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洋楽名盤・新譜 レビューコミュのブラッド・メルドー「ジ・アート・オブ・トリオ, Vol.3」

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Brad Mehldau「Songs/The Art Of The Trio, Vol. 3」1998US
ブラッド・メルドー「ジ・アート・オブ・トリオ, Vol.3」

  
1. Song-Song
2. Unrequited
3. Bewitched, Bothered and Bewildered
4. Exit Music (For a Film)
5. At a Loss
6. Convalescent
7. For All We Know
8. River Man
9. Young at Heart
10. Sehnsucht
 
(Piano)Brad Mehldau(Bass)Larry Grenadier(drum)Jorge Rossy
 


現在進行形のジャズピアニストとしては、世界の先頭を走るブラッド・メルドーを紹介。
 
ピアニスト、ブラッド・メルドーは1970年8月23日フロリダ生まれ。
1998年5月27・28日ニューヨーク・ライトトラック・スタジオにて録音。
本作はブラッド・メルドー5枚目のアルバム。
  
彼が一躍脚光を浴びたのはメジャー契約のきっかけとなったジョシュア・レッドマンとの競演もさることながら、何と言っても3rdアルバムから始まる「The art of trio」としての連作だ。特にはじめの3作、つまりVol.1から3で世界的な評価を決定的にしてしまったと言えるだろう。
 
はじめは新人ピアニストが、えらくたいそうなトリオ名を付けて大きく出たな、いきがってるのか、位の見方もあったと思うが、そこで集めた注目が全く口先ではなかったことを世界に証明し、注目をそのまま絶賛に変えてしまうどころか、その唯一無二な個性で、あれよあれよという間に今を代表するピアニストとしての地位を確立してしまった。

The art of trioとしての3作目である本作で、一つの頂点まで極めてしまった感さえある内容になっている。
  
  
ブラッド・メルドーの魅力は、その個性的なスタイルにある。まず自身が語るようにクラシックの技術、音の影響と要素が大きく感じられる点である。その点、キース・ジャレットに通じる、ソロとしてクラシックばりに大変手数の多い音を弾きこなす超絶技巧をベースとして持ち合わせている。
  
左右両手で独立したメロディラインを激しく両手を交錯させながら、あくまでも冷静に、音の芸術世界にストイックに奉仕しているかのような姿勢、そこから感じられるのは知性。そのスタイルからは、大きく分ければビル・エバンス、キース・ジャレットあたりに通じるものがあるにはあるが、メルドーはその巨匠2人ともどこか違う味をもっている。
 
やや複雑なメロディがガラスのように繊細で、哀愁というよりも知的な陰鬱さと美しさと時に熱を帯びる旋律、それでいながらクラシカルな格調を感じさせつつ、それだけに留まらない知的な節回しと構成。リズムやメロディや勢いだけで乗り切ろうとしない、クラシックばりの音の質へのこだわり、独自の美学と誰にも似ていない音からにじみ出る信念と自信。それこそがメルドーをメルドーたらしめているものであり、もはや世間もそれを認めざるを得ない域に達してしまったと言うことだろう。チックコリアやパット・メセニー、チャールズ・ロイド、ジョンスコにマイケル・ブレッカーにチャーリー・ヘイデンまで、ビッグネームからの競演依頼も殺到。数年前にソロで来日した際には錦糸町のすみだトリニティホールでその勇姿を拝見したのだが、ほとんどクラシックかケルンコンサートか、キース・ジャレットの他に、あのレベルの即興ソロと世界観を表現できる材が登場しようとは!
   
本アルバムの白眉は3のBewitchedと4のExit Music。
4は言わずとしれたRedioheadのOKコンピューター収録の名曲。この曲を、これ以上ないほどの世界で表現しきっている。まさに、この曲の表現に象徴されるものが、メルドーを現在に生きる、最前線の、ジャンルを超えた音楽家、表現者たらしめているものだと言える。かれの知性とその憂鬱、一筋縄ではいかない複雑な精神性、まさしく今という時代を共に生きるものとしての表現の模索、求道者であり、その音楽と向き合う姿勢と誠実さには、敬意と注目をひかれずにはいられないはずだ。
 メルドーは2002年発表の「Largo」でもRedioheadの「Paranoid Android」を聴かせてくれている。
 他にもビートルズのDear Prudenceやノルウェイの森を始め、たくさんのカバー曲を聴かせてくれるが、それらを見事にメルドーの世界感で聴かせてしまうのだ。もはやここまで来ると、その世界観に浸っている内に、ジャズなのかロックなのかジャンルは全く関係なくなってしまう。
   
彼の中のまさに、この今を生きる作家としての要素が、この後のアルバムや活動の中では、比重として大きくなってゆくのだが、このトリオ3作目では、ある意味初々しく美しいクラシカルで正統なジャズと、メルドーの複雑な個性の芽生えが、ちょうど良いバランスで共存している傑作と言うことが出来るだろう。
 
同時代を生きる若き巨星に注目していきたい。

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