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洋楽名盤・新譜 レビューコミュのマーキュリーレヴ「ディザーターズソング」

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「Deserter's Songs」1998年 US

デイヴ・フリッドマン(B)、ジョナサン・ドナヒュー(V)
グラスホッパー(G)、ジェフ・マーセル(Dr)
  
89年N.Y.州バッファローで結成。フレーミングリップスの初期メンバーだったジョナサン・ドナヒューと、引き続きフレーミングリップスのプロデュースも手がけるようになるデイヴ・フリッドマンを中心に活動するも紆余曲折在り、一応93年の2ndはCMJチャートでTOP10ヒットを飛ばし、ロラパルーザにも出演し97年にはケミカルの"Dig your own hole"に参加、ついに98年の4thアルバムである本作がUKを中心に欧州で大ブレイクを果たす。
  
逃亡者の歌と題された本作「Disaster's song」では、ほとんどノイズギターはきかれず、テルミン、サックス、トロンボーン、ピアノ、バイオリン、シンセなどが壮麗なオーケストレーションと絡められ頼りなげな中性的なボーカルをのせて浮遊していく。
サイケデリックとはいいながら、ドラッグ系というよりもここで紡がれるのは、現実と平行して存在する夢の世界。テルミンの音とイコライズされていてもいなくても膜の向こうから聞こえてくるようなユラユラした中性的なボーカルが醸し出す幽玄の世界の向こう側へ、聞くものを確実にいざなってゆく。
  
そこはただ牧歌的な夢の世界ではない。悩ましい現実世界の呪縛から離れた夢の中で裸になった不安と孤独感と痛々しげな純粋さが浮き彫りになる。急に大きな音を出せば目をさましてしまいそうな、音や曲の合間には夢の世界の隙間の暗闇が広がっているような、暗く繊細で幻想的な、極めて個人的で意識的な世界。自分以外に誰もいない幻想の世界の中をさまよいながら、むしろ自分自身と対話することになる。これはどう考えても、というかいうまでもなくXジェネレーション、アフター・グランジの精神性であり、多分に意識的な面が本国よりもUKからブレイクしたのはよくわかる結果だ。
  
まさに、という感じで始まる1曲目も良いが、なんといっても5曲目から9曲目への流れが圧巻だ。夢の中で、不安定な僕らが曲がりなりにも一歩一歩踏み出そうとしているような無垢なポジティビティ。まるでビートルズの「アビイ・ロード」のB面を彷彿とさせるようなたたみかける展開が、後半にゆくにしたがって盛り上がり、まるでメドレーのようにたたみかけ「Funny bird」でメランコリックなシンフォニーは最高潮を迎え、そして一気に膜は終わり、一時高ぶった感情がまさに全て夢だったと言わんばかりに、ふたたび不安定な世界へ戻ってゆく。
  
99年初頭の英NME誌年間アルバムチャートで1位、メロディメーカー誌で3位、彼らの出世作となった本作だが、彼らを一つステップに押し上げることになったきっかけについて、ジャック・ニコルソンの「カッコーの巣の上で」の映画音楽の作曲家で、ニールヤングやストーンズのアレンジャーとしても有名だったジャック・ニッチェとの出会いがおおきかったことを彼ら自身が語っている。
  
オーソドックスなコード進行、曲の意図を出来る限りナチュラルな音作りで丁寧に再現ゆくこと、過去の遺産が現代へと紡がれたあまりにも美しいあり方だ。自然で奥行きのある、まるで映画音楽のようなサウンドが現出し、以降デイヴ・フリッドマンのトレードマーク的な奥義となっていく。
  
ベースであり、プロデューサーのデイブ・フリッドマンはフレーミング・リップスの他にモグワイ、ベル&セバスチャンウィーザーまで手がけるようになり、いまやグランジ後のロック界にあって存在感をじわじわ高めているネオサイケ系のスーパープロデューサーとなったが、今も地元を本拠に活動を続け、独自の地歩を見据えて、ロックの現在の一つの極地として磁力をはなっている。

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