原始仏典コミュの律蔵　「不浄戒6」　性行為の実例　

「（一〇）

　その時、一人の比丘が猿と不浄法を行じた。彼に後悔の心が起きた。「世尊は学処を制された。私はもしかしたら波羅夷の罪を犯したのではないか」と。世尊にこのことを言った。・・・乃至・・・。「比丘よ、あなたは波羅夷罪を犯した」と。
　その時、多くのヴェーサーリ出身のヴァッジ族の比丘は戒を捨てず戒に弱いことを告げずに不浄法を行じた。彼らに後悔の心が起きた。「世尊は学処を制された。私たちはもしかしたら波羅夷の罪を犯したのではないか」と。世尊にこのことを言った。・・・乃至・・・。「比丘たちよ、あなたたちは波羅夷罪を犯した」と。
　その時、一人の比丘が「このようなものは私には不犯であろう」と居士の性器によって不浄法を行じた。彼に後悔の心・・・「・・・波羅夷である」と。
　その時、一人の比丘が「このようなものは私には不犯であろう」と、裸になって不浄法を行じた。彼に後悔の心・・・「・・・波羅夷である」と。
　その時、一人の比丘が「このようなものは私には不犯であろう」と、草衣を着て・・・木皮衣を着て・・・木板衣を着て・・・髪欽婆羅衣（髪を編んだ衣）を着て・・・毛欽婆羅衣（毛を編んだ衣）を着て・・・梟翅衣（鳥の羽根でつくった衣）を着て・・・鹿皮衣を着て不浄法を行じた。彼に後悔の心・・・「・・・波羅夷である」と。
　その時、一人の行乞の比丘が床の上に臥す少女を見て、性欲を起こし、親指を性器に入れ、その女は死んだ。彼に後悔の心・・・。「比丘よ、波羅夷を犯してはいない。僧残を犯した」と。
　その時、一人の青年が、ウッパラヴァンナー（蓮華色）比丘尼に恋をした。時に、その青年は、乞食のために村に行ったウッパラヴァンナー比丘尼の草屋に入って隠れて坐った。ウッパラヴァンナー比丘尼は食後に乞食から帰って足を洗い、草屋に入って床座に坐った。その時、その青年はウッパラヴァンナー比丘尼を捉えて犯した。ウッパラヴァンナー比丘尼は比丘尼たちにこのことを告げ、比丘尼たちはまた比丘たちにこのことを告げた。比丘たちは世尊にこのことを告げた。「比丘たちよ、快楽を感じなければ不犯である」と。
　その時、一人の比丘に女性器が生じて、世尊にこのことを言った。「比丘たちよ、その和尚・その進具・その出家して経た年数の比丘尼たちの中に通じるのを許す。比丘に対する罪であって比丘尼と共通であるもの、そのような罪は比丘尼においても罪である。比丘の罪であって比丘尼と共通でないもの、そのような罪は不犯である」と。
　その時、一人の比丘尼に男性器が生じて、世尊にこのことを言った。「比丘たちよ、その和尚・その進具・その出家して経た年数の比丘たちの中に通じるのを許す。比丘尼に対する罪であって比丘と共通であるもの、そのような罪は比丘においても罪である。比丘尼の罪であって比丘と共通でないもの、そのような罪は不犯である」と。
　その時、一人の比丘が「このようなものは私には不犯であろう」と、母と・・・娘と・・・妹と不浄法を行じた。彼に後悔の心が生じた。・・・。世尊にこのことを言った。「比丘よ、あなたは波羅夷罪である」と。
　その時、一人の比丘がもとの妻と不浄法を行じた。彼に後悔の心・・・「・・・波羅夷である」と。
　その時、一人の比丘にせむしの者がいた。彼は憂苦に壊されて自らの性器を口にくわえた。彼に後悔の心・・・「・・・波羅夷である」と。
　その時、一人の比丘に長い性器のものがいた。彼は憂苦に壊されて自らの性器を口にくわえた。彼に後悔の心・・・「・・・波羅夷である」と。
　その時、一人の比丘は死体を見た。その身の性器の周りに傷があった。彼は「このようなものは私には不犯であろう」と、その性器の中に自らの性器を入れて傷から出した。彼に後悔の心・・・「・・・波羅夷である」と。
　その時、一人の比丘は死体を見た。その身に性器の周りに傷があった。彼は「このようなものは私には不犯であろう」と、傷の中に自らの性器を入れて、その性器から出した。彼に後悔の心・・・「・・・波羅夷である」と。
　その時、一人の比丘は性欲が盛んであって泥でできた女の像の性器部分に性器を触れた。彼に後悔の心・・・「比丘よ、波羅夷ではない。突吉羅（とっきら、「dukkaṭa」ドゥッカタ、悪作、自分の心の中で罪を恥じて以後気をつける）である」と。
　その時、一人の比丘は性欲が盛んであって木でできた女の像の性器部分に性器を触れた。彼に後悔の心・・・「・・・突吉羅である」と。
　その時、王舍城で出家したスンダラという名の比丘が車道によって進んで行った。一人の女性がいて、「大徳、しばらく待ってください。私は敬礼します」と、敬礼しつつ（比丘の）下の衣をあげて口に性器をくわえた。彼に後悔の心が生じた。・・・「比丘よ、あなたは快楽を感じたか」。「世尊、私は快楽を感じませんでした」。「比丘よ、快楽を感じなければ不犯である」と。
　その時、一人の女性が比丘を見てこう言った。「こちらです、大徳。不浄法を行ないましょう」と。「やめなさい、妹。それは許されない」。「こちらです、大徳。私がします。あなたは行わないでください。そうすれば、あなたには不犯であるでしょう」と。この比丘はそのようにした。彼に後悔の心が生じた。・・・「比丘よ、あなたは波羅夷罪を犯した」と。
　その時、一人の女性が比丘を見てこう言った。「こちらです、大徳。不浄法を行ないましょう」と。「やめなさい、妹。それは許されない」。「こちらです、大徳。あなたがしてください。私は行わないでしょう。そうすれば、あなたには不犯であるでしょう」と。この比丘はそのようにした。彼に後悔の心が生じた。・・・「比丘よ、あなたは波羅夷罪を犯した」と。
　その時、一人の女性が比丘を見てこう言った。「こちらです、大徳。不浄法を行ないましょう」と。「やめなさい、妹。それは許されない」。「こちらです、大徳。中に触れて外にもらしてください。・・・外に触れて中にもらしてください。そうすれば、あなたには不犯であるでしょう」と。この比丘はそのようにした。彼に後悔の心が生じた。・・・「比丘よ、あなたは波羅夷罪を犯した」と。
　その時、一人の比丘が墓場に来て、まだ喰われていない死体を見て、それによって不浄法を行じた。彼に後悔の心・・・「・・・波羅夷である」と。
　その時、一人の比丘が墓場に来て、多くはまだ喰われていない死体を見て、それによって不浄法を行じた。彼に後悔の心・・・「・・・波羅夷である」と。
　その時、一人の比丘が墓場に来て、多くすでに喰われた死体を見て、それによって不浄法を行じた。彼に後悔の心・・・「・・・波羅夷ではない。偸蘭遮である」と。
　その時、一人の比丘が墓場に来て、切られた頭を見て、開いた口の中に性器を入れて触れた。彼に後悔の心・・・「・・・波羅夷である」と。
　その時、一人の比丘が墓場に来て、切られた頭を見て、開いた口の中に性器を入れて触れなかった。彼に後悔の心・・・「・・・波羅夷ではない。突吉羅である」と。
　その時、一人の比丘が一人の女性に恋をした。その女性が死んで墓場に棄てられ、その骨が分散していた。時に、その比丘は墓場に行って、その骨を集めて女性器を作り、性器を入れた。彼に後悔の心・・・「・・・波羅夷ではない。突吉羅である」と。
　その時、一人の比丘が龍の女と不浄法を行じた。・・・ヤッカと・・・餓鬼と・・・去勢者と不浄法を行じた。彼に後悔の心・・・「・・・波羅夷である」と。
　その時、一人の比丘がいて性器が損なわれていた。彼は「私は楽や苦を受けない。このようなものは私に不犯であるだろう」と不浄法を行じた。・・・世尊にこのことを言った。「比丘たちよ、あの愚か者が感受しても、感受しなくても、波羅夷である」と。
　その時、一人の比丘が「女性の不浄法を行じよう」と、触れた瞬間に後悔の心が生じた。・・・「比丘よ、波羅夷ではない。僧残である」と。
　その時、一人の比丘がバッディヤのジャーティヤー林で日中の休息をして横になって、彼の性器の全体が風に揺れていた。一人の女性がこれを見て、性器に坐って好きなようにして去った。比丘たちは、（精液が）漏れるのを見て、世尊にこのことを言った。「比丘たちよ、五つの事によって性器は勃起する。性欲により、大便により、小便により、風により、ウッチャーリンガ虫が噛むことによって。比丘たちよ、この五事によって性器は勃起する。比丘たちよ、あの比丘が性欲によって性器が勃起するということ、この処（ことわり）はない。比丘たちよ、あの比丘は阿羅漢である。比丘たちよ、あの比丘は不犯である」と。
　その時、一人の比丘が舍衛城アンダ林で日中の休息をして横になっていた。一人の牧牛の女がこれを見てその性器に坐った。その比丘は入れつつあるときに快楽を感じ、入り終わって快楽を感じ、入ったままであるときに快楽を感じ、出すときに快楽を感じた。彼に後悔の心が生じた。・・・。「比丘よ、あなたは波羅夷罪を犯した」と。
　その時、一人の比丘が舍衛城・・・一人の牧羊の女がこれを見て・・・一人の薪を取る女が・・・一人の牛糞を取る女がこれを見てその性器に・・・「波羅夷である」と。
　その時、一人の比丘がヴェーサーリの大林で日中の休息をして横になっていた。一人の女性がこれを見て、その性器に坐って好きなようにして、傍らにいて笑って立っていた。その比丘は目覚めてその女性にこう言った。「あなたがこれをしたのか」と。「そうです。私がしました」と。彼に後悔の心が生じた。・・・。「比丘よ、あなたは快楽を感じたのか」。「世尊、私は快楽を感じませんでした」と。「比丘よ、知らないのは不犯である」と。
　その時、一人の比丘がヴェーサーリの大林で日中の休息をして、木によりかかって臥していた。一人の女性がこれを見てその性器に坐った。その比丘はただちに起き上がった。彼に後悔の心が生じた。・・・。「比丘よ、あなたは快楽を感じたのか」。「世尊、私は快楽を感じませんでした」と。「比丘よ、快楽を感じなければ不犯である」と。
　その時、一人の比丘がヴェーサーリの大林で日中の休息をして、木によりかかって臥していた。一人の女性がこれを見てその性器に坐った。その比丘は起きて押しのけた。彼に後悔の心が生じた。・・・。「比丘よ、あなたは快楽を感じたのか」。「世尊、私は快楽を感じませんでした」と。「比丘よ、快楽を感じなければ不犯である」と。
　その時、一人の比丘がヴェーサーリの大林の重閣講堂で日中の休息をし、戸を開いて臥して彼の性器の全体が風に揺れていた。その時、多くの女性が香・華・鬘を持って、精舎を観光しようと僧園に来ていた。そのおṭ期、その女性たちはその比丘を見て、性器に坐って好きなようにして、「これこそ実に最上の男です」と言って、香華を供えて去った。比丘たちは（精液が）漏れたのを見て、世尊にこのことを言った。「比丘たちよ、五事によって性器は勃起する。・・・比丘たちよ、その比丘は不犯である。比丘たちよ、日中に三摩地に入る者は、戸を閉じて入るを許す」と。
　その時、一人のバールカッチャの比丘が夢にもとの妻と不浄法を行じ、「私は非沙門だ、サンガから去ろう」と、バールカッチャに行く途中、長老ウパーリを見て、このことを言った。長老ウパーリは言った。「尊者、夢によるものは不犯である」と。
　その時、王舍城にスバッバーという名のブッダを信じる優婆夷がいた。その女はこのような信を持っていた。「不浄法を施す者は、最上の布施をなすものである」と。その女性は比丘を見てこう言った。「来てください、尊者。不浄法をしましょう」と。「やめなさい、妹。それは許されない」。「来てください、尊者。胸の内を触れてください。そうすればあなたは不犯でしょう」と。・・・「来てください、尊者。へそに触れてください・・・お腹に・・・腰に・・・首に・・・耳の穴に・・・髪の毛のふさに・・・指の間に触れてください」・・・「来てください、尊者。私は手によって行って漏らさせましょう。こうすれば、あなたは不犯でしょう」と。その比丘はそうした。彼に後悔の心が生じた。「比丘よ、波羅夷ではない。僧残を犯した」と。
　その時、舍衛城にサッダーという名のブッダを信じる優婆夷がいた。その女性は、このような信を持っていた。「不浄法を施す者は、最上の布施をなすものである」と。その女性は比丘を見てこう言った。「来てください、尊者。不浄法をしましょう」と。「やめなさい、妹。それは許されない」。「来てください、尊者。胸の内を触れてください。・・・来てください、尊者。私は手によって行って漏らさせましょう。そうすればあなたは不犯でしょう」と。その比丘はそうした。彼に後悔の心が生じた。「比丘よ、波羅夷ではない。僧残を犯した」と。
　その時、ヴェーサーリにてリッチャヴィ族の青年たちは、比丘を捉えて比丘尼と行わせた。ともに快楽を感じた。ともに擯滅（ひんめつ、サンガ追放）させなさい。ともに快楽を感じなければ、不犯である。
　その時、ヴェーサーリにてリッチャヴィ族の青年たちは、比丘を捉えて式叉摩尼と行わせた。・・・沙彌尼と行わせた。ともに快楽を感じた。ともに擯滅（ひんめつ、サンガ追放）させなさい。ともに快楽を感じなければ、不犯である。
　その時、ヴェーサーリにてリッチャヴィ族の青年たちは、比丘を捉えて遊女と・・・去勢者と・・・人妻と行わせた。ともに快楽を感じた。ともに擯滅（ひんめつ、サンガ追放）させなさい。ともに快楽を感じなければ、不犯である。
　その時、ヴェーサーリにてリッチャヴィ族の青年たちは、比丘たちを捉えて相互に行わせた。ともに快楽を感じた。ともに擯滅（ひんめつ、サンガ追放）させなさい。ともに快楽を感じなければ、不犯である。
　その時、一人の老いた出家の比丘がもとの妻を見ようとして行った。その女性は「来てください、尊者。私たちは楽しみましょう」と捉えた。その比丘は退いて倒れ、その女性は上に乗って性器に坐った。彼に後悔の心が生じた。・・・世尊にこのことを言った。「比丘よ、あなたは快楽を感じたのか」。「世尊、私は快楽を感じませんでした」と。「比丘よ、快楽を感じなければ不犯である」と。
　その時、一人の比丘が阿蘭若（林）に住んでいた。幼い鹿が来て彼の小便を飲もうとして性器を口にくわえた。その比丘は快楽を感じた。彼に後悔の心が生じ、世尊にこのことを言った。「比丘よ、あなたは波羅夷罪ではない」と。
　
　第一波羅夷竟る」　　

　　　『南伝大蔵経1　律蔵1』大蔵出版　　P53-63


　　　　　　　　　　　　

　　　　性行為の禁止　　　　　完