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ビジネスとしての農業コミュの植物工場(野菜工場) 一問一答

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Q1. 日本の食料自給率が40%と低いのは、農業の工業化が進んでいないためだといわれています。たとえば植物工場のように、年に10回以上も収穫できるような効率的な生産方式に変えるべきだと報道されていますが、植物工場の実力はどんなものでしょうか。
A1. 植物工場と聞いてみなさんが思い浮かべるイメージは、太陽光の差し込まない閉鎖空間でLED(発光ダイオード)などの人工光だけを使って栽培するものだと思われます。ですが、こうした閉鎖型の植物工場には、あまり過大な期待をしない方がよいでしょう。植物工場には5つの問題があるからです。

Q2. どんな問題ですか?
A2. 1)人工光は光が弱い、2)エネルギーコストが大きい、3)植物の生育スピードは最速でも20日間、4)植物は「動かせない」、5)農産物は安くないと売れない、という問題です。

Q3. 人工光の光が弱いというのはどういうことですか?
A3. たとえば真夏の太陽光は10万ルクス、真冬でも5万ルクスありますが、蛍光灯の明るい室内でも2千ルクス程度です。いかに暗いか、よく分かるでしょう。野菜はその名の通り、屋外のサンサンと降り注ぐ太陽の光で育つ作物です。トマトなどは冬の太陽光(5万ルクス)では物足りないくらいですから、人工光(2千ルクス)では全然足りません。イネもそうです。人工光で育てられるのは、暗いところでもどうにか育つレタスくらいです。植物工場がテレビで紹介されるとき、決まってレタスが登場するのはこのためです。

Q4. でも、イネやトマトを育てている映像を見たことがありますよ。
A4. 金に糸目をつけなければ、イネやトマトも育てることが何とか可能です。まず、人工光でトマトなどを育てるには、光源をできるだけ野菜に近づけて光を強く当てることが必要です。ところがそうすると、人工光の発する熱で野菜が焼けてしまいます。このため冷房が必要になるのですが、これが非常に高くつきます。やむなく、冷房費を節約するために人工光と野菜の距離をとると、今度は光が弱くなってしまいます。光を近づけると冷房費が高くつき、冷房費をケチると弱い光でガマンしなければならず、ジレンマに陥ります。

 また、冷房の風もくせ者です。野菜に冷たい風が当たると生育が悪化してしまうので、構造を工夫する必要があり、工事費が跳ね上がります。こんないろいろな面倒があるので、費用対効果を考えると、イネやトマトを栽培するのは割に合いません。植物工場でレタスの栽培が多いのは、このためです。テレビでよく紹介される地下農園は、「農業のディスプレー(陳列棚)」としての役割があり、コスト度外視で取り組んでいますから、トマトの栽培も可能です。もし商業ベースに乗せようとするなら、トマトのような強光を必要とする野菜の栽培は、無謀といえるでしょう。

Q5. LED(発光ダイオード)ならどうですか?蛍の光にたとえられるほど、熱を発さず、光の変換効率が高いと聞いたことがあります。
A5. 触ってみると分かりますが、実際にはLEDの基盤は、とても熱くなります。どの人工光を使っても、明るいものほど熱くなります。現在、電気を光に変換する効率はどの人工光源でも2割程度です(1ワットあたり130ルーメン程度。100%変換した場合の理論的効率なら1ワットあたり683ルーメン)。つまり、8割は熱となっているということです。遠ざければ光が弱く、近づければ熱い、という人工光の宿命は、LEDも逃れることができません。一定以上の距離を取らないと野菜が焼けてしまうことを考えると、やはり「人工光は光が弱い」ということになってしまいます。

Q6. では、レタスの栽培なら植物工場は露地栽培と比べてずっと効率的に栽培できるのですね。
A6. とても効率的とは言えないと思います。2番目の欠点として指摘した、エネルギーコストが大きすぎるからです。その分、金銭面のコストも非常に大きくなるので、効率的といえるかどうか分かりません。
 露地栽培では太陽の光ですから無料ですし、エネルギーコストもかかりません。畑を耕すだけですから設備費もいりません。ところが植物工場だと人工光源を光らせる電気代も必要ですし、冷房が欠かせないので、その分コストがかかります。エネルギーコストも金銭面のコストも、植物工場は不利だと言えます。

Q7. しかし植物工場は1年に10回以上も収穫が可能なのに対して、露地栽培では1、2回だけだといいます。生産性の高さでコストを吸収できるのでは?
A7. 生産性の高さがコストを吸収しきれないケースが多いので、注意が必要です。ある企業が中東に販売する予定の野菜工場のケースを見てみましょう。この野菜工場ではレタスを年に12〜14回も収穫できるそうで、1万株を栽培するサイズの工場で50億円の建設費用がかかるそうです。計算すると、レタス1株あたり3571円の建設コストがかかります(10年工場を稼働させた場合)。これに運転コストを考慮すると、レタス1株4000円はかかります。中東の人はお金持ちだからこれでよいのかもしれませんが、これだけ高いレタスを買える日本人は、ほとんどいないでしょう。

 そもそも、「露地野菜では年に1、2回しか収穫できない」というのは誤解を招きやすい表現です。レタスなど特定の野菜なら、確かに適季にしか栽培できませんが、夏には夏野菜、冬には冬野菜を栽培すれば年に何度も収穫できますから、収穫機会は決して少ないわけではありません。
 それに、年に10回以上収穫できるのは何も植物工場だけの専売特許ではありません。通常の温室栽培(太陽光を利用した半閉鎖型栽培)でも十分可能です。温室の建設費は植物工場と比べて桁違いに安いですから、「年に10回以上も収穫できる」くらいでは植物工場は優位に立っているとは言えません。

Q8. 植物工場の強みは、太陽光とは違って光合成に最適な波長の人工光で栽培できることだといわれています。光合成を最大化する波長で栽培すれば、露地栽培や温室栽培よりもさらに効率化できるのでは?
A8. 「植物の生育を最大化させる波長は赤色だ」ということが、よくいわれたりしますね。実のところ、赤色LEDで育つ野菜はレタスくらいのものなのですが。ほとんどの野菜は様々な波長を必要としますし、生育ステージによって必要とする波長も違います。人工光で波長をコントロールするという話は理論的には可能ですが、そうすると光源の購入コストが跳ね上がりますので、現実的ではありません。

 もっと大切な問題があります。それが3番目の問題として指摘した、「植物の生育スピードは最速でも20日間」ということです。レタスは収穫までの時間が非常に短く、生育がとても早い野菜ですが、それでも20日間程度は必要です。この日数は生理学的にどうしても必要です。トマトだと収穫までに90日程度かかります。
 工場というのは、製造スピードを上げることができるから効率化できるのですが、「20日間は野菜の生育に最低必要」という生理学的限界のため、それ以上スピードを上げることができません。植物工場を「工場」と呼ぶことができるのかどうかさえ疑わしくなるのは、製造日数を短縮化できないことが大きな原因となっています。
 仮に将来、遺伝子組換えなどで生育スピードをアップさせることができたとしても、せいぜい2、3割といったところでしょう。植物の生育は大して速めることができない、ということは頭に入れておかなければなりません。

Q9. 日本には世界に誇るべきロボット技術があります。栽培を自動化することで人件費などを削減し、効率化することができるのでは?
A9. それは4番目の問題として指摘した、「植物は動かせない」に関わっています。植物の根は、人間でいえば胃や腸に当たります。いわば「むき出しになった内蔵」ですから、根を動かすと簡単に傷んでしまい、生育が非常に悪くなってしまいます。このため、植物は植えたところから動かせないのです。しかも、育ち上がるまで何十日も同じ場所から動かせないわけですから、非常に広い面積を長期間にわたって奪われてしまいます。

 製造すべきものを動かせないのですから、それを世話する人間か機械の方が動いてやらなければなりません。これが、「工場」の概念と真っ向から矛盾します。
 工場が効率的なのは、製造物がラインの上を流れて、人間や機械が場所を移動せずに済み、同じ作業を繰り返せばよいからです。
 ところが、植物は動かせないから人間か機械が動かなければなりません。機械は、場所を動かさなければならないとなったとたんに、無用の長物になります。機械というのは、場所を固定していないと正確に動くのが非常に難しくなるからです。すると、人間が動かなければなりません。ということは、人件費が高くつきます。植物工場は、手間暇が大変かかって効率が悪くなってしまうことが多いのです。

Q10. しかし、植物工場で高品質な野菜を栽培することで差別化を図り、高価格で販売することが可能なのでは?
A10. それは5つ目の問題、「農作物は基本的に高いと売れない」ということになります。たとえば、トマトの生産価格は1年を通して、だいたい150〜250円/kgくらいです。この倍の値段で売ろうとすれば、市場規模は10分の1以下になるでしょう。高い野菜を買ってくれる好事家は、世の中にはあまりいないのです。
 植物工場では建設費の上に照明代、冷房費などもかさみますから野菜を高く売る必要がありますが、旬の時期には露地栽培の野菜と価格競争しなければならず、そうでない季節でも温室栽培の野菜と価格競争しなければなりません。

 露地栽培は「効率が悪い」と誤ったレッテルが貼られていますが、実際には非常に高いコストパフォーマンスを誇っています。種をまいて収穫するだけなので、機械を使わなければタダですし、エネルギーコストもゼロです。機械を多少使っても、温室や植物工場のように機材は高くありませんし、エネルギーコストも桁違いに小さくなります。売値が同じなら、コストを一切かけないに等しい、露地栽培の方が利益を出しやすくなります。

 そんなコストパフォーマンスの高い露地栽培に、温室栽培がどうにか勝てるのは、露地栽培では栽培できない時期に収穫できるからです。いわば、温室栽培は露地栽培が太刀打ちできない「ニッチ」を選んでいるから勝てるわけです。ところで、植物工場も温室栽培と同様に年中栽培できますが、温室栽培と長所が重なってしまい、「ニッチ」とはいえません。温室栽培の方が低コストですから、植物工場は価格面で温室野菜に太刀打ちできません。植物工場で生産した「高い野菜」を買ってくれる好事家は、そう多くないと考えるのが現実的でしょう。

Q11. 植物工場は半導体工場のようにクリーンルームになっていて、病原菌や害虫をシャットアウトできるので病虫害の心配がなく、無農薬で栽培できるといわれています。その点を強調して高価格で販売できるのでは?
A11. 病原菌や害虫をシャットアウトする点が、(完全閉鎖型)植物工場の最大の特徴であり、最大の欠点でもあるといえます。

 まず欠点の方を申し上げると、クリーンな環境を作り出すのに大変無理をしているので、とてもコストがかかるということです。病原菌や害虫を完全にシャットアウトするにはエアーシャワーのような高価な設備が必要になります。それでも病原菌や害虫は忍び込んできます。いったん侵入を許すと、病害虫にとっては「敵のいない無菌状態のパラダイス」ですから、瞬く間に蔓延し、大きな被害を受けます。甘やかされて育った人を「温室栽培」といったりすることがありますが、植物工場の野菜は温室栽培よりずっと甘やかされていますから、病害虫への抵抗力は全くありません。そうなってしまうと、栽培をいったん全部あきらめて、完全消毒して栽培を一からやり直ししなければならず、かなりのコスト負担になります。クリーンな環境を維持するのも高コストなら、病虫害の侵入を許したときの被害も高コストになるのです。

 ですが、「病害虫をシャットアウト」というのは、やはり植物工場の最大の長所でもあります。農業では「苗半生」という言葉があります。小さな苗の間が、その植物の一生を決めるほど、重要な時期なのだという意味です。苗の間にちょっとでも傷ついたり弱ったりすると、栽培期間全般を通じて生育が悪くなります。苗の期間を無事に育て上げることはとても重要なのです。

 完全閉鎖型の植物工場は、苗を無事に育てるには好都合です。病害虫の被害から苗を守れば植物の生育はずっとよくなります。ですので、苗生産に特化した植物工場なら、他の栽培手法が真似できないニッチなところなので、かなり現実的です。人工光だけで無理に頑張ろうとせずに、太陽光もうまく利用するのがよいでしょう。太陽光を利用した半閉鎖型の温室栽培も、植物工場と呼ばれているケースがあります。ただ、これは植物工場というよりは温室栽培の改良型といった方がよいのかもしれませんが。

 以上述べてきたように、植物工場が効率的だ、植物工場を見習え、という昨今のテレビのコメンテーターの発言は、眉に唾をつけて聞いた方がよいでしょう。また、「農業を工業化し、生産効率を上げるべきだ」という似たような主張がありますが、これは植物工場と同様、3つの問題を克服しなければなりません。上記の問答で使った番号でいえば、
3)植物の生育スピードは最速でも20日間
4)植物は「動かせない」
5)農産物は安くないと売れない
の3つです。特に3)、4)の問題は「工業化」と真っ向から矛盾します(A8、A9参照)。製造速度を20日間より短縮することができず、製造物(野菜)を何十日も同じ場所から動かすことができず、機械や人間の方が世話するために動いてやらなければならないというのは、「工業化」の概念と対立してしまう問題です。

 農業を効率的なものにする努力は、確かに今後も重要です。しかし、工業的手法をそのまま農業に適用できるという安直な考え方は、それを安易に信じ込んだ人たちを破産に追い込む危険性があります。
 
「農業の工業化」を主張するテレビのコメンテーターの方々は、どうかこれらの問題を十分に考慮し、意見を開陳してほしいものです。そもそも日本の農業には、きわめて博識で進取の気性に富み、挑戦することを恐れない篤農家が、きら星のようにたくさんいます。農業の工業化はこれまでも当然ながら目指されてきたことであり、だからこそ日本の農業技術は世界的に見ても高い水準にあるのです。もし農業の工業化をうたうなら、せめて従来と同じ轍を踏まないようにする努力が必要だと思われます。

コメント(54)

 現在の植物工場が採算性だけで計画されている処に人類の大きな不幸の始まりを感じます。

 本日の新聞記事で、当和歌山の加太に稼働中のトマト温室工場に関し、
大手食品メーカーのカゴメ(名古屋市)は28日、コスモパーク加太(和歌山市加太)で計画していた大規模トマト栽培用温室の第3期工事を中止すると発表した。
 ここで使用される水が人の健康に大切なミネラルを含んだ水なのでしょうか?

弘法の水と言われる水は綺麗だけでなくミネラルが豊富な水ですね。

 登山中に喉が乾いて水を欲した時、綺麗な水には気を付けろ!
 虫が泳いでいるか?綺麗でも虫や魚が泳いでいない、しかも植物も生えない水は決して飲んではならないと。
 空海は山師(鉱山師)であったから、弘法の水は本当に綺麗でしかも苔や植物が生えていますね。

 食用の植物には夫々必要なミネラルを含んだ土や水がその植物が育む絶対の条件です。

生物が育むには水が最も大切です。栽培する植物に適したミネラルが豊富かどうかを調査する事が大切です。

 文部科学省の食品分析データーベース:
 
 http://fooddb.jp/  を活用しましょう!
灰汁のないホウレンソウとか 温室で雨水で育てられた植物を栽培されたら大変な問題が起こります。

 このポリフェノールが私達の体に大変健康に役立つものなのです。

 
>Shin様

普及モデルを議論するなら、完全閉鎖型に「植物工場」という概念を押し込めてしまう方向性が今一つ理解できません。

高度化された温室と言うべきか、植物工場と言うべきか。

そこに採算点があることを確信している以上、この点に突っ込みます。


また、自動化の前にコスト計算があるべきで、それが人間のほうが優位であるならば人手を否定してはいけないと思います。

自分も(基本的には前職で)植物工場のリアルを見ていたので幻想は当然のように持っていませんし、そういう意味で今の政策と風潮には反対なわけでw



ちなみに回転…と書いたのは、土を使って年14回転、とかやっている所のことです。まぁ…できます。採算も大概取れます。

育苗の話を出したのも、植物体の移動は実現していますよね…ということで、それ以上の意味もありません。

香川のイチゴと愛知のトマトが袋栽培を行っていますが、ああいうものなら(テンタの取り外しは別として)移動するのは訳がなく、ステージごとに移動(半自動で)させ、給液装置自体は人力でセットするという形態で効率化ということが決定的に削られるということにはならないと思います。

移動にかかる所要時間と製作(組み立て)にかかる所要時間に大変なアンバランスがある場合、移動にかかる部分にはある程度の時間的余裕ができるわけで、そこをオートメーションにすることは必ずしも効率化にはならないはずです。


うん、概念を絞らなければ大分意見は一致するのでしょうけどね…あせあせ
よしくんぱっとさん

>現在の植物工場って、採算性を無視した状態で運営されているのですか?

まず、混乱しやすいので整理しておきたいのですが、「植物工場」には、外界の影響を完全にシャットアウトした完全閉鎖型(光源はすべて人工光)のものと、太陽光を利用する半閉鎖型の二つがあります。
半閉鎖型は通常の温室栽培と大差なく、この場合はコストが安くすむので比較的採算性がよい方です(JFEのタイプが有名です)。
しかし、完全閉鎖型はコストが高く、長続きしているのはキューピーくらいではないでしょうか。

多くが、「将来的に採算がとれるはず」という期待のもとに着手しているのが実態だと思います。
現時点で採算がとれているところは少ないでしょう。
そして、採算がとれないまま倒産している植物工場が山ほどあります。

「十分に成り立つ、これまでの植物工場の失敗と同じ轍は踏まない」と胸を張って私に説明していた人は、今、連絡が取れず、心配しています。
植物工場は閉鎖し、もとの会社は倒産していました。
その企業はいくつかの植物工場を建設した実績のある会社で、自社で採算が成り立つことを実証してみせる、と意気込みを語っておられたのですが・・・。

キューピーもJFEも巨大企業です。
だからこそ、植物工場の採算がとれなくてもガマンし続けることができますし、実験的な試みも続けられます。
しかし、中堅どころのサイズの企業がヘタに手を出すと、本業までダメになるほど財政的に圧迫される恐れがあります。

フェアリーエンジェルという会社が公表しているデータも拝見しましたが、これまでの植物工場の取り組みとさして違わないようです。
うまくいくことを祈っていますが、よほど頑張らなければいけないと思います。

たとえば、うたい文句通りになかなか行かないものの一つに、培養液の問題があります。
これは養液栽培農家ならみんな知っていることですが、培養液の循環再利用というのは、大変リスクが高いものです。
病原菌だけ集積してしまうことになりやすいからです。
このリスクを避けるため、実際には頻繁に培養液を廃棄することを行わなければならなくなるのが実態です。

培養液殺菌装置も開発されていますが、殺菌しても植物の根域で微生物が増殖してしまいますし、植物の根域にも殺菌作用が及ぶようにすると、根が傷んで生育が悪化してしまいます。
培養液殺菌は一定の効果はありますが、過信は禁物です。

どんな技術も、「ここまでは効果があるがここから先はそれほどでもない」ものです。
可能性と限界の境界線がどこにあるのか、しっかり見極めることが必要かと思います。

とりあえず、完全閉鎖型は採算性がとても厳しくなることは指摘しておいてよいかと存じます。
DBさん

>普及モデルを議論するなら、完全閉鎖型に「植物工場」という概念を押し込めてしまう方向性が今一つ理解できません。
>高度化された温室と言うべきか、植物工場と言うべきか。
>そこに採算点があることを確信している以上、この点に突っ込みます

わたしも、高度化した温室の採算性は充分あると考えていますよ。
そこに異論はありません。
A11に明記してあるとおりです。

今回の一問一答は、「完全閉鎖型植物工場」に過大な期待をしない方がよい、ということを指摘することが第一目的、
第二に、「植物工場を目指すなら、太陽光も利用した温室栽培の発展系の方が望ましい」ということを示すのが目的です。

これらのことは、一問一答の冒頭及びA11に書いてあるとおりです。
その点、誤解のなきようお願い致します。
#13じゅんたさん、

私が実際に工場を見て、野菜を買ったことがあるのはフェアリーエンジェルさんだけなのですが、少なくともそこは、
>スーパーなどの青果コーナー向けのトマトとピーマンを、東京青果に過去5年間の中値の月別平均価格で出荷した場合の計算です。
というような感じのビジネスモデルではないです。売られているのは、とても高額な野菜です。

フェアリーエンジェルは株式公開企業ではないので、財務データはインターネット上にはないようです(私がウエブサイトをチェックした限り)。したがって、採算が取れているのかどうかはよくわからないですが、すくなくとも、じゅんたさんの計算方法の適用範囲外にビジネスモデルがあるのは間違いないと思います。




#14 Shinさん、

私は、現在、農業はやっていませんが、ビジネスはやっています。#14でShinさんが書かれたような「市場調査と売り先確保、初期投資節減などを徹底して、どう悲観的に見ても必ず成功する、という目算が成り立たない限り、やめておいた方がよい」とのアドバイスは、ビジネスをやる者としては、なんの役にも立ちませんです。もっと楽観的でないと、儲かるビジネスはできませんのです(笑)。本当にビジネスをやっている人でないと、これはわからないと思います。


半導体は“産業の米”と言われますが、本当の米を含め農産物を工場でつくるプランはそれに比べたら投入された人知もお金も微々たるものです。
途についたばかりだから、すばらしい発展の可能性がある。

#17で書かれた
>多くが、「将来的に採算がとれるはず」という期待のもとに着手しているのが実態だと思います。
>現時点で採算がとれているところは少ないでしょう。
>そして、採算がとれないまま倒産している植物工場が山ほどあります。

これでよいということです。
平たく言えば「失敗は成功の元」。失敗しなければ成功できない。




「植物工場」のコンセプトは、現在、とてもエキサイティングな領域であることは間違いないでしょう。

温室栽培の延長としての工場であれ、閉鎖型の工場であれ、どのような形態の工場が発展していくのか、いけそうなのか?うまくいきそうにないと今はいわれている完全閉鎖型に技術革新の可能性はあるのか否か?

現在の半導体産業のような隆盛の時代が植物工場にやってくるのか?はたまた常温超電導技術のように、絵に描いた餅におわるのか(もちろん、これも終わったかどうかは神のみぞ知る)?

フェアリーエンジェルさんは、財務状況はわかりませんが、資本金を6億円集めておられる。
これだけの投資額になるということは、投資家の皆さんの期待をそれだけ集めているということ。
その期待が単なる期待に終わらず、大きな花を咲かせることを祈ります。
よしくんぱっとさん

>もっと楽観的でないと、儲かるビジネスはできませんのです(笑)。

シュンペーターの創業者利得のことを指しておられるのだと思います。
それはある程度その通りなのですが、

>平たく言えば「失敗は成功の元」。失敗しなければ成功できない。

これもその通りなのですが、取り返しのつく失敗と、取り返しのつかない失敗があります。
「完全閉鎖型植物工場」に参入する場合は、多額の投資を行うだけに取り返しのつかない失敗になりかねません。
そこが大変心配するところです。

実は、創業者利得が非常に大きい商売は、初期投資は案外小さくてよく、失敗しても傷は小さく、「取り返しのつく失敗」であったりします。
それについては、「創業者利得」についてのバイブルといえる、「イノベーションのジレンマ」という本が参考になりますね。
 #ハーバードビジネススクールでは必読。

イノベーションには大きく2種類があるといいます。
これまでの技術の最先端を持ち寄った、しかしある意味、これまでの技術の延長線上にある漸進的なイノベーションと、
過去の技術と隔絶した、しかも過去の技術体系を破壊するような画期的イノベーション(破壊的イノベーション)の2種類に分類できるとしています。

漸進的イノベーションの好例はデジカメです。
機能がどんどん改善されますが、基本的には既存の技術を磨き上げたものにすぎず、競争にさらされるので創業者利得は小さく、その商品の目新しさが続く間しか利益が得られません。
「完全閉鎖型植物工場」も、どちらかというとこちらのイノベーションに分類されると理解した方がよいでしょう。
使用する装置は最新鋭のものですが、最新鋭ということは、技術的にある程度完成されたものだということだからです。

これに対し、創業者利得が最も大きい破壊的イノベーションは、一見、しょぼく見えるのが常です。
技術的にひどく未熟に見えるし、販売量も小さいので、大きなメーカーはまず見向きもしません。
好例としては、大型コンピューター全盛時代のマイコン(パソコン)です。

マイコンと呼ばれるものが登場したときは、大型コンピューターをやっている人たちからはバカにされていました。
マイコンは大したことは何もできないですし、ちょっとした計算をするなら、大型の方がよいに決まっていたからです。

しかし、マイコンには、「個人のお金で買える」という大きなメリットがありました。
その結果、マイコンの販売が次第に伸びていき、他方、注文のめったにない大型コンピューターの開発意欲が次第に減退し、今に至っています。

植物工場は、この例から見ると大型コンピューターに事情が似ているように思います。
大型コンピューターは、今でも地球シミュレーターのように、世界最速を競うスーパーコンピューターなどがありますが、今ではほとんど新聞記事にも出てきません。
投資が大きすぎて利益の回収が難しいからです。

ところがマイコン(パソコン)は手に取りやすい価格なので販売が伸び、その結果性能がどんどん向上し、いまやおもちゃ(プレステなど)でさえスーパーコンピューターの定義に当てはまるほど、性能が向上しています。
 #昨今のパソコンは、すでに「漸進的イノベーション」の段階に入っていることはいうまでもありません。

もっとも大きな創業者利得が得られる「破壊的イノベーション」は、実は初期投資がそれほど大きくなくてすみ、技術的にもしょぼく見えるのが多いです。

最新鋭の技術のように目に映り、初期投資が大きくなるビジネスは、実は「漸進的イノベーション」であり、創業者利得は得られず、競争にさらされるので採算がなかなか難しいです。
植物工場は後者の「漸進的イノベーション」に位置づけられると考えます。
この点、いかがお考えでしょうか。
修正です。

最後から二行目
植物工場は後者の「漸進的イノベーション」に位置づけられると考えます。
->植物工場は「漸進的イノベーション」に位置づけられると考えます。
Shinさん、

わたしはそんなに難しいことは考えてなくて…

Shinペーターも読んだことはないし、ハーバードビジネススクールにも行ったことがない。


要は、やってみないことにはわからん、ということです。そして、やればそれに失敗がついてくるのは、最初から想定の範囲ですということです。

取り返しのつかない失敗も、そんなに心配されなくても、その種の人達は鈍感なので大丈夫。その種の人は、失敗してすっからかんになったとしても、また何か新しいことをしようとする。人生最後の新しいことが自殺であってもOKみたいな(そこまで言うと言い過ぎか(笑))。

たぶん、フェアリーエンジェル社に出資された6億円は、仮に全部パーになっても、Shinさんが思っておられるほどには深刻なことではないはずです。1億くらい無くなってもどーってことない、というような人たちが出資されているはず(何にも知らずに、勝手に推測しているだけですが)。




「植物工場」がどんな形で発展するのか、はたまた結局は成立しないのか、今は誰にもわからない状態ですよね。

で、どんなものになるのかわからないのに、今から「漸進的イノベーション」だと決めつけて議論するのはちょっと合点がいきませんけど、これはShinさんの持っておられるイメージと言うことで理解させてもらっておきます。

また、いろいろ教えてください。
夜しかまとまった時間がとれないんですが、面白い議論なのでちょっとだけ…w

>よしくんぱっとさん

投資としてのビジネスと考える人もいるでしょうが、まずは農業のひとつの形態として考えてみませんか?
高く売れるから成り立つモデルじゃなくて、農業として成り立つにはどうで工夫する必要があるかとか。
私は専業農家なので、毎日1トンのピーマンを生産しただけで、市場以外に売り先がないんですが…^^;;
どうも連作障害を回避出来ない…というところで決めつけられているようですが

例えば置肥のようなものを事前に(定植時に)入れ、水・光・炭酸ガスを送り込む片道の設計にして、ある程度の数のセルに分離しておけば大分リスクヘッジ出来ます。


そこらへん正直な話プラント設計者の能力の問題だと思います。完全閉鎖であれ半閉鎖であれ、日本のシステムはリスクヘッジがあまりうまく出来てないですね。
よしくんぱっとさん

>フェアリーエンジェル社に出資された6億円は、仮に全部パーになっても、Shinさんが思っておられるほどには深刻なことではないはずです。1億くらい無くなってもどーってことない、というような人たちが出資されているはず(何にも知らずに、勝手に推測しているだけですが)。

もし、資金のすべてが投資であればおっしゃるとおり、投資家が泣きを見ればよいだけの話ですが、そのうち1億でも銀行からの融資だったりすると、しんどいかもしれません。
日本はアメリカと違って、個人の金融資産を担保に入れさせることが多くて、起業に失敗した場合、起業家の個人資産を全部奪う上に、直接その人個人に巨額の借金を背負わせたままにすることが多いですから。
村田製作所の会長も、日本の起業の難しさに、「失敗すると取り返しがつかないダメージを与えること」を指摘していました。

日本も、アメリカと同じように、投資家自身がリスクを背負い、起業家に必要以上の負担を課さない仕組みができたら、失敗をそれほど恐れずにすむのでしょうけれど。

>で、どんなものになるのかわからないのに、今から「漸進的イノベーション」だと決めつけて議論するのはちょっと合点がいきませんけど、これはShinさんの持っておられるイメージと言うことで理解させてもらっておきます。

そうお感じになるなら、それで結構です。
私は私の感じるところをできるだけ率直に申し上げることができるだけですから。

植物工場は、実のところ、私も注目を続けている技術ではあるのです。
「破壊的イノベーション」と呼べる技術が出てきて、植物工場の採算性を大幅改善する時代が来るのか、ずっと見守っています。

ですが、今のところ、植物工場の採算性を大幅改善する技術は登場していません。
発光ダイオードがよく取り上げられますが、輝度を上げると発熱する問題はこれまでの人工光源と同じ問題を抱えており、結局蛍光灯に戻している植物工場も多いです。

私が一問一答で示した5つの課題は、現時点では制限事項ですけれど、逆に言えば、この5つの課題を解決する技術が出てくれば植物工場は「破壊的イノベーション」になる可能性が出てきます。
植物工場を否定するのではなく、植物工場が乗り越えるべき課題を明示したいというのが目的の一つになっているわけです。

しかし、現時点では難しい。ですので、「漸進的イノベーション」と考えざるを得ない、と判断しています。
それが、私の現状認識ということになります。
DBさん

>例えば置肥のようなものを事前に(定植時に)入れ、水・光・炭酸ガスを送り込む片道の設計にして、ある程度の数のセルに分離しておけば大分リスクヘッジ出来ます。

かけ流し式のことですよね。
でも、完全閉鎖系植物工場を推奨しているホームページをみると、「培養液の廃棄がなく、環境によい」ということをうたっていて、かけ流しを想定していないのですよ。
ですので、培養液循環の問題点を指摘したわけです。
 #もうそろそろ、発言の行間(あるいは何を前提にしているのか)を読むようにしていただけると有り難いです(苦笑)。

さて、かけ流し式ですが、確かに病気の発生をかなり抑制できますが、以前から問題視されているのが「肥料成分の大量廃棄につながり、環境負荷を与えてしまう」ことです。
オランダなどでは、培養液の廃棄が法的に禁止されています。
硝酸態窒素が10ppm以上残っている培養液は廃棄してはいけないことになっています。
ところが日本は、まだそうした法整備もなされていません。
養液栽培の業界の言い分では、「養液栽培の栽培面積はわずか1%だし、なにより土耕栽培で地下に流れている肥料成分の方がよほど多い」ということで、現時点では法整備の動きも出ていません。
しかし、そろそろ環境負荷を低減する努力が求められているので、培養液かけ流しでなくても病気の発生を抑えられる技術の開発が進められています。
 #まだ十分に完成していない。

かけ流し式のもう一つの問題は、肥料の無駄が多いことです。
濃度管理法をとっており、一定以上の肥料濃度になるようにしているので、排液にはかなりの肥料成分が残っています。
化学肥料の値段は高止まりしており、肥料の効率的利用が求められています。
その点でも、かけ流し式は問題を抱えており、肥料濃度が低くても栽培できるかどうかを各地で検討しています。

基本的にはオランダのように、培養液の循環式を模索する方向に行くことになるでしょう。
しかしそうすると根部病害の発生がおきやすくなる。
ジレンマですね。

完全閉鎖型植物工場を宣伝するホームページでは、培養液の再利用の難しさを全然記述しておらず、「ウソ・大げさ・紛らわしい」という日本公共広告機構のコマーシャルに出てくるような内容になっています。
実態をまず把握することが大切ですね。

問題点を明らかにした上で、解決策を次に考えていくと、確実に議論を積み上げていくことができると思います。
そんな風に議論におつきあいくださればと思います。
じゅんたさん

>私は専業農家なので、毎日1トンのピーマンを生産しただけで、市場以外に売り先がないんですが…^^;;

とても大事な視点ですよね。
日本人の胃袋のサイズはこれ以上大きくならない上に、食品廃棄物が食料全体の4割近くになっている日本では、「植物工場で出てきた野菜を誰の胃袋に押し込むか」が課題になります。

少なくとも、私の知人の中で、日常的に高い値段の野菜を購入できる人はいません。
露地栽培や温室栽培の、安くてそれなりの品質のものに手が伸びる人ばかりです。
やはり、高い野菜は市場がかなり小さくなります。

完全閉鎖型植物工場が戦えるのは、露地栽培や温室栽培では難しい作物を対象にした方がよいでしょうね。
光を遮断することができる、というのが完全閉鎖型の大きなメリットです。
だとすれば、ウドの芽やホワイトアスパラガスなど、光のない方がよい作物は、植物工場の独壇場でしょうから、コスト競争にも巻き込まれずにすむように思います。
光を使わないからコストも低減できますし。

完全閉鎖型植物工場は、露地や温室で栽培しているものと同じものを栽培するのはやめておいた方がいいでしょうね。
キノコとか、光を使わないものをやってみるのが手のように思います。

露地や温室では達成できない環境は何か。
それを考えると、完全閉鎖型のメリットが見つかるかも知れません。
Shinさん、

では、Shinさんが最初に提起された5つの課題について、一つ一つ順番に解説してくれませんか?

1)人工光は光が弱い、2)エネルギーコストが大きい、3)植物の生育スピードは最速でも20日間、4)植物は「動かせない」、5)農産物は安くないと売れない


まずは、1)人工光は光が弱い。

これについては、強い光源を利用する、太陽光を使う、弱くても育つものをつくる、というような選択肢があるように思います。
いや、かけ流しに決めつけることはないでしょう。

点滴チューブ的なものを利用して、水分を土壌から落とさないアプローチは可能です。

で、自分は培養液をかける、と書いた覚えはありませんが…
(置肥、と書いたはずです)


既存のシステムはあくまで既存のシステムです。

植物工場の解法のすべてではありませんよ。
太陽光を利用し、できる限りのコスト削減をはかり、今頃の時期なら月に2回収穫(ほうれん草、水菜など)するぐらいのハイスピードで回しています。

それでも経営を維持するのがやっとというぐらいの状況です。

なぜでしょう?

その辺語りたいのですが、時間が取れません。また後ほど手(パー)
29:よしくんぱっとさん

>まずは、1)人工光は光が弱い。
>これについては、強い光源を利用する、太陽光を使う、弱くても育つものをつくる、というような選択肢があるように思います。

まず最初に、強い光源について、次のような課題があります。
1.一つあたりの値段が高い。
2.発熱が大きい。
3.消費電力が大きい。

強い人工光にはメタルはライドランプや、新開発のLEDなど、いろいろあります。
しかし、太陽光に匹敵するような強い光源は、どれも1個あたりの価格がとても高く、コスト吸収がとても難しくなります。

なにより、強い人工光は、一問一答でも書いたように発熱が大きいのが大変問題となります。
どことはいいませんが、東京の地下農園の担当者の方にもいろいろお話を伺いましたところ、「光源を近づけるとイネが焼けてしまうし、離せば光が弱いし、ほどほどの距離をようやく見つけても、冷房費が大変にかさんでしまう」という話でした。
この問題は、完全閉鎖型の植物工場ではどうしてもついて回る問題です。
完全に閉鎖していますから、熱がこもってしまうわけです。
夏の高熱を室内に持ち込まないよう、断熱をしっかり行うと、今度は冬であっても冷房が必要になってしまいます。
このため、完全閉鎖型植物工場で強い人工光を使うと、どうしても空調のコストがかなりかさんでしまいます。
この栽培条件でも成立する可能性のあるのは、苗生産です。
ごく短期間の苗の時期を、病虫害の被害を全く受けずに育てることができれば、「苗半生」というくらいですから、栽培期間全般にわたって良好な生育が期待できます。
苗の間の短い時期なら、強い人工光と空調による高いコストを支払っても、苗1株あたりのコストは小さくてすみますし、完全閉鎖型の「病虫害シャットアウト」というメリットを最大限生かせます。
強い人工光を利用する閉鎖型植物工場で成り立つ商売は、苗生産が考えられると思います。

従って、苗生産以外の栽培を考えるなら、完全閉鎖型植物工場では、発熱がそれほどではない程々の光源を使うことになります。
程々の強さの光で育てるなら、空調の出力も抑えられます。
その代わり、程々の光でしかありませんから、弱い光で育つ作物に限定されてきます。
レタス、ハーブ、スプラウトなどの、比較的弱い光で育てられる作物か、キノコやモヤシなど、一切光を必要としない作物を育てるか、ということになります。
レタスはレタスでも、結球レタスは生育の時間がかかりすぎ、露地物やハウスものと価格で戦えなくなりますから、生育の早いリーフレタスに限定されます。
しかし、レタスやハーブなどは温室でも栽培しており、コストは温室の方がずっと低く、生産性も決して劣りませんから、温室栽培ではできないメリットを強調する必要があります。
「ほぼ無菌」というのが、売りの一つになるでしょうか。
免疫不全の患者の方など、無菌のものの需要には適しているかも知れません。

光をほとんど必要としない(或いは一切必要としない)スプラウトやモヤシ、キノコなどは、積層して栽培できる植物工場のメリットが生かせるので、採算性もよいように思われます。


続きです。

さて、次に太陽光を使うタイプです。
この場合は外界の環境の影響を受けるので、半閉鎖型植物工場に該当します。
しかしどちらかというと、「高機能温室」といった方がより実態に近いのかも知れません。

太陽光を利用する場合は光源による消費電力が必要なくなるので、その分コストダウンがはかれます。
そのかわり、太陽光を取り入れる場所(ガラス)は夏の高温、冬の低温の影響をどうしても受けるので、室内環境を一定に保つのが難しくなります。
 #断熱性の二重ガラスは価格がとても高い。
夏でも涼しいオランダなどなら特に問題がなく、この半閉鎖型植物工場はいろいろメリットがありますが、日本の場合は夏が暑すぎます。
このため、夏の太陽光をそのまま取り入れると室内が60度を超えたりするので、作物がゆだってしまいます。
夏は遮光をする必要が出てきて、遮光カーテンのコスト負担が必要になります。
また、太陽光を取り入れると、夏場はクーラーのような空調では全く追いつかないほど暑くなってしまうので、窓を開けて外気と交換する必要が出てきます。
「半閉鎖型」から、「部分開放型」になってしまうので、いわゆる「温室」と差がなくなってきてしまいます。
外気を導入すると害虫や病原菌の侵入機会が増え、被害が出る可能性も高くなります。
こうなってくると、通常の温室栽培とどんどん差がなくなっていきます。
半閉鎖型植物工場、部分開放型植物工場は、温室栽培と同じ課題を抱えることになりますので、「温室栽培の課題を克服しつつ、効率的運営を模索する」という話になります。
テレビや新聞で流布されている、「完全閉鎖型植物工場」とは全く別ものの話になってくるわけです。


ところで、そもそも、「(完全閉鎖型)植物工場」が、なぜ日本では昔から議論がなされてるのか、ということを考えてみると面白いことに気がつきます。
それは、日本の気候が、「光の豊かな夏は暑すぎ、暑くない冬は光が足りない」というものだからです。

温室栽培の盛んなオランダなどは、「光の豊かな夏でも涼しい」条件となっています。
これは、施設栽培(温室、植物工場のいずれも含む)にとってとても好条件です。
ヨーロッパは夏だと、夜の10時くらいまで明るいです。
光がたっぷりある上に、それほど熱くならないので温室を閉め切っていても大丈夫だったりします。
人工光を使わなくても、たっぷりと光を浴びて、作物はスクスク育ちます。
逆に冬は寒すぎるし、太陽は地平線の下に沈みっぱなしなので栽培をやめてしまいます。
しかし、冬以外は温室栽培にとってとても好条件が揃っている、それがヨーロッパです。

ところが日本は夏は暑すぎて温室も窓を開けなければならず、病害虫の発生が起きてしまい、冬は寒すぎるし光は足りないしで、暖房費がかかる上に生育が今ひとつです。
日本の気候は、ヨーロッパと比べて、温室栽培に不向きな面があるわけです。

それで日本では、気候に左右されない植物工場に目が向いた、という側面があります。
ところが、エネルギー高騰を受けて、植物工場のコストは非常に高くなっています。
まだこれなら、日本の気候は温室には厳しいところがありますが、温室栽培を高度化した方がよいのかもしれない、ということになってくるわけですね。
DBさん

>置肥、と書いたはずです

すみません、勘違いしていました。

ところで、議論の拡散を防止するため、しばらくは「完全閉鎖型植物工場」の可能性と限界を明らかにすることにご協力頂ければと存じます。
その議論が進めば、自ずと半閉鎖型、或いは部分開放型の植物工場の可能性があぶり出されてくると思います。
議論が止めどもなく拡散すると、他の人に分かりにくくなってしまいます。
ご理解賜れば幸いです。
ベジタさん

ぜひ、現役現場のお声をお聞かせください。

>太陽光を利用し、できる限りのコスト削減をはかり、今頃の時期なら月に2回収穫(ほうれん草、水菜など)するぐらいのハイスピードで回しています。
>それでも経営を維持するのがやっとというぐらいの状況です。
>なぜでしょう?

1.日本人の胃袋のサイズに限界 -> あまり欲しくないから高いと買わない
2.施設はどうしても設備費、運転コストがかかってしまう -> 利益率の圧迫

ということになるのでしょうか。
その他、お気づきの点をお教え頂ければ幸いです。
閉鎖型植物工場に対する提案

?:炭酸ガス濃度を猛烈に上げる

既設設備で500〜1000ppmくらいでのコントロールだと思いますが、
10000ppm〜30000ppmくらいで管理します。

人は中にそのままでは入れませんので、
・植物体を移動する
・酸素ボンベを使う。
・人が入る時は濃度を下げる
を行います。

こうすると、光合成に要求される光量が少なくなってきますので、設備的な負荷が少なくて済みます。


?:部屋を大きく2つに分け、夜昼をつける。

これは実施済みの施設もあるかと思いますが、これをやらないと転流していかないので、ある程度暗時間を作って負荷を少なくする方策をとります。


?:養液の循環式は導入せず、いったきりの設備にする

前述ですあせあせ主にリスクヘッジです。

オランダは最近肥料分の総量管理に近づいているようですが、そういう感じで。


?:熱の2次利用を考える

冷房を行うということは、他方で熱を放出しているわけです。
熱の2次利用というとゴミ焼却場の横の温水プールがメジャーですが、どういうアプローチであれ2次利用を生み出すことにより、コストは確実に落ちます。



こういう感じですね…どっか採用してくれるなら喜んで仕事しますがあせあせ
#32 Shinさん、
ありがとうございます。

上げられた3つの課題
1.一つあたりの値段が高い。
2.発熱が大きい。
3.消費電力が大きい。
は、今以上に発光効率の高い光源が今以上に低価格で供給されることが求められるということですね。

>強い人工光にはメタルはライドランプや、新開発のLEDなど、いろいろあります。
>しかし、太陽光に匹敵するような強い光源は、どれも1個あたりの価格がとても高く、コスト吸収がとても難しくなります。
と書いておられるので、値段を考えなければ、技術的には世の中に存在しているといってよいのかな。その値段も、そのような優れた光源は他の領域でもニーズが高いでしょうから大量生産するようになってどんどん安くなるのが普通です。


>強い人工光を利用する閉鎖型植物工場で成り立つ商売は、苗生産が考えられると思います。
>レタス、ハーブ、スプラウトなどの、比較的弱い光で育てられる作物か、キノコやモヤシなど、一切光を必要としない作物を育てるか、ということになります。

これらは、なかなか有益な結論だと思いました。
すでに、今の技術環境でいけそうな作物もあるということですね。




完全閉鎖型で、太陽光の利用は考えにくいですかね。
半閉鎖型(温室の延長)は議論しない、ということなので止めます。

夏には太陽光を使い、冬には人工光源を使うというようなハイブリッドの可能性もありますね。
断熱性の二重ガラスのコストは、これも需要量との関係で変わってくるので、需要が増えれば安くなるでしょうね。
断熱ガラス(可視光は通すが赤外線は反射)技術も上がってきているようです。

夏に太陽光で発電して蓄電し、それを冬に使う、というようなことができればよい、というようなことかもしれませんね。蓄電技術もどんどん上がってきていますが、そこまでいけるようになるのかどうか。


日本よりオランダの方が有利と描写されている点については、通年栽培を可能にする(それだけ施設の利用効率を上げられる)という意味では、日本が不利でもないように思えます。オランダのやり方をそのまま日本に持ってきても駄目、というくらいの意味しかそこにはないように思いました。太陽光がきつい、というのはそれだけタダのエネルギーが豊富ということですので、日本の方により高いポテンシャルを感じます。

**


では、次に、
1) 人工光は光が弱い、2)エネルギーコストが大きい、3)植物の生育スピードは最速でも20日間、4)植物は「動かせない」、5)農産物は安くないと売れない
のうちの
2) エネルギーコストが大きい
について。

これについては、農作物の販売価格を上げる工夫、人工的エネルギー使用量を減らす工夫、土地や搬送コストなどの他のコスト削減による相殺の工夫あたりが考え方としてあると思います。

よろしくお願いします。
37:よしくんぱっとさん

>今以上に発光効率の高い光源が今以上に低価格で供給されることが求められるということですね。

はい、そういうことですね。
新光源のニュースはいつも注意深く調べていますが、現時点では、基礎技術の段階でさえ画期的と言える光源はまだ開発されていないようです。
ということは、あと10年くらいは発光効率の大幅向上は望めないと思われます。
価格についても同様ですね。

>値段を考えなければ、技術的には世の中に存在しているといってよいのかな。その値段も、そのような優れた光源は他の領域でもニーズが高いでしょうから大量生産するようになってどんどん安くなるのが普通です。

強い光源はあるにはあるのですが、発熱の問題は価格の高いものでも解決できていないので、近づけると野菜が焼けてしまいます。
焼けない距離に離すと、光が弱くなります。
結論として、「太陽光に匹敵する強光を野菜に当てられる人工光はまだない」ということになりますね。

発熱が小さく、強い光を発する人工光の開発は、まだこれからです。
開発が終了し、大量生産されれば、いよいよ実現可能性が出てきます。
ですが、現時点では開発さえされていないようなので、まだ当分先の話として、ペンディングです。

>完全閉鎖型で、太陽光の利用は考えにくいですかね。

いえ、それは重要な視点です。
現時点ではそのような施設はないので「考えられない」ということになりますが。

もし仮に、太陽光を効率よく導入でき、なおかつ赤外線・遠赤外線の波長は跳ね返す(熱は排除)するようなガラス・鏡が開発されれば、「完全閉鎖型なのに太陽光」ということが成り立つ可能性があります。

要素技術はあるのですが、性能がまだまだ低い(光ファイバーが伝送できる光量はあまり大きくない)のと、資材費と工事費が非常に高くつくため、実現可能性は現時点では低いです。
もし、低価格で可視光を効率よく室内に導入できる技術が将来的に開発されれば、「破壊的イノベーション」になる可能性がありますね。

>夏には太陽光を使い、冬には人工光源を使うというようなハイブリッドの可能性もありますね。
>断熱性の二重ガラスのコストは、これも需要量との関係で変わってくるので、需要が増えれば安くなるでしょうね。
>断熱ガラス(可視光は通すが赤外線は反射)技術も上がってきているようです。

オランダの温室がそのイメージに近いですね。
冬が近づくと光が足りないので、人工光で補光しています。
補光のコストが収入に見合わない真冬には栽培をやめてしまいますけれども。

断熱性の二重ガラスは、やはり高いです。
北欧では当たり前のガラスなので需要が充分大きく、安くて当然のように思えますが、なかなかそうなっていません。
ガラス2枚以上の価格になるのですから、やむを得ないですね。

断熱ガラス(可視光は通すが赤外線は反射)は少しずつよいものが出てきているようですが、現時点では、「赤外線を反射」ではなく、「赤外線を吸収」する現象の方が大きく働くらしく、ガラスが暑くなって、その熱が室内に伝わってしまい、思ったように断熱効果が出てこないようです。
まだまだ技術開発が必要ですね。

>太陽光がきつい、というのはそれだけタダのエネルギーが豊富ということですので、日本の方により高いポテンシャルを感じます。

そう考える研究者がいて、いろいろ努力しています。
現時点では、そのポテンシャルをうまく好転させるに至っていないというところですね。
日本は夏が暑すぎ、冬は光不足、という問題があり、これを解決する技術開発には、もう少し時間が必要だと思います。

37:よしくんぱっとさん

2) エネルギーコストが大きい

ですが、これはエネルギーコストが高止まりすることが予想されている今、厄介な問題だと思います。

どれくらいのエネルギーコストがあるのか、まずは完全閉鎖型植物工場の光の利用効率を考えてみたいと思います。
石油や原子力による発電効率を40%とし、電気から光に変換する効率を20%、光合成効率を10%とすると(この数字はおおよそ実態を表しています)、
0.4×0.2×0.1=0.0008
となり、もとの石油や原子力のエネルギーの0.08%しか、光合成に利用されないことになります。
光合成でできるデンプンなどの光合成産物は、もとの石油などの0.08%しかできないということです。
つまり、完全閉鎖型植物工場の野菜1kcal分を生産するのに、1250kcalの石油ないし原子力エネルギーを使用する計算になります(石油125mlに相当)。
エネルギーコストが非常に悪いことがこのことからも分かります。
レタス100g(12kcalの収穫)を得るために、人工光用に石油1.5リットル必要になる計算です。

太陽光を利用する場合は無料ですから、光に関するエネルギーコストはありません。
実は露地栽培や温室栽培でも、化学肥料を使うとそれなりに石油を消費するのですが、化学肥料の使用は植物工場も共通の話なので、人工光のエネルギーコストに限って話をして構わないと思います。

このように、完全閉鎖型植物工場はかなりのエネルギーコストがかかります。
石油や原子力のエネルギーが安く、石油1.5リットルに相当するコストをレタス100gがコスト吸収できるなら、採算がとれるのかも知れませんが、難しいですね。
石油の高騰にあわせて、ウランの需給も逼迫しはじめており、エネルギー全般が高騰しています。
人工光だけで栽培するのは、今後はとてもつらいことですね。
だいぶ議論が進んでるようで・・・。
議論の対象を限定して始めるのはいいと思いますが・・・アプローチが逆の方が良かった気がしますね。
タイプごとに、植物工場の基本的なコストは考えないといけないと思いますが、かかったコストより高く売ればいいとか、安くするにはどういう作物が向いてるのでそれを作ればいいとか・・・そういうアプローチもありとは思いますが、植物工場を建設する場合、そもそも目的があるわけですよね。その目的の範囲で採算が合えばいいと思いません?

例えば、無菌に近い野菜を作りたければ、現時点では完全閉鎖型がほぼ唯一の解ですよね。それでビジネスが成り立てばいいんじゃないでしょうか。
他に、私もそうですが、たぶんほとんどの人が植物工場に期待してる効果は、自動化や成長促進などの高集約化だと思います。
これも、コスト以上に増収すればいいわけで、じゃあ、それをどうやって実現するの?っていうアプローチが欲しいところですね。
たぶん、DBさんの言われる炭酸ガスの超高濃度施用は、そういうところを考えてるんじゃないかと思いますが・・・。

とは言え、充実した議論が進んでるので、私もそれに乗っかりたいんですが、そうすると、完全閉鎖型の植物工場ってそもそも何ができるの?ってところから始まっちゃうわけで、そのへんいかがでしょう?

例えば、水耕栽培のような形態を取るとして、水圧はどれくらい上げられるんでしょう?

Shinさん
御返事遅れて申し訳ありません。
1年でこの期間だけ忙しいので御容赦下さい。

>1.日本人の胃袋のサイズに限界 -> あまり欲しくないから高いと買わない
 2.施設はどうしても設備費、運転コストがかかってしまう -> 利益率の圧迫

その通りです。
一問一答も的確なとらえ方だと思います。


本当は別のトピックを立てたほうがいい位の問題なんですが、一般的農業のレベルから、いきなり植物工場へ飛躍する前に、「農業が法人として成り立つか」という問題があると思います。

農家は家族労働が基本で協力体制がばっちりできています。
仕事がきつい、儲からない、休みたい・・・色々不満があっても所詮内輪の問題ですが、法人として雇用を入れた場合、他の産業と同等の給与や待遇を与えなければなりません。
私の場合、非農家からの取り組みなので土地やハウスは全てレンタルでやっています。
そうなるとその借地料も発生します。

つまり農家に生まれて来なかった人間が会社組織で農業をやろうとすると、雇用、法人としての税、決算費用、借地料などが発生してしまい、かなりの重荷になっています。

法人として野菜生産の成功例として「ガイアの夜明け」でレタス生産の「トップリバー」さんがボーナスを300万か400万だか渡していましたが、そのシーンだけ見れば驚きですが、朝の4時から夜まで働いて基本給はかなり抑えてあったように記憶しています。
多くの社員が独立のための研修的な働き方のように見えました。その辺に成り立っているからくりがあるのだと思います。

ゴールデンウィーク中全く休み無しですが、農家の感覚なら「普通でしょ」
でも、サラリーマンはそう思えないでしょう。
そういった労働への感覚のずれも大きいと思います。
#38 Shinさん、
>あと10年くらいは発光効率の大幅向上は望めないと思われます。
>価格についても同様ですね。

このあたりは、なんともいえないですね。白色LEDの今と10年前とを比較すれば容易にわかる。はたして、LEDや有機ELが10年後にどのあたりまでいっているのか…

自宅のサンルームに使った(昨年改装しました)ガラスはすごいですよ。まったく同じではないですが、こんなやつ。
http://www.southwall.com/southwall/Home/Products/Commercial/HeatMirrorInsulatingGlass.html
ドアにはめるガラスには使用できなかったので、窓の部分が熱線反射型ガラス、ドアに嵌めてあるのは普通のガラス(いずれも2重ガラスです)。日光が入ってくると、裏側で感じる温度がぜんぜん違います。これで、空調コストがぜんぜん違うと工務店の人に言われて購入しました(笑)。
農業ハウス用途に使うには高すぎるのでしょうけれど、技術的にはいろいろありますね。
(ちなみに、私は米国在住です)




#39 Shinさん、

2) エネルギーコストが大きい
これについては、Shinさんがかかれたモデル
>0.4×0.2×0.1=0.0008
これが、植物工場成立の困難性を平易に上手に表現されていると思いました。私にとっては「目からうろこ…」ものでした。
タダの日光を利用しないということは、大変なことなんだということですね。

人口増加にともなって、旧来の農業手法では農地面積が足りなくなると予測されています(言い換えれば、自然環境破壊をし尽くしても まだ駄目ということ)。
これを何とかしないといけないのだけれども、人口減少のための方策に人類は力を入れるべきということなのかもしれませんね。日本は、それの最先端を行っているので、世界をリードできるかも知れません(笑)。

植物工場の一番の利点は土地集約性なんだろうと思います。そのメリットがエネルギーコストを凌駕することができれば、植物工場の可能性はぐっと高まるでしょうね。
次に、汚染源が面(農地)から点(工場)になるので、自然環境への過剰栄養供給をコントロールしやすい点も大きいと思います。このメリットとエネルギーコストの天秤。
あとは、無農薬の観点から、製品が高く売れて、それでエネルギーコストを吸収できる状態が考えられますね。実際、フェアリーエンジェルさんの野菜はものすごく高いです。無農薬なのに虫食い部分があったら駄目、みたいな潔癖型の消費者は世の中にたくさんおられます。




横レスですが…
#41ベジタさんの
>私の場合、非農家からの取り組みなので土地やハウスは全てレンタルでやっています。

これは、すごい!
ある意味、時代のヒーローだと思いますよ。

今でなんとかできているのなら、農家保護政策がなくなれば、すばらしいことになると思えますね。

**


では、次に、
1) 人工光は光が弱い、2)エネルギーコストが大きい、3)植物の生育スピードは最速でも20日間、4)植物は「動かせない」、5)農産物は安くないと売れない
のうちの
3)植物の生育スピードは最速でも20日間
について。

私個人としては、これが最もわかりにくいです。
施設の回転率を上げたい、ということなんだと思いますが、それほどまでに重要なことなのか、という思いがあります。

よろしくお願いします。
>ベジタさん

私も土地だけ借りて、施設は自己資金と銀行融資で建てて参入しましたよ。利息補助もなしです。
農家の跡継ぎは有利だと思いますが、自分が不利になるわけじゃないですし、農業に対する姿勢では有利になる場合も多いんじゃないかと思ってます。
少なくとも、私は返済が終わった段階で負ける気はしないですw

>よしくんぱっとさん

食糧危機なども含めた増産に対応する工場と、高く売るための工場は、分けた方が良くないです?日本にも地下工場はあるんですけど、入ってきた虫を手でつぶしてたり^^;;
無農薬を売りにするなら、露地の方が有利だと思いますし…。
フェアリーエンジェルさんのところをモデルにできるか考えるなら、一問一答に答えを当てはめてみるというのはどうでしょう?
砂漠で施設園芸がいいみたいですね。
水は循環で使用量も少なく出来るみたいですし。

香港でレタスなんかは輸送考えてれば
工場がいんじゃない?とか思ったりもしましたが。

農業問題の本質は流通にあるので、
生産はそれ改善してから考えるのが
良いのではないかと思ったりしています。
これ、止まってしまいましたね。残念!




>砂漠で施設園芸がいいみたい

アラブの産油国であれば、エネルギーコストの概念ががらりと変わるので、またぜんぜん違う可能性が見えてくるのでしょうね。


スイカ1玉3万円とかの世界らしいし。


植物工場の発展はドバイから、ということになるのかもしれませんね。
http://www.news.janjan.jp/living/0904/0904211878/1.php

元ネタ貼っときますあせあせ


アラブの王族向けは結構なビジネスチャンスなんですよね。

同業界内のT社とかM社とかね…誰かウチにオファーくれない?あせあせ
じゅんたさん

植物工場(完全閉鎖型)ではできないことを議論するより、植物工場でもできることを話した方がよいのでは?というご提案かと思います。
私も建設的な議論の方が好きなのですが、それは植物工場を実物大で見つめることができるようになって初めて成り立ちます。
植物工場に過大な期待がかけられている現状が心配だ、というのがこのトピックの出発点にもなっていますので、まず植物工場を実物大で見つめるため、その限界点(現時点での)を明らかにすることを中心にしております。
ご理解賜れば幸いです。
ベジタさん

お忙しい中ありがとうございます。

>本当は別のトピックを立てたほうがいい位の問題なんですが、一般的農業のレベルから、いきなり植物工場へ飛躍する前に、「農業が法人として成り立つか」という問題があると思います。

その通りですね。
農産物の安さを考えると、法人化自体がどこまで成り立つのか、その難しさを知っている人は植物工場だとすでに飛躍しすぎに感じるのが実際だと思います。

農業の株式会社化では、かなりコストアップになってしまう可能性がありますね。
今まで農家の方々が無料で奉仕していた部分をコストとして計上しなければならなくなってしまいますから。

たとえばニオイの問題。
これまでは農村に住んでいる人はみな農家ですから、堆肥などのニオイは「お互い様」と言うことでガマンしあってきました。
しかし農家が農業を辞め、どこかの企業が農業をすべて引き受けるようになったときは、その地域に住む住民は農家でも何でもありませんから、「ニオイを何とかしろ」と文句を言う人ばかりになってしまうでしょう。
すると、それまでニオイ対策にお金をかけずにすんできたのが、コスト負担を要するようになります。

水利、山林の維持もそう。
これまでは地元の氏子の人たちが共同作業で無料奉仕として水路の掃除、山林の維持を行ってきました。
しかし企業だけが農業をやることになれば、水路や山林の維持は住民がやらなくなります。
それを企業が負担しなければならないとなると、かなりのコストアップです。

コストとして見えていなかったものが、株式会社化で露見する可能性があり、非効率に見えていたものがいかに効率的だったのか、目から鱗のようなこともあるでしょうね。
42:よしくんばっとさん

>自宅のサンルームに使った(昨年改装しました)ガラスはすごいですよ。まったく同じではないですが、こんなやつ。

そういうものがいずれコストダウンすることが期待されますね。
私も、将来的にそういうものが安くなり、導入しやすくなると話が違ってくると考えています。
ただ、現時点でそういうガラスを導入すると建設費がバカ高くなってしまうので、導入をためらわざるを得ません。
ガラス温室は植物工場より一桁建設費が安いですが、それでもペイするかどうか、苦しいことが多いです。
「現時点で難しい」ことと、「将来的に希望がもてる」ということをしっかり認識しながら、それぞれの技術を捉えていきたいですね。

>植物工場の一番の利点は土地集約性なんだろうと思います。

ここのご指摘、とても重要な点を含んでいます。
一般的な工業での工場が、効率的たり得るのは土地集約的だからです。
しかし、農業で農産物生産が効率的たり得るには、太陽光をいかに効率よく利用できるか、で決まります。
太陽光の利用効率をもっとも高くするには、面積あたりの植物を密度高く植え、なおかつ広範囲に植える必要が出てきます。

「広範囲に植える必要がある」という点が、工業化と矛盾するところです。
工場は狭い場所で行うから効率的にできるのですが、広くなると難しくなります。
狭い場所で行おうとすると太陽光を効率よく利用することができなくなるので、矛盾します。
人工光のコストが高いという問題が立ちはだかる以上、狭い場所で栽培するというのはとても難しいことになりますね。

>次に、汚染源が面(農地)から点(工場)になるので、自然環境への過剰栄養供給をコントロールしやすい点も大きいと思います。

現実にはそうなっていないのが残念です。
温室栽培にしろ植物工場にしろ、生産を最大化させたいという動機が強く働くためか、実際には環境負荷の高い栽培を行う場合が多いです。
いわゆる、かけ流し式です。
高濃度の肥料を流して、吸収されなかった肥料成分は垂れ流しで廃液します。
自然環境への負荷は、実態では小さいわけではありません。
面から点になったようでも、濃度と量が多ければやはり負荷は大きくなります。
42:よしくんばっとさん

>3)植物の生育スピードは最速でも20日間   について。
>私個人としては、これが最もわかりにくいです。
>施設の回転率を上げたい、ということなんだと思いますが、それほどまでに重要なことなのか、という思いがあります。

カレーの「ココ壱番屋」は客の回転率を上げるため、「客が気軽に入りやすい」という条件と、「あまり長く座っている気がしない」という条件を兼ね備えた店内のレイアウトにしているそうです。
イスの数が限られている以上、回転率を高めることがカレーの売り上げ数を上げるための重要条件になります。

かたや昔風の喫茶店で、一杯のコーヒー350円で何時間も粘る客ばかりだったとして、新しい客が満員の様子を見て入るのをあきらめるようだと、収益機会が失われることになります。
回転率は、利益を上げるためにはとても重要な要件です。


植物工場のレタスの生育期間は、カレー屋さんや喫茶店の「客が同じ席に居座る時間」に相当します。
客が同じ席を牛耳って動かないと、客席の数が決まっている以上、その店舗への1日あたり客数が減ってしまいます。

それと同じように、植物工場でいくら立体的に生産しているにしても、ある棚のある場所に植えているレタスは、20日間居座っているわけです。
立体的にしたら効率的になるように感じるのは、錯覚といえます。
 #人工光や太陽光を低コストで立体栽培でも提供する技術が登場すれば別の話です。

自動車の場合は生き物ではありませんから、生産スピードを上げることができます。
しかし生き物相手では、生育スピードを上げるのにも限界があります。
レタスが育ち上がるのに時間がかかると言うことは、実際にはかなり致命的な問題といえます。
りんごya!さん

>水は循環で使用量も少なく出来るみたいですし。

水の循環利用が簡単にできると「誤解」が広がっているのが、議論をややこしくしている大きな原因の一つですね。
現実には、水の循環利用は難しいです。

水の循環利用には大きく二つの技術、「分解」と「除去」があります。
分解技術としてはオゾン分解、光触媒の利用などがあります。
しかし分解効率が思うように上がらない、機材のコストが高い、運転コストも高い、しかも分解後の水はしばらく静置しておかないと植物に傷害を与えることがある(分解力が水に残存する)、肥料成分まで悪影響を受けて沈殿するなど、バランスが失われてしまう、など、たくさんの問題があり、いまだ十分に解決できていません。

「除去」技術は、いわばろ過の技術です。
逆浸透膜などがもっとも強力な技術です。
これですと、塩分を含む水も純粋に変えることができます。
しかし、なにせコストが高い。
研究用の一番小さな機械さえ、だいたい100万円以上します。

「水は循環利用できる」というのは、「コストを無視するならば」という枕詞が必須です。
「コストを重視するならば」という枕詞の次に来る言葉は、「水の循環利用はなかなか難しい」ということになります。
>Shinさん

植物工場を実物大で見るというのは、評価するということではないんです?
なんか難しいですね・・・^^;;業務改善のプロセスのような感じですかね。
でも、ボトムアップでやるならベジタさんやりんごya!さんのおっしゃるように、農業やそれを取り巻く環境を見るべきじゃないかなと・・・。植物工場化ありきなら理想形と現実のギャップの評価をすればいいと思うし、現在の植物工場を改善したいならパフォーマンスを見るべきじゃないかと思ったりしますが・・・^^;;

過大な期待を危惧する気持ちも分かりますが、参入しようとする人が評価できないことには、他のトピでおっしゃってるように政治の世界の産物になってしまう気がします。
まぁ、そういう話も含め、他のトピの方がいいですね。
じゅんたさん

私の思考パターンなんですけども、「できることとできないこと」をまず明確にすることが、イノベーションの源泉だと考えているんですよ。
孔子が「知るを知るとし、知らざるを知らずとす。これ知るなり」と言っていますが、本当にそうだと思います。
自分が何を知っていて何を知らないのか、何ができて何ができないのかを明確に区別できるようになれば、できることがたくさん見つかってきます。

問題点を洗い出すと、自然に問題点の解決法があぶり出されてきます。
問題点ばかりあげつらうのはネガティブに見えるかも知れませんが、問題点を明らかにすればするほど、どの方向に解決していけばよいのか、見えてくるものだと考えています。
ですので、このトピックでは「問題点を明確にすることで植物工場が進むべき現実的な方向性を明らかにする」という目的もあります。
少し迂遠な感じがするのはやむを得ないでしょうけれど。

もし最初から具体的に植物工場の可能性を議論するなら、「実物大の植物工場で何ができるか?」という別トピを立ち上げるべきでしょうね。
アプローチがちょっと違いますから。
>Shinさん

え〜と、逆に分からなくなりましたね…。
私の考えでは、問題とはあるべき姿と現状のギャップです。
つまり、目標がなければ問題は発生しないという考え方です。

植物工場はまだまだだけど、期待が大きすぎる、だからそれを抑えるのがこのトピの目標だと理解したので、確かにトピ違いだなと思ったんですが…。

Shinさんの問題って何です?

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