mixiユーザー(id:4433310)

2009年04月02日00:50

213 view

【アイマス】アイドルマスター 千早SS『truth or lie』

※エイプリルフール記念 特別日記
(プロフにもリンクを貼っておくので、読みたくなったときにでも読んでみてください)

アイドルマスター 千早SS
『truth or lie』

  *

 今日は3月31日。
 明日は「エイプリルフール」なんて言われてネット上ではお祭りさわぎだが、そんな暇はない。といっても、うちの事務所は新入社員がいるわけでもなく、どこの企業でもやっているような入社式なんてものはない。千早はちょうど波に乗っているときなんだ。レッスンや営業などに時間を使ったほうがいい。

 デスクでメールチェックを済ませて一段落。外を見るともう夕暮れ時になっていた。コーヒーでも飲もうかと伸びをしてると、こんな会話が聞こえてきた――
「よしっ! 明日はホームページで、真が実は男の子だっていうウソを発表するぞー!」
「やめてくださいよ、プロデューサー。そんなのイヤです」
「チッチッチッ、真、わかってないな? こういうお祭り事は参加するに限るぞ」
「いや、そうじゃなくて。ボクが男だって言うことについて…」
「ああ、大丈夫だ。ウソとして上げた話題なのに、実際にそうだったらというファンの妄想談義になることうけあいだ!」
「そんなのイヤですよぉ」
「はーははは、そうと決まれば早速ホームページ作成に取りかからんとな」
「もう、またボクの話をきいてくれない。待ってくださいよ〜」
 菊地真――この事務所のアイドルの一人で、中性的な魅力で男性ファンだけでなく女性ファンも多い。プロデューサーはノリと勢いの激しい奴だ。

「エイプリルフール……か」
 ここ最近ずっと仕事詰めで、俺は今日もまだ仕事がたくさんある。お互い活力に溢れてたのしいからいいものの、全然休みがないのは確かに考えものだ。明日は久々の休み。せっかくのオフ日だから何かあったほうがメリハリがあっておもしろいよな。息抜きに何かウソでもついてみるか。
 …………うーん、いざウソをつこうなんて思っても、そうそうおもしろいものが浮かぶわけはない。
 こういうネタは、一度聞いたときはにわかに信じがたいけど本当なんだという空気を出しておいて、信じたところでやっぱりウソだと落とすくらいでないとおもしろくない。非現実的な日常の事柄で、でも最後にウソだと判らないとダメだし……。こういうもののセンスはないんだよなぁ。

  *

 明けて4月1日。昨夜仕事が終わったのは0時すぎ。その後眠い頭でいろいろ考えて、最後のほうはテンション壊れてたなぁ、あはは。でも、決めたぞ! 月初めの朝礼が終わったら呼び出して言おう。

「ごほん、では朝礼を終わる。今年度からも、しっかり頼むよ」
 社長の激励に皆が返事をする。今年度からもがんばらないとなっ! 俺も決意を新たに気を引き締める。
 朝礼が終わってぞろぞろと皆がレッスンや仕事に向かう。真のプロデューサーは昨日言ってた話を本当に実行するみたいだ、どうなることやら。俺は帰ろうとする千早を呼び止めた。
「千早、重大な話がある。ちょっと来てくれないか」
 なるべく神妙な面持ちで、低めのトーンで振る舞う。
 静かに二人きりになれそうな部屋に連れてきた。わざと顔をあわせようとせず、立ったまま背を向けている。
「どうしたんですかプロデューサー? わざわざこんなところまで連れてきて」

「ずっと黙っててごめん。実は、今日で活動停止が決まった」
 よし、出だしは大丈夫! もう少しためて言えばよかったか。こんなの、絶対嘘に決まってる。どうやって信じさせようか。
「……嘘……ですよね?」
 それでも千早は動揺しているようだ。よしよし、えーと次は何を言うんだったかな。
「しゃしゃ、社長の方針らしいんだ。確かにー、えーと、そのー、なんだ。アレだよ、アレ。関係がぬるくなってきたかなぁ…なんて」
 まずい! かなりたどたどしかったし、言ってて意味不明だぞ。大丈夫か?
 恐る恐る千早の顔を見てみようとすると、千早は黙ってうつむいている。一応大丈夫か。あと一押し必要だな。
「俺は続けたいけど、これから新しいプロデュースを会社としてやっていくためにも、節目を作らなきゃいけない。仕方ないんだ」
 これでどうだっ! 千早はまだ黙ったまま。よーし、そろそろネタバレを…
「……プロデューサーのお気持ちはわかりました。失礼します」
 そう言うなり千早は走り出してしまった、ドアを勢いよくあけて。あわてて手をつかもうとしたが空をつかん……何か冷たいものが手にあたった。これは、涙。まずいな、まさかここまであっさり信じてしまうとは。とにかく追いかけないとっ!

  *

 千早の足が早いのは言うまでもないが、ダメだ、完全に見失った。どうするかなぁ。携帯電話を鳴らしてみる……が、つながるはずもなく。あ〜、ミスったなぁ、どうやって探すか。
「どうしたんですか? 千早ちゃん、さっき猛スピードで出ていきましたけど」
 玄関先でうなだれていた俺にそう声をかけてきたのは、春香だった。
 俺は事情を説明した。
「それは間違いなくプロデューサーさんが悪いです! 私が千早ちゃんの立場だったら、どんなに悲しいか」
「面目しだいもございません」
「どこに行っちゃったかわからず困ってるわけですね」
「そのとおりです」
「とにかく探すしかないですね。私も協力しますから、手分けして探しましょ」
「ありがとう、助かる」

 千早の行きそうな場所をいろいろと探してみるか。
 …………全然見つからない。かれこれ3時間くらい経つ。ああ、おおごとになってしまった。事故に巻き込まれたりしてないといいんだが。
 ダメだ。考えても仕方ない。立ち上がって動こうとしたそのとき、電話が鳴った。かけてきたのは……春香だ。
「もしもし、天海春香です。感謝してください。千早ちゃん、今、家の近くの公園にいるみたいです」
「ホントか!? 近くというと、たぶんあの辺りか」
「自然に聞き出すの大変だったんですからね」
「恩に切るよ」

 電話を切ると、すぐに車のエンジンを入れ直してアテの場所へと向かう。千早の家の近く、といっても実際はそんなに近くない所もあるのだが、探せない所じゃない。見つかってくれ、千早…………

  *

 車をコインパーキングに止め、走って公園を回っていく。2、3探したところで見つからず、後あるとすれば、この大きな公園くらいか。散歩する人や遊ぶ人が多い庭園になっている。
「あれは」
 見覚えのある後姿が目に飛び込んでくる。俺は反射的に走り出していた。すぐに千早も走り始める。ここで逃げられたらまたどうなるかわからない。心臓が痛いけど、全力で体を動かし、肩を入れて右手を伸ばし……パシッ! つかんだ!
「千早、待ってくれ!」
「きゃっ、放してください」
 千早は必死に振り払おうとする。
「俺だ、プロデューサーだ」
「プロデューサー。なんですか、こんなところまでいきなり」
「ちゃんと説明しなくちゃいけないから。嘘なんだ! 活動停止なんて嘘なんだ」
「……え?」
 千早の動きが止まった。
「ごめん。今日はエイプリルフールだから、千早を驚かせようと思って、その……ごめんっ」
 俺は深々と頭を下げた。情けないが、自業自得だ。
「エイプリルフール、エイプリルフール……くす、くすすすす」
 千早は小さく笑い出した。
「あ、あれ? もっと怒られると思ってたんだが」
「たしかに、あの時はショックで悲しかったですけど……。頭の整理して切り替えるために、トレーニングをかねて走っていただけです。活動停止になった私の原因は何か、活動停止にならない方法はないか、本当に活動停止だったらどうしようか」
 なんだ、そうだったのか。俺はてっきり……あれ? 安心したら急に力が、抜けて。
 俺はその場で崩れ落ちた。腰に力が入らない。
「でも、良かったです。活動停止がウソで」
「ウソでももっとマシなウソをつくべきだったな」
「まさか、ウソっていうのが嘘なんてことはないですよね?」
「ああ、そんな余裕はないさ」
 正直なところ、これ以上、つく必要もないウソをつく得はないし、余裕がない。それを聴いて、千早にも安堵の様子がみられた。
「あの……実は、その、私も、プロデューサーに、話さないよいけないことが」
 それまで吹いていた春風や雑踏音が一瞬でやむ感覚を思える。千早のまじめな面持ち。なんだろう、この嫌な予感。千早を見上げてことばを待つ。
「私、歌以外にも自分を見つけました。だから、もうプロデューサーは要りません」

 何を言っているのかわからなかった。わかるわけがない。千早をプロデュースしてきて1年ちょっと。千早が歌以外の魅力も表出できるようになったのは事実だが、俺のことを要らないって。俺のことが要らなくなっても、千早が立派に生きてくれるならそれでいい。けど、今はまだそんなときじゃない。まだまだ一緒にやりたいことがある。なのに、なのにっ! 千早は目を閉じて深呼吸、すると表情が一変、笑顔になった。
「プロデューサー……ウソです」
「え、今なんて……ええっ!!」
 やられた! まんまとだまされた。あ、今日はエイプリルフールだ。何をいまさら再認識してるんだ俺は。あっけにとられて、何がなんだかもうわからなくなってるな。
「今の私にはまだプロデューサーが必要です。もっと歌いたい。もっといろんなことを知りたいから。今日ウソをついたおかえし。これでおあいこですね」
 ああ、そうだ、千早はこういうジョークを言えるようになったんだった。ちゃんと成長してくれたなぁ。けどこういう状況だと、うれしいやら悔しいやら……もちろんうれしいんだが、なんかなー
「さあ、帰りましょ、プロデューサー」
「…すまない、手を貸してくれないか」

 4月1日は新たな出発の日。心機一転、しっかり取り組んでいかないとな。俺はまだまだ千早と歩いて、いや、走っていくぞ!
 「ウソから出た○○」なんてことばがあるが、何がホントで何がウソか……それが判るのはもっと先の話、かもしれない――



○<あとがき>

ついカッとなって書いた、後悔はしていない。
今日の昼に思いついた一発ネタです。練りもそんなにできてない。書くの早くない私がここまで書き上げるのは苦労した〜。1日に間に合ってねーw
あんまり長くしてもダメなので描写も少なめ。会話を多めにして読みやすくしたつもりです(汗)
けど、テキストで9k弱あるのな、なげーだろ(ぉぃ

プロデューサーの一人称視点。
作品の時間軸は、私のSS『Lyric image』のラスト(2月)からちょっと経ったところです。
ひとつ大きな事を成し遂げて、お互いの信頼度も千早の感情表出もアップしている状態。
プロデューサーがセンスなく千早にウソをつこうとして、最終的には千早のほうが1枚も2枚も上手で1本取られたという流れ。プロデューサーが要らないというのはウソですが、歌以外をというのははたしてどうなのですかねw

私の書いたSS『Lyric image』はまだまだ在庫がありますw
テーマも描写もこんなに軽くはない文章ですが、オフセットP28で200円。興味ある方はいつでもご一報を〜
↑宣伝乙ww
0 1

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する