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ニヤリ系コミュのSTAGE2 「ニヤリ流 異文化交流術」(2)

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 艦橋はいつも通りのゲーム会場だった。
 少女がクロノスに来てから三日が過ぎて、ある程度は艦内での生活に慣れ始めた頃、「女の子をずっと監視するなど何てうらやまけしからん!」という淳と、「まぁ大丈夫なんじゃない?」という岡田と、「今のところ危険性も感じませんし、様子を見られては?」というヴォルテスの意見もあって少女の監視も解かれ、今度は少女に引っ張られる形で深夏と香澄は環境までやってきた。「状況はあんまり変わらないなぁ」と深夏は苦笑し、「甘えんぼの妹が出来た気分だよー」と香澄は嬉しそうに微笑む。
 少女を見かけると隊員達は軽く手を挙げて挨拶をする。言葉は決まって「よ」。隊員達はそう挨拶すれば少女には通じると半分ぐらいは思い込んでいるからであり、もう半分は深夏に対する嫌がらせである。その度に深夏は「くっ」と屈辱の籠もった声を漏らす。
 あれから隊員達も少女を見かけた途端に興奮する事もなく、普段通りに活動をしている。少女との遭遇で一番興奮していた淳もアニメの新作が届いてご満悦、今では少女の事などほったらかしである。恐らくはサヤカがあらかじめ厳命したり裏で手配したりしたのだろうと深夏は思う。こういう配慮が有り難い。
 隊員達があらゆるゲームを楽しんでいるのを少女は見学する。少女の世界にゲームが存在するのかは判らないしルールも理解できていないのだろうが、「彼等が何かで楽しんでいる」というのは少女にも判るらしく興味津々に眺めている。戦闘シミュレーションゲームなどは直感的にルールが判るらしく、プレイに熱中するあまりに画面上に飛んできた誘導弾を避けようと隊員の身体がコントローラーと一緒に傾くと、少女も一緒になって身体が傾く。その様子を見て思わず香澄は笑ってしまい、不思議そうな表情で香澄を見た少女も一緒になって笑い出したり。何とも微笑ましいと深夏は思う。先日までの緊張感は何処へやら。せめて自分だけでも気を緩めてはダメだと言い聞かせるがどうにも長続きがしない。
 少女は隊員達が遊んでいるゲームを次々に眺めて回る。その中でも少女が一番の興味を示したのはカードゲームだった。少女の様子を見て深夏も眺めると四人の隊員達が床に座り込みトランプで遊んでいるのが見えた。番号を連番で宣言しながらカードを場に伏せたまま捨てている様子からすると、ゲームはどうやら「ダウト」のようだ。
 ダウトとはトランプゲームの一つで、一から十三までのコールをしながらカードを場に捨ててゆき、手札を無くした人が勝利するゲームだ。読み上げる番号は順番で、十三の後は一に戻る。順番の回ってきたプレイヤーは番号をコールしながら手持ちのカードを伏せて捨てる。伏せているのだから相手には見えない。場に置くカードは何でも構わないが読み上げた番号が理想。他のプレイヤーは場に置かれたカードが読み上げた数字と違うと思えば「ダウト」とコールして挑戦することが出来る。挑戦に成功すれば場にあるカードを全て嘘をついたプレイヤーに押しつけることができ、失敗すれば逆に全て自分が引き取ることになる。最終的に手持ちのカードを全て場に置くことが出来れば勝利だ。不要のカードを相手に気づかれず処理できるかと、それを見破れるか、手持ち最後のカードを読み上げる番号通りに捨てられるかが鍵になる。単純だが戦略性のあるゲームだ。
 勝負は終盤だったようで、ペケジェーが手持ち最後のカードを捨てたところを語部がダウトを宣言し、それが失敗。場に山ほど溜まったカードが全て語部の手元に移動し、テキンと櫂海が番号を宣言しながら手持ち残り少ないカードを捨てていく。敗北寸前の語部は片っ端から挑戦するが全て失敗し、手元に全てのカードが移動したところでゲームセット。よっしゃー綾波のフィギュアゲットーとペケジェーが叫ぶ。あんたら賭けてたのかと深夏が呆れると、四人揃って「当然だ」と悪びれもしない。
 それにしても深夏が意外だったのは、参謀補佐も兼ねていて戦略ゲームにはめっぽう強い語部が惨敗だったことだった。この手のゲームも得意そうだと思っていたのだが。
「ペケジェーさん、ダウトは得意なんですか?」
「おうよ! 特訓したからな!」
 香澄が訪ねるとペケジェーは自信満々に答えた。特訓ってどんな特訓なのだろう。深夏にはそんな疑問も沸いたがペケジェーはニヤリとした笑みを浮かべ、集めたカードを手元で揃えると二つに分けると床には置かず、両手の中だけでパラパラとシャッフルをした。二つの束が一瞬で一つにる様子を少女は目を輝かせて興味津々に眺めている。ひょっとしたら彼女の世界にもカードゲームのようなものがあるのかもしれない。
 少女の様子に調子に乗ったのか、ペケジェーは左手に持ったカードの束を軽くたわませ、一番上のカードだけを弾いて右手でキャッチ。瞬間移動したようなカードの動きに少女は「わうー」と驚いたような声を漏らした。トップショットだ。カジノのディーラーやカードマジックで使われる難易度の高い技だ。両手の中だけでカードを混ぜるリフルシャッフルも難易度が高い技だ。器用だなと深夏は感心する。そんなペケジェーは再びシャッフルすると床の上で四分割した。そのうち一つを手に取ると少女の前に差し出す。
「やってみるか?」
 少女は驚き一瞬だけ躊躇したが、嬉しそうにカードを受け取った。
「ちょっと待ってくださいよー! 彼女に出来るわけ無いじゃないですかー!」
 それを見て慌てたのは香澄。ペケジェーに抗議する。
「だいじょーぶだいじょーぶ、実践あるのみだって。なぁ櫂海ちゃん」
「やりゃ覚える。俺もテキン兄貴もそうだったし。なぁ?」
「うむ」
 ペケジェーに同意してテキンと櫂海兄弟は揃って頷く。
「やりゃ覚えるって…そりゃ言葉が通じれば説明もできますけど、彼女には全く通じません。さすがに無理があります!」
「そこを何とかするのが君達の役目でしょー」
「語部さんまでそんな事を…。無茶振りが過ぎますよぉー」
 大きくため息をつく。見ると少女は両手でカードを大事そうに抱えながら香澄の様子を見ている。
「よし香澄! 隊長命令である! ゲームに国境は無いところを我々に証明してみせろ!」
 そこへ唐突にそんな叫びと、バァンという大きな音が上方から聞こえてきた。声の主は指揮卓の上に片足を乗せ、香澄に向けて指を差している。大きな音は足の裏で卓を踏んだときの音だったようだ。その淳は大層なポーズで偉そうなことを言い放ったが顔は笑っている。どうやら階下の騒ぎを見ていたらしく「面白い事を考えちまった!」と言わんばかりの笑顔。敢えて擬音をつけるならニヤニヤ。それを聞いて嵐が「コマンダーオーダー入りましたー。コマンダーオーダー、ゲームに国境は無いところを我々に証明してみせろ」と復唱すると、聞きつけた隊員達が「何だ何だ?」「あっちで面白いことになってるぞ」「ほう? 行ってみんべ」と、それぞれのゲームを中断して面白い物見たさに集まってくる。
「いや、隊長、いくらなんでもこれは無理ですって…」
「何言ってんだよ。ゲームソフトを導入するためにパソコンの操作覚えるべ? エロゲのパラメーターやセーブデーターをいじるのにプログラムを解析するべ? それと一緒だべ。俺たちの事を理解するなら一緒に遊ぶのが一番!」
「それは無茶苦茶だよぉ…。ねぇみなっちゃん?」
 困惑した香澄が深夏に助けを求めるように視線を向けると、その深夏は意外なほど冷静な表情だった。
「ああ、学費を株と為替で稼ごうと思って経済学を勉強したのと似たようなものか…。なるほど、一理あるな」
「さすがインテリ、発想がちげぇ! ってか頭が良いと思って調子にのんじゃねぇぞコノヤロー!」
 淳は指揮卓の上で地団駄を踏み、机の端から踏み外して盛大に転んだ。隊員達が大笑いする。
「やれやれ…」
 深夏は改めて大きなため息をつくと、床に転がっていたもう一組のカードを拾った。
「香澄、ちょっと手伝え」
「え? 私? 私カードは全然ダメダメだよー?」
「教えるのに仮の対戦相手が欲しいだけだ」
 深夏はカードの束から一から十とジャック、クイーン、キングの十三枚を抜き出して床の上に並べる。そして端から「ワン、ツー、スリー」と順に指さしながら読み上げていく。少女の表情を見るとカードを不思議そうに眺めている。深夏はAのカードを手に持つと少女に向けてカードを指さしながら「ワン」と言う。すると少女も「わん」と声に出した。まぁ番号は最悪言葉に出せなくてもいい。出すカードの順番と「ダウト」のコールとその意味が理解できればいい。
 一通り声に出させると、深夏はカードの半分を香澄に渡す。「適当にやっていいと」香澄に伝えると手持ちのカードを順番に並べて扇状にし、少女に見えるようにして持った。「ワン」
 コールをしながら捨てる。香澄が「ツー」と続いてコールながら捨てる。一巡目は淡々と場にカードが積み上がり、香澄が「セブン」をコールして場にカードを捨てる。それに対して深夏が「ダウト」を宣言をすると香澄は飛び上がるほど驚いた。
「えー? なんでわかったのー?」
「一巡して俺がまだ三枚持ってるんだから、お前が持ってるはずが無いだろ」
「あ、ああ、そうか…」
 香澄はがっくりと肩を落としながら場にあるカードを回収して手札に加える。引き続き深夏はエイトをコールしてカードを捨てる。香澄がナイン。そのまま順が進み、深夏が「トゥエルブ」を宣言すると、今度は香澄がここぞとばかりにコールする。
「ダウトー!」
「はいはい、残念でした」
 場の一番上のカードをめくると「Q」の文字。
「あれ、でも私の手元に三枚…」
「一度クリアになって場にクイーンはまだ出てない。つまり俺が持ってる」
「あう、そうでした…」
 香澄は場にあるカードを全て自分の手札に混ぜる。
「とまぁ、こんな感じなんだが…」
 深夏は振り返って少女を見ると、少女は楽しそうな表情で深夏の持つカードを眺めている。特にクイーンやキングなどの派手な絵柄の方に視線が向いている様子から見て、これは全然判ってないと深夏は半ば絶望する。
「おーい、そろそろいいんじゃないかー?」
 指揮卓の上にあぐらをかき、膝に肘を立てて頬杖をつきながら退屈そうに間延びした声で淳が言う。待ちくたびれたぜー、そろそろやろうぜー、とペケジェーと櫂海がぼやく。やれやれと深夏は仕方なしに少女を定位置に座らせるとペケジェーがカードを配り出す。負けても仕方が無いわけだし、手加減ぐらいはしてくれるだろうと思う。
 ゲームがセッティングされている間に深夏は練習に使ったカードを順番に並べ直す。スペードのエースからキング、次にダイヤ、クローバー、ハート。
「みなっちゃんって几帳面だよねー」
 その様子を見ていたのか香澄が言う。
「落ち着かないんだよな。性分なんだと思う」
 そう言って肩を竦めてみせると、みなっちゃんらしいと思うけどねーと香澄は笑う。

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