もっとワンランク下のおっさんコミュのもっとﾜﾝﾗﾝｸ下の飲み会２

てっちさんは妥協してしまったのか、肉を貪りはじめました。
さっきまでﾀﾞｲｴｯﾄがどうたらこうたら、我慢がどうたらこうたらと偉そうに説教をたれていたくせに、何の恥じらいもなく。
しまいには隣の席の皿にまで手をつけ始め、肉がなくなるとﾊﾟｽﾀ、ﾋﾟｻﾞとそこら中の食べ物をどんどんどんどん食べていきました。
そう、てっちさんが食べ物を食べているのか、食べ物がてっちさんを食べているのかさえも分からなくなる程に…。
そしてﾜｲﾝをｶﾞﾝｶﾞﾝ飲んで、同僚の女の人の名前を大声で下の名前で呼びつけたり、それはもうとても30歳の大人には見えませんでした。
僕はそれを見ながら世の中には死んでもいい人っているんだなぁ。と思いました。

そして宴もたけなわ。
そろそろ終電がﾔﾊﾞｲ時間帯になり、僕が
「てっちさん、終電大丈夫ですか？」
と、尋ねると
「あー、ｶﾅﾘやばいわぁ〜」
そう言って白ﾜｲﾝのおかわりを頼んでいました。
僕はそれを見ながら世の中には死んでもいい人っているんだなぁ。と思いました。

そして店を同じ帰路の同僚の女性と出ると何故かてっちさんが着いてきました。
「あれ？てっちさん日比谷線でしょ？何で大江戸線方面来るの？」
「いや〜、もう終電なくなっちゃったぁ〜。」
終電が無くなって、何故彼は大江戸線方面に来るのかまったく理解できませんでしたが電車に乗って初めてそれに気づきました。

〈大江戸線車内〉
同僚の女性Yさんがてっちさんに終電無いのにどうするの？と尋ねています。
てっちさんはしきりにYさんの家に泊めてもらうように頼んでいました。
しかし、さすがに優しいYさんも男、しかもﾌﾞｻｲｸでｷﾓｲてっちさんを家に泊めるのは嫌だったようです。
しまいにはﾊﾞｽﾀｵﾙがもったいないとすら言っていました。
しかしてっちさんはそんな事まったくおかまいなしでYさんにしつこく頼んでいると、僕にとばっちりがきました。
「ｺｿﾞｰさま友達でしょ？しかもてっちさんの後輩なんだから家泊めてあげなよ！」
「絶対に嫌です。ｷﾓｲしｸｻｲし死んでも嫌です。」
そうです。僕はNOと言える大日本だったのです。
その後車内ではしばらくどっちがてっちさんを泊めるかでもめていました。
そこで僕はてっちさんにとりあえず僕と一緒に新宿で降りてﾀｸｼｰで帰ることをすすめました。
しかしてっちさんはﾀｸｼｰ代がもったいないようでうんとは言ってくれませんでした。
しまいに僕は目の前にいる自己管理もできないどうしようもない30歳のｵｯｻﾝに腹が立ってきました。
僕は名案を思いつきました。
「てっちさんとりあえず一緒に新宿で降りよう。」
「泊めてくれるんですか？」
「とにかく降りよう！」

Yさんにさよならを言って、新宿で僕らは降りました。
そして僕は地下7階の大江戸線のﾎｰﾑから地上までﾀﾞｯｼｭで走りました。
「まってぇ〜！！！」
てっちさんが叫びながら追いかけてきました。
常日頃からﾏﾗｿﾝやﾀﾞｲｴｯﾄで鍛えている（自称）てっちさんを撒くのは困難かと思いきや、てっちさんの姿はあっさりと消えていきました。

僕が電車に乗るとてっちさんからしきりに着信がありましたが、とりあえず電車が発車するまで無視しました。
しかし、ちょっとやりすぎたかな、てっちさん大丈夫かなと自責の念に駆られて電話に出ると、
「新宿に住んでるY君の番号教えて！」
との事でした。
そうです。彼はﾌﾟﾗｲﾍﾞｰﾄでまったく遊んだことのない同僚のY君の家に電話して泊まろうとしていたのです。
ここで甘やかしたらﾀﾞﾒなんだ。そう思い僕は、
「もうちょっと人の迷惑とか考えたほうがいいですよ。ﾀｸｼｰで帰るか漫喫にでも泊まって下さい。」
そう言って電話を切りました。

結局てっちさんは漫喫に泊まったそうです。
僕は世の中には死んでもいい人って本当にいるんだなぁ。と思いました。