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2014年12月27日22:46

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魔法少女の系譜、その32

 今回の日記は、断続的に連載している『魔法少女の系譜』シリーズの一つです。前回までのシリーズを読んでいないと、話が通じません。

 前回までのシリーズを読んでいない方や、読んだけれど忘れてしまった方は、以下のシリーズ目録から、先にお読み下さい。

魔法少女の系譜、シリーズ目録(2014年01月22日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=25849368&id=1920320548

 今回は、新しい作品を取り上げます。『魔女っ子メグちゃん』です。昭和四十九年(一九七四年)4月から、昭和五十年(一九七五年)9月まで放映されたアニメ作品です。

 『魔女っ子メグちゃん』は、二〇一四年の現在に至るまで、人気があります。いくつも新しい要素があり、現在から見ても、面白い作品だからです(^^)
 放映期間が一年半にも渡り、全72話も続いたことが、人気のほどを示していますね。

 『メグちゃん』の画期的な点、その一。
 初めて「魔女っ子」という言葉が、公式に使われたことです。

 それまで、魔女っ子という言葉は、事実上、存在しませんでした。
 ひょっとしたら、アニメ好きな子供たちの一部では、使われていたかも知れません。でも、これは、証明のしようがありません。
 昭和四十年代当時、「大きなお友達」は、ほとんどいません。いたとしても、「魔女っ子」といったおたく用語が、広く流通するほど、互いの交流はなかったでしょう。当時は、インターネットどころか、アニメ雑誌すら、存在しませんから。コミケも、生まれる前です。

 そもそも、昭和四十年代までは、「アニメ」という言葉すら、一般的ではありませんでした。アニメは、主に、「テレビ漫画」と呼ばれていたのですよ。

 『メグちゃん』をきっかけに、それまで、おそらく、「魔法もの」などと呼ばれていた作品群が、「魔女っ子もの」とくくられるようになりました。

 「魔法少女」という言葉が(公式に)生まれるのは、もう少し、後です。「魔女っ子」のほうが、先に使われています。

 『メグちゃん』の画期的な点、その二。
 「ヒロイン以外に、もう一人の魔法少女が登場すること」です。

 複数の魔法少女が登場する魔法少女アニメは、『メグちゃん』が最初です。
 それまでは、「魔法を使える少女」は、ヒロインだけでした。それでこそ、ヒロインの特別度が上がろうというものです。二〇一四年現在で言うところの、「主人公補正」ですかね(笑)

 『メグちゃん』には、ヒロインのメグ以外に、ノンという魔法少女が登場します。ノンは、メグと同じく、「魔女の国」から人間界にやってきました。

 メグとノンとは、魔女の国の女王候補です。二人は、人間界で、何十日もの時間をかけて、修業、兼、魔法合戦をします。勝ったほうが女王になります。

 この設定が、とても秀逸ですね。ライバルの二人が争うことで、たくさんのドラマが生まれます。
 このため、二〇〇〇年代に入ってからの魔法少女アニメ―原作の漫画もあります―『シュガシュガルーン』で、『メグちゃん』とまったく同じ設定が、使われています。およそ三十年後の作品に使っても遜色ないほど、優れているわけです(^^)

 ヒロインのメグは、良く言えば陽気で、悪く言えば、落ち着きのない女の子です。表情がくるくる変わり、活発で、おしゃべりで、騒がしいです。
 対して、ライバルのノンは、常に冷静で、大人っぽいです。メグを陥れようとすることもありますが、ライバルを思いやる心も持ちます。『メグちゃん』を見ていた方々に訊いてみると、「クールなノンが格好良くて、好きだった」という意見を、よく聞きます。

 メグとノンとの造形は、「いい子」ばかりだった魔法少女の形に、新たなインパクトを与えました。
 複数の魔法少女を出す利点を、存分に見出した作品と言えます。

 とはいえ、『メグちゃん』の後、複数の魔法少女が登場する作品が主流になるかといえば、そうはなりませんでした。この後も、十年以上、「魔法少女一人体制」が主流でした。

 二〇一四年現在では、一つの作品に、魔法少女が複数いるのが、当たり前ですよね。それは、まっすぐ、そう進化したのではありません。このシリーズで、何度も言及しているとおり、停滞や寄り道を繰り返しながら、現在の形になっています。

 『メグちゃん』の画期的な点、その三。
 女児向け作品でありながら、少しだけ、エロ要素が入っていることです。「少しだけ」という点が、ポイントです。『キューティーハニー』ほどの、大っぴらなエロではありません。「微エロ」くらいですね。

 この点については、製作者側が、はっきりとそこを狙ったことが、明らかにされています。女の子が見ても、不快に感じない程度のエロですね。

 オープニングの曲に、それがよく表われています。
 「子供だなんて〜、思ったら、大間違いよ〜、女の子、二つの胸の、ふくらみは、何でもできる、証拠なの♪」という歌詞を読んでいただけば、「微エロ」加減が、わかっていただけるでしょう。

 「微エロ」を狙うために、メグとノンとの年齢は、「中学三年生」にされています。小学生でエロはあり得ないでしょうし、『キューティーハニー』の高校生ほど、大人でもありません。絶妙な線ですね(^^)
 魔法少女アニメとしては、『魔法のマコちゃん』以来の、中学生ヒロイン(と、ライバル)です。

 ここで、『メグちゃん』の基本設定を、紹介しておきましょう。

 ヒロインのメグは、魔女の国の女王候補です。生まれつき魔法が使える「魔女」です。魔女の子供ということから、「魔女っ子」という題名になったのでしょうね。

 女王候補は、二人います。もう一人が、ノンです。メグとノンとの二人は、修業のため、人間界へ預けられることになります。

 人間界で、二人を預かってくれるのは、元・女王候補だった魔女です。何らかの事情で、魔女の国に戻らず、人間界に、人間を装って住みついています。
 メグを預かるのは、マミ―人間としての氏名は、神崎マミ―です。かつて、人間界へ来た時に、神崎という人間の男性と恋に落ち、彼と結婚して、人間として家庭を築いています。
 ノンを預かるのは、キーランという女性です。マミと同じように、人間界へ来た時に、郷【ごう】という男性と恋に落ちて、結婚したようです。

 マミもキーランも、現在でも魔法が使える魔女です。けれども、それを隠して生活しています。どうしても必要な時以外、魔法は使いません。

 マミのいる神崎家と、キーランのいる郷家との雰囲気は、対照的です。

 マミは、二人の実子がいる今でも、夫を愛しています。夫の神崎も、妻を愛していることが、はっきりと伝わります。いたずら好きの男の子ラビ、おしゃまな女の子アポを抱えて、賑やかで温かい家庭です。
 この家庭の中で、メグは、人間として大切なことを学んでゆきます。

 キーランのほうは、もう夫を愛していません。夫の郷は良い人なのですが、妻の気性の激しさをもてあまし気味です。キーランと夫との間には、実子はいません。
 キーランは、自分が果たせなかった「魔女の国の女王になる」夢を、ノンに託します。現状の不満を、すべて、ノンへの夢に変えている感じです。教育ママの魔女版ですね。
 実際に、キーランの外見は、漫画チックな「教育ママ」そのものです。

 ノンは、人間界へ来ても、勉強もスポーツもできる万能少女なのですよね。なまじ優秀なだけに、キーランの夢をかき立ててしまいます。
 しかし、メグのように温かい家庭に恵まれなかったために、ノンは、人間の気持ちにうといです。魔法が使えない人間をばかにしているところがあります。

 マミとキーランとは、それぞれの家族に魔法をかけて、メグやノンを自分たちの子供だと思わせています。つまり、メグとノンの正体を知っているのは、マミとキーランだけで、他の家族は、知りません。

 マミとキーラン以外に、メグとノンとの正体を知る者がいます。魔女の国から来た調査官、チョーサンです。フルフルという名のシャム猫と、クローという名のカラスを連れています。フルフルとクローも、魔女の国の動物なので、人間の言葉でしゃべります。

 チョーサンは、はっきり言って、ギャグ担当者です。何しろ、ドジが多いです。スケベなことが災いすることも、よくあります。
 フルフルとクローも、チョーサンと似たり寄ったりです。

 チョーサンは、メグとノンとの監視役のはずなのですが……。落ち着きのないメグはともかく、大人っぽいノンのほうが、チョーサンよりも、よほどしっかりしている感じです。
 そのせいなのかどうか、チョーサンは、ノンのほうに、あからさまに肩入れしています。メグを妨害することが多いです。魔女の国への報告にも、メグをひどく悪く書きます。

 チョーサン、フルフル、クローの「一人と一匹と一羽」トリオは、『タイムボカン』シリーズの悪役トリオをほうふつとさせます。ギャグ担当の悪役として、トリオというのは、うまい形なのかも知れませんね。

 『タイムボカン』シリーズの第一作、『タイムボカン』は、昭和五十年(一九七五年)10月に放映が始まっています。『メグちゃん』と入れ替わる形です。
 『メグちゃん』のほうが先なので、あの悪役トリオの形は、『メグちゃん』が原型なのかも知れません。

 今回は、ここまでとします。
 次回も、『魔女っ子メグちゃん』を取り上げます。

2015年01月04日追記:
 この日記の続きを書きました。
 よろしければ、以下の日記もお読み下さい。

魔法少女の系譜、その33(2015年01月04日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=25849368&id=1937200905


 今回のレビューは、『魔女っ子』にちなんで、魔女(らしき女性)が登場する小説集を選びました。
 『魔女物語』です。

 本書は、短編小説集です。どの作品も、ロシアの伝統的な魔女や妖怪(らしきもの)が登場します。ロシアの土の香りがします。
 登場する魔女や妖怪には、現代的な解釈がほどこされています。このために、「こういう人、どこかにいそうだよなあ」と思わせるところがあります。うまいなあ、と感じます。

 よろしければ、以下のレビューもお読み下さい。

魔女物語 (群像社ライブラリー)
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=25849368&id=3402583

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