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2015年05月20日02:14

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魔法少女の系譜、その38

 今回の日記は、断続的に連載している『魔法少女の系譜』シリーズの一つです。前回までのシリーズを読んでいないと、話が通じません。

 前回までのシリーズを読んでいない方や、読んだけれど忘れてしまった方は、以下のシリーズ目録から、先にお読み下さい。

魔法少女の系譜、シリーズ目録(2014年01月22日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=25849368&id=1920320548

 今回は、前回までとは違う作品を取り上げます。
 『5年3組魔法組』です。一九七六年(昭和五十一年)十二月から、一九七七年(昭和五十二年)十月まで、放映されました。

 この作品は、アニメではありません、実写(特撮)ドラマです。
 一九七五年(昭和五十年)九月に『魔女っ子メグちゃん』が終わってから、数年間、「魔女っ子アニメ」がない期間が続きます。その間をつなぐように、実写(特撮)の「魔法もの」が、いくつか放映されました。
 『メグちゃん』が終わった年から始まった『それ行け!カッチン』に続いて、翌年の一九七六年(昭和五十一年)に、『5年3組魔法組』が始まりました。
 一九七六年(昭和五十一年)には、魔女っ子アニメの放映は、(再放送を除いて)ありませんでした。

 『魔法組』は、子供たちの間で人気が出て、ヒット作となりました。一九九〇年代の娯楽作品にまで、その影響が見られるほどです。
 例えば、漫画の『地獄先生ぬ〜べ〜』で、舞台が小学校の5年3組となっているのは、『5年3組魔法組』に対するオマージュだといわれています。

 『魔法組』の内容は、題名どおり、小学校の5年3組の児童たちが、魔法を使って、活躍します。
 5年3組といっても、実質的には、ショースケ、ミコ、ガンモ、チクワ、ハテナマンというあだ名の子供たち、五人組です。
 ショースケとミコが女の子、ガンモとチクワとハテナマンが男の子です。女子のショースケが、中心人物です。ショースケは、あだ名のとおり、男勝りな子です。

 この作品で、女の子をリーダー格にしたのは、慧眼だと思います。
 小学校の高学年くらいって、女の子のほうが、男の子より一足先に成長して、肉体的にも精神的にも、強い時期なんですよね。現実の子供たちを観察していたからこそ、出る発想でしょう。

 この五人組は、全員、普通の人間で、妖精や宇宙人ではありません。
 彼らが魔法を使えるのは、「MJバッグ」という、魔法のバッグを預かったからです。魔法道具型の魔法少女/少年たちですね。

 MJバッグを預けたのは、魔女ベルバラです。作品の舞台は、現代日本(一九七〇年代の日本)なんですが、ヨーロッパ風の魔女がいるという設定なんですね。

 『魔法組』で秀逸なのは、この魔女ベルバラの存在です。それまでの日本の「魔法少女もの」に登場した「良い魔女」とは、違うんですよ。
 何しろ、エンディングの歌が「魔女はいじわる」ですからね。いじわるでいたずら好き、いつも街に騒動を起こすトリックスターです。
 魔女ベルバラを演じた曽我町子さんの演技が、キレッキレで、はっちゃけていて、本当に楽しそうでした(^^) 存在感抜群です。

 曽我町子さんのあの演技なくしては、『魔法組』は、ヒット作にならなかったでしょう。

 ベルバラは、確かに意地悪ですが、心の底から悪人ではありません。たまには、良いこともします。五人組にMJバッグを預けたのも、彼らを気に入っているからです。
 ベルバラのいじわるは、好意の裏返しです。五人組にいじわるをしても、本当に彼らが危機に陥ると、助けに来てくれます。
 まさに、正統派トリックスターの活躍ぶりです。

 この作品には、妖精も登場します。MJバッグの中に、「MJくん」という妖精が入っているのです。MJくんは、マスコットに当たる存在ですね。
 特撮ドラマなので、MJくんは、実際には、操り人形です。声を人間が当てています。

 日本の実写(特撮)ドラマの中で、ヨーロッパ風の魔女と妖精とが、そろって登場したのは、『魔法組』が最初ではないかと思います。
 それまでの実写の魔法少女ものでは、『コメットさん』が宇宙人、『魔女はホットなお年頃』が化け狐、『好き!すき!!魔女先生』でも宇宙人という具合に、ヒロインは、伝統的なヨーロッパ風魔女ではありません。
 ベータンやバルのような「マスコット」―当時は、まだ、そういう呼び方はありませんが―が登場しても、彼らは「妖精」では、ありませんでした。

 伝統的なヨーロッパ風魔女にすると、悪人になってしまうからでしょうね。
 それを避けるには、『魔法組』のように、トリックスターにするしか、ありません。この点を、非常にうまく使った作品だったと思います。

 MJバッグの中には、魔法の七つ道具も、入っています。MJくんより、七つ道具のほうが、ずっと重要です。
 七つ道具は、『魔法組』の大きな魅力の一つでした。子供たちの素朴な「こんなの、あったらいいな」が形になった道具たちです。

 七つ道具の詳細は、以下のとおりです。

メタモライト:変身道具です。このライトで照らすと、照らしたものを好きなものに変身させることができます。もちろん、人間に使ってもOKです。

ペンタゴン:これも、変身道具の一つといえます。物の大きさを、自在に変えられます。

ボイスボール:動物や植物と話ができる道具です。私が子供の頃、欲しかったですねえ(笑)

バンノーダー:何でも引き寄せられる道具です。

MJシーバー:通信機です。二〇一五年現在なら、スマホで済んでしまいますね。

マジッカー:空飛ぶ円盤― 一九七〇年代の呼び方ですね(笑)―です。五人組が、これに乗って、よく飛んでいました。

マンガンキー:何でも願いがかなう、究極の魔法道具です。ただし、願いをかなえた後には、その反動として、必ず「悪いこと」が起こります。大きな願いなら、反動も大きくなります。最悪、死を覚悟しなければなりません。このため、最終手段としてしか使えません。

 今回は、ここまでとします。
 次回も、『5年3組魔法組』を取り上げる予定です。

2015年05月27日追記:
 この日記の続きを書きました。
 よろしければ、以下の日記もお読み下さい。

魔法少女の系譜、その39(2015年05月27日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=25849368&id=1942546834


 今回のレビューは、『魔女はなぜ人を喰うか』を選びました。
 むろん、魔女ベルバラにちなみました。ベルバラは、人を喰うほどの悪事はしませんが、ヨーロッパ風魔女の起源を探った本ということで。

 本書は、同著者の本『魔女はなぜ空を飛ぶか』の続編です。『魔女はなぜ空を飛ぶか』と併せて読むと、理解が進みます。

 よろしければ、以下のレビューもお読み下さい。

魔女はなぜ人を喰うか
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=25849368&id=195747

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