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2014年05月26日16:21

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『カティンの森』

映画『カティンの森』を観た。

(2007年 ポーランド 監督:アンジェイ・ワイダ
出演:マヤ・オスタシェフスカ アルトゥル・ジミイェフスキ マヤ・コモロフスカ アンジェイ・ヒラ ヴワディスワフ・コヴァルスキ ダヌタ・ステンカ アグニェシュカ・グリンシュカ)

重そうだけど、やっぱり観ておいた方がいいよね…。BS録画で観賞。

【1939年、ポーランドはドイツ軍とソ連軍に侵攻され、すべてのポーランド軍将校はソ連の捕虜となった。アンジェイ大尉(アルトゥール・ジミエウスキー)は、彼の行方を探していた妻アンナ(マヤ・オスタシャースカ)と娘の目前で、東部へ連行されていく。アンナは夫の両親のもとに戻るが、義父はドイツに逮捕され収容所で病死し、残された家族はアンジェイの帰還を待ち続ける。(シネマトゥデイより)】

そういえば昔『地下水道』という作品を観たことがあった。1956年製作、モノクロのうえ地下での描写が多いので、やたらと観にくかったのと同時に、ラストシーンの残酷さと虚しさは今でもよく覚えている。それが、今までに私が観たアンジェイ・ワイダ監督の唯一の作品だった。

私は世界史というものにはめっぽう疎い。なので、ポーランドで大きな問題となっていたこの事件も、この作品を観るまでは全く知らなかった。

第二次世界大戦、ポーランドは1939年9月1日、西からドイツ軍に、同年9月17日、東からソ連軍によって侵攻されることとなる。冒頭で、橋の両側から人々が逃げてくるのはそのためらしい。

そして、多くのポーランド将校がソ連軍の捕虜となり、1940年を境に行方不明になった。この後、カティンにて、侵攻したドイツ軍によって大勢のポーランド将校とみられる遺体が発見される。ドイツ軍はソ連の仕業といい、ソ連軍はドイツがやったという。ポーランドも沈黙を守り、この事件はポーランドのタブーとされてきた。これが、「カティンの事件」なのだそうだ。

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この作品は、行方不明になった将校たちのその後と、残された彼らの家族の苦悩を描いたものである。

ワイダ監督の父親はポーランド将校で、カティンの事件の犠牲者なのだそうだ。実際に監督の母親は夫の帰りを待ち続け、ワイダ監督自身もそうだった。この作品は、監督のご両親に捧げられている。

そういう監督の境遇からもみて、この作品を撮ることは監督の悲願だったのだろう。長い長い年月を経てようやく完成されたものだと感じる。とても細やかに、当事者にしかできない、分からないだろう繊細さと大胆さをもって、この作品は成り立っている。

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家族を残しソ連軍の捕虜となる将校、夫の無事を信じ、ひたすら帰りを待ち続ける妻。彼女は夫の実家へと身を寄せるが、夫の父親はドイツ軍に強制連行されていた。同じ家族なのに、ソ連とドイツに連れ去られる悲劇。

…ところが歴史というものは複雑で、ポーランドも敗戦国であるナチスのユダヤ人虐殺に手を貸したということが噂されており、純粋にソ連とドイツに挟まれた地形ゆえの犠牲国、というわけにはいかなかったのかな。

だけど、そんな中でも生きていくしかなかったあの時代の女性たちの凛とした佇まいが、哀しいけれどたくましい。そして、生き残った将校もまた、様々な理由で苦しむのだ。結局、戦争なんて後味の悪いものでしかないのね。

映画を観終わった後でこうして史実を振り返ってみて初めて、この作品が心に沁みてきた。どうか今後このような悲劇が繰り返されませんように…。心から祈りたいような、そんな気分だ。



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