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洋楽名盤・新譜 レビューコミュのフレーミングリップス「ザ・ソフト・ブレティン」

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The Flaming Lips『The Soft Bulletin /ザ・ソフト・ブレティン』(1999年US)

1.Race For The Prize - (remix)
2.A Spoonful Weighs A Ton
3.The Spark That Bled
4.The Spiderbite Song
5.Buggin' - (remix)
6.What Is The Light?
7.The Observer
8.Waitin' For A Superman
9.Suddenly Everything Has Changed
10.The Gash
11.Feeling Yourself Disintegrate
12.Sleeping On The Roof
13.Race For The Prize
14.Waitin' For A Superman - (remix)

ウェイン・コイン(Vocal,G)、マイケル・アイヴァンス(B)、スティーヴン・ドローズ(D)、デイヴ・フリッドマン(プロデューサー)

何と言えばいいのか、90年代以降の世界的な気分、世代の音を代表するようなアルバムのひとつ、といって言い過ぎじゃないと思う。仕事の帰り道で気がつけば結局一番聴いているかもしれない。僕らの名盤、と呼びたくなるような傑作です。

彼らのデビューは1985年なので、もう20年のキャリアになる本作はインディ含め9枚目のアルバム、これ以前はギターを全面に出したガレージ系の音だったが、ギターが抜けた後でそれまでのキャリアと実験的な側面をアナログシンセサイザーの音に変えて一気にポップでサイケな世界へ転換させ本作の境地に到達した訳で、本作発表当時彼らは30代後半、15年のキャリアを経ての本作。

まず1曲目にキラーチューン「Race for the prize」。幽霊でも出てきそうなシンセのリフとバタバタしたドラムに続けてヘロヘロで危ういボーカルがつづく。切なくチープなシンセのリフとコラージュのかかったへなへなボーカルとキラキラした完璧なポップメロディ。まるで、切なくはかなく刹那的で、すぐに終わってしまう夢だと分かっていて見ている夢のような。

2曲目以降もこの世界は続く。ピアノとボーカルとハープがはかない螺旋のような映像的なメロディを紡いだかと思ったら、ドカドカした歪んだ爆裂ドラムがその世界を打ち破るように割り込み踏み荒らし、そしてまた突然、静けさが戻る。

ボーカルは弱々しく危ういのによどみが無く、爽やかで無邪気さすら感じる。音響処理をほどこされて、まるで自分の力を超えて空を飛んでいるような力を得たみたいに、あくまで楽観的に響く。ひたすら幸せが続くような、そうだと信じて疑わないような。

そしてチープなドラムと歪んだノイジーなドラムは使い分けれられ、ロック的ではない楽器達やテープコラージュなどの音響処理がボーカルとハーモニーを中心とした世界観を傍から作り上げてゆくように散りばめられひとつのオーケストラとなる。ここでは当代一のプロデューサーとなった音の魔術師デイブ・フリッドマンの力に因るところも大きいのだろう。ひとつひとつの実験的とも言える音の数々がピースとなって映像的とも言えるようなはかない夢のポップワールドが紡がれてゆく。

何と言っても彼らの音を特徴づけているものは、ボーカルや様々な音から感じられるその精神性だ。
癒されない痛み、傷、絶望、悲しみ、挫折、孤独感、失望感、そして自分も含めた全てに対する諦念、それでも感じる静かで小さな幸せ、そんなもの全てを抱えて、いや抱えてしまう性をもってしまった優しくひ弱な我々の世代の持てるとても強い力、その一歩、その希望を歌う、40手前で未だ少年のような声で歌うウェイン・コイン、そのない交ぜになった気持ちを音としてほとんど正確に表現してしまったフリッドマン。そうこの感じは確かにニール・ヤングの「ハーベスト」「ハーベスト・ムーン」あたりを聴いた時に感じたものに近い気がする。やはり70年代と90年代、狂騒の後の傷ついた世代、共通するものがあるのだろうか。
そんな精神性を感じてしまったら最後、まさに螺旋階段のような音の世界にはまってゆくしかない。そこが分からない人にはたぶんいまいちわからない、ということかもしれない。

この後のアルバム「Yoshimi Battles The Pink Robots」では、よりポップでエレクトリックなビート色が強くなり、本作で聴かれるようなサイケで幽玄な世界から、少し明るく強い音になってゆく。もちろん切ないメロディは健在だが、もっと確信的な音になっている、というか。ちなみにこの「Yoshimi・・」のアルバムに入っているボアダムスのヨシミに対するコメントからしても、ウェインがかなりバランスのとれた人物だと推察できる。その意味ではソニックユースと並び、他のオルタナバンドとは少し一線を画するバンドの確信的な作品なのだと思う。20年以上のキャリアは伊達ではない。

本作は90年代という時代が、時間を経て相対化されるにつれて、もっともっとクローズアップされ、名盤としての評価が今以上に高まってゆく傑作のような気がする。

コメント(1)

この作品のDVDオーディオ盤のサラウンドを聴くと、更のその音の万華鏡ぶりが鮮やかに!
ドラムの爆裂ぶりは倍増してるじ、おすすめです!

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