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2016年04月29日16:32

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「スポットライト 世紀のスクープ」

中年映画ファンにとって「大統領の陰謀」を彷彿とさせる硬派の作品。サスペンスもお色気要素も排し、地味で誠実な”お仕事映画”として描いたところが素敵だ。
タイトルの「スポットライト」は、ボストン・グローブ紙の目玉であるスクープ記事を担当する調査取材班のチーム名でもある。2002年1月、「スポットライト」はボストンで数十人もの神父による児童への性的虐待を、カトリック教会が組織ぐるみでその事実を隠蔽してきた事実を報道。まさに闇を照らすスポットライトの面目躍如だ。同時に、その事実を示す被害者の声や、性的虐待の事実を揉み消すための示談についての情報はすでに何年も前からあったにも関わらずスルーしていたという不面目もきちんと明かされる。
長い間見過ごされていた事実にようやくスポットライトが当てられたのは、よそから来た新任の局長(リーヴ・シュレイバー)の強力なリーダーシップと、被害者の弁護を引き受けるアルメニア人弁護士(スタンリー・トゥッチが好演♪)の存在が大きい。
そしてチームワークの良さ。熱血記者のマーク・ラファロは偏屈なアルメニア人弁護士に必死で食らいつき、女性記者は被害者を励ましながら言葉にしがたい体験を慎重に言葉に置き換えていく。飾り気のないパンツ姿のレイチェル・マクアダムスが本物の記者に見える。資料探しが得意な記者は教会名鑑から該当する神父を割り出す方法を発見し、リーダーのマイケル・キートンは顔の広さを活かして慎重に裏をとろうと最後の最後まで粘る。それぞれの資質を活かしているのがすばらしい。資料探しが大好きな私は、怪しい神父のリストアップを手伝いたくてうずうずした(笑)。
それにしても、心理学者が神父のうち6%が児童への性的虐待を行っていると断言するのには驚いた。しかも映画の最後に示される全米および各国での実態はその数字を遙かに超えている(詳しくは「カトリック教会の性的虐待事件」を検索すると、ウィキでまとまった記事が読めます)。
カトリック教会のスキャンダルにはもはや驚かない門外漢ですらショックを受けるのだから、敬虔な信者たちはこれらの報道にどれだけ驚き悲しんだことだろう。これだけの割合で性的虐待が起こるということは、該当する神父を破門するだけでなく、何か思い切った抜本的な改革が必要なのではないだろうか。ナンニ・モレッティの「ローマ法王の休日」で、新法王に選出された無名の枢機卿が責任の重さに耐えきれず逃げ出した意味が少しわかった気がする。

「ローマ法王の休日」
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