2009 年に京都・東京それぞれで今までの全作品から代表作を抜粋して再構成した個展を行った後、いよいよ今回は新作のみでの発表となる。既にneutron tokyo での個展で登場した作品も含まれるが、当時は旧作の強い色彩と印象の影に隠れがちだったそれらは、しかし確実に現代の都市の在り方を指し示しており、そのフワフワとした頼りない姿はまさに、どっしりと構える足場を失いつつある現代社会そのものであり、あるいはその行く末の様にも見える。初期の原色使いから次第に色彩も洗練され、今シリーズではパール系の絵具による色彩の変化も楽しめる。何より、作家自身が無国籍を前提としながらも強く意識している都市、「TOKYO」がそこに描かれている。ミシュランガイドで世界一の評価を受ける美食の街。インターネット回線のデータ送受信速度が世界一速い都市。様々な顔を持ち、どれも一つの側面でしかない、多面的で虚像に満ちあふれたTOKYO。小倉が描くその姿には、私達のまだ見知らぬ都市の本質が宿っているだろう。