85年に本作でデビューした彼らは、彼らも含めてイギリスのポップシーンでもりあがった80’sブルーアイドソウルという潮流の中でシーンを衝撃デビューをはたした。たしか洋楽番組なんかでポールヤングとかユーリズミックスとかが流れまくっていた頃で、色々なタイプのブルーアイドソウルシンガーがいたわけだが、その中でも格別彼らは激渋で、オールドタイムなモータウン的ソウルやスモーキーロビンソン、マービンゲイなどの影響を感じさせる歌の力が圧倒的だった。なにしろ僕が始めて彼らを聴いたのはあの「If you don't know me by now」の大ヒットだったのだから。
ミックの、理想の音を追求して、そのためならメンバーはどんどん入れ替え、コンテンポラリーなサウンドを果敢に取り込み、前進してゆくシンプリーレッド・サウンド、その中心をなすのはミックのボーカルの力量であることには間違いのだが、それはあくまでサウンドのための出過ぎない洗練されたポジションに収まっている。それが憎いまでの心地よさに繋がっているわけだが、やはり、どうしても、昔リズム隊が弱かったために圧倒的に目立っていたボーカルが全面的にフィーチャーされた「Holding Back Years」「If you don't know me by now」などのカバー曲の奥行きの深さ、赤毛でハンチングのイメージが、あのインパクトが忘れられないのは僕だけだろうか。