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2011年01月23日00:18

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映画【ソーシャル・ネットワーク】 ヒトは論理だけでは動かんのだよ、君が激情だけで動いたようにネ

公開から遅れる事一週間、やっとこ観てきました、『ソーシャル・ネットワーク』。


http://www.socialnetwork-movie.jp/


いやはや、終始、圧倒的な情報量を畳み掛ける事で、会話劇がここまでスリリングになるモノかと、素直に脱帽します。
にしても、冒頭部分から、洪水のように降り注ぐ早回しの台詞の数々の凄まじさ。
明らかに、観客を置いてきぼりにする意図で、そのように構成したとしか思えないシーンの完成度に、内心ほくそ笑みました。

あのシーンで大事なのは、常人たる元カノの『きょとーん』を我々が追体験することにあると思いました。

一見、早口でまくしたてられる台詞の中身に重要な意味があるように見えて、それほど中身がある内容は語られず、浮き彫りになるのは両者のすれ違いぶり。
というより、必死にマークの発する話題に耳を傾けつつも、自身の困惑を伝えようとする元カノに対し、マークは、彼女の伝えたい感情ではなく、表層的なコトバのあやのみに反応していきます。
あたかも、それは、彼女の台詞の論理的整合性を『デバッグ』するかのよう。

我々かて、こういった場で時折生じる誤字脱字や変換ミスによって生じるニュアンスの齟齬や、明らかな認識違いというものを指摘しないわけではないですが、それを面と向かって、毎回、機関銃のようにやられていたら、シャットアウトしたくなるのも当然だと思います。

なまじっか、天才的な頭の回転とプログラミングセンスを有するが故に、マークにとっては自身の周囲がスローモーションで動いて見えたに違いありません。
でも、それは、コンピューターに喩えれば、クロック数が早いだけの事。
いくら、CPUが高速でも、それに乗っかるソフトウェアがスカでは、コンピューターは、ただの箱にすぎません。

だから、元カノは、指摘します。『プログラマーとしては凄いが、人間としては駄目。』
このことがきっかけで、マークは、学内の全女性を敵に廻す、文字通りの『キラーサイト』を立ち上げることになりますが、何においても、人間を突き動かすのは、コンプレックスであるというのが、ちゃんと、後半の伏線として効いてきます。

しかし、ここで、注目すべきは、この『キラーサイト』の根本を作ったのは、彼ではないということです。

マークは、元カノを見返し、学校中をあっと言わせるためだけに、激情と酔いに任せて、その天才的プログラミングセンスを遺憾なく発揮。
学内のサーバーデーターをハッキングしまくり、コンテンツ(提示する中身)をかき集めます。
しかし、肝心の部分、『どっちがイケテルか判定するロジック』(アルゴリズム)を提示したのは、マークではなく、彼の親友/エドアルドでした。


マークは、(不正な手段で)材料をかき集め、手際良く切り刻む事は巧かったでしょうが、そもそも『レシピ』を作る能力には欠けていたのです。


もういちど、元カノの台詞を思い出してみましょう。
『プログラマーとしては凄いが、人間としては駄目。』


元カノが、マークに創造力を見出していたとしたら、『クリエーターとしては凄いが…』とか、せめて、『システムエンジニアとしては…』という台詞となって発せられたでしょう。


いやはや、オンナの直感は、実に鋭い。
マーク君、君は、最初からダメ出しされていたのだよ。


ところで、この映画では、Facebookの生い立ちとそもそものコンセプトについて、随分と柔らかな表現がされていたと思います。
字幕では「排他的」となってましたが、もっと根源的には「選民的」とすべきではなかったでしょうか。

ヨーロッパを追われた没落者が、新天地を舞台に、かつての祖先達がやったと同じ階層社会を組み上げ、それをネットの世界にまで拡大していこうと言うのは、実に皮肉にまみれています。
新しいテクノロジーが発明される度に、世の中は根本的に変わるかもしれないと思われながら、全くもって変わったようには見えません。

と申しますか、ネットワーク自体が、脳の延長線なのだから、そこに、本能が流れ込まないはずがないんですよね。

そして、マークは、純粋に『本能を利用すれば、サイトが拡大するぜ、うひゃひゃ』で終っていて、マークに取り憑いた連中(特にショーン・パーカー、あざといぜ)は、それを手段として利用するところを見据えていたという図式でしょう。


それに気づくのに、随分と長い時間を要してしまったというのが、この作品のオチというところなんでしょうが、黒兄貴的には、あの先をちゃんと暗転で締めてもらいたかったです。

なぜなら、いくら、偏狭な自尊心を傷つけられたのが動機とはいえ、場合によっては、名誉毀損で訴訟に持ち込まれるような事態を穏便に受け流されているのは、元カノのオトナの対応あっての事でしょう。

ですので、マークに必要なのは、本格的な挫折だと思うのです。

『プログラムはデバッグすれば治るが、人生は、取り返しのつかない事がある。』ということで…




余談)

これからご覧になる方は、このあたりが参考になるかも。
http://thinking-of-silicon-valley.blogspot.com/2010_11_06_archive.html

あと、コレは、かなり本質を突いた内容(マイミクvertigoさま御推薦)。
http://synodos.livedoor.biz/archives/1482931.html
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