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ニヤリ系コミュのSTAGE2 「ニヤリ流 異文化交流術」(1)

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諸事情でだいぶ遅れてます
まだ途中ですけどモチベ維持も兼ねてUPしておきます

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「どうだった?」
「眠っちゃった。だいぶ疲れてたみたい」
 医務室から出てきた香澄は深夏の問いにそう答えた。
 深夏と香澄は泣きじゃくる彼女を医務室へと連れて行き、病室の一つを専用の部屋として与えた。数百人が生活できるクロノスには空き部屋があったが、医務室には細菌感染の拡大などを防ぐ隔離病室がある。つまり簡易的な軟禁施設としても利用ができる。万が一に備えての事だったが、この少女には物質を透過できる能力があるので気休め程度だろうとも二人は思ってはいた。
 少女にはパンとスープを与えた。最初は警戒して手をつけなかったが、深夏と香澄の二人が揃って食べ始めると、少女も倣うように食べ始めた。最初は恐る恐ると言った様子だったが、美味しかったのか、それともよほど空腹だったのか、目の前に出された物を貪るように食べ続けた。食事もある程度進むと今度はウトウトと船を漕ぎ始めたので、そのままベッドに誘うとあっさりと眠りについてしまった。この時点で警戒心はほとんどなく眠気に足掻く様子も無かった。
 全くの異世界でも人間なら食べるのも寝るのも一緒なのだと思うのと同時に、深夏は少し不思議な気分になっていた。この広い宇宙には知的生命体が多数存在することは既に判明している事だが、自分たちと同じような人間が存在していた事に驚く。彼女たち人類はどのような文明を持っているのだろうか。そしてそんな異星人と遭ってすぐ一緒に食事をした事に興味と感動と高揚感を覚えていた。この時点で深夏の思考からは宇宙戦争勃発という危機感は完全に失せていた。
 香澄は医務室のドアをロックすると、深夏がやっているように壁に背中を預けて寄りかかる。
「パンとスープを与える発想は良かったな。あの機転は良かった。さすがだよ」
「ほぇ?」
 深夏が誉めると香澄は首を傾げた。
「見た目がシンプルだからあまり疑わず手をつけやすかったと思うし、温かい飲み物は落ち着かせる効果もあるから狙ったと思ったんだけど…」
「あはは、そんなこと考えもしなかったよー」
 考えもせずにパンとスープか。相変わらず感覚先行な奴だと深夏は苦笑いをする。
「監視するほどじゃないとは思うけど、念のため俺か香澄かどちらかが付いていた方がいいかもな」
「あの子、危険かな?」
「不安を与えないという意味でだよ。どうやら俺かお前かどっちかが居れば大丈夫そうだし」
「そう言う意味ならみなっちゃんが適任かもね」
「どうしてさ」
「興味津々だったし」
 普段惚けたぐらい鈍いクセにこういう事には妙に鋭い。だが確かにその通りだと深夏は思う。最初に目が合ったのも姿を確認したのも自分だし、食事中も何度か視線を向けられ、視線を合わせるとすぐに目を逸らすことを彼女は何度か繰り返した。まぁ深い意味も無く、単に異星人の男性が珍しいだけだとは思うが。
「まぁしばらくは頼むよ。身の回りの手助けができるのはお前だけだしな」
「なんで?」
「何でって、同性なのはお前だけだろ」
「あ、そっか」
 そっかじゃねぇよ。深夏は心の中でツッコミを入れるが言葉には出さない。こいつのボケは概ねいつものことだ。
「これからどうするんだろうねー? 隊長たち何か考えがあるのかなー?」
「そうだなぁ…」
 二人して一瞬考え、言葉が止まる。そして口を開き
「何も考えてないんじゃないかなぁ」
「何も考えてないんだろうなぁ」
 二人同時に呟き、目を見合わせ、思わず吹き出した。やっぱりそう思うよねーと笑いを堪えて香澄が言う。
「とはいえ、再び宇宙に放り出すわけにもいかないしなぁ」
「そういえば何があったんだろうねー」
 香澄に言われて深夏は少女が泣いた事を思い出す。
「泣き方が尋常ではなかったな。どこからか逃げ出してきたのかとは思った」
「それは私も思った。あと少しだけど高貴な感じがするー」
「どうしてそう思った?」
「衣服の紋様がね、幾何学的って言うのかなぁ、すごく凝ってるなぁと思ったのー。しかも刺繍でしょー。あれは結構手が込んでるよー」
 香澄も同じ印象を受けたようだと深夏は思う。その彼女は急に目を輝かせる。
「本当にお姫様だったりして!」
「まさか、とは思いたいけど、その方がしっくり来るんだよなー」
 逃亡、追跡者、手の込んだ衣服。状況的に見て、もしそうだったとしても不思議ではないと思う。だが出来すぎだとも思う。隊長にとって都合が良すぎるともやはり思う。
「まぁ憶測だけしてても仕方がない。まずはやれることからやろうか。隊長達はあてにならないし、俺たちで何とかするしかない」
「そだね!」
 香澄は力強く頷く。
「後は毒牙からも守らないとな…」
「そだね…」
 今度はため息が漏れた。その反応に深夏は思わず苦笑する。深夏は自分で言っておいて思うが、隊員達や隊長の反応が一番怖い。変に刺激して大惨事になる可能性だってまだ充分に考えられる。何せ相手は不思議な力を使うのだ。怒らせて全滅する可能性だって否定はできない。好感度は高く保つに越したことはない。そして好感度という単語が出てきた事に深夏は軽く絶望する。これってギャルゲーでよく使われる単語だよ、部隊の悪い影響を受けてるなぁと思ったりも。うーん、しっかりせねば。
「これからどうするかにしても意志の疎通が出来なければどうしようもないからな。難題は多いが一つずつこなしていこう。まずは最低限のコミュニケーションをとれるようにする必要があるな。まずは当面の生活に慣れてもらって少しずつ相互理解していこう。上手いこと言葉が理解できるようになればいいんだけどな」
「言葉の壁、か。大きいね…」
「できればサヤカの協力を得たいんだけどなぁ」
 そのサヤカはだいぶ前から全く介入してこない。少女を医務室へと連れて行く際に『少し考え事をするから』と言い残してそれっきり沈黙してしまった。彼女なりに何か考えてくれているとは思うのだが、一番の知識人に頼れないのは何とも心許ない。それぞれのプライベートルーム以外は彼女の監視下にあるので様子は見てくれていると思うのだが。
 とはいえ、頼りっきりになるのも個人的には余り面白くはない。まずはできるだけやってみようと深夏は思う。手話のようなボディランゲージを通して少女の言葉を聞きながら地球の言語に近い発音は無いか、イントネーション、文法などをあらゆる方面から照らし合わせて模索しつつ
「みなっちゃん、生き生きしてるね」
 思考を巡らせていると香澄がそんなことを言った。
「そうか?」
「なんだか学生時代を見てるみたい」
「んー、そうかもな。目の前に難題があると解きたくなるんだよ。自分でも不思議だと思う」
「さすが秀才」
「褒めても何も出ないぞ」
「頼りにはしてます」
 彼女にそう言われると深夏は悪い気はしない。
「って、あれー?」
 唐突に香澄が驚いた声を出した。深夏は視線を彼女に向けると、彼女の視線の先に少女が居ることに気がついた。その少女は泣きそうな表情で香澄の手を両手で掴んでいる。
「寂しかったのかな。大丈夫だよー。一人にしてごめんねー」
 その表情を見てそう思ったのか、香澄はそう言いながら少女を胸の内に抱きしめた。少女は香澄に抱きつくと安心したかのような笑顔になった。そして少女を抱きかかえながら不思議そうに香澄がつぶやく。
「…ロックが掛かってたのに…」
「気休め程度のつもりだったけど、ホントに気休めだったな…」
「そだね…」
 二人して溜息。その様子を見て少女は軽く首を傾げると、二人の真似をするように溜息を付いた。

 それから三日間ほど深夏と香澄は少女の世話をした。
 世話といってもそれと言って手は掛かっておらず、艦内での生活は深夏達が手本を見せ、それを少女が倣う形で行っている。言葉は全く通じないが、大きなトラブルにはなってはいない。深夏は生活の手助けをしつつ、少女の観察を行っていた。
 言葉が通じないので性格は判らないが、感情が表情に良く出る。楽しい時は良く笑うし、不思議に思えば疑問、反応に困れば困惑、怖ければ怯えなど表情で判断ができる。何かあれば逐一表情で読むことができるので深夏と香澄が思っていたよりは意思の疎通がしやすかった。
 運動神経に若干難があるのか、何も無いところで躓いて転んだり(実際は無重力状態になって浮くので転倒はしない)、隊員が気まぐれで彼女に向けて投げた動物の人形が無重力の空間をゆっくりと漂ってきたが、構えた両手で受け止める事に失敗して顔に当たって呻いたりなど。柵を跳び越えて下層へ飛び降りる隊員達の真似をしたら柵に足を引っかけて上層まで飛んでいった事もあった。単に宇宙での生活に慣れていないのかも知れないが、危なっかしくて見ていて心配になる事も多々ある。
 生活は皆と同じように朝昼夜と三食摂り、シャワーなどで身ぎれいにもなれば睡眠も取る。生活習慣に大きな差は感じられない。ただ、こだわりなのか好みなのか、それとも何か特別な理由があるのか衣服だけは脱ぎたがらず、沐浴をするとき以外は当初から着ていたローブを羽織ったままだった。それでも時々ローブの汚れや臭いを気にする仕草をするので、着替える習慣はあるのだと思う。ちなみに汗などによる衣服の汚れや雑菌は艦内の空気中に混じったナノマシンが大半を分解してしまうので衛生面は問題がない。ただし、艦橋などの一部重要な空間は除き、艦内では重力が発生していないため、簡易引力発生装置の恩恵を得るために靴だけは履き替えてもらっている。衣服と違ってこちらは簡単に受け入れてくれた。
 少女は深夏と香澄以外の隊員達にはあまり近づこうとしない。だが二人がいるときは大勢いてもあまり怯まず、ドッグで作業の様子を伺ったり遠くから眺めてたりする。楽しそうに遊んでいると羨ましそうな表情を見せることも。気にはなっているが踏み込めないといった様子だ。人見知りでは無いと思うが、初対面の印象があまりにも悪かったせいかもしれない。
 一方で隊員達も一緒で少女を見かけるたびに視線を向け、目が合うたびに手を振るか、慌てて目を背けたりしている。不思議な存在なのはお互い様のようだ。次第に慣れるんじゃないかとは思う。
 好奇心は旺盛のようで、艦内にある機器や設備を興味津々といった様子で眺める。機械が動作しているところを見てはしゃぐ場面もしばしば。それでも決して自分から触れることをしないのは他人の物を勝手に触らないという躾からなのか、それとも好奇心より不安の方が勝っているのだろうか。
 深夏は少女の身の回りの世話をしているうちに、会話が成立しなくても身振り手振りでなんとでもなるのだなと不思議な感動を覚えていた。言われなければ地球人類とは違う異世界の人間だとは判らないだろう。一応は監視役なのだが、そう思う時点で監視よりは観察だよなぁと深夏は心の中で苦笑するが、少なくとも無邪気にはしゃぐ少女を見ていると、当初の不安と警戒心は次第に薄れて行くのを感じていた。
 それでも少女は時々、不思議な行動に出ることもあった。まずは突然その場に座り込んで瞑想を始めることがある。特定の時刻や条件は不明だが掛かる時間もそれほど長くはない。次に起床直後と就寝直前、そして食事前は目を閉じて祈りを捧げ、艦橋に出たときなど太陽が見えた時は決まって両手を合わせて深々とお辞儀をする。時折何も無い空中を指で文字を描くようになぞり、小声で何か呟いていることもある。クロノスの艦内にはリフレッシュルームと呼ばれる設備があり、そこでは疑似的に作られた太陽光を浴びることが出来るのだが、その太陽に跪いて崇拝を始めたり、袖から小石のような物を出して周囲に並べ、長い瞑想を行ったり、空中を撫で回すように両手を動かし、空中にある何かを自分の中へと抱き込むような動作を見せることもあった。それが何を示す行動なのかは深夏には判らないが、彼女の世界にも宗教のようなものがあるのかもしれないと思う。
 生活上ではそれほど手は掛からないが、少女と一緒に居て少々困っていることもある。それは少女がやたらと密着してくる事だ。信頼しているのか気に入っているからなのか、彼女の世界でのコミュニケーションの一つなのか、それとも甘えたがりな年頃なのか、後ろから腰回りを抱くように手を回して抱きつく。特に大勢と居る時は決まって香澄の腰に貼り付いている。深夏には抱きついては来ないが、深夏の着ている服の袖や裾を掴んだり、隠れるように背中の後ろに貼り付く事も。それがフリーの時間なら構わないと思うが、作業中や訓練中でもお構いなしなので困っている。言葉が通じないので説明も出来ず、仕方がないので諦める事にはしている。
 普段は香澄にべったりの少女だが、不思議なことに深夏の方が気になるらしく、香澄に抱きつく一方、視線は深夏に向けられていることが多い。「この船に来て一番最初に目があったからだろう」と深夏は軽く考え、深夏より十数日以上後になってからその事に気がついた香澄は「ひょっとしてみなっちゃんの事が!?」と勘ぐりもしたが、それが全く別の理由であった事を二人が知るのはもう少し後の話。

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