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2017年05月18日00:14

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魔法少女の系譜、その69

 今回の日記は、断続的に連載している『魔法少女の系譜』シリーズの一つです。前回までのシリーズを読んでいないと、話が通じません。

 前回までのシリーズを読んでいない方や、読んだけれど忘れてしまった方は、以下のシリーズ目録から、先にお読み下さい。

魔法少女の系譜、シリーズ目録(2014年01月22日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=25849368&id=1920320548

 前回のこのシリーズで、今回は、新しい作品を紹介すると書きました。
 けれども、予定を変更して、昭和五十年(一九七五年)のまとめの続きを書きます。書き忘れていたことがあったからです(^^;

 昭和五十年(一九七五年)は、おたく文化史上、決して忘れてはいけない出来事があった年です。
 この年の十二月二十一日に、最初のコミケが開かれました。コミケの創設年です。

 むろん、当時のコミケは、二〇一七年現在のように、何十万人もの人が集まる、大規模なイベントではありません。会場も、有明ビッグサイトではありません。当時、ビッグサイトなんて、まだできていませんでした。
 第一回のコミケは、東京の虎の門にある日本消防会館会議室で開催されました。参加者は、約七百名とされています。参加サークル数も、百に満たなかったと聞いています。

 創設当時のコミケでは、アニメ関連の同人誌より、漫画関連の同人誌が多かったそうです。この時代には、まだ、アニメの製作本数が少なくて、漫画のほうが、多くの人に馴染みがあったからですね。
 昭和五十年(一九七五年)には、まだ、アニメ雑誌すら、存在しません。現存最古のアニメ雑誌とされる『アニメージュ』が創刊されたのは、昭和五十三年(一九七八年)です。アニメの記事が多かった『月刊OUT』の創刊も、昭和五十二年(一九七七年)です。

 インターネットが存在せず、アニメ雑誌すらない当時、コミケの告知は、どのようになされたのでしょうね? 漫画雑誌と口コミでしょうか?
 このあたり、当時を知る方に、聞いてみたいところです。

 さらに、昭和五十年(一九七五年)は、『宇宙戦艦ヤマト』が放映された年でもあります。第一次アニメブームを作ったといわれる作品ですね。
 『宇宙戦艦ヤマト』は、昭和四十九年(一九七四年)から始まった本放送では、視聴率が伸びませんでした。昭和五十年(一九七五年)以降の再放送で、人気が出ました。

 『宇宙戦艦ヤマト』によるアニメの盛り上がりと、コミケの創設とは、決して無縁ではないでしょう。
 同じ年に、『ラ・セーヌの星』、『超少女明日香』、『紅い牙』、『エコエコアザラク』、『悪魔【デイモス】の花嫁』、『はるかなるレムリアより』が出たのも、無縁とは思えません。

 それまで、少しずつ貯められてきた漫画とアニメの力が、昭和五十年(一九七五年)に、一気に爆発した感じです。第一次おたく文化が開花した年と言えるのではないでしょうか。


 『魔法少女の系譜』シリーズ的に言えば、この年は、「超能力少女」という、「魔法少女」の亜種が、はっきりと意識された年と言えそうです。明日香とランとアムリタデヴィとが、登場した年だからです。ソネットが登場するのは、一九八〇年代になってからです。

 漫画の世界に、「超能力」が現われた嚆矢は、『超人ロック』でしょう。
 『超人ロック』は、題名のとおり、ロックという名の超人が活躍する作品です。ロックは、不老不死で、ほとんどできないことがありません。性別や年齢さえも変えて、変身することもできます。最初に登場した時には、女性の姿でした。
 本当の姿は、少年です。テレパシーやサイコキネシスを使うので、超能力少年といえます。

 『超人ロック』は、昭和四十二年(一九六七年)に、同人誌で登場しました。昭和五十二年(一九七七年)から、商業誌に移って、連載しています。掲載誌をたびたび変えながら、なんと、二〇一七年現在まで、連載が続いています。今年で、五十周年ですね(*o*)
 一人の作家に描かれているものとしては、世界最長の漫画作品といわれます。

 ロックは、たびたび女性の姿にもなるので、「超能力少女」の萌芽を、『超人ロック』に見出すことができます。
 とはいえ、ロックのイメージは、やはり、少年です。『超人ロック』は、「超能力少年もの」であって、「超能力少女もの」とは、言いがたいです。

 『超人ロック』に次ぐ「超能力少年もの」の漫画といえば、『バビル2世』でしょう。『超人ロック』に遅れること四年、昭和四十六年(一九七一年)に、『少年チャンピオン』で、連載が始まりました。

 『バビル2世』は、アニメ化もされたことで、有名になりました。昭和四十八年(一九七三年)に、アニメが放映されています。
 アニメの歌詞の中に、はっきりと、「超能力少年、バビル2世〜♪」と出てきますね。このアニメが、「超能力」という言葉を、大いに世に広めたと思います。
 折しも、当時は、オカルトブームの真っ最中でした。UFOや心霊と並んで、「超能力」も、ブームになりました。
 『バビル2世』アニメの放映翌年、昭和四十九年(一九七四年)に、「米国の超能力者」という触れ込みで、ユリ・ゲラーが来日します。それにより、空前の超能力ブームとなりました。
 ユリ・ゲラーの「超能力者」という肩書が受け入れられたのは、『バビル2世』があったからではないかと思います。

 こういう下地があって、昭和五十年(一九七五年)に、『超少女明日香』、『紅い牙』、『はるかなるレムリアより』が登場しました。「超能力少年」から、「超能力少女」への飛躍です。


 ところが、じつは、テレビの世界に、「超能力少女」が登場したのは、「超能力少年」の『バビル2世』よりも、早かったのです。昭和四十七年(一九七二年)のことでした。
 それは、アニメではなく、実写のテレビドラマでした。『タイム・トラベラー』という作品です。

 『タイム・トラベラー』は、伝説的なテレビドラマシリーズである『NHK少年ドラマシリーズ』の第一弾ですね。SF好きの間で、評価の高いシリーズです。その割に資料が少なく、とりわけ初期の作品群は、幻の作品と言われることが多いです。

 『タイム・トラベラー』は、原作が、筒井康隆さんの小説『時をかける少女』です。この小説が、最初に単行本として出版されたのは、昭和四十二年(一九六七年)です。『超人ロック』の連載が始まったのと、同じ年です。
 また、この年には、筒井さんの小説『家族八景』も、単行本として出版されています。『家族八景』にも、超能力少女が登場します。
 日本の娯楽フィクションの世界に、「超能力少女・少年」が本格的に登場したのは、昭和四十二年(一九六七年)と考えていいでしょう。

 『タイム・トラベラー』をはじめとするNHK少年ドラマシリーズには、書くべきことが、たくさんあります。
 これは、次回以降に回します。今回は、ここまでとします。

2017年05月24日追記:
 この日記の続きを書きました。
 よろしければ、以下の日記もお読み下さい。

魔法少女の系譜、その70(2017年05月24日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1960594895&owner_id=25849368


 今回のレビューは、『改訂版 大予言の嘘』を選びました。一九七〇年代の、オカルトブームつながりです。

 日本で、ノストラダムスのブームが起こったのは、昭和四十八年(一九七三年)です。この年に、五島勉【ごとう べん】氏の『ノストラダムスの大予言』が出版され、二百五十万部の大ベストセラーになりました。
 二〇一七年現在では、考えられない数字ですね。当時のオカルトブームぶりが、わかるでしょう。

 このようなブームがあったからこそ、漫画やアニメの世界でも、「超能力もの」が受けたのだと思います。
 フィクションの世界でなら、超能力も予言も、楽しいです(^^) しかし、現実の世界に、ありもしないもの―少なくとも、二〇一七年現在、超能力の実在は、確認されていません―が侵蝕してくると、社会的に、不具合が起こります。
 どのような不具合が起こったのか、それを避けるにはどうすればいいか、本書に書かれています。

 よろしければ、以下のレビューもお読み下さい。

大予言の嘘―占いからノストラダムスまで その手口と内幕
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=25849368&id=201475

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