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2017年05月29日20:52

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▼ ◎ 物語を考えてみた ◎ (第1797回)

1話完結の新しい物語です
暇なときにでも、読んで頂けると幸いです
面白かったら「イイネ」等をして頂けるとありがたいです(^_^)

※素人が書いており、情景風景などを書かない主義ですので、合わないかもしれません
※雰囲気が伝われば面白いかなと思います

タイトル「今が過ぎれば…」

――

ここで目を覚めるのは何度目だろう…。

綺麗な小鳥のさえずりに目を開けると、私は見慣れた部屋にいた
廃れた寺のような雰囲気のこの部屋は、障子から漏れる弱い光が部屋を薄暗く照らし、不気味さをかもしだしている
多分、普通の人なら近づきはしないだろう

私は、この部屋で数年前からここで意識を起こしては眠るということを繰り返している

何故、私がここにいるのだろう。

そう思っても、ここから身体が動かせないので、やる事というのは僅かに開いた障子の隙間から時間の流れを眺める事だけしかできない
だから、毎回、起こされる度に小さなため息が出てしまうのだ

今日は、いつまで起きてるんだろう…。

そう思いながら障子の間から新緑の景色を見ていた時、部屋の端にある障子に人影が写った

なんだ?

よくそこを見ると、小柄な少女が開いた障子から身体を半分だけ隠しながら、顔を出してこっちを見いる

何か気になるのだろうか?

『どうしたの?』

私は少女に声を掛けてみた
しかし、彼女は全く反応してくれない
そりゃ、そうだ
私の声は彼女どころか人には聞こえない
それは私も分かってはいた
だが、久々に来た人に声を掛けずにはいられなかった

少女は部屋を見渡した後、ゆっくりと障子から身体を出して、床のギシギシという音に怯えながら部屋の中に入ってきた
顔を見ると、だいぶ怯えているように見える

少女はゆっくりと私の前まで歩くと、足元に何かを置いた

何だ…?

それを見ると、どこかで買ってきたような白いお饅頭
偶然にも私の大好きな食べ物だ

『ありがとう』

私は少女にそう言ったが、聞こえるわけない彼女は置いて、すぐに逃げるように走り出ていった

……

彼女はこの部屋が怖かったから逃げたのだろう
だが、あんな風に逃げられると、まるで私が嫌われてるみたいで、さすがに傷ついてしまう…

私は少しため息を吐き、外の景色を見た
外には、木に生えた青々と生い茂る若葉が風で少し揺れていた…

それから時間が経ち、いつの間にか目を閉じていた私は枯れ葉が擦れる音に目を開けた
すると、目の前には正座をしながら、私の方を見つめる中学生の制服を着た女の子がいた
一瞬、彼女は誰なんだろかと思ったが、すぐに分かった
多分、彼女はあの時に怯えていた少女だろう

理由は…
どこか雰囲気が似ていたのだ…

その子は私の方を長い時間、見つめた後、優しそうな表情で口を動かし始めた
きっと、何か大切な事を話しているのだろう
だが、私には彼女の声が聞こえず、何を言っているかは分からなかった
ただ、何となくだが、彼女は私にこう言ってた気がする
『安心してね』と…
何となくだ…
何となく…

その後、彼女は多くの事を喋り終えると、後ろ髪を引かれるようにこの部屋を出ていった

彼女がいなくなると、私は無性に寂しくなり、ぼんやりと外をを眺めた
外は枯れ葉が風に舞い、冷たい風が吹いている
どうやら、ここにも冬が近づいてるようだ…

その雪景色を想像した瞬間、ある疑問が浮かんだ

何故、私はここにいるのだろう…?

もちろん、その疑問は初めてここで目が覚めた時からあった
しかし、当時の私は、自分が何者かも分からなかったから、考えても無駄だと考えていたのだ

でも…
今はもう、それで片付けてはいけない
もし片付けてしまったら、私は大事な物を失う気がする

ところが、その答えを考えようとした瞬間、強烈な睡魔が私を襲う

『クソ…どうして…』

結局、私はその答えを考えることが出来ず、力が抜けるように目を閉じた…


それから、また時間が経った頃
木の枝に積もった雪が落ちる音に目を開けた
すると、誰かが部屋の障子を全て開けていたようで、庭に積もった綺麗な雪景色が目に飛び込んだ
それは、まるで枯山水のような美しさ

『うわぁ…』

思わず声が漏れた時、高校の服を着た女の子が雑巾とバケツを持って入ってきた
この部屋を掃除をするつもりらしい

彼女はバケツに入った水で雑巾を適度に濡らし、床掃除を始めた
女の子らしい細い腕で、右から左へと必死に雑巾掛けを行っている
とても大変そうだ

でも、どこか懐かしい…。

そう感じた瞬間、忘れていた記憶が解かれるように蘇る

遠い昔、私には小さい娘がいた
その娘は可愛くて愛らしくて、私の命よりも大切な宝物と言えるくらいの存在
しかし、ある日、突然、私は娘に触れられなくなった
それは、娘が居なくなったわけではない
私が娘の側から居なくなったからだ
娘が生まれた頃に、人間ドックを受けた病院の医者からガンを宣告されたのだ

しかも、すい臓ガン

その時の宣告は、全身の血液が引き潮のように引き、絶望という色が頭を塗り潰すような気持ちにさせた

私は毎日のように神に願った

お願いですから生きさせてください
それが無理なら、娘が大人になるまででいいから、と…
でも、その願いが叶うことはなく私は死んだ

この忘れていた記憶を思い出して目を開けると、桜の花びらが舞う庭を背景に、あの彼女がウェディングドレスを着て立っていた
その姿はとても涙が出るほど美しい

気がつくと私は涙は流れていた

そりゃそうだ
彼女は大切な私の娘なのだから…

娘は座ってお鈴を鳴らし、両手を合わせて拝みながら喋り始める

『お父さん…』

聴こえる…
その娘の声はしっかりと聴こえる

『今日はご報告があります』

うん…

『私、結婚しました』

良かったな…

『もしお父さんが生きていたら、きっと喜んでくれてるよね』

もちろんだ…

『どう、似合ってるかな?』

大丈夫、綺麗だよ…

『……』

どうした?

『やっぱり、直接、見てもらいたいなぁ』

ゴメンな…

『でも、見てくれてるよね』

当たり前じゃないか…

『ありがとう』

……

『じゃあ、そろそろ行くね。ドレスを返さなきゃいけないから』

そうか…

娘は立ち上がり、部屋から出ていく
多分、その姿が見えなくなれば、私はもうここで目を開けることはないだろう
もちろん寂しい気持ちもある
でも、十分だ
十分過ぎる…
だって、娘のウェディングドレス姿を見れるなんて、父親としてこれ以上の幸福だもの

私はそう思いながら、重くなっていくマブタをゆっくりと下ろす

幸せにな…


――
どうも僕です( ̄∀ ̄)

今回はこんな話です。
死んだ人が幽霊になって娘の成長をこんな視点から見送るとどうなるのかと思って、書いてみました
上手く書けたかな…?
親の愛と言うのはどんな時もあるもんだと言うことです
それも伝わればうれしいです(^_^)


こんな自分ですが、次回も読んで頂けたら幸いです(^_^)v

――


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