの設置が進んでいる駅の数について、全国686駅(28年末時点)から、平成32年度までに800駅とする整備目標について「できる限りの前倒しを図る」とした。
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