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2013年10月02日23:05

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魔法少女の系譜、その8

 今回の日記は、断続的に書いている『魔法少女の系譜』シリーズの続きです。前回(その7)までの日記を読んでいないと、話が通じません。

 以前の日記を読んでらっしゃらない方、読んだけれど忘れてしまったという方は、以下の日記を先にお読み下さい。

1.1)神話・伝説と、現代の物語(2013年01月15日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1889042125&owner_id=25849368
2.1)魔法少女の系譜、その1(2013年05月29日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=25849368&id=1903297516
2.2)魔法少女の系譜、その2(2013年06月06日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1903928822&owner_id=25849368
2.3)魔法少女の系譜、その3(2013年06月16日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1904770994&owner_id=25849368
2.4)魔法少女の系譜、その4(2013年06月19日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1905040068&owner_id=25849368
2.5)魔法少女の系譜、その5(2013年06月26日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1905618693&owner_id=25849368
2.6)魔法少女の系譜、その6(2013年09月18日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1912131367&owner_id=25849368
2.7)魔法少女の系譜、その7(2013年09月25日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1912638279&owner_id=25849368

 前回は、大人気だった魔法少女もの『ひみつのアッコちゃん』を取り上げました。
 今回は、これの後番組を取り上げます。やはり、この後も、魔法少女もののアニメが来ました。
 『魔法のマコちゃん』です。昭和四十五年(一九七〇年)十一月から、昭和四十六年(一九七一年)九月まで放送されました。

 『魔法使いサリー』や、『ひみつのアッコちゃん』と比べると、『魔法のマコちゃん』は、現在では、語られることの少ない番組です。前二作ほどは、ヒットしなかったからでしょう。
 とはいえ、成功しなかったかといえば、決してそんなことはありません。前二作が、大ヒット過ぎたんですね(^^;

 私は、いろいろな点で、『魔法のマコちゃん』は、語る要素のある作品だと思っています。


 まず一つは、日本のアニメで、本格的に「人魚」を取り上げた、初めての作品だということです。
 ヒロインのマコちゃんは、人魚なんですね。それが、事情により、人間になって、海の世界を離れてしまいます。

 人魚が登場する日本のアニメで、有名なのは、『海のトリトン』でしょう。
 『海のトリトン』のテレビアニメ放映が始まったのは、昭和四十七年(一九七二年)です。ぎりぎり、『魔法のマコちゃん』のほうが、早いんですね。

 人魚には、一定の需要があるようで、最近も、『波打際のむろみさん』などの作品が作られていますね。
 「魔法少女もので、人魚」といえば、『ぴちぴちピッチ』もあります。『魔法のマコちゃん』は、『ぴちぴちピッチ』の遠い祖先と言えるかも知れません。


 次に、『魔法のマコちゃん』の語るべき点は、「生まれつき」型の魔法少女と、「魔法道具」型の魔法少女との中間点を示したことです。

 ヒロインのマコちゃんは、もともとは、生まれつきの人魚です。人魚ですから、海の中でずっと生活する力を持っています。人間には、ない力ですね。
 でも、人間になった時点で、その力は失っています。代わりに、「人魚の涙」という魔法のペンダントを持つようになります。このペンダントでもって、魔法を使います。

 元・人魚といえども、ペンダントがないと、マコちゃんは、魔法を使えません。

 ただ、ペンダントがなくても、人魚の仲間と話すことはできます。時おり、海の人魚たちが、マコちゃんを心配して、陸に近づいていきます。


 ここまでお読みになれば、おわかりでしょうが、『魔法のマコちゃん』は、アンデルセンの『人魚姫』を下敷きにしています。
 『人魚姫』と違うのは、ヒロインが声を失わないこと、足が痛くならないこと、最後に泡になって消えてしまわないことです。

 マコちゃんが、人間になってしまった理由は、『人魚姫』とほぼ同じです。人間の男性に恋をしたからです。その男性が溺れそうになり、それを助けるために、マコちゃんは、人魚の世界の禁をおかしました。
 人魚の世界には、「人間に触れたら、二度と海の世界へ戻れない」という掟があることになっています。『人魚姫』と違って、元の世界へ戻る方法は、ありません。

 つまり、マコちゃんは、「元・人魚の人間」として、ずっと地上で生きなければなりません。

 ここが、『魔法のマコちゃん』の注目すべき点、第三です。
 「魔法少女が、魔法の力を持ったまま、人間界で大人になる」道が、初めて示されました。

 実際の作品では、大人になったマコちゃんが描かれることはありません。「これからも、魔法のペンダントを持って、人間として生きてゆく」ことが暗示されて、終わります。

 それでも、「人間界で、少女期間限定でない魔法」の道を示したことは、大きな一歩だと思います。
 意外に、この点が評価されていないのですよね、この作品は。


 注目すべき点は、まだあります。
 『魔法のマコちゃん』には、全体的に、悲しい詩情が漂っています。それは、これまでの魔法少女ものには、なかったことです。

 『コメットさん』や『魔法使いサリー』は、魔法の国から、魔法少女が、人間界へ遊びに来た、というノリでした。
 『ひみつのアッコちゃん』は、運よく、魔法道具が手に入ったから、いろいろ使っちゃえ、というノリです。
 どの作品も、明るいですね。

 けれども、マコちゃんは、自分の好きなことを押し通そうとしたら、結果として、人間になるしかなくなりました。彼女は、心の底では、常に海を恋しがっています。「戻れるものなら戻りたい」感があるのですよね。
 口承文芸のヒロインでたとえれば、かぐや姫に似ています。何か罪を犯したために、心ならずも、人間界へやってきたヒロインです。

 ただし、マコちゃんは、かぐや姫と違って、元の世界に戻れません。かぐや姫よりも、過酷な運命を生きています。

 だからといって、マコちゃんは、常にぐずぐずめそめそしているわけではありません。そんな魔法少女ヒロインは、嫌ですね(^^;
 マコちゃんは、人間界で前向きに生きています。


 「恋」という題材を扱ったために、これまでの魔法少女ヒロインよりも、マコちゃんは、年上になりました。具体的には、十五歳の中学生です。
 サリーちゃんとアッコちゃんは、どちらも、小学五年生という設定でした。

 恋の力で、生まれ故郷を捨てるほどの行動力を見せなければならない。
 だけど、子供むけのアニメだから、ヒロインは子供にしなければならない。

 この釣り合いが取れたのが、十五歳という年齢なのでしょう。
 じつは、「ティーンの魔法少女」が現われたのも、マコちゃんが最初です。

 今回は、ここまでとします。次回―いつになるかしら(^^;―も、『魔法のマコちゃん』を取り上げる予定です。

2013年11月20日追記:
 この日記の続きを書きました。
 よろしければ、以下の日記もお読み下さい。

魔法少女の系譜、その9(2013年11月20日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=25849368&id=1916342675


 今回のレビューは、『魔法のマコちゃん』にちなんで、『人魚』です。法政大学出版局から出ている『ものと人間の文化史』シリーズの143号です。

 『ものと人間の文化史』シリーズは、民俗学のさまざまな分野を取り上げて、解説するシリーズです。
 中でも、『人魚』はユニークですね。このシリーズで、単一の架空の生き物を取り上げたのは、これだけじゃないでしょうか。

 よろしければ、以下のレビューもお読み下さい。

人魚 (ものと人間の文化史 143)
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=25849368&id=1078865

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