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2015年04月25日04:16

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行き当たりばったりの気まぐれSS

擬人カレシより。目が滑るかもしれませんww
思いつくまま書きなぐるのでいずれ矛盾してくるでしょうが、そこはどうかお許しを。

それでは……

…………………………………………………………………………
1.捕らえられた狐

「次!」

王の間に衛士の声が響き渡った。
大理石や金銀、輝石で飾られた豪奢な広間の奥。

しつらえられた壇上にある玉座の肘掛に、若き王は気だるげに片肘をついて頬を預けた。
一体いつまで続くのだ。さっきので何人目だっただろうか。

国の護りも警護も行き届き、国民は勤勉で穏かだ。
犯罪行為もあるにはあるが、それはどこの国とてそれほど変わらないだろう。

つまり。

現王である己が身は、単なる飾り物でしかない。
それでもその『お飾り』に対して、形ばかりの『ご挨拶』を申し込んでくる輩はいまだに減らない。

これでもくだらない内容のものは、ここに来るまでにあらかた排除されているはずなのだが。

「それでもな……こうも多いと……」

側近が殆ど身を動かさぬまま、小声で囁くのが聞こえる。

『本日の謁見は次で最後になりますゆえ。何卒ご辛抱を』

ふうー。とめんどくさそうに、一度は緩めた体を再び起こした。

『どのみち、俺が何を言っても結局決めるのはあんたたちだろうに』

面白くなさそうに独りごちたのを、側近はあえて聞こえぬ振りをした。



ギギ……と重たい音と共に開かれた、無駄に大きな扉をくぐってやってきたのは旅の商人だろうか。供らしき人間を一人連れているが、その様相は嫌でも目を引いた。

美しい刺繍が施された分厚い上質な衣服を身に纏い、腕といわず指といわず古今東西の宝飾品をこれでもかとぶら下げた脂ぎった中年男。その傍らにはこれまた異様な風体の青年が付き従う。

質素な生成りの布の服。その上に頭からすっぽりと長いローブを羽織っていて顔は見えない。
長身痩躯のローブ姿が絵物語の魔導師のようだ、と王は思った。

玉座へ続く壇の前に敷かれた綾模様の絨毯の上に供を跪かせ、顎鬚を生やした中年の男が声を張りあげる。

ありきたりな口上だ。あいにく玉座に座る王のご機嫌は麗しくなかったが、黙って聞き流されることだろう。

殆どの謁見はこうして黙って座っていれば済む。必要な返答や指示は、全て側近がやってくれるのだから。

「で、おまえは何をしにきたのだ? その者に関することか? 見たところ兵役志願ではなさそうだな」

あからさまなイヤミを混ぜ込みながら側近が先を促す。彼もおそらく、上辺だけの社交辞令は聞き飽きているに違いなかった。
慌てて咳払いをした商人は、傍らに蹲る男の前に歩み出た。

「実は王様に珍しい物を献上いたしたく存じます。王様、そして此処へおいでの皆々様方は遠く噂にお聞きでしょうが……現在の栄華を誇る人の世に、人ならざるものがたまに混ざっているらしいということを。人と獣の間に生れ落ちたか、はたまたジンなる精霊か……。普段は巧みに異形を隠し、人に化けて平然と暮らしておるのです」

ジン。人ではないにも関わらず、人のように思考し、己の意思で行動する精霊、魔人等、伝説の生き物の総称。王は面白くなさそうに眉間にしわを寄せた。

「ジン……とは、ただの言い伝えであろう? その者がなにか関係していると?」

商人は恭しくも大げさに、わざとらしい身振り手振りを交えながら語り始めた。

「我々のキャラバンがこの国に到着する少し前、森の中でこの『男』に襲われたのです。獣のように牙を剥き出し、鋭い爪で飛び掛かってきました。しかしそれを数人がかりで捕らえ、その場でくびり殺してやろうかとも思ったのですが……このように珍しき生き物、是非とも王のお目にかけたく枷をつけ、獣用の檻に入れて厳重に運んでまいりました。今も抵抗できぬよう、手枷と足枷をつけております。お見苦しいので布で覆っておりますが……腹が満たされていれば暴れませんので、危険はございません。薄汚れた毛並を洗ってみれば、上等な毛皮に勝るとも劣らぬ肌触り。人の姿に化けている間はどこの誰を見本にしたのかなかなかに見栄えのする顔をしております。もし王のお気に召しますならば、一ヶ月……いや、一週間で従順な奴隷に仕上げてご覧に入れましょう」

立て板に水とはこのことだろう。聞き取るのに苦労するほど早口で、一気にまくし立ててきた。
つまり……獣人を捕らえたからオモチャにしてはどうか、と言っているのだ。
それも、落ち着いて聞けばすぐに判るような矛盾たっぷりの売り文句を添えて。

周囲を固める側近や衛兵たちからも失笑が漏れ聞こえる。
少しばかり見目の良い奴隷を高く売りつけるための口実だろうと誰もが思っているのだ。

『……下種が』

ぽつりと言葉を漏らすも、それは側近にも届いたかどうか。

しかし誇張表現だらけの謳い文句の中にも真実があったのを、王の嗅覚が捕らえた。ローブの男は人間ではない。少なくとも、今は。まだ。
同胞以外には判らない、僅かで確かな『気配』であった。

ちらりと側近が王へと視線を向ける。王の意思を慮るために。
若き王は、つい、と僅かに顎で彼らを示した。
側近はこくりと頷き、商人たちへと向き直った。よく通る声が王の間に響く。



A:「顔を見せてみよ」

B:「その者に名はあるのか?」

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こんな感じで始めてみました。
陣ちゃんの一人称は、たしか『僕』でしたよね?
その他、口調とか食い違うところあったらご指摘お願いいたします。

A、B、お選びくださいませ、お嬢様。


追記:陣ちゃんの一人称を『俺』に変更いたしました。


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