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2014年06月11日22:38

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魔法少女の系譜、その24

 この日記は、断続的に書いている『魔法少女の系譜』シリーズの一つです。前回までのシリーズの日記を読んでいないと、話が通じません。

 前回までのシリーズを読んでいない方、読んだけれど忘れてしまった方は、以下のシリーズ目録より、先にお読み下さい。

魔法少女の系譜、シリーズ目録(2014年01月22日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=25849368&id=1920320548

 今回は、『魔法使いチャッピー』を取り上げます。昭和四十七年(一九七二年)四月から、同年の十二月まで、放送されたテレビアニメです。

 この作品のヒロインは、チャッピーです。魔法の国から、人間界へ憧れて、やってきました。魔法の国の貴族の娘です。王女さまではないけれど、お姫さまだとは言えますね。
 本当は、貴族らしく、とても長たらしい名前です。でも、「チャッピー」以外の名で呼ばれることは、まず、ありません。

 魔法の国の住民なので、年齢は、普通の人の数え方とは違うようです。外見からすると、普通の人間の九歳か一〇歳くらいですね。
 この作品のすぐ前に放映されていた『さるとびエッちゃん』のエッちゃんと、同じくらいの感じです。『ふしぎなメルモ』のメルモちゃんも九歳ですから、ほぼ同い年ですね。
 チャッピーは、人間界では、「すみれ学園」という小学校に通うことになります。

 チャッピーは、魔法の国を脱け出す時に、魔法のバトンを持ってきていました。このバトンを使って、彼女は魔法を使います。
 その時には、「アブラマハリク、マハリタカブラ」という呪文を唱えます。

 チャッピーは、人間界で一人ではありません。弟のジュンと、ペットのレッサーパンダのドンちゃんも、魔法の国から一緒に来ました。
 弟のジュンは、お姉さんのチャッピーより、しっかり者です。ドンちゃんは、魔法の国の動物らしく、言葉がしゃべれます。少しなら、魔法も使えます。

 後から、チャッピーの両親、それに、祖父までやってきて、一家で人間界に住むことになります。
 三世代同居という点が、時代を反映していますね。昭和四十年代には、まだ、三世代同居の家が多かったのでしょう。

 チャッピーは、人間界で、同い年くらいの人間の友達ができます。けれども、人間に、魔法のことを話すことはできません。それは、魔法の国の重大な禁忌です。
 それでも、チャッピーは、こっそり魔法を使って、人助けをします。

 間違って混乱を起こしてしまうことはありますが、魔法を悪用しようという考えは、彼女には、ありません。やはり、いい子なんですね。

 ここまで読んできて下さった皆さんは、気づいたことがありませんか?
 「どれも、どこかで聞いたことのある設定だなあ」と、思いませんでしたか?

 そうなんですよね。『魔法使いチャッピー』は、それまでの魔法少女ものの集大成といえる作品です。とんがった所がなく、とても平均的です。
 新しい点と言えば、「家族全員で、魔法の国から引っ越してくる」点くらいでしょう。

 「魔法の国から来た」は、『魔法使いサリー』以来のお約束ですよね。魔法の呪文も、サリーちゃんのものと似ています。
 「魔法のバトン」は、『コメットさん』の伝統を踏まえています。
 ペットのドンちゃんは、言葉をしゃべる点など、『さるとびエッちゃん』のブクを思わせます。『コメットさん』のベータン以来のマスコットの伝統に連なりますね。

 『魔法使いチャッピー』の直前に放映されていた魔法少女もの三作品は、どれも、個性的でした。
 どう見ても魔法なのに、「忍術」と言い張る『さるとびエッちゃん』、魔(法少)女として、初めて変身して戦った『好き!すき!!魔女先生』、性教育アニメとしての評価も高い『ふしぎなメルモ』です。
 これらの作品と比べると、『チャッピー』が平凡に見えてしまいます(^^;

 とはいえ、『チャッピー』は、平凡ゆえに、昭和時代の魔法少女の「型」を決めた作品だと思います。
 七つの視点で、『チャッピー』を分析してみると、それがわかるでしょう。

[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?
[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?
[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?
[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?
[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?
[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?
[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?

の、七つの視点ですね。

[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?

 チャッピーは、もともと、魔法の国の住人です。生まれつき型の魔法少女ですね。
 ただし、魔法のバトンがないと、魔法は使えません。

[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?

 最終回で、チャッピーは、家族ともども、魔法の国へ帰ってしまいます。
 ですから、彼女は、魔法の国で「普通に」魔法の使える大人になるのでしょう。

[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?

 チャッピーは、魔法を使って変身することはあります。
 けれども、「魔法少女としての姿」に変身することは、ありません。

[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?

 先ほどから書いているとおり、これは、魔法のバトンですね。
 昭和時代の魔法少女の持ち物として、魔法のバトンは、最も一般的な物となります。

[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?

 これは、レッサーパンダのドンちゃんですね。レッサーパンダが日本のアニメに登場した、初めての例ではないでしょうか。
 ドンちゃんは、言葉をしゃべり、魔法を使います。ペットということになっていますが、ヒロインのチャッピーとは、対等な立場のようです。後の時代の魔法少女のマスコットに近いです。

 ドンちゃんこそが、「魔法少女のマスコット」の「型」を固めたのだと思います。
 作品中では、まだ、マスコットという言葉は、使われていません。

[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?

 チャッピーは、魔法のバトンを使って魔法をかける時に、呪文を唱えます。「アブラマハリク、マハリタカブラ」というものです。

[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?

 魔法は、人間には秘密にされています。このために、視点は、内在的です。


 魔法の国から来た、生まれつきの魔法少女で、魔法のバトンを持っていて、呪文を唱えて魔法を使い、言葉をしゃべれるマスコットを連れている……ね? 典型的な昭和の魔法少女でしょう?

 『チャッピー』が作った魔法少女の典型は、その後しばらく、昭和時代に、使われ続けます。
 しかし、「型」ができれば、それを壊したくなるのも、人の性【さが】です。『チャッピー』が放映された翌年には、とんでもなく斬新な「魔法少女」が現われることになります。
 それはまた、別の話ですので、後回しにしましょう。

 今回は、ここまでとします。
 次回も、『魔法使いチャッピー』を取り上げる予定です。『チャッピー』と、伝統的な口承文芸とを、比べてみます。
 『チャッピー』は、口承文芸と共通する点が、多いんですよ。

2014年06月15日追記:
 この日記の続きを書きました。
 よろしければ、以下の日記もお読み下さい。

2.25)魔法少女の系譜、その25(2014年06月15日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=25849368&id=1928030976


 今回のレビューは、『日本の美術 第52号 お伽草子』を選びました。
 『チャッピー』と、まるで関係ないだろうって? それが、あるんです(^^)

 『お伽草子』は、中世の日本で成立した、口承文芸の物語集です。
 『お伽草子』に含まれる話と、『チャッピー』には、共通点があります。『チャッピー』は、口承文芸の伝統を受け継いだ作品なのですね。
 詳しくは、次回の日記を読んでもらうしか、ないのですが(^^;

 よろしければ、以下のレビューもお読み下さい。

日本の美術 第52号 お伽草子
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=25849368&id=3127503

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