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ハヤカワ・ポケット・ブックSFコミュの3001〜3050

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読まれたかたは感想などどうぞ。

3001 盗まれた街 ジャック・フィニイ 福島正実訳
3002 ドノヴァンの脳髄 カート・シオドマク 中田耕治訳
3003 火星人ゴーホーム フレドリック・ブラウン 森郁夫訳
3004 宇宙人フライデイ レックス・ゴードン 井上一夫訳
3005 吸血鬼 リチャード・マシスン 田中小実昌訳
3006 21世紀潜水艦 フランク・ハーバート 高橋泰邦訳
3007 クリスマス・イブ C・M・コーンブルース 新庄哲夫訳
3008 宇宙の妖怪たち ジューディス・メリル編 中村能三・他訳
3009 大真空 チャールズ・E・メイン 高橋泰邦訳
3010 宇宙病地帯 ジョージ・O・スミス 南洋一郎訳

3011 時間溶解機 ジェリイ・ソウル 田中小実昌訳
3012 宇宙の眼 フィリップ・K・ディック 中田耕治訳
3013 渦まく谺 リチャード・マシスン 高橋豊訳
3014 神経線維 レスター・デル・リイ 林克己訳
3015 アトムの子ら ウィルマー・H・シラス 小笠原豊樹訳
3016 鋼鉄都市 アイザック・アシモフ 福島正実訳
3017 呪われた村 ジョン・ウィンダム 林克己訳
3018 果てしなき明日 ハント・コリンズ 中桐雅夫訳
3019 アンドロイド エドマンド・クーパー 小笠原豊樹訳
3020 300:1 J・T・マッキントッシュ 一ノ瀬直二訳

3021 時の風 チャド・オリヴァー 小泉太郎訳
3022 都市 ―ある未来叙事詩― C・D・シマック 林克己・他訳
3023 海底牧場 アーサー・C・クラーク 高橋泰邦訳
3024 刺青の男 レイ・ブラッドベリ 小笠原豊樹訳
3025 火星の砂 アーサー・C・クラーク 平井イサク訳
3026 宇宙商人 フレデリック・ポール、C・M・コーンブルース 加島祥造訳
3027 金星応答なし スタニスラフ・レム 桜井正寅訳
3028 超能力エージェント ウィルスン・タッカー 矢野徹訳
3029 来たるべき世界の物語 <H・G・ウェルズ短編集?> 早川書房編集部編 宇野利泰訳
3030 宇宙気流 アイザック・アシモフ 平井イサク訳

3031 最終戦争の目撃者 アルフレッド・コッペル 矢野徹訳
3032 太陽の黄金の林檎 レイ・ブラッドベリ 小笠原豊樹訳
3033 タイム・マシン <H・G・ウェルズ短編集?> 早川書房編集部 宇野利泰訳
3034 海底二万リーグ ジュール・ヴェルヌ 村上哲夫訳
3035 モロー博士の島 <H・G・ウェルズ短編集?> 早川書房編集部 宇野利泰訳
3036 脳波 ポール・アンダースン 林克己訳
3037 地球の緑の丘 R・A・ハインライン 田中融二・他訳
3038 人間の手がまだ触れない ロバート・シェクリイ 稲葉由紀・他訳
3039 マラコット海淵 コナン・ドイル 斎藤伯好訳
3040 月世界最初の人間 H・G・ウェルズ 白木茂訳 

3041 月は地獄だ! ジョン・W・キャンベル 矢野徹訳
3042 アーサー王宮廷のヤンキー マーク・トゥウェイン 小倉多加志訳
3043 宇宙恐怖物語 グロフ・コンクリン編 小笠原豊樹・他訳
3044 地球脱出 R・A・ハインライン 矢野徹訳
3045 巨眼 マックス・エールリッヒ 清水俊二訳
3046 人間以上 シオドア・スタージョン 矢野徹訳
3047 火星年代記 レイ・ブラッドベリ 小笠原豊樹訳
3048 ロスト・ワールド A・コナン・ドイル 新庄哲夫訳
3049 宇宙翔けるもの <現代ソビエトSF短編集> 早川書房編集部編 袋一平訳
3050 トリフィドの日 ジョン・ウィンダム 峯岸久訳

コメント(20)

3001『盗まれた街』は、何度か映画化されていますね。ちょっと調べてみると、1956年に「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」、1978年に「SF/ボディ・スナッチャー」、2007年に「インベーション」という題名の映画になっています。78年のドナルド・サザーランド主演の作品が人気が高いみたいですね。「インベーション」はニコール・キッドマンの主演。

以下ネタバレあり。

外見は以前とまったく変わらないのに、家族や恋人には別人になったように見える、そんな人間がある街で徐々に増えていく。その偽者は、豆のような宇宙生物のさやから生れてくる。偽者は「生まれ変わったようで気分爽快だ」と語り、主人公に「生まれ変わり」をすすめる……読んでいて、さやから生れた偽者はもとの人物とは別個の生き物なのだから「生まれ変わったよう」というのは何か欺かれているような気分になった。しかし豆のさやから新品の人間が出てくるというイメージは、映画で知っていてもやっぱり新鮮で面白かった。
3002『ドノヴァンの脳髄』
科学者で医師である主人公は、飛行機事故の現場から、富豪にして狡猾な実業家ドノヴァンの遺体を引き取り、その脳髄だけを生かす実験を始める。ドノヴァンの脳は主人公にテレパシーを発するようになり、やがて主人公の肉体を自由に操るようになる……

小松左京に「ぬすまれた味」という短編があるけど、アイディアがこれとよく似ていた。元ネタになった作品?
3003『火星人ゴーホーム』フレドリック・ブラウン
 
有名な作品ですね。これに出てくる火星人はひたすら嫌な奴です。目には見えるけど手では触れない緑色の火星人、それがおおぜい地球に現れて、ただ人の癪にさわることをささやいてイラつかせるという……人間だれしも苦手な「天敵」みたいな人がいるかと思うけど、そういう天敵とどうやってつきあうか、ということを深く考えさせられました。
3004『宇宙人フライデイ』レックス・ゴードン 

非常に真面目な小説です。惑星間飛行にはじめて挑戦した宇宙船が火星近くで事故に遭い、ひとり生き残った主人公が火星でいかに生きていくかという、SF版ロビンソン・クルーソー。水、食糧、動力の確保のしかたが緻密に描かれています。フライデイというのはロビンソン・クルーソーの召使いの名前?(『ロビンソン・クルーソー』は読んでいないのです(汗)) 主人公は自分の召使いになる知的生命を探し求め、火星人が見つかるには見つかったが、はたして召使いにできるかどうか……
3005 『吸血鬼』 リチャード・マシスン 

これは日本では後に『地球最後の男』と改題されたようです。
チャールトン・ヘストン主演の「オメガマン」、ウィル・スミス主演の「アイ・アム・レジェンド」といった映画の原作です。
主人公の周囲の人間が、みな吸血鬼のような化け物になってしまいます。吸血鬼は日光が苦手で夜間しか活動しないから、主人公は食糧集めなどを日中にすませる毎日。化け物たちは胸に木の杭を打たれると死ぬという、昔ながらの吸血鬼だったけど、映画ではそうではなかったような(ウィル・スミスのほうは観てないのですが)。

マシスンの作品はよく映像化されていますが、小説のほうは個人的には(あくまで個人的には)文章が淡白すぎるというか、書き込みが足りない感じがしてしまって、読むのがしんどいと感じることが多いです。この『吸血鬼』もそういう印象を受けました。
3008 宇宙の妖怪たち ジューディス・メリル編

すべてが傑作というわけではありませんが、いろいろな傾向の短編が収められています。F.ブラウン、シマック、F.ライバー、シェクリイなどの作品です。白眉はウィリアム・テンの「クリスマス・プレゼント」です。未来世界から間違って主人公の元に送られてきたのは、「模型人間組み立てセット」。模型というが、これで本当に生きた生物が造れるのだった。主人公は説明書を読みながら、低級な単細胞生物から造りはじめ、次に「こびと」を造ってみる。出来たのは顔と足の無い気味の悪い生き物。失敗作が出来た際の措置である「解体」という悪夢のような忌まわしい作業でそれを殺す。次に主人公は自分とそっくり同じ人間を造ろうとするが……

ちなみにHPBではないですが、創元の『ウィリアム・テン傑作集1・2』、とくに第1巻は本当の傑作ぞろいです。読まれた事のないかたは是非!
3010 宇宙病地帯 ジョージ・O・スミス 

読心術と透視術が、生まれつきの能力として、日常生活に用いられるようになった時代の話。ただし読心術と透視術の両方を身につけることはできないという設定である。
主人公のスティーブ・コーネルは、婚約者のキャサリンを隣に乗せていた車が事故に遭い、大怪我を負う。かつぎこまれた病院で意識を取り戻した彼は、キャサリンについて医師や看護婦に尋ねるが、誰もがそんな女性は事故現場にいなかったと言う。警察に問い合わせても答えは同じ。スティーブは独自に調査を開始する。しかし出会った人間が次々と行方不明になり、謎は深まるばかり。失踪した人物の一人が、皮膚が異常に硬化する難病「メクストローム病」に犯されていたことを聞かされて以来、彼の周りにその病気の患者が次々と出没するようになる。やがて彼は、特殊な道路標識をたどることにより、メクストローム病患者の秘密結社が存在することを探り出す。実はメクストローム病患者は、適切な治療を受ければ不死身の肉体を手に入れることができ、スティーブはその数少ない媒介者(病原菌を他人にうつすことができる者)だったのだ。

後半になると真相が次々と明らかになり、なるほどと膝を打つところが多くなるが、そこまでは話がどこに突き進んでいるのかちょっと分かりづらい。また主人公の懊悩が作品全体に憂鬱な雰囲気をかもし出している。
3012 宇宙の眼 フィリップ・K・ディック 

1959年のある日、ベルモント市にあるビヴァトロン原子炉が突如故障し、見学者八人が放射能障害を負う大事故が起こった。この物語は、この八人が意識を失っている間に観た幻覚の世界を描いている。

まず彼らが目を覚ますと、そこは魔法や呪術が幅を利かせ、バービ教なる宗教を皆が信仰している異様な世界だった。科学者も呪文の研究に熱中しており、ある意味中世に逆戻りしたかのようである。主人公のハミルトンは、バービ教の教会で「天に召される者のリスト」を見て、事故にあった八人のうちのシルヴェスターという退役軍人の意識の中に皆が閉じ込められているのに気づく。シルヴェスターを見つけた彼は、その頭をビンで殴り意識を失わせ、その世界から脱出するのに成功した。

しかしその次には、家庭的な中年婦人イーディス・プリチェットの世界に閉じ込められてしまう。芸術を愛する穏やかなプリチェット婦人の世界には、セックスが存在せず、みな生殖器を持たない体になっていた。ハミルトンはこの世界からも脱出を試み、何とか成功するが、今度は別な人間の意識に閉じ込められる……

前半は八人が閉じ込められる世界がコミカルなもので、ディックらしい暗さがなく、これならフレドリック・ブラウンあたりが書きそうな設定だと思ったが、転移していく新しい世界はどんどん救いのない憂鬱のものになっていく。単に幻覚の世界を描いて終わりなのではなく、そこで主人公たちが経験したことがラストの現実世界に生かされていく。
3013 渦まく谺 リチャード・マシスン

主人公のトムは、パーティの余興で義理の弟に催眠術にかけられて以来、不思議な能力を身につけ始めた。まず、自宅で女の幽霊らしきものが見えるようになる。近所の女性に確認したところ、それは前にその家に住んでいた、家主の妻の妹へレン・ドリスコールであるらしい。またトムの妻アンが頭に怪我したとき、職場にいたトムも同時に頭部に激痛を感じ、妻の身に何かが起こったことを知る。また人の心の中も覗けるようになり、近所の人妻の自分に対する淫欲を知って苦悩したり、妻が口にする前に何を買い物してきたらよいか当ててみせ気味悪がられる。妻アンの母親の死も予言し、アンは薄気味悪さと自分の心が覗かれることの嫌悪感から、トムを疎んじ始め苦悩する。

ヘレンの幽霊はしばしばトムの家に現れ、トムの息子リチャードの口を借りて喋ったり、トムの手を借りて自分の思いを紙にメモさせたりする。ヘレンの幽霊が一連の超常現象の鍵だと感じたトムは、ヘレンに関して情報を集めることにした。そんなおりトムは、近所の大人しい人妻のエリザベスが夫を銃で撃つ夢を見、それが正夢だと確信する……。

トムのテレパシー能力、予知能力と、それに対する夫婦の苦悩、近所で起こる小さな事件の描写が中心の小説。SF的な道具立てが少なく、普通のSF小説を読むつもりで臨むと読後にスカスカな印象も残るが、一気に読ませる構成の妙はある。
3018 果てしなき明日  ハント・コリンズ

未来世界。世界は、保守的なリー(リアリストの略)と、現実的なものすべてを否定するヴァイクの二つの政治勢力に分かれ、二つの派が互いにしのぎを削っている。主人公のヴァン・ブラントはヴァイク派文学の版権代理会社(作家の利益を代表して出版社と交渉するマネージャー業)を営んでいる。彼やその身の周りにいる秘書、ヴァイク派の作家たちは、すべて典型的なヴァイク的生活を送っている。すなわち、日常的な麻薬の摂取(セックスより麻薬の刺激をよしとする)、過度に皮膚を露出した服装、高度なヴァーチャル・リアリティによる映画(センソー映画)への耽溺。リーたちはそれに反し、快楽に背をむけ、基本的に禁酒・禁煙、肌を隠す服装をし、現実に目を向けた文学を標榜していた。ヴァン・ブラントとリーの代表格であるディノ・ペラジとの対決を軸に物語は進んでいく。

ヴァイク派の不健康な日常、リーたちの懊悩が、迫力を持って描かれている。
3019 アンドロイド エドマンド・クーパー

主人公マーカムは、不幸な事故により冷凍状態になり、二十二世紀の人々によって蘇らされた。そこはすべての労働をアンドロイドが担い、人間は自由に余暇を楽しむ時代だった。人間一人ひとりが私用アンドロイドを持ち、身の回りの世話の一切を行う。マーカムにはマリオンAという女性型アンドロイドがつくことになった。非常に優れた頭脳を持ち、ユーモアをも解するアンドロイドだった。しかしこの世界に満足できない「逃亡者」と言われる者たちがいた。アンドロイドに支配される世界に異を唱える者たちである。やがてマーカムは、自分の責任を負って生きていた二十世紀人の生き残りとして、逃亡者たちのリーダーとなり、アンドロイド社会に対する革命軍を組織する。
本来感情を持たないマリオンAが、マーカムと接し、人間らしく扱われることで葛藤に陥り、ついにはマーカムへの愛情を持つようになる変化が説得力を持って描かれている。
この小説のアンドロイドは、人間と敵対する中で殺人能力をもつようになるなど、アシモフの小説に登場するロボットとは一味違ったものだった。
3016 鋼鉄都市 アイザック・アシモフ

はるかな未来。人類は八十億を超え、「シティ」と呼ばれる外気から遮断された都市に住んでいた。資源は枯渇しかけており、人々は配給制の生活を細々と送っている。「宇宙人」と呼ばれる、かつて宇宙に殖民に出た人々の子孫が、ごく少数地球に戻り、地球人との接触を絶って「宇宙市」と呼ばれる都市に住んでいた。少数の市民が快適に暮らす宇宙市は、地球と外交的緊張状態にあった。宇宙人は優越人種であると自ら誇り、ロボット文化を発達させている。宇宙市から地球に広がったロボットは、地球人の職を次々と奪いつつあり、そのためロボットと宇宙人は、多くの地球人から憎悪の的となっていた。そんな中、シティと宇宙市をつなぐゲートの近くで、サートン博士という宇宙人が何者かに殺害された。そこで宇宙市はダニイル・オリヴォウという人間そっくりの優れたロボット刑事をシティに派遣し、地球側の刑事イライジャ・ベイリと協力して捜査に当ることになった。

SFと推理小説が融合した、緊張感のある作品である。
アシモフの作品に登場するロボットは、いわゆる「ロボット工学の三原則」を守らなければならないとされる。いわく第一条、ロボットは人間に危害を加えてはならない。第二条、第一条に反しない限り、ロボットは人間の命令に従わなければならない。第三条、第一条第二条に反しない限りにおいて、ロボットは自分の身を守らなければならない。ロボットがこうした「三原則」に縛られていることが、主人公ベイリの推理を明確にする一方で、しばしば袋小路にぶつからせることにもなり、推理小説としての面白みを増している。とくに結末に近づくにつれ増していくスリル、緊迫感が素晴らしい一篇である。
3011 時間溶解機 ジェリイ・ソウル

主人公ウォルター・シャーウッドはある朝見慣れないモーテルで目を覚ました。おまけにベッドの隣には見たこともない女が眠っているではないか。昨日酒を飲んだわけでもない。外に出て通りの店のウィンドウを見ると、そこに映っていたのはずいぶんふけた姿の自分だった。そして1946年5月15日に眠りについたはずの自分が、1957年7月15日にいることに気付いたのである。自分の十年間の足取りを探ると、軍隊を除隊後医科大学に通い、脳神経の研究者としての道を歩んだことを知った。またモーテルで隣に寝ていた女は彼の妻ヴァージニアだったが、彼女も同様にこの十年間の記憶を失っていた。やがて二人は協力して記憶が失われた原因を探るが、それはシャーウッドの研究と彼の属した研究所と深く関わりのあることだった。

記憶喪失の原因が解明されるところも興味深かったが、シャーウッドの失われた十年で彼が医学の天才、一歩間違えればマッド・サイエンティストだったことが明らかになっていくのも面白みがあった。
3015 アトムの子ら ウィルマー・H・シラス

原子力発電所の事故のころに生れた天才少年少女たち。彼らは人類の突然変異だった。そうした少年の一人であるティムは、精神科医ウェルズと協力して彼らを集め、資金を資産家の叔父に出してもらって天才たちの学校を開くことになった。
十四五歳の天才児たちの驚異的な能力だけでなく、感情も生き生きと描かれている。SF的な派手さはないけれども、人間ドラマとしての魅力にあふれた傑作。
3014 神経線維 レスター・デル・リイ

舞台は原子力発電所。その電力の恩恵にあずかりながらも、放射能に対する恐怖から、周囲の住民から立ち退きを求める声が多く上がっていた。しかしそれは多くは地域住民の無知から発せられた声だった。

先見の明のある議員は発電所の味方をし、発電所の所長パーマーに、ある広大な農場の害虫を駆除できるだけの電力をまわしてくれれば、立ち退き案をにぎりつぶすことができると告げた。かくして多大の電力を大急ぎで生み出すべく、新しい方法で原子炉を動かすことになった。しかし、数名の人間が予想したように、その方法では非常に不安定で危険な物質「アイソトープR」が出てくるのだった。爆発を繰り返す転換炉、続出する怪我人。主人公のベテラン医師フェレルとその部下たちは、疲労困憊しながらも怪我人を必死に治療し続け、また技師たちはアメリカ大陸の半分を破壊する可能性のあるアイソトープRを無害化すべく努力をし続ける。

原子炉についてほとんど世間に知られていなかった1942年に書かれた作品。原子力発電所が数多く作られ、現実に事故も起きている今日においては、SFとしての道具立ては古びてしまっていると言える。しかし医師たちと技師たちの、放射能という怪物との息づまる死闘が生き生きと描かれ、小説としての面白さは決して古びていない。
3020 300:1 J.T.マッキントッシュ

しばらくすると太陽が急に温度を上げ、地球の生物は全て死に絶えるであろう、と科学者たちは予言をした。世界破滅まであと四日、というところから物語は始まる。火星への移住計画が進められていたが、宇宙艇の数は限られ、地球人口の三百人に一人の割合でしか救うことは出来なかった。宇宙艇の艇長が各地に派遣され、火星へ行く人員の選抜に当った。主人公のビル・イースンは人口3000の町シムスヴィルから、宇宙艇に乗る10人の搭乗者を選抜することになった。取り残された者から妨害を受けないよう、出発ぎりぎりまで搭乗者は明らかにせず、辛くもイースンの宇宙艇は地球を脱出した。
しかし宇宙艇には火星まで行くじゅうぶんな燃料が積まれていないことが、出発してから明らかになった。実際には地球人口の三百人に一人も助からないことが、秘密にされていたのだ。イースンは危険な急加速と急減速によって、燃料の不足をなんとか補い、火星に到着した。
ここまでが話の前半で、後半は火星へ移住した人々の開拓のようすが描かれているが、この後半部分は話がどこに進んでいるのか分かりにくく、読みづらい。働かずして富を得ようとする悪党のリッチー一味と主人公グループとの戦いが話の軸になっていくが、結婚制度の見直しと人々のそれに対する適応の様子も興味を引く場面にはなっている。
3044 地球脱出 R・A・ハインライン

 今は「メトセラの子ら」という邦題でハヤカワ文庫に入っている作品である。
 メトセラとは、聖書に登場するユダヤの族長で、969年間生きたといわれる人物。これは、約十万人の長命人種「ハワード・ファミリー」の物語である。
 ときは西暦2125年。ハワード・ファミリーの人々はみな二百歳近くまで生きることができたが、普通人から敵対心を持たれるのを恐れ、その素性を隠して生活してきた。長生きしすぎて周囲から奇異の眼で見られる前に、名前を変え別な町に引っ越すことで、普通人の間にとけ込んできたのだ。しかし社会の合理化が進み、戸籍が厳格に記録されるようになって、ファミリーの秘密を隠し通すことが出来なくなってきた。ファミリーの人々は単に遺伝によって長寿なだけだったが、普通人たちは、彼らが寿命をのばす特別の方法を知っているに違いないと考えた。普通人は彼らから長寿の秘密を聞きだすことができないと知るや、羨望からハワード・ファミリーを迫害しはじめた。
 とうとう十万人のファミリーは宇宙船で地球を脱出し、新天地を探すことになった。特殊な装置で恒星間飛行をなしとげ、地球に似た星をいくつか探し当てたが、いずれも高度に発達した先住民がいた。そこは地球人が住むにはあまりに異質な世界であり、結局彼らは地球に戻ることを選択する。
 主人公のラザルス・ロングはハワード・ファミリーの中でも最年長だったが、心身ともに若々しい。彼が指導者となってファミリーを率いるが、積極果敢な行動力と判断力を持ち、またファミリーの移住地があまりに安穏とした生活を強いるのを嫌って地球に戻ろうと提案するあたり、非常に進取の気性に富んでいる。ハインラインはこうした男性をしばしば描くが、そこには彼の理想の人間像があるのかも知れない。
3027 金星応答なし スタニスラフ・レム

 21世紀初頭、人工太陽のコントロール・ベースをシベリアの原始林中に建設中、地中から、有名なツングース隕石に関係すると思われる奇怪な物質が発見された。隕石状の物質は内部に磁気録音コイルを備えていた。解読されたその内容によると、金星に高度の文明があり、金星人は地球へのある種の干渉を企図していることが読み取られた。世界科学者会議は、一致して金星探検を決議し、世界中から選ばれた八人の乗組員を乗せて最新式宇宙船コスモクラトール号が金星へと旅立った。
 コスモクラトール号は金星の上空にとどまり、まず一人が乗った小さなロケットが降り立つと、厚い雲に妨害されてか、母船と連絡が取れなくなった。珊瑚やクラゲのような奇妙な植物のようなものが地面からたくさん生え、ある場所では放射能が検知された。さしたる収穫もないままこの一人が母船に回収された後、数名の探検隊がヘリコプターで金星を探索した。電流を通す巨大なパイプと、信号を発する白い球体が発見される。地下を探ると、黒い粘性の液が川のように流れているのが発見され、それはまるで生きている原形質(プロト・プラズマ)のようだった。金属でできた蟻のような生物も見つかり、その幾匹かが捕獲されたが、それは後に分析された結果、単なるロボットで金星の主人ではないことが分かる。
 なおも綿密な調査を進めると、金星人たちの廃墟が見つかる。コスモクラトール号乗組員による命がけの探検の結果、金星人たちの残した記録が見つかり、それは高性能コンピュータで解読された。それによると金星人たちは、地球を侵略する計画を立てたが、その後互いに戦争しあい、滅びてしまったらしい。金星上にあった白い球体は、地球への攻撃を加えるための装置の名残であり、地下の黒い原形質がそれにエネルギーを与えていたのだ。
 探検隊員が金星で目にした謎の風物に驚き、それを科学者が解明していくのが、淡々と繰り返される小説。機械文明のために自滅したらしいとおぼろげに推察される金星文明に思いをはせ、戸惑いつつも何とか教訓を得ようとする科学者の姿は、「英知を持ちつつも未知のもの、不可解なものに対したときの人間」をリアルに描いていると言えるかも知れない。
>>[8]

僭越ながら、レスをつけさせていただきます。

3012 『宇宙の眼』は、事故に遭った人の内面世界に主人公たちは飛ばされていたのだ、ということが明かにされるまで、お話の先行きがまったく読めず、めくるめく思いで半ばまで読み進んだ記憶があります。それが「面白かった」という読書体験になるのかどうか、いまだにわかりません。
この本を買う気になったのは、裏表紙に載っていた原書(エースブック)の表紙でした。
夜の空に巨大な目が開いていて、未来的な服を着た男たちが逃げているといったイラストだったと思いますが、そういうスペクタクルなSFだと思って買ったので、混乱はなおさらでした。

余談になりますが、さきごろ亡くなられた平井和正氏原作のマンガ『8マン』の『魔女エスパーの巻』は、あきらかにこの『宇宙の眼』からヒントを得ていますね。
>>[19]

 『宇宙の眼』、僕はスムーズに話についていけましたけどね。。。あるいは似たような作品を読んだことがあって「あ、あのパターンか」などと思ったのかも知れません。
 たしかに裏表紙にある原書の表紙は、物語の舞台が広大そうに見えますね。裏表紙に書かれているあらすじも「このときを境に宇宙の法則が一変してしまったのだ!」などとあるだけで、八人の内面世界につぎつぎ入り込んでいく話だとはよもや思わないような書き方ですね。

 8マンはほとんど観たことがなくそのエピソードも知らないです。でも平井和正のエスパーものは好きですねぇ。

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