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501stCGUプロジェクトコミュのアズールレーン:第501沿岸警備隊 臨時紫波出張所日誌 #105 第66話 臨時紫波出張所騒動記:自称・龍神さまとピカピカのM66

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​某日。
横須賀本部から、新人1名配属の連絡が「臨時紫波出張所(旧月ケ岡小)」の通信端末に飛び込んできた。
「……ふむ、久々の新人配属とは珍しいな」
月ケ岡ベースのガレージの一館。
夏真っ盛りの気だるい空気の中、軍曹さんは愛用のオイルクロスで、腰のホルスターから抜いたばかりの真新しいステンレスシルバーの銃身をシュッシュッと丁寧に磨いていた。
カチャリ、と足音がして、コーヒーマグを手にした綾波が背後に立つ。
彼女は軍曹さんの手元をひと目見るなり、すかさず首をかしげた。
「……軍曹。銃、変えたデスか?」
「んあ? ああ、これか」
軍曹さんはあごをしゃくって、今しがた磨き上げたばかりの相棒を示した。
「前のM19な……だいぶ草臥れて、いよいよバレルの付け根、フォーシングコーンのあたりにクラックが入っちまってな。このまま無理して撃って破裂でもしたら、それこそ労災じゃすまねぇ。月ヶ岡工廠で調べたけど、経年劣化で『修理ムリにゃ。』と言われた……で、ニュージャージーが向こうで懇意にしているガンスミスに頼んで、しれっとM66を発注してもらったのよ」(https://drive.google.com/file/d/1JBVjtnbikBsBpqROuxItlwaPekPgPgD-/view?usp=drivesdk
「……」
「ま、リアサイトだけは前のM19の使い慣れたやつを移植してもらったけどな。……ちなみに、お上のレギュレーションじゃ『特殊公用武装の破損』は認められねぇとかで経費で落ちなかったから、見事に自腹を切らされたわ」
「……お疲れ様デス、自腹のM66」
綾波が淡々と同情とも呆れともつかない相槌を打つ。
軍曹さんは「まったくだよ」と苦笑いしながら、新しいステンレスのM66をカチリとホルスターに納めた。
……だが、この時はまだ、この数時間後に赴任してくる「新しい新人」によって、このベースが盛大な「様式美の渦」に巻き込まれることになろうとは、誰も予測していなかったのであった。
​数時間後――。
新人の到着にはまだ少し時間がある。
「ま、どうせ遅れてくるか、道に迷うかだな。その間にベース庁舎の壁でも直しておくか」
軍曹さんはそう言って綾波に告げると、ガレージの奥から道具箱と補修用のモルタル、そしてコテを引っ張り出した。
庁舎の入り口脇のひび割れた外壁を前に、軍曹さんはしゃがみ込み、慣れた手つきでコテを動かしていた。
カン、カン、と乾いた音が静かな校庭に響く。
その傍目からの姿は、どうひいき目に見ても沿岸警備隊の指揮官やベテランの老兵などではなく、ただの――地域ボランティア、あるいはこの旧・月ケ岡小学校の施設管理を担当する、気さくな「学校の用務員のおっちゃん」そのものでしかなかった。
腰のホルスターには、先ほど磨き上げたばかりのピカピカなステンレス製M66がひっそりと収まっているのだが、その上から着古したTシャツの裾がだらしなく被さっているため、物騒な銃の存在など微塵も感じさせない。
「……よし、こんなもんでいけるか」
軍曹さんは汗を拭いながら、一人ごちる。
――そして、いよいよ「その時」が、トコトコと足音を響かせながら近づいてきていることにも気づかずに。
​真夏の太陽が照りつける、旧・月ケ岡小学校。
そのエントランス脇で、軍曹さんのもとへ――。
ペタペタ、と軽快な足音が近づいてきた。
「ん……?」
軍曹さんがコテを止めて顔を上げると、そこには見慣れないセーラー風の装いに身を包んだ、真新しい制艦服姿の少女が立っていた。
サラサラとした長髪を揺らし、どこか誇らしげに腰に手を当てている。重桜所属の特別計画艦、四万十その人だった。
四万十は、目の前でしゃがみ込んでいるおっちゃん……いや、軍曹さんを上から下までじろりと見ると、フンと鼻を鳴らした。
「あのさ、そこのおじさん!」
第一声からこれである。軍曹さんは心の中で「よし、きた」と小さくガッツポーズをした。
「なんだい、お嬢ちゃん。こんな田舎の廃校……じゃなくて臨時紫波出張所に、何の用かね?」
軍曹さんがあえてダミ声気味に、いかにも人の良さそうな用務員風のトーンで返す。
四万十は偉そうな、それでいてどこか子供っぽさの残る口調で、ふんぞりかえってみせた。
「ふふん、驚くといい! わたしは横須賀から新たに配属された、重桜の特別計画艦・四万十だよ!……っと、それはそうと、この学校の『偉い人』を探してるんだけどさ。ねえ、おじさん知らない?」
「偉い人ねぇ……。まあ、あっちのガレージにそれっぽいのがいるにはいるけどよ」
軍曹さんは親指で奥の建物をクイクイと指し示す。
「なんだ、いるのか! じゃあちょうどいいや。重い荷物があるからさ、指揮官のところまで運ぶのを手伝っておくれよ。お近づきの印に、あとでありがたい龍神さまの説法でも聞かせてあげるからさ!」
「お、龍神さまかいそりゃすげぇや。ほれ、荷物ってこれか?」
軍曹さんは言うが早いやいなや、四万十が足元に置いていた大きめのボストンバッグをひょいと持ち上げた。
「おっと、けっこうズッシリくるねぇ」
「でしょ? わたしの特別な装備や、あとお気に入りの保存食が入ってるからね! ほら、おじさん、落とさないように気をつけてよね!」
ドヤ顔でスタスタと歩き出す自称・龍神さまの背中を、軍曹さんは「はいはい」とCrocsを鳴らしながら従う。
​――数分後。
ガレージの前で作業していた綾波と、コーヒーを飲んでいた三笠大先輩の視界に、その珍妙な一幕が捉えられた。
「あ……」
綾波が、スッと目を細める。
三笠は持っていたマグカップを思わず落としそうになり、慌ててそれを支えた。
「おいおい……また新人をからかっておるのか、あのバカは……!」
先頭を歩く四万十は、ガレージの前に着くと「ここだな!」と振り返り、荷物を持たせた軍曹さんに向かって得意げに胸を張った。
「ふふん、ご苦労だったね、おじさん! なかなか気が利くじゃないか。それじゃあ、この学校の指揮官を呼んできて――」
「――おや、四万十じゃな? 荷物持ちご苦労だったな」
ガレージの奥から、スッと現れた三笠大先輩が冷ややかな声で割って入る。四万十に向けられたその言葉に、四万十はきょとんとして三笠を見上げ、それから目の前の「用務員のおっちゃん」を二度見した。
そして、その隣で軍曹さんが麦わら帽子をちょいと持ち上げ、腰のホルスターにチラリと視線を走らせた。そこには、新しく換装されたばかりのステンレス製のM66が、ギラリと鈍い光を放っている。
「え……? え? ちょっと待って、このおじさんは……?」
「……私たちの、偉大な指揮官デス」
綾波は淡々と言い放ち、これ以上ないほど的確なトドメを刺した。
「……もはや様式美デス」
「は……? えええええええええっ!? こ、このしまむらTシャツと麦わら帽子の人が、指揮官!?」
四万十の顔色が一瞬で真っ青になり、持っていた手荷物を落としそうになる。
頭の中の「龍神さまとしての威厳」が音を立てて崩れ去っていくのを感じながら、彼女はワタワタと両手をブンブンと振った。
「う、嘘でしょ!? だってわたし、いきなり荷物持ちを……! いや、違うんだよ指揮官、その、あれだ! わたしはですね、神様だから人の姿を借りていてだな……!」
青ざめながら必死に言い訳をする四万十を見て、軍曹さんは麦わら帽子を深く被り直しながら、ニヤリと笑った。
「まあ、楽にしろや。ここじゃ階級なんて飾りみたいなもんだ。……で、さっき『龍神さまのありがたい説法』がどうとか言ってたっけか?」
軍曹さんが麦わら帽子をちょいと持ち上げながらニヤリと笑うと、四万十は恥ずかしさをごまかすようにむっとほっぺたを膨らませた。
「そうだよ! わたしはただの人間じゃない、重桜の特別計画艦にして、偉大なる『龍神さま』なんだからね! 人間をちょっと手ほどきしてやろうと思ったのに、いきなりおじ……じゃなくて指揮官に荷物持ちさせられるなんて聞いてないよ!」
威張ってみせるものの、さっきまで用務員のおっちゃん扱いに勤しんでいたせいで、威厳のいの字もない。
見かねた三笠大先輩が、やれやれと頭を抱えながら苦笑する。
「ふむ……自称・龍神さま、か。近年稀に見る大物が配属されてきたものだな……」
「大先輩、そんな呆れた顔しないでよ! わたし、ほんとにすごいんだからね!」
抗議するようにブンブンと手を振る四万十の様子を眺めながら、軍曹さんは腰のステンレス製M66のグリップを軽く叩き、ふと思い出したように首を傾げた。
「ちなみに、プロフィールにある、龍神さまとはなんだね?」
軍曹さんがニヤニヤしながら人事ファイルのタブレット画面をひらひらと見せつける。
そこには、横須賀本部から送られてきたばかりの分厚い配属書類――の、備考欄の隅っこに手書きの文字で【自称・龍神さま(要取扱注意)】とご丁寧に追記されているのがハッキリと映し出されていた。
「うっ……! な、なんだよそれ! 勝手にそんな変な注釈をつけないでよ!」
四万十は自分のプロフィール欄をのぞき込み、顔を真っ赤にして地団駄を踏む。
「いや、本部のお墨付きで『自称』って書いてあるんだから公式だろ。なあ綾波?」
「……ハイ。ガッチリと公認されているデス」
綾波が淡々とうなずくと、四万十は「もうっ!」と両手で顔を覆ってしまった。
「もう知らない! 龍神さまをからかう罰として、今日の夕飯は一番豪華なお供え物……つまり極上のデザートを特盛りにしてもらうからね! いいね!?」
顔を真っ赤にしてぷりぷりと怒る新人を眺めながら、軍曹さんは「はいはい、ご神託とあらば仕方ねぇな」と肩をすくめる。
こうして、ピカピカのM66と、自称・龍神さまのドタバタな新コンビを乗せた臨時紫波出張所の夏は、いつも以上に賑やかな一歩を踏み出すのだった。(終)


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