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ちいさなおくりもの

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詳細 2014年3月19日 12:14更新

2006年クリスマスイブ、横浜はみなとみらいにて、音楽と器楽演奏によって展開されるイベント『音とコトバと物語』。
その中で私が書いた作品、『ちいさなおくりもの』。
現在絵本出版化に向けて動き始めています。
販売用には、絵本とナレーション入り音楽CDをセットで発売予定。
内容の方をmixi内に掲載致します。

『ちいさなおくりもの』
作・永野隆満、作曲・永野隆満

1.街は間もなく迎えるクリスマスに備えて、一つまた一つと飾り付けられていく。
これは、そんな街から少し離れた森に住む、小さな小さな生き物達の物語。

2.ある日僕は恋をした。おたまじゃくしの『リリ』に。
だけど恥ずかしくてホントの気持ちを打ち明けられなかった。
だって僕は、弱虫の恥ずかしがり屋だったから。
いつもそばにいて、お話してそれだけで良かった。
それだけで。

3.ある日、いつもの様にリリのいる池の畔へ行ったんだ。
もちろんリリとお話するためにだよ。
リリは僕にこんな事を言った。
『私大人になるのが怖いの。』
リリの「綺麗な瞳」が悲しそうな瞳へと変わっていた。
『どうして?』
僕は聞き返した。
『わたし大きくなったらカエルになっちゃう。醜いカエル。皆に嫌われちゃう。ヤダヨ…』
その時の僕は何も言えなかった。何も…
大人になるってどういう事なのか僕にはまだよく分からなくて。
ホントは沢山沢山言いたい事があったんだと想うんだけど、でも何も言えなかったんだ。


4.やがて、時間は流れていって。季節も流れていって。
僕は大人になっていた。そしてあの時、大人になる事を拒んでいたリリは、ある日を境に姿を見せなくなっていた。
僕は毎日あの湖畔へ行った。今日も昨日も。一昨日だって。
会いたかった…また会ってお話したかった。
僕らがまだ子供だった頃の思い出。
凄く楽しかったから。
だから、だから…会いたかった。
『リリ〜』
『リリ〜』
何度も何度も呼んだ。
声が枯れる程何度も何度も呼んだ。
今日こそ会えるかな?って。何度も何度も呼んでみたけど、
結局リリはいつまでたっても姿を表さないままだった。
僕は、手紙を書く事にした。
精一杯の文字で、精一杯の想いで。
そして、その手紙を湖畔の岸辺にそっと置いた。
辺りはすっかり日も暮れていて、出会った頃よりも大分寒くなっていた。
もうすぐ雪が降るのだろうか?
僕は湖畔を後にした。



6.それから更に長い長い時間が立った。ふと、岩場の影から、姿を見せる生き物が。
リリだった。
緑色の体。手も生え、足も生え。子供の頃の面影はほとんど無くて。
唯一「綺麗な瞳」はそのまんまなんだけど。

7.湖畔の岸に置かれた手紙。もうあの人の姿は見えない。
自分は変わった。変わってしまった。
あの人が大人になったのと同じで。自分も大人になっていた。
見られたくなかった。
リリもあの人の事が好きだったから。たけど…
リリも同じ位恥ずかしがりやさんだったから、ホントの気持ちを素直に打ち明けられないまま、大人になってしまった。
『ヤダヨ…』
そう呟いてみた。
だけどもうリリの側にあの人はいなかった。
そっと置かれた手紙。辺りを気にしながら、恐る恐る拾った。
その手紙には丁寧な文字でこう書かれていた。

8.リリへ
『会えなかったから、手紙を書きました。分かって貰えるかは分からないんだけど。今日は特別な日だから手紙を書きました。
僕ね、恥ずかしくてホントの気持ちを打ち明けられなかったんだ。
僕は弱虫の恥ずかしがり屋だから。
いつもそばにいて、お話して、それだけで良かったんだ。それだけで…

僕は、「カブトムシ」
僕が大人である時間はたった数ヶ月で。
リリが大人でいる時間のほんの少しだけしか一緒にいられない。
大人になってもあの時のままだよ。
あの時と同じ気持ちのまんまなんだよ。
君に会いたくて。いつもいつも会いたくて。
だけどもう行かなくちゃ。
この手紙をリリが読む頃には僕はもう、


バイバイしなきゃいけない。


だから、その前に貴方へ伝えたかった。
うまく言えないけど…僕、リリが好きなんだ。大好きなんだ!
子供の頃も大人になった今でも。出ておいで怖がらないで。
大人になるのを怖がらないで。
リリはリリなんだ。
いつまでたってもリリはリリのまんまなんだ。


9.涙が一気に溢れてきて止まる事はなかった。
リリは走った。森の中を、もう訳も分からなくなる位走った。
ずるいよ…ヤダヨ…ヤダヨ…。
後悔した。会いたかった。
もう一度会いたかった。一目だけでいいから。
だけどいくら探しても、もう二度とその姿を見付ける事はできなかった。
時間だけが虚しく過ぎ去っていって、手紙を握り締めリリは一晩中泣いた。
そしてあの人がくれた小さな優しさと、あの人が居てくれたその
愛しさを知ったのだった。


10.灯りがポツポツ。街は素敵な夜だった。
だって空からは真っ白い雪が降りそぞいでいたし、全ての子供達がサンタからの贈り物を今か今かと心待ちにしているから。
街がクリスマスで賑わう頃、森の奥の方でも、静けさと共に
小さな小さな恋は生まれて、そして…
消えていった。


11.大人になった貴方へ。
いつか大人になる貴方へ。
少し難しい事だから。
きっと大切な事。
ソレが大切な事だと気付くのには少し時間がかかるかもしれません。
だけど、
ソレの暖かさに触れた時。
ソレの優しさに触れた時。
貴方のその隣に居る人も、
貴方のその心の中に居る人も、
凄く素敵な事のように思えてくるはずだから。
大切に、大切にしていて下さい。
貴方と出会ってくれた事が、
きっとその人が貴方にくれた
小さな、小さなおくりものなんだと思います。


おしまい

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2007年10月10日

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