原始仏典コミュの生起相応　「苦病老死」

（『南伝大蔵経14　相応部経典3』大蔵出版　P369−373　に相当）


相応部経典＞第3 犍度篇



　　　　　第五　生起相応［ウッパーダ・サンユッタ］

　　　第一　眼
312．サーヴァッティ因。
　比丘たちよ、眼が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　耳が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　鼻が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　舌が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　身が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　意が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　比丘たちよ、眼が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　耳が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　鼻が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　舌が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　身が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　意が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。

　　　第二　色
313．サーヴァッティ因。
　比丘たちよ、色が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　声が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　香が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　味が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　触が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　法が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　比丘たちよ、色が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　声が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　香が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　味が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　所触が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　法が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。

　　　第三　識
314．サーヴァッティ因。
　比丘たちよ、眼識が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　耳識が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　鼻識が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　舌識が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　身識が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　意識が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　比丘たちよ、眼識が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　耳識が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　鼻識が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　舌識が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　身識が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　意識が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。

　　　第四　触
315．サーヴァッティ因。
　比丘たちよ、眼触が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　耳触が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　鼻触が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　舌触が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　身触が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　意触が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　比丘たちよ、眼触が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　耳触が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　鼻触が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　舌触が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　身触が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　意触が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。

　　　第五　触生
316．サーヴァッティ因。
　比丘たちよ、眼触によって生じる受が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　耳触によって生じる受が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　鼻触によって生じる受が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　舌触によって生じる受が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　身触によって生じる受が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　意触によって生じる受が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　比丘たちよ、眼触によって生じる受が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　耳触によって生じる受が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　鼻触によって生じる受が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　舌触によって生じる受が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　身触によって生じる受が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　意触によって生じる受が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。

　　　第六　想
317．サーヴァッティ因。
　比丘たちよ、色想が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　声想が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　香想が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　味想が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　触想が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　法想が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　比丘たちよ、色想が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　声想が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　香想が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　味想が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　触想が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　法想が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。

　　　第七　思
318．サーヴァッティ因。
　比丘たちよ、色思が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　声思が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　香思が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　味思が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　触思が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　法思が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　比丘たちよ、色思が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　声思が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　香思が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　味思が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　触思が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　法思が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。

　　　第八　愛
319．サーヴァッティ因。
　比丘たちよ、色愛が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　声愛が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　香愛が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　味愛が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　触愛が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　法愛が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　比丘たちよ、色愛が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　声愛が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　香愛が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　味愛が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　触愛が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　法愛が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。

　　　第九　界
320．サーヴァッティ因。
　比丘たちよ、地界が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　水界が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　火界が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　風界が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　空界が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　識界が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　比丘たちよ、地界が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　水界が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　火界が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　風界が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　空界が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　識界が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。

　　　第十　蘊
321．サーヴァッティ因。
　比丘たちよ、色が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　受が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　想が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　行が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　識が生じ住し完成し出現すれば、苦は生じ病は住し老死は出現する。
　比丘たちよ、色が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　受が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　想が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　行が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。
　識が滅し寂静となり消滅すれば、苦は滅し病は寂静となり老死は消滅する。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　生起相応　　終

　　　その頌
　　　　眼と色と識、触と受
　　　　想と思と渇愛、界と蘊の十。


　　　　　『南伝大蔵経14　相応部経典3』大蔵出版　P369−373　に相当




識：ヴィンニャーナ viññāṇa　識界の「識」もこの単語
触：サンパッサ samphassa
触生：サンパッサジャ samphassaja
受：ヴェーダナー vedanā
想：サンニャー saññā
思：サンチェータナー sañcetanā 意思、意志、故思
愛：タンハー taṇhā 渇愛
界：ダートゥ dhātu 領域
蘊：カンダ khandha まとまり

空：アーカーサ ākāsa 虚空、色即是空の「空」［スンニャー suññā 空無］とは異なる
触：ポッタッバ phoṭṭhabba 触、所触、触れられるべきもの、
　　サンパッサは六内処と六外処の接触の意、感受の原因
　　ポッタッバは身によって接触する対象、六境の一つ


［第一　眼　のパーリ語原文］

1. Cakkhusuttaṃ
312. Sāvatthinidānaṃ . ‘‘Yo kho, bhikkhave, cakkhussa uppādo ṭhiti abhinibbatti pātubhāvo, dukkhasseso uppādo, rogānaṃ ṭhiti, jarāmaraṇassa pātubhāvo.
Yo sotassa uppādo ṭhiti…pe…
yo ghānassa uppādo ṭhiti…
yo jivhāya uppādo ṭhiti…
yo kāyassa uppādo ṭhiti…
yo manassa uppādo ṭhiti abhinibbatti pātubhāvo, dukkhasseso uppādo, rogānaṃ ṭhiti, jarāmaraṇassa pātubhāvo.
Yo ca, bhikkhave, cakkhussa nirodho vūpasamo atthaṅgamo, dukkhasseso nirodho, rogānaṃ vūpasamo, jarāmaraṇassa atthaṅgamo.
Yo sotassa nirodho…pe…
yo ghānassa nirodho…
yo jivhāya nirodho…
yo kāyassa nirodho…
yo manassa nirodho vūpasamo atthaṅgamo, dukkhasseso nirodho, rogānaṃ vūpasamo, jarāmaraṇassa atthaṅgamo’’ti.


　　　　　生起相応　　完