立命館大学「生存学」創成拠点コミュのアフリカ学会研究集会：アフリカの課題をさまざまな分野・視点から討議

昨日開かれたアフリカ学会関東支部研究集会に参加しました。
朝10時に会場の法政大学の教室に入ったら、AJF会員もたくさん参加していました。
「アフリカの土地制度問題－土地利用の政治経済：研究レビューと展望」
吉田昌夫（アフリカ日本協議会）

吉田さんは、アフリカの土地問題を調査するには、地域の慣習法を丁寧に調べる必要がある、政治家や官僚にとって触られたなくない部分なので調査許可がおりない、なので「土地利用の調査」の名目で工夫して調査してきたという話から始まり、土地問題に焦点があたっているのはなぜかを紹介して、今後の課題、まずは研究者が増えないと始まらない、と提起していました。
僕は、森林管理を研究しているマダガスカル人留学生のスワランディさんに「入会（いりあい）」について聞かれたことを紹介し、日本に「近代的＝西洋的」な土地私有・登記制度が導入された際に入り会い山をめぐって起きた入会裁判などを紹介していく必要があるのではないかと質問しました。

「地球変動の中のアフリカ－環境変動研究から学んだこと」
門村浩（東京都立大学、緑のサヘル）

3年ほど前、アフリカひろばで話してもらった時、門村さんが1時間半話していたことを思い出しました。
サハラ砂漠南縁に作られようとしている「Green Wall」が一体何の役に立つのかわからない、もっと学際的な研究が必要、という門村さんのことばが強く残っています。

「スーダン－あるアフリカ国家の破綻？」
栗田禎子（千葉大学）
「『民族』をこえた公共性－エチオピア農村社会の事例から」
松村圭一郎（立教大学）
「ケニア・ルオ村落社会で公共性を考える－独立から『ケニア再生』の期待とのはざまで」
椎野若菜（東京外国語大学）

どれも興味深い提起でした。
椎名さんの提起を聞いて、「 2010/10/07　cnn.co.jp　妻百人の男性死亡、子供
１６０人　病気で　ケニア（http://www.arsvi.com/i/2ken.htm#1007）」がなぜ記事になるのかやっとわかりました。
武内さんのコメントを聞きながら、改めて「公共」が課題となるのは、紛争が生じた時（弱肉強食の私闘を終わらせるための「公的権威」の必要性　 cf.　藤木久志さんの仕事）、公共財の管理（このセッションの報告を聞きながら、中学生の時に参加した地区内の道路の清掃作業を思い出しました）、弱者支援（パレスチナ・ガザ地区でハマスが、レバノンでヒズボラが支持基盤を広げる際に社会福祉的な活動が大きな意味を持ったという話が思い浮かびました）だろうなと考えました。
で、障害者・高齢者・子ども支援の仕組みを意識的に行うような取り組みと公共の関係について質問しました。栗田さんは、南部スーダンで国家が公共財の管理などを放棄してきたことが南北内戦の背景にあることを改めて紹介してくれました。松村さん、椎名さんは現にある共同体の活動の中には障害者支援につながる取り組みもあるが、そもそもそのために共同体があるわけではないと答えていました。また、二人が調査に入っているそれぞれの地域では、障害者だから弱者とは言えないとも語っていました。

「東アフリカにおけるスーパーマーケットの台頭と青果取引」
西浦昭雄（創価大学）
「農業開発が環境におよぼす影響―『緑の革命』とアフリカ」
足達太郎（東京農業大学）
「グローバリゼーションがアフリカの生物多様性に及ぼす影響」
岡安直比（WWFジャパン）

西浦さんの報告は、今年5月のアフリカ学会でも聞いて関心を覚えていました。
今回、ウガンダのスーパーマーケットで売られている果物はどこから来ているのかに注目した興味深い報告を通して、商業農園のあり方、果実流通の一端もかいま見ることができました。
足達さんの応用昆虫学の視点から見た「緑の革命」そして「緑の革命」とはいわば正反対の方向へ向かって動き出している新しい技術の紹介、たいへん興味深いものでした。食料安全保障研究会、セミナー「飢餓を考えるヒント」で、もっと詳しく聞いて質疑を行いたいと思っています。
「子育てはゴリラの森で」の著者、岡安さんの提起、ちゃんと聞くと1時間半かかりそうです。こちらも機会を作りたいと考えています。