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源実朝…金槐和歌集コミュの基本:金槐和歌集を読む。

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せっかくの機会なので新トピを。

岩波版金槐集重版という絶好の機会にめぐまれた現在、このコミュに参加して頂いてる皆様も多くの方が入手されたことでありましょう。本来ならどう読もうとそれは読む人の自由なのですが、ものが古典だけに「読み方にルールがあるんじゃないか」とか「私の読み方は間違っているんじゃないか」と心配される方も中にはいらっしゃるんじゃないかと思います。

そこで!

今回初めて金槐集を読むという方のために、読み方のコツというか、「自分はこう読んでいる」という、皆様のルール(先例/定石/体験談etc)を募集します。

オススメの読み方でもよし。
(例:初めて読むなら「雑」から読むと吉)

独自の読み方でもよし。
(例:潔斎してから読んでます)

せっかく手元に素晴らしいものがありますから、どうぞお教え下さい。

コメント(6)

まず基本的な事柄をいくつか。

金槐和歌集には大きく分けて二つの系統本があって、一つが「柳営亜槐(りゅうえいあかい)本」、もう一つが「定家所伝(ていかしょでん)本」と言います。

岩波版金槐集は、この二つのうち柳営亜槐本を底本にしています(ちなみに「新潮日本古典集成」の方は、定家本を底本として未掲載の歌を別掲載にしています)。

「柳営亜槐」とは、征夷大将軍かつ大納言の地位にあった人物を指すものと思われ、具体的な人物としては室町幕府八代将軍・足利義政とも言われますが、詳しいことは分かっていません。とにかくその人物により金槐集が編纂されたことは間違いないようです。全部で719首の歌が収められ、近代になって定家所伝本が発見されるまでは唯一の金槐集でした。

定家本の方は、昭和四年に発見された金槐集で、その表紙に書かれていた文字が定家の真筆であることから定家が所有していたものと推測され、その奥書の日付により実朝22歳までの歌663首を収めているとされます。また、定家の時代の、最古の写本であることから、実朝が詠んだ歌に最も近い(間違いが少ない)とも言われます。

この二つの大きな違いは、柳営亜槐本では歌の数が増えていることと(+56首)、それにともなって歌の配置がごっそり替えられていること。定家本にあった「賀」「旅」の部立もばっさりカット、また細かく見ると歌そのものも違っている場合があります。

歌の配置を替えるというのは実はものすごいことで、家集全体の雰囲気もガラッと変わってしまいます。私の個人的な印象としては、定家本には整然とした叙事詩的な感覚を、柳営亜槐本には雑然とした叙情詩的な感覚を受けます。

岩波版金槐集には、この定家本の配置についてしっかり書かれています(定家本にあるなし、ある場合はその番号)。これはパソコンがなかった時代にはとても面倒くさく大変な労力の仕事です。ありがたく読みましょう。

また巻末に斎藤茂吉による定家本発見による金槐集認識修正が紹介されていて、これは必見。文学作品と歴史的事実との整合性の難しさを思い知らされます。
えーっと、私なりの読み方ということで。


大学時代に全く文学というものから離れていたようなものでしたので(連日実験漬けでしたからねえ。誰も薬学部出身だと信じてくれないけど)、高校時代に習った古典文法なんてほとんど忘れてしまっておりました。
で、そこを救ってくれたのが『新潮日本古典集成』版の金槐和歌集だったのです。
定家本を底本にしていて、なおかつ簡潔な現代語訳もついていますので、取っつきやすかったのがよかったかなと。
#で、今改めて岩波文庫版を読んでいると、
 「太上天皇の御書下し預かりし時の歌」の配列が違うじゃん! と
 叫びたくなってしまったりして。

そんなわけで、私にとっては定家本のほうが馴染んでいるんですね。歌の配列の仕方とか、全体の構成から、実朝の人となりを知る手がかりになるんじゃないかと思って読み続けてきましたんで。


あと、こんな曲を聴きながら読んでいたりします。

http://music.mixi.jp/show_compi.pl?cid=261657

#見事にHM/HRずくめ……。
いちばんオススメの「Brothers」(Yngwie J. Malmsteen)が試聴できないのが残念ですが。
>アンダーザミントさん。

ありがとうございます!
私は岩波版で親しんでいたので初めて定家本を見た時に「うぉー、和歌集っぽーい」と叫んでしまいました。

何がどう、って言うのは難しいのですが配置や歌の数が違うだけじゃない違いがあるんですね。定家本は、すごく穏やかな感じがするんです(私だけかも)。

決まった音楽を聴きながら、ってのはあるかも…。もしくは読んでいるとどうしても決まった曲が流れてしまうとか…。こればかりは個人差ですね。私は小林秀雄の本の組み合わせが悪かったせいかモーツァルトですもん。お約束すぎて恥ずかしいくらいに。

あ。ちなみにこのトピのレス番号がずれているのは、最初に万葉調がらみのことを熱く書いてしまい後になって消したからです。ごめんなさい。
岩波版金槐集を読む心得。

えーと、改まった話じゃないのですが、岩波金槐集を読んでいるとときおり「眞淵○印を附す」というのが出てきます。

これは江戸時代後期の国学者・賀茂真淵が記した評価のようなもので、真淵お気に入りの歌にそれが付いているわけです。巻末の、「鎌倉右大臣家集の始に記るせる詞」に、こんなことが書かれています。

「此公の集の歌は、初めなる、中なる、末なる有りと見ゆ。其初めなるには、下れる世の垢づけるあり。中頃なるしも、一わたりさることと聞ゆるのみにて、なほ長(たけ)足らず。かれこの二つは總べてとらず。唯だ末にいたりて、けがれたる物皆はらひ捨てて、清き瀬に身禊ぎしたらん心地するにはしるしを附けたり」

要するに、実朝が和歌を、新古今→古今→万葉という順序で学んだ(と当時は思われていたのです)と考えたとき、その末である万葉調の秀作には印をつけましたよ、と言っているのです。

で、で。

初めて金槐和歌集を読まれる方にお願いしたいのですが…、ご自身「この歌いいな」と思ったのに無印だったからといって、がっかりしないでほしいのです。いえ、というか印は気にしないでください。

真淵はコチコチの万葉主義者で、万葉の調べじゃないとだめなのです。

たとえば…歌番号28。

★さりともと思ひしほどに梅花散すぐるまで君が来まさぬ
(梅の花をよめる)

ここに真淵の詞「さりともは後なり」があります。これはあれです。真淵の詞を借りれば「下れる世の垢づける」歌です。万葉の頃には使われていない言葉である、として切り捨てているわけですね。他にも探せばいっぱいあります。「後なり」「後世なり」「此公にふさはず」…。これはもう信仰に近いと言えます。

だから、印は気にしないでください。

もちろん中には秀歌もありますけど、正岡子規が激賞した歌番号696「われてくだけて」が無印であることもお忘れなく。
それから。
金槐和歌集というのは実朝のいわゆる「家集」なんですが、実は家集としては非常にユニークです。

家集とは歌人の生涯に作った歌全てを収める個人歌集のことで、原則として1人1冊しか作れません。後に増補したりすることはあっても別の家集には出来ません。ここまでは金槐集もその通りですが、そのユニークな点というのは「和歌集」であるというところです。

これにはちょっと説明が要ります。

家集は実朝と同時代に生きた人物たちのそれを見ると金槐集のような構成になっていません。たとえば後鳥羽院御集は、最初の一連が「正治二年八月御百首」、次は「正治二年第二度御百首」、「建仁元年三月内宮御百首」…というように、折に触れて作った定数歌や題詠が年代順に掲載されています。当時の家集とは、そういった「生涯の記録」だったわけです。どの歌がいつ詠まれたかも一目瞭然です。

ひるがえって金槐集を見ると、その部立ては「春夏秋冬恋雑(旅賀)」ですから古今和歌集等の勅撰和歌集と同じ構成になっています。これは、折りに触れて実朝が作った歌をわざわざ配置しなおしているということです。しかも立春から始まって落花・惜春など、うつろいゆく季節の循環、また初恋・忍恋といった恋のシチュエーションを決まった順序で並べたり歌数で調節したりしますから、大変に時間のかかる面倒くさい作業が必要になります。

そしてその作業により、金槐集の大部分の歌がいつ詠まれたか分からなくなってしまったのです。

中には詠んだ年が詞書きにある歌もありますが、実朝にまつわる事件に際して詠まれた歌があるのかどうかさえ分かりません。実朝を扱う評伝などではこの点に作者が苦心していて、想像力をフルに働かせて歌と事件を関係づけてみたりしています(そこに正解がないにも関わらずこういうことが行われるのはそれだけ実朝の評伝は書きにくく、かつ書くのに魅力的なのかもしれません)。

個人的には、分からない方が実朝らしくていいとは思うのですけれどね。

だって…和田合戦の時に詠んだ歌は実はこれだった! と分かったもののへたな歌枕歌だったりした日にゃ悲しいを通り越して口惜しくなってしまいます。やっぱり想像力を働かす余地はたくさんあった方がいいです。だからこそ歌人の手に拠らない実朝の評伝を、いろんな人が書けたわけですからね。

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