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2015年06月14日00:34

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魔法少女の系譜、その40

 今回の日記は、断続的に連載している『魔法少女の系譜』シリーズの一つです。前回までのシリーズを読んでいないと、話が通じません。

 前回までのシリーズを読んでいない方や、読んだけれど忘れてしまった方は、以下のシリーズ目録から、先にお読み下さい。

魔法少女の系譜、シリーズ目録(2014年01月22日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=25849368&id=1920320548

 今回も、前回に続いて、『5年3組魔法組』を取り上げます。七つの視点、改め、八つの視点で、この作品を、分析してみます。

[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?
[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?
[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?
[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?
[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?
[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?
[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?
[8]魔法少女は、作品中に、何人、登場するか?

の、八つですね。


[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?

 『魔法組』の魔法少女/少年たちは、魔女ベルバラからもらったMJバッグの力により、魔法を使います。より正確には、MJバッグの中の七つ道具が、魔法道具です。
 魔法道具型の魔法少女/少年たちですね。

 『魔法組』は、魔法道具型の魔法少女(少年)ものとしては、『ひみつのアッコちゃん』と『ふしぎなメルモ』とに並ぶ傑作だと思います(^^)


[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?

 『魔法組』の魔法少女/少年たちは、もともと普通の人間です。魔女ベルバラにMJバッグを返してしまえば、魔法の使えない、普通の人間に戻ります。

 大人になる前に、彼らは、MJバッグをベルバラに返して、普通の人間に戻るのだろうなあと、容易に予測できます。


[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?

 『魔法組』の魔法少女/少年たちは、魔法少女/少年としての、決まった姿に変身はしません。
 けれども、魔法の一種として、変身することはあります。魔法の七つ道具の中に、メタモライトという変身道具があり、これを使って、自由に変身できます。

 メタモライトは、「好きなものの姿になれたらなあ」という、子供の素朴な願いをかなえる道具でした。『アッコちゃん』のコンパクトと同じですね。
 考えてみれば、『魔法組』が放映されたのは、『アッコちゃん』の最初の放映から、まだ七年しか経っていない時期です。七年で、「子供の素朴な願い」が、そうそう変わるはずがありませんね。

 『魔法組』の時点では、まだ、「魔法少女/少年としての決まった姿に変身する」ことは、一般的ではありませんでした。『好き!すき!!魔女先生』や『キューティーハニー』という先駆作品があるにもかかわらず、そうでした。
 『魔女先生』や『ハニー』が、いかに先進的な作品だったか、わかりますね。


[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?

 これは、先ほどから書いているとおり、MJバッグ(の中にある七つ道具)ですね。本来は、魔女ベルバラの持ち物ですが、ベルバラの好意により、『魔法組』の子供たちに預けられています。

 七つ道具の簡便な説明は、以下のとおりです。

メタモライト:変身道具です。

ペンタゴン:物の大きさを、自在に変えられます。

ボイスボール:動物や植物と話ができる道具です。

バンノーダー:何でも引き寄せられる道具です。

MJシーバー:通信機です。二〇一五年現在における、携帯電話ですね。

マジッカー:これに乗って空を飛べます。

マンガンキー:何でも願いがかなう、究極の魔法道具です。ただし、使うと、反動が大きいです。

 同じ「七つ道具」という名前でも、『ミラクル少女リミットちゃん』の七つ道具より、よほど重要な道具でした。『リミットちゃん』の七つ道具は、「おまけ」的要素が強かったですが、『魔法組』の七つ道具は、毎回、主役的扱いでした。


[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?

 MJバッグの中には、七つ道具以外に、MJくんという妖精が入っています。MJくんが、マスコットに当たるでしょう。小人の姿をしています。
 私の記憶では、MJくんは、あまり活躍しません。愛玩動物のように、愛嬌をふりまく役ですね。


[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?

 魔法の七つ道具を使う時に、呪文を唱えます。呪文は、「アバクラタラリン、クラクラマカシン」です。
 「アバクラタラリン、クラクラマカシン」のあとに、例えばメタモライトなら、「○○になれ」と、変身したいものを指定します。

 呪文を使うのは、古典的な「魔法もの」の伝統を引き継いでいますね。
 例えば、空を飛ぶマジッカーなどは、外見上はメカニックな「空飛ぶ円盤」です。でも、呪文を唱えることによって、「科学的な道具」ではなく、「魔法」であることを強調しています。


[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?

 これは、微妙なところです。魔女ベルバラの存在があるからです。

 ベルバラが魔女であることは、公然の秘密です。『魔法組』の世界では、普通の人間に似て、そうではない「魔女」がいることになっているのですね。「魔女」は、魔法を使える存在だと、多くの人が知っているようです。少なくとも、5年3組の子供たちは、全員、知っています。

 とはいえ、子供たちが、七つ道具で魔法を行使することは、一応、秘密にされていますね。「文化祭の出しもので、大っぴらには魔法を使えない」という話があるくらいですから。

 それにしても、あれだけ街中で騒動を起こしていたら、魔法の存在は、秘密どころではないだろうという気がします(笑) コメディだからこそ、許される描写ですね。

 『魔法組』の魔法は、「公然の秘密」という言葉が、ぴったり来ます。子供たちは、全員、魔法の存在を知っていますし、大人たちも、たびたび不思議なことが起こっても、何となく「そういうものか」で済ませてしまいます。

 子供の間では、魔法の存在が共有されているため、基本は、子供たちの視点で、話が進みます。時には、魔女ベルバラ視点で、話が進むこともあります。
 子供たち+ベルバラという、複数視点が許される作品なので、視点は、内在的とも、外在的ともいえますね。


[8]魔法少女は、作品中に、何人、登場するか?

 『魔法組』で魔法を使うのは、基本的に、5年3組の五人組ショースケ、ガンモ、チクワ、ハテナマン、ミコと、魔女ベルバラです。これだけなら、六人ですね。

 他に、脇役で、ベルバラの上司ジョーカーや、ベルバラの親戚チビバラといった魔女も登場します。
 また、MJバッグの七つ道具は、五人組でなくても、呪文さえ唱えれば、誰でも使えます。ショースケの弟のユタカや、ハテナマンの妹のルリコが、そうやって魔法を使う場面があります。

 『魔法組』は、厳密に魔法少女/少年の数を決めるのが、難しいですね。
 ここでは、主に魔法を使う人数ということで、六人にしておきましょうか。

 『魔法組』の優れた点は、集団に魔法道具を使わせたことだと思います。五人組が、協力したり反発したりしながら魔法道具を使うことで、ドラマが生まれやすくなりました。
 女子二名・男子三名の男女混合チームなのも、この時代としては、ユニークですね。
 『魔法組』が放映され始めた一九七六年は、スーパー戦隊ものの第一作『秘密戦隊ゴレンジャー』の放映真っ最中です。『ゴレンジャー』では、五名のうち、女性はモモレンジャー一名だけです。『魔法組』のほうが、女性の活躍が進んでいます(笑)

 さらに、魔女ベルバラというトリックスターがいることが、話を転がりやすく、面白くしました(^^)

 この「魔法道具型で、魔法道具を集団で使う」という特徴は、他の「魔法もの」作品に、あまり例がありません。もっと使われてもいい特徴でしょう。


 『魔法組』は、呪文などの古典的な要素を引き継ぎつつも、魔女ベルバラというトリックスターや、「集団で魔法道具を使うこと」といった新機軸を取り入れた作品でした。のちの時代、男性を圧倒して「魔法少女」たちが活躍する作品を、予期させる部分もありました。
 しかし、それが花開くのは、だいぶ後の時代です。

 『5年3組魔法組』については、これで終わりとします。
 次回は、別の作品を取り上げる予定です。

2015年06月17日追記:
 この日記の続きを書きました。
 よろしければ、以下の日記もお読み下さい。

魔法少女の系譜、その41(2015年06月17日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=25849368&id=1943250576


 今回のレビューは、魔女ベルバラにちなんで、魔女の本を選びました。
 『魔女とほうきと黒い猫』です。

 本書は、童話や漫画やアニメやゲームなどに登場する魔女を見て、「本来の、伝承に登場するヨーロッパの魔女って、どんなのだろう?」と、興味を持ち始めた方に、向いています。
 やさしい言葉で、ヨーロッパの魔女について、書かれています。ヨーロッパの魔女入門編です。

 よろしければ、以下のレビューもお読み下さい。

魔女とほうきと黒い猫 (角川ソフィア文庫)
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=25849368&id=2971447

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