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カナダの歴史と政治コミュの保守党暫定党首にアンブローズ

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 保守党幹部会は11月5日、ローナ・アンブローズ議員(元厚生大臣、元公共事業・政府業務大臣、元西部経済多様化担当大臣、元労働大臣、元政府間関係大臣、元雇用大臣、元女性の地位担当)を暫定党首に選出した。彼女は公認野党党首としてストーノウェイの公邸に入り、「影の内閣総理大臣」を称する。
 アンブローズ暫定党首は、こう述べた。
「同僚たちは私を選び、私に信頼を置いた。」
「我々は、次の選挙を非常に楽観視している。」
 暫定党首には、マイク・レイク議員、ダイアン・フィンリー議員、ロブ・ニコルソン議員、エリン・オトゥール議員、キャンディス・バージェン議員、ミシェル・レンペル議員、ドニ・ルベル議員が立候補していた。

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 保守党はハーパー党首辞任を受けて、次の党首選出に取りかかっているが、20人で構成される党首選管理委員会は、来週最初の会議を行うことになっている。
 これに先立ちロナ・アンブローズ暫定党首は、ブライアン・マルローニ、ジョー・クラーク、キム・キャンベルの各首相経験者と、改革党創設者プレストン・マニング元党首と相次いで会談した。マルローニ元首相とクラーク元首相は、あらゆる種類の保守派、特にこれまで肩身の狭い思いをしてきた進歩保守党出身者をも歓迎するという合図を送る必要があると述べた。またキャンベル元首相とは、女性としてのリーダーシップについて語り合ったという。アンブローズ暫定党首は、全員が党首選を急ぐべきでないと助言したと明かした。
 党内ではリサ・レイト前運輸大臣、ケリー・リーチ前労働大臣、トニー・クレメント前予算庁長官が党首選出馬を表明するのではと噂されたが、人々は疲れきっており、党内の大勢は党首選を少なくとも18か月以上実施すべきでないという方向で固まりつつある。

 アバカス・データ社は11月23日から25日にかけて、1500人の成人カナダ人を対象に世論調査を実施した。それによると、ピーター・マッケイ前法務大臣が全国で31%の支持を集め、圧倒的に人気がある。彼は進歩保守党最後の党首を務め、保守合同以降は党内ナンバー2の地位を占め「カナダで最もセクシーな政治家」と呼ばれたが、国防大臣時代は軍用ヘリを私用で使って非難され、またステルス戦闘機F35の調達費用を見積もりより低く議会に報告したことで問題視された。法務大臣になってからも、父の日と母の日に性差別的なメールを送るなど、ハーパー首相の頭痛の種であり続け、今年の総選挙に出馬せず引退した。
 特に党内左派のレッド・トーリーの間で彼を推す声が強いが、彼らの根拠地である東部とオンタリオが今年の総選挙で議席を激減させたため、中西部のブルー・トーリーの発言力が強くなっている。
 マッケイに対する支持は、保守党支持者(35%)・潜在的保守支持者(30%)・中道派(31%)の間で偏りがなく、いずれも候補者の中でトップに立つ。地域性では、彼の出身である東部(49%)で最も強いが、オンタリオでも33%と、普遍的強さも持っている。
 ジャン・シャレー元ケベック州首相は、35歳で進歩保守党党首となった後、ケベック政界に転身し、連続3選を果たしたときはポスト・ハーパーの有力候補とされた。だがマフィアとの関係が取り沙汰され、2012年州議会総選挙で敗北して引退しており、本人は党首選に興味がないという。
 調査では、全国で15%の支持を集め、2番手につけている。また地元ケベック州では23%と高く支持され、こちらも2番手につけている。
 サスカチュワン州のブラッド・ウォール首相は、最も人気のある州首相であり、特に中西部で人気が高い。最近でも、トルドー政権によるシリア難民受け容れや京都議定書復帰に反対したことが、党首選出馬のためのお膳立てだと推測された。州議会総選挙は来年4月までに実施されるが、彼はその後連邦政界に転身するのではないかとする推測もある。しかし本人は、その考えはないと明言している。
 調査では、彼は全国ではわずか9%しか支持されていないが、中西部では26%と、マッケイの24%を凌いで最も人気がある。しかしその他の州では、1桁台の支持しかない。また保守党支持者からは17%と高く支持されているにもかかわらず、潜在的保守支持者からは7%、中道派からは8%と支持されていない。
 ジェイソン・ケニー前国防大臣は、最も資金力があり本命と見られてきた。中西部出身のブルー・トーリーである彼は、今年の総選挙で東部とオンタリオのレッド・トーリーが議席を減らしたことで、いっそう有利となった。野党転落後は発言も少なくなり、影の内閣において何の役職にも就かず、身軽に動ける立場をキープしている。彼が党首選に勝利するには、彼の地元中西部で人気の高いウォール首相が出馬しないことが必要条件となる。
 リサ・レイト前運輸大臣は、数少ない女性議員の一人として、最年少で入閣した。天然資源大臣時代には秘書が機密文書を置き忘れる事件を起こしているが、ハーパー首相は「大きな未来がある」とかばい、更迭を噂されたにもかかわらず内閣改造時に労働大臣に異動し、その後は運輸大臣を務めるなど一貫して閣僚であり続けた。調査は、彼女が男性支持者(7%)に比べて女性支持者(13%)の割合が高いことを示している。
 マクシム・ベルニエ前中小企業・消費者大臣は、外務大臣時代は暴力団と関係を持つクイヤール氏と交際し、彼女の家に機密文書を置き忘れたため更迭されたが、数少ないケベック選出議員の一人として、その後中小企業・消費者大臣として閣僚に復帰した。調査は、彼が地元ケベック州では22%もの支持を集め、マッケイ氏・シャレー氏とともに三つどもえのレースを繰り広げている。だが他地域では支持が広がらず、大票田オンタリオではわずか2%に留まっている。
 ダグ・フォード前トロント市議は、地元オンタリオでは12%もの支持を集めたが、他地域では5%を超えた支持はない。
 マイケル・チョン前スポーツ大臣は、「ケベックを国と認める」決議に抗議して大臣を辞任したが、その後は党幹部会の権限を強化する「改革法」を平議員として成立させ、評価された。
 調査は、地元オンタリオで7%とブリティッシュコロンビアで10%の支持を集めたことを示すが、その他の地域では7%以下しか支持されていない。

 アンブローズ暫定党首は、党内外からできるだけ多くの人が党首選に出馬することを望むと語った。
「我々は、多くの人々に党首選に出馬してもらいたい。我々はどんな形であれ、報復をしてほしくない。」
「私は可能なかぎり、出馬したい人、そのために議員を辞めたい人、党首選から降りたい人のための手続きを容易にしたい。」
 カナダ保守党次期党首の有力候補であるジェイソン・ケニー前国防大臣が、アルバータ州政治に転進するため夏に連邦政界から身を引くと、CBCテレビが報じた。
 彼はハーパー政権において、多文化主義大臣、市民権・移民・多文化主義大臣、雇用及び社会開発大臣、国防大臣などの要職を歴任。従来自由党を支持するとされてきた移民の間に保守党支持を浸透させ、保守党3選に大きく貢献した。特に、自由党の地盤だったトロント周辺を保守党の地盤に変えることに成功したのは、彼の尽力によるものとされる。彼の資金力は他を圧倒しており、彼のカルガリー・ミッドナポーア選挙区支部は44人の保守党候補に18万3000ドルの資金を分配したという。

 彼はアルバータ進歩保守党の党員で、まずそこの党首となり、そののちワイルドローズ党と合併して新民主党政権を打倒することを志向しているらしい。だが彼の社会保守主義的思想は、中道右派の進歩保守党には拒絶反応をひき起こさせる可能性がある。そのうえここ2度の選挙で彼が右翼のワイルドローズ党を支援したことが、進歩保守党党内で議論を呼んでいる。彼と同様に、連邦政界から天下ってアルバータ進歩保守党党首となり、保守統一を成し遂げようとしたジム・プレンティスが、その手段として策謀を用いたため破滅したことはいまだ記憶に新しいところである。さらにワイルドローズ党も現在内紛を抱えており、保守合同の実現は容易ではない。
 だが何人かの人々は、ハーパー率いるカナダ同盟が(連邦)進歩保守党を吸収合併した2003年の状況に酷似しており、当事者だったケニーはその経験を利用できるという。こうして結成されたカナダ保守党が政権を奪回したのは、その3年後のことだった。
 なおハーパー前首相も、秋に引退すると報じられているが、真偽は定かではない。
 政治評論家のジョン・イビットソン氏は、次の保守党党首は根拠地である西部からではなく、中・東部から出ると予測する。
 第一の理由は、最有力候補だったジェイソン・ケニー前国防大臣がアルバータ進歩保守党党首選に出馬したことで、保守党党首になれなくなったことである。
 第二の理由は、保守党の政策が中道寄りにシフトしたことである。
 かつて進歩保守党のマルローニ首相は、西部を根拠地としているにもかかわらず、ケベックを優遇する政策を採ったため、これに反発した西部は、西部のための保守新党「改革党」を結成した。西部の地盤を奪われた進歩保守党は、中・東部を根拠地としたが、改革党の後身であるカナダ同盟と合併し「カナダ保守党」となった。
 改革党出身のハーパー党首は、右翼の改革党グループと中道右派の進歩保守党グループが対立しないよう注意を払ったが、両者は常時水面下では財政や社会問題について対立していた。だが今年保守党がついに同性婚反対政策を放棄したことで、中・東部の左派が党首に就くことが容易になった。
 自由党ではアングロフォン(の右派)とフランコフォン(の左派)が交互に党首に就くジンクスがあることが知られているが、保守党も右派のハーパーの時代が長く続いたため、次は左派が巻き返して来てもおかしくはない。
 第三の理由は、トロント周辺のいわゆる(市外局番)905地区が重点選挙区になることである。
 1968年以降のほとんどの総選挙で、この地区において第一党になった党が総選挙の勝者になっている(2006年は例外)。この地区の有権者は移民が多く、特定の支持政党を持っていない。この地区はキングメーカーなのである。
 党首選出馬を表明した候補のうち、マイケル・チョン元政府間関係大臣(ウェリントン=ハルトン・ヒルズ選挙区)、トニー・クレメント前予算庁長官(パリー・サウンド=マスコカ選挙区)、ケリー・リーチ前労働大臣(シムコー=グレイ選挙区)の3人が905地区選出である。この地区で票を多く獲得するには、この地区選出の議員を党首にするのが手っ取り早い。

 なお世論調査で人気の高いピーター・マッケイ前法務大臣は、東部を地盤にしていたが、前回総選挙で東部は全て自由党の議席になったため、彼が党首に就いても、彼のために辞職し補選をひき起こしてくれる議員は保守党にはいない。ゆえに彼が党首になったら、院内活動はせず東部自由党議員の欠員が出るまで待つか、西部か中部の議員に辞職してもらい落下傘候補になるかの、どちらかとなる。
 保守党党首選に出馬を表明しているケリー・リーチ議員が、移民申請者が「カナダの価値」に基づいているか審査すべきかという電子メールを支持者に送ったことが、物議をかもしている。
 問題のメールは8月30日に送信され、8000人以上がすでに回答した。それは彼女が党首選に出馬するにあたり、支持者がどのような政治的見解を持っているかについて調査したものである。調査は企業減税、選挙制度改革、マリファナ合法化、卵・乳製品の供給管理システムなどの政策についても尋ねているが、中には「カナダ政府は移民申請者に反カナダの価値について審査すべきか」「女王への忠誠を市民権宣誓式から外すべきか、女王への忠誠を撤回した者から市民権を剥奪すべきか」「ある人々が、政治家と政党は相違を尊重する多文化主義を促進するべきだと言うのに対し、別の人々は、政治家と政党は歴史的なカナダの価値に基づく統一されたカナダのアイデンティティを促進すべきだと言う」という設問もある。調査は、「反カナダの価値」が具体的に何を意味するのか説明していないし、リーチ議員自身がどのような見解に立脚しているかについても言及していない。
 彼女は2015年の総選挙時にも、「野蛮な文化」論争を引き起こしている。当時彼女は女性の地位担当大臣だったが、ニカブ論争に付随する意見として、一夫多妻と強制結婚をカナダに入れてはならないと主張し、後に「女性と子供を守るためであり、人種について述べたつもりはない」と弁明した。

 保守系の政治評論家チャド・ロジャーズ氏は、リーチ議員を「馬鹿」と呼び、立候補を取り下げ謝罪するよう要請した。
「同じ間違いについて二度謝罪することは、ありえない。」
「彼女は馬鹿なことをしたものだ。今すぐ謝罪して党首選から撤退すれば、党内での評判を立て直すこともできるだろう。」
 彼は、トランプ氏が隣国で反移民を訴えているこの時期にこのような行為をするのは、保守党政権がやってきた移民誘致政策を台無しにすることになると述べた。
 また保守党のロナ・アンブローズ暫定党首も、移民審査には犯罪調査が含まれており、リーチ議員の言う「審査」がどのようなものかわからないし、「個人的には」支持できないと述べた。
 香港系移民の父とオランダ系移民の母から生まれたマイケル・チョン議員も、保守党党首選に出馬を表明しているが、リーチ議員の審査を「最悪の犬笛政治」と呼んだ。
「次の総選挙に勝つために必要なことは、現代的で包括的な党を築くことだ。カナダ人どうしを対立させることではない。」
 いっぽう、ジョージ・W・ブッシュ大統領のスピーチライターを務めた政治評論家のデビッド・フラム氏は、ヨーロッパには審査を行っている国があり、議論する価値はあると語った。
「オランダでは2006年以降、移民申請者に女性蔑視・反ユダヤ思想・ホモフォビアでないかのテストを実施している。デンマークでは、国民が外国の幼児と結婚する場合はビザを発給しない。」
 これらの意見を受け、リーチ議員は9月2日、次のように述べた。
「カナダをより安全にし、より強くし、統一されたカナダのアイデンティティを強化する政策を私は提唱する。」
「移民申請者に反カナダの価値を審査することには、他宗教・他文化・性的嗜好への不寛容や、女性蔑視、カナダの伝統である個人のあるいは経済的自由への理解の不足が含まれている。」
 保守党議員で党首選候補のケリー・リーチは先週、連邦政府が移民申請者に「反カナダの価値」審査をすべきかについて尋ねたアンケートを含む電子メールを支持者に送り、物議をかもした。
 リーチ氏は当然に非難されたが、引き下がらなかった。彼女は「移民申請者に反カナダの価値を審査することには、他宗教・他文化・性的嗜好への不寛容や、女性蔑視、カナダの伝統である個人のあるいは経済的自由への理解の不足が含まれている」と金曜日に語った。
 リーチ氏がアイデンティティ政治をやって、すっかり満足していることは今や明白だ。これは、昨年連邦議会選挙時の女性の地位担当大臣として、人々のため「野蛮な文化」論争の前線を構築したと報告した人と同一人物である。彼女は後に、自分は誤解されたと主張した。だがそうではなかった。彼女に、ムスリム文化と信仰に関する不正確なステロタイプに基づく、ムスリム移民への恐怖を増進する政策を引き起こす意図があったことは明らかだ。
 政治家には、2種類がいる。一つは、権力を獲得するため、移民とテロリズムによって引き起こされる緊張を利用する人たち。それからもう一つは、緊張を認識しその解決を探す人たち。ドナルド・トランプは、前者のグループにいる。リーチ氏は明らかに、彼のグループに加わろうとしている。我が国のため、保守党はこれを拒否しなければならない。
 政府の定義する「カナダの価値」があるという提言には、ぞっとする。この国では新しい市民は、「忠実にカナダの法を遵守し、カナダ市民として任務を果たす」ことを誓う。規定された宗教的または文化的な信条はなく、ただ憲法と法律を尊重し、そしてそうできなかった結果を受け容れる誓いがあるだけである。
 リーチ氏がもて遊んでいるもの−何を信じるべきか、そしてどのように考えるべきかを人々に説く政府−それ自体が反カナダ的である。そう、カナダ人には価値がある。我が国は、カナダの価値が何であるかを説くようにはならない。

(※グローブ&メイル紙は、保守党ひいきの新聞である。)
6の投稿は、グローブ&メイル紙の社説です。
 保守党党首選に立候補を表明したケリー・リーチ前労働大臣が、「カナダの価値」について支持者に問うたアンケートは、同じく立候補を表明したライバルたちの間で論争をひき起こした。政治評論家のジェイソン・リーター氏は9月7日、ライバルたちに旗幟を鮮明にするよう強制することこそ彼女の狙いだと指摘した。

 立候補を表明したマクシム・ベルニエ元外務大臣は6日、「カナダの価値」が存在することには同意したが、移民に促進すべきなのは経済的機会を与え社会に溶け込むよう手助けすることだと述べた。
「新しくカナダ人になる人々とカナダで生まれる人々が、このような価値に同意すると私には言える。カナダの価値を促進する最善の方法とは、新しいカナダ人を我々の社会に確実に溶け込ませることであり、彼らにより多くの機会とより多くの自由を提供することである。」
 彼はまた、カナダの価値とは法の下の男女の平等であり、寛容と自由と尊重だと定義した。そして移民を調査するやり方は有効ではないと述べ、「過激イスラム教徒の問題は、移民だけのものではなく、この国で生まれる人々にも関係する」と語り、2014年に連邦議会銃乱射事件を起こしたマイケル・ゼハフ=ビボーがカナダ生まれだという事実を指摘した。
 立候補を表明したディーパク・オブライ議員は7日、自身がタンザニアからの移民として強く反応したと語った。
「それは、多くの移民たちに対し非常に侮辱的な感じがする。」
 立候補を表明したトニー・クレメント前予算庁長官は8日、リーチ氏の観測気球は正常なアプローチではないと語った。
「誰が良いカナダ人でありまたそうでないかを、政府に決めさせるために我々の経費を費やすことは、有益でもなければ望ましくもないと、私は思う。しかし、社会に脅威をもたらす人をふるいにかける能力は強化すべきだと信じている。」
「本来の焦点はそこであり、我々の社会に参入し続ける移民ではない。」
 立候補を噂されているリサ・レイト元運輸大臣(保守党の財務問題担当)は8日、リーチ氏は本来解決すべき問題に言及せず、ありもしないことを問題視して優先的に取り組もうとしていると批判し、自分は経済・児童の貧困・健康保険のような問題に専念したいと語った。なお自身の立候補については「決断した」と述べたが、何を決断したのかは明言せず、「私は、自分が何をしたいかわかっている」「自分の意思を表明する前に、舞台裏でするべき仕事がまだたくさん残っている」と煙に巻いた。
 アルバータ進歩保守党党首選に出馬するジェイソン・ケニー元市民権・移民大臣は9日、リーチ氏は自分の発言が悪影響をもたらすことを考慮せず場当たり的に発言していると批判した。
「私は真剣に彼女の立場には立たないし、彼女はこれまでそれを表明しなかった。」
「彼女はこのような発言について、議会や幹部会や閣議でこれまで何も言わなかった。このような問題にまつわるニュアンスを、彼女が理解しているとは私は思わない。統合について疑義を表明するなら、極めて慎重になる必要がある。」
 彼は保守党は移民の味方だと述べたが、保守党政権は外国人犯罪者のよりすみやかな強制退去を実現する法律を制定したと付け加えた。

 かくして「カナダの価値」問題は、党首選立候補を表明したあるいは検討しているライバルたちの立場を鮮明にさせることに成功したが、来週ハリファックスで開催される保守党幹部会は、この問題で紛糾することになるだろう。
 リーチ氏を擁護する意見は、保守党内や保守系新聞ですらほとんど見られないが、論争をひき起こした彼女自身は、謝罪も撤回もせず過激な発言を繰り返している。
「これは、カナダの価値を保護することである。女性が私有資産であり、彼女たちを叩いてもよく、売買もできると思っていたり、ゲイやレスビアンは石打ちの刑に処せられるべきだと信じていたりする人々は、カナダの価値に基づく私の意見と合致しない。」
 リーチ陣営の参謀ニック・クバリス氏は、ツイッター上で他候補を批判する発言を繰り返し、態度を鮮明にするよう挑発しているかのようだ。彼は7日、保守党の移民問題担当ミシェル・レンペル議員が、「私有地でのレイプは合法とすべきだ」と述べた有名ブロガー「ルーシュV」氏のカナダ入国を拒否すべきだと政府に要請し、「保守党政権は、前科がなくても憎悪や暴力を促進する人物の入国を拒否する権限を大臣に与えた」と語った事実を指摘した。
 保守党党首選に立候補を表明したケリー・リーチ前労働大臣が9月13日、献金を募るため支持者に送った第二の電子メールで再び「カナダの価値」について言及し、論争の火に油を注いだ。

「フォーラム・リサーチが今週末に発表した、カナダ人の3分の2が移民申請者に反カナダの価値について審査することを望むという世論調査を、すでに読まれたと思います。世論調査についてはこちらをお読み下さい(筆者注※リンク)。保守党支持者の87%が、この常識的見解を支持していることに気づくでしょう。エリートたちと大多数のメディアがこの問題に言及することさえ厳しく批判する間、あなたには分別があったのです。」
「カナダ人としての私たちの価値から、尻ごみしないで下さい。私たちは、これらの価値について語ることを誇るべきなのです。私は、このような重大な議論が続くことを望んでいます。党首選まで9か月あり、それを実現するには資金が必要です。」
「カナダの価値について議論したくない人々、そして大多数のカナダ人の意見に耳を傾けないポリティカリー・コレクト・エリートたちに、私たちとともに立ち向かいましょう。あなたの支援で、私たちは勤勉なカナダ人の声を議会に届けます。」

 同日ハリファックスで開催された保守党幹部会でも、大勢の記者に囲まれた彼女は、「エリート」への敵意と「カナダの価値」を繰り返した。
「私は同僚議員たちが、減税について議論したがっていることを知っている。」
「私がいなかったら、我が党はお金の話題だけで、いかに国民からかけ離れているかを示すことになっただろう。」
「私は2017年5月に、党首になっているだろう。なぜなら私は、カナダ人が問題にしているカナダの価値について語っているからである。」
 彼女の談話は昼食後、さらにエスカレートした。
「これは誰がカナダの価値の守護者であるかという問題を、半裸のセルフィー気狂い(筆者注※トルドー首相は半裸でセルフィーを撮らせた)の自由党が放棄してから数十年間で初めてである。」
 そして保守党だけがカナダの価値を保護すると述べ、「半裸のセルフィー気狂い」をさらに二度繰り返した。その場に居合わせた女性議員は、これを聞いて両手を宙に挙げた。

 リーチ氏の電子メールについて問われたアンブローズ暫定党首は、次のように答えた。
「自由な国に暮らし、また党首選について率直に言うなら、重要なことは、誰でも党に対し意見が言えるということです。」
「党首選を見て下さい。あらゆる党はこれを通過します。それは刺激的で、見るに面白く、多くの候補がいて、さらに多くの候補が加わり、しかし最後には議論が起こり、党員の審判が下されるのです。」
 保守党のナンシー・ルース上院議員は、カナダの価値は変動すると述べた。
「カナダのいかなるものも不変ではない。新しい世代、そして異なる国々から来る人々が、常に異なる価値をもたらす。それが、カナダの最も素晴らしいものの一つつである。それを定義しようとするのは馬鹿げている。」
「それを求める人もいるだろう。それは『私と同じような人だけがいればいい』というNINBY(Not In My Backyard/うちの裏庭でなければいい)な話だ。だがそれは、世界が取るべき方法ではない。それはカナダでは狭量に過ぎる。それは経済にとって良くない。党内で抗議が出たことはすばらしい。」
 彼女はそれから、女性の地位担当大臣だったリーチ氏は、この問題よりむしろ、貧困や保育や女性に影響を与える政策について考えた方がいいと忠告した。
 保守党党首選に出馬を表明したマイケル・チョン元政府間関係大臣は、リーチ氏が党首になれば、保守党は「価値憲章」で支持者の4分の1を失ったケベック党と同じ運命を辿ると警告した。
「移民や入国審査について議論することには意味があるが、移民を否定するものではないと言葉と文脈をを選ぶ必要がある。そうでなければ、我々は危険なゲームをすることになる。」


写真:半裸でセルフィーを撮らせたトルドー首相。
 フォーラム・リサーチ社が1370人のカナダ人有権者を対象に行い、9月9日に発表した世論調査は、「移民申請者は反カナダの価値について審査されるべきだ」とする意見に67%が賛成することを示した。反対は24%、「どちらでもない」は9%だった。
 文化的価値による審査は、ジェネレーションX(1965〜85年生まれ)及びベビーブーマー(1946〜64年生まれ)で73%、男性で70%、女性で64%、中所得層(年収6万〜8万ドル)で72%と、階層を越えて強く支持されている。地域別ではケベックで71%、オンタリオで70%と中部が高く、最も低いのは東部の56%だった。また保守党支持者で87%、低学歴層で76%と高かった。
 最も重要なカナダの価値を8つの選択肢から選ぶ設問では、最も重視されたのは「平等」の27%で、以下「愛国心」15%、「公正」12%、「寛容」11%が続いた。重視されなかったのは「多様性」9%、「思いやり」7%、「義務」5%、「礼儀」4%で、「最も重要なカナダの価値はほかにある」という回答が9%あった。
 保守党支持者にとって最も重要な価値は「愛国心」の29%で、次が「平等」の19%だった。自由党支持者にとって最も重要な価値は「平等」の33%で、次が「寛容」の16%だった。新民主党支持者にとって最も重要な価値は「平等」の29%で、次が「愛国心」の16%だった。「平等」は、中西部を除く全ての地域で最も重視されている。中西部では「愛国心」(20%)と「思いやり」(19%)が最も重視されている。
 59%のカナダ人は、一種類以上のムスリム女性の衣類を禁止すべきだと考えている。ヘジャブとニカブとブルカを禁止すべきと考える人は29%、ニカブとブルカを禁止すべきと考える人は15%、ブルカのみを禁止すべきと考える人は15%だった。衣類を禁止すべきでないと考える人は36%で、5%は回答しなかった。
 衣類を禁止すべきでないと考える人は、保守党支持者で22%、フランス系住民で12%と顕著に低かった。自身を民族的に「カナダ人」と認識する人では34%で、「その他の民族」と認識する人に比べ低くなっていた。
 市民権宣誓式でのニカブ着用に反対する人は68%で、2015年10月の総選挙直前にフォーラム・リサーチ社が調査したときの59%より増加している。公務員のニカブ着用に反対する人も68%で、これも2015年10月の62%より増加している。いずれのケースも、保守党支持の年輩の中所得層男性から、ケベック在住者まで差異が見られない。それにもかかわらず58%のカナダ人は、「女性の衣服に関し国家は干渉すべきでない」と考えており、これに反対する人は29%しかいなかった。「干渉すべき」と考える人が多いのはケベック在住者の41%、保守党支持者の39%、新民主党支持者の32%である。
 カナダが受け容れたシリア難民は、いい影響を与えたと考える人は29%、いい影響を与えていないと考える人は31%だった。「カナダは移民を多く受け入れすぎている」と考える人は38%で、「移民が少なすぎる」と考える人は13%だった。「『適切な数』の移民を受け入れるべきだ」という意見には、41%が同意した。
 「カナダは移民を多く受け入れすぎている」と考える人は、ジェネレーションX及びベビーブーマーで42%、男性で41%、女性で35%、低所得層(年収2万ドル以下)で47%と、階層を越えた一定の支持がある。このほかオンタリオで42%、アルバータで42%、保守党支持者で58%、低学歴層で54%と高く、自由党支持者では20%と顕著に低かった。
 59%のカナダ人は、カナダへの移民がカナダの文化的価値と相容れないときは、自国の文化的価値を放棄しなければならないことに同意した。この意見は、高齢者(65歳以上)で67%、男性で64%、女性で55%、中所得層で68%と、階層を越えて幅広く支持されている。ほかにケベックで74%、保守党支持者で75%、低学歴層で64%と高く、自由党支持者では48%と低くなっている。

 これらの結果を受けて、フォーラム・リサーチ社のローン・ボジノフ社長は次のように分析した。
「この問題が難しいのは、大多数のカナダ人が『女性の衣服に関し国家は干渉すべきでない』と言いながら、その同じ人々がムスリム女性にとって宗教的に重要な衣類を禁止したがっているということである。カナダの価値問題についても、同様の難問に行き当たる。彼らは、最も重要なカナダの価値は平等だと言う。それでも彼らは、カナダに来る移民に彼らの価値を捨てるか、少なくともドア際で彼らをチェックして欲しがっている。ケリー・リーチ氏は、カナダの価値テストを呼びかけることで、カナダ人の心の琴線に触れたように思える。」
【参照】 http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=1611536&page=1&id=49557492
 トニー・クレメント前予算庁長官は10月12日、保守党党首選への立候補を辞退すると発表した。
「ほかの全ては順調だったが、資金調達が順調でなかった。」
「私はもちろん、この決断を軽々しくはしない。だが財政的な現実のゆえに、私が今このときに、家族を更なる財政リスクにさらすわけにはいかないことは、あまりに明白だ。」
 候補者は、選挙費用として500万ドルまで使うことができるが、クレメント候補はわずか1万2000ドルしか集められなかったと語っていた。党首選立候補者は、5万ドルの登録料を半額ずつ分割で支払う必要があり、その全額を支払うまで党員名簿にアクセスすることはできない。

 現時点では6人の公認候補が、最初の2万5000ドルを支払っている。それはマクシム・ベルニエ元外務大臣、アンドリュー・シーア前下院議長、ケリー・リーチ前労働大臣、マイケル・チョン元政府間関係大臣、ディーパク・オブライ議員、ブラッド・トロースト議員の6人である。さらにエリン・オトゥール前退役軍人大臣、スティーブン・ブレイニー前公安大臣、クリス・アレクサンダー前市民権・移民大臣、アンドリュー・サクストン前議員の4人も、公式な手続きを経ていないが、立候補が確実視されている。またピエール・ルミュー前議員は、立候補する意向を表明した。立候補を期待されているリサ・レイト前運輸大臣は、立候補に傾きつつあり、近日中に発表するとしている。

 クレメント氏は2004年にも保守党党首選に出馬し、スティーブン・ハーパー議員とベリンダ・ストロナック議員の後塵を拝した。また2002年には、オンタリオ進歩保守党党首選に出馬し、アーニー・イブ氏に敗れている。
 スティーブン・ブレイニー前公安大臣は10月23日、保守党党首選に出馬を表明した。
「私の提案は、カナダのアイデンティティを保護することである。特に、明日のカナダを築いてゆく新しいカナダ人たちの間で。」
 彼はカナダのアイデンティティを保護するため、新しい市民たち全員に試験を実施し、公務員の公務中のニカブ禁止と投票所や市民権宣誓式でのニカブ禁止を公約した。また市民権申請者に、英語とフランス語の試験を筆記と口頭の両方で実施し、申請者が「カナダの核となる原則」をより深く理解・認識できるようにすると語った。そしてもしそれらの施策が違憲立法と認定された場合、1982年憲法第33条1項に規定された特権「適用除外条項」の行使も辞さないと述べた。
 保守党党首選では、すでに出馬を表明したケリー・リーチ前労働大臣が「反カナダの価値」審査、ブラッド・トロスト議員が同性婚禁止を訴えるなど、アンブローズ暫定党首が「包括的な党」建設を提唱したにもかかわらず、反動的政策の主張が目立っている。


図:墓の下からよみがえり、終わった争点を蒸し返す保守党の亡者たち。
ケリー・リーチ前労働大臣「野蛮な文化…」スティーブン・ブレイニー前公安大臣「ニカブ禁止…」ブラッド・トロスト議員「同性婚反対…」「安楽死幇助反対…」「誰かここから出る方法を教えてくれ…」
今夜はハロウィンです。
 保守党党首選に立候補したケリー・リーチ前労働大臣は、11月9日「今夜我々のアメリカのいとこが、エリート集団を放棄しドナルド・トランプ氏を次期大統領に選んだ」という声明を発表した。
「これはわくわくするメッセージだ、我々がカナダにも届ける必要のある。」
 「メッセージ」の意味を記者に問われた彼女は、いわゆるエリート集団と平均的カナダ人の間で拡大しつつあるギャップのことだと説明した。だが「トランプ氏もエリートではないのか」と問われると、「彼がエリートかどうかについてコメントするつもりはない」と答えた。また彼女は、トランプ氏が女性や障害者について述べたことを支持していないと語った。

 だが、同じく党首選に立候補したマイケル・チョン元政府間関係大臣は、リーチ氏の意見を一蹴した。
「ドナルド・トランプ氏が大統領選で行った分断政治を、私の同僚ケリー・リーチ氏がカナダの保守党に猿真似させようとしている。これは、間違いである。我々が有権者に、野心的で、訴求力があり、包容力のあるビジョンを提示するとき、カナダの保守党が勝利する。」

 同じく党首選に立候補したクリス・アレクサンダー前市民権・移民大臣は、かつてリーチ氏の「野蛮な文化」論争に加担していたが、今回は彼女の発言を批判した。
「中米に対するその種の怒りをカナダに輸入することが、生産的だとは思わない。我々には異なる現実がある。」
「保守党は過去にそのような、あるときは排他的で、またあるときは非寛容な手法を何度か試みた。だがそれらは、カナダにおいて有効でなかった。」
 カナダの党首選は伝統的に、誰かが過半数に達するまで候補を足切りしながら投票を重ねる方式が採用されてきたが、今回の保守党党首選では、独特な方式で行われる。
 まず党員は、全ての候補に順位をつけて投票する。338の選挙区支部には100ポイントが割り振られており、各候補は党員の投票結果に比例して得点する。そして誰かが過半数の16901ポイントに達するまで、下位者の足切りが行われ再集計される。
 従来の方式と最も異なることは、投票は1回のみであり、投票を重ねるごとに脱落する候補者の票を得るための交渉の余地がないことである。候補どうしの協定は、ただ一度の投票の事前になされる必要がある。
 党首選に勝利する一つの方法として、「当たって砕けろ」戦略がある。これは、脱落する他候補の票の取り込みを考慮せず、演説では言いたいように言って、1回目の投票で過半数を獲得し電車道で圧勝することを目指す戦略である。この戦略だと、他候補に気がねする必要がないので演説の歯切れはよく、公約も明確だが、1回目の投票で誰も過半数を獲得できなければ本命不在の混戦になることから、勝つためには脱落する候補の票の取り込みが重要となるが、他陣営に配慮せず好きなように言ってきた候補は、行き詰るだろう。
 今回の保守党党首選は、10人以上が立候補しているが、本命がいない。資金面で優位に立っているケリー・リーチ氏が、あえて特定の人々を敵に回す「カナダの価値」論争を仕掛けているのは、1回目の投票での過半数獲得を目指しているのだろう。しかし敵を作りすぎると、脱落した候補の票の取り込みが難しくなる。
 本命不在の混戦を勝ち抜くには、他候補との協定が重要となる。脱落した候補の票を取り込むため、ポストを約束したり、選挙費用を負担したりすることはよくある。それとは別に、他候補を指して「自分が敗退したらあの人を支持する」と表明することもある。
 2011年のアルバータ進歩保守党党首選では、アリソン・レッドフォード候補が「ダグ・ホーナー氏が次善の候補だ」と公表した。ホーナー候補もすかさずこれに応じ、2人の提携が成立した。レッドフォード候補は、先に敗退したホーナー候補に支援されたことで、当選し首相になることができた。
 2006年の自由党党首選では、マイケル・イグナティエフ候補とボブ・レイ候補が有力視されていたが、ステファン・ディオン候補は、政策的に近いジェラード・ケネディ候補との間に、先に脱落した方が相手を支持するという協定を結んだ。それで1回目の投票は3位で通過したダークホースだったにもかかわらず、最終的に当選できた。イグナティエフ候補とレイ候補は大学時代からのライバルで、互いに意地を張り合った結果、漁夫の利をさらわれてしまった。
 このような伝統的な方式は、投票を重ねるたびに交渉しコンセンサスを得ていくことになるが、党内のコンセンサスを得る資質は、総選挙での勝利に必ずしもつながるとは限らない。ディオン氏は弱いリーダーとみなされ、総選挙で大敗し辞任に追い込まれた。レッドフォード氏は総選挙には勝利したが、首相として2年しかもたなかった。
 保守党が求めるべきは、嫌われないリーダーではなく強いリーダーであり、勝てるリーダーである。ただ一度の投票で決し、交渉の余地を激減させた新しい方式は、その決意の表れなのだろう。
●「カナダのトランプ」オリアリーが勝てない理由

 実業家でTVパーソナリティのケビン・オリアリー氏は、すでに保守党党首選に出馬を表明している。だが彼はトランプではなく、ここはアメリカでもない。彼は、党首選に勝つことはできないだろう。
 アメリカは9・11同時多発テロ、イラク戦争、サブプライムローン・ショック、財政危機などのトラウマを経験したが、カナダはそうではなかった。またカナダはアメリカと異なり、不法入国者のために頭を抱えることがない。
 最も重大な相違点は、選挙システムである。トランプは近代史上、最も少ない得票率で共和党予備選に勝っている。「勝者一人占め」のルールは、多くの選挙人を持つ巨大州において、僅差で勝利したトランプに大勢の選挙人を獲得させた。
 だが保守党党首選は、人口・面積で格差の大きい州ごとではなく、格差のほとんどない338小選挙区ごとで、各小選挙区には等しく100ポイントが割り振られる。しかもポイントは「勝者一人占め」ルールではなく、得票に比例して候補に与えられる。そのうえ印を一人につけるのではなく、すべての候補に順位をつけて投票するシステムとなっている。
 選挙区に格差がない以上、候補者はどの選挙区でも奮闘しなければならない。人口の多い特定の地域で強い支持を得れば、それ以外は捨ててかかってもいいわけではない。ところがオリアリー氏はフランス語を話せないため、人口24%のケベックで支持を得ることは難しい。
 また投票率に比例してポイントを獲得するシステムのため、自分が低い得票率のとき、他候補への票の分散は自分を利することにはならない。
 オリアリー氏は金持ちだが、選挙資金は自前ではなく、支持者一人一人から1500ドル以下の献金を募るしかない。また自分の分身として幽霊党員を何人も作り、献金させるという裏ワザも使えない。党費はクレジットカードで支払わねばならず、党費の肩代わりは禁止されている。
 党首選に投票可能な新しい党員が入党できる期限まで、もう10週間も残っていない。政治歴のないオリアリー氏には派閥も選挙マシンもなく、党内での知名度は高くない。選挙はアメリカと異なり、各州を巡回するのではなく、ただ1日で終了するので、選挙期間中にメディアに注目され、知名度を上げるということはできない。
 オリアリー氏は自分を目立たせるため、トランプ氏と同様に「上院議席を競売にかけよ」などの馬鹿げたプロパガンダをぶち上げることだろう。だがここカナダでは、同調者が多くいるとは思えない。
http://econ101.jp/%e3%82%b8%e3%83%a7%e3%82%bb%e3%83%95%e3%83%bb%e3%83%92%e3%83%bc%e3%82%b9%e3%80%8e%e3%81%a8%e3%81%82%e3%82%8b%e4%bf%9d%e5%ae%88%e6%94%bf%e6%b2%bb%e5%ae%b6%e3%81%ae%e8%87%aa%e5%9b%bd%e7%ac%ac%e4%b8%80/
子供への体罰は許されると日本人の多くが考えているなら、それは「カナダの価値」とは相容れないことになり、日本人は移民させるべきでないということになる。
下荒地修二バンクーバー総領事が1999年、自宅で妻の顔などを叩いた。負傷した妻が病院へ行き、その理由について夫の暴力だと申告したところ、病院から警察に通報され刑事事件になった。下荒地総領事が「単なる夫婦げんかを暴力と見るかどうかは、日本とカナダの文化の違い。大騒ぎするようなことではない」と語ったことが、メディアで「家で女房を殴るのは日本の文化」と(石田純一ふうに)報道された。下荒地総領事は釈放後解任され、三ヶ月間減給十分の一の処分を受けた。
カナダに長く住んでいる人なら、外で子供を叩いてはいけないということは知っている。
 政界引退したスティーブン・ハーパー前首相が4月1日、保守党党首選出馬を表明した。
 彼は、現在党首選を争っている14人の候補はいずれも有能だと評したが、次のように強調した。
「しかし失礼ながら、候補たちと幹部会には明確にしておきたいことがある。パパは戻って来たと。」
 彼は、再び党首の座を狙う理由として、(カナダのトランプと呼ばれる)ケビン・オリアリー候補が保守党のこれまでの歩みを否定し、新たな道を志向していることを懸念しており、またかつて自分に仕えていた人々が今では彼を支援しているので、自分が立候補すれば彼らは再び自分を支援するようになり、オリアリー氏から離反するだろうと説明した。
 これを知ったオリアリー氏は、ツイッターで「こいつは何なんだ?」とつぶやいた。
 なお立候補届け出は、2月24日に締め切られている。
 実業家で人気テレビ司会者のケビン・オリアリー氏は4月26日、保守党党首選からの撤退を唐突に発表し、かわりにマクシム・ベルニエ候補を推薦した。それは、彼が献金を依頼する電子メールを送った3時間後、トロントで開催される最後の討論会の2時間前、そして投票開始の2日前のことであった。
 彼はトロントでの記者会見で、次のように述べた。
「政治的に、自由党はケベックを所有している。ケベックで保守党の支持を発展させることなく、2019年(の総選挙)にトルドーを倒すことは、大きな挑戦である。」
「方法と高い可能性がないと知りながら党首選に勝利するのは、愚かであり、利己的でさえある。ケベックで多くの議席を得る見込みは、低かった。私はケベックで人気がなく、人々もそうと知っていた。」
 そして彼は、ケベックで最も議席を獲れるのはベルニエ氏だと語った。
「連邦議会選挙で、ケベックが何度勝敗を決してきたか見るといい。それはカナダのフロリダだ。それはしばしば国の命運を決してきた。」
「トルドーは追い出さなければならない。そして、彼こそがその代わりにふさわしい人物だ。」
「我々はこの国を、経済を破壊する弱い指導者から取り戻す必要がある。」
「これは私にとって容易な決定ではなかったが、多くの熟考の末の、保守党と国家のための正しいことである。」
「私の政治的DNAと目的が、総選挙の中に残っていて欲しいと思う。私のポリシーを最も忠実に映す候補は、マキシム・ベルニエである。」

 (1) アウトサイダー
 「カナダのトランプ」と呼ばれたオリアリー候補には政治歴がなく、公共の地位に就いたことがないアウトサイダーだった。67人の議員と元議員がエリン・オトゥール候補を推薦するなか、オリアリー候補を推薦した議員は2人だけだった。
 彼はテレビの仕事のためボストンに暮らし、党首選のためカナダに来ることはあっても、引っ越すことはなかった。そして党首選に勝利した場合、カナダに引っ越すかどうかについて回答を拒否した。かつて保守党が総選挙で、自由党のマイケル・イグナティエフ党首が人生の大部分をアメリカで過ごしたことについて、モノポリーに因んで“Just Visiting”(立ち寄っただけ)とからかったことの重大さを、認識していなかった。またケベック市モスク銃撃事件の当日、彼はフロリダの射撃場に行った写真をフェイスブックに掲載し、政治家としての資質を疑問視された。
 党首選の候補者数は多く、どの候補も早い段階で単独過半数を取れそうにない状況だった。そこで当選するには、相当な数の有権者から第2希望や第3希望の票を得る必要があった。しかしオリアリーは強烈な個性ゆえ、強く支持されるいっぽうで強く嫌われたため、それは難しかった。

 (2) きのうの敵は今日の友:突然の変節
 オリアリー候補はベルニエ候補を推薦したが、本命のこの2人は、選挙戦では激しく争った。オリアリー候補はベルニエ候補を党員資格詐欺と票の買収で非難したが、ベルニエ候補はオリアリー候補を「敗者」と吐き捨てた。
「政策を訴えることで人々を味方につける代わりに、彼は党首選を続けるために泥を投げている。ケビン・オリアリーは、敗者である。私が勝者である。」
 オリアリー候補は世論調査では人気があり、党首選を勝ち抜く自信はあった。だが調査は、フランス語を話せない彼がケベック州で12%しか支持率がないことを示し、党首になっても総選挙に勝てないのではないかと心配し始めたという。
 先週末に、オリアリー陣営のマイク・コーツ氏とベルニエ陣営のトリー・テネイック氏が会談した。そして候補どうしは23日に電話で会談すると、オリアリー候補は飛行機でニューヨークからトロントに来て、ベルニエ候補と直接会って話し合った。今後について協定が成立したのは、24日午前1時ころだったという。
 ベルニエ候補は、オリアリー候補との激しい応酬について問われると、こう述べた。
「いい戦いだったが、今我々は一緒にいる。」
 いっぽうオリアリー候補は、次のように語った。
「彼は、党首選の間は批判的だったって?政治の世界へようこそ。リーダーを選ぶまで我々は内戦中であり、それが終われば水銀のように合体する。」


写真:討論するケビン・オリアリー候補(右)とマクシム・ベルニエ候補(左)。
 (3) なぜこの時期なのか
 記者の一人は、保守党は2011年にケベックでわずか5議席だったのに過半数を獲得したと指摘して、保守党の勝利にケベックは必要ないのではないかと問いただした。だがオリアリー候補は、それはケベック連合退潮と新民主党躍進という特殊な状況下のことだと反論した。
 彼がケベックで人気がないのは、かなり以前から言われていたことである。なぜこの時期に、唐突にそれを言い出したのだろうか。
 今回党首選は、従来のように一人ずつ足切りしながら次の投票に進むやり方ではなく、最初の投票に第1候補から全ての順位を記入するやり方なので、投票は一度だけである。ゆえに生放送中のテレビで、選挙戦を辞退し他陣営に票を渡し、その人を勝たせて恩を売るという従来の手法は使えない。辞退は投票の後ではなく、前でなければならない。
 だがオリアリー候補の動向に関係なく、ベルニエ候補の勝利は明白だ。恩を売る相手は、ベルニエでなければならない。しかし世論調査は、オリアリー候補支持者の29%がベルニエ候補を第2希望とすることを示している。それはケリー・リーチ候補の23%、リサ・レイト候補の15%、アンドリュー・シーア候補の11%と比べると多いものの、支持者の71%はベルニエ候補を第2希望としていない。そこでオリアリー候補自身が、ベルニエ候補への推薦を明言する必要が生じる。
 投票用紙はすでに印刷済みで、配布もされている。単に受け付けがまだ始まっていないだけだ。オリアリー候補の名はまだ投票用紙にあり、何人かの党員はまだ彼が候補だと誤解して票を入れたり、また第2希望以下を記入しなかったりするかもしれない。
 オリアリー効果とは何だったのか。テレビの契約を更新するため、自分を宣伝しただけだったのではという疑いすらある。彼のために献金し、また陣営で活動したボランティアこそいい面の皮だろう。
 アンドリュー・シーア候補は、こう語った。
「混乱し失望している、全国のケビン・オリアリー支持者の皆さん、私の陣営に歓迎します。私は、トルドーを破るため我が党に新しい楽観的なトーンをもたらす、本物の保守派です。」
 保守党の新しい党首は、5月27日に選出される。
 保守党のロナ・アンブローズ暫定党首は5月16日、6月に連邦議会の春のセッションが終了しだい議員を辞職し、政界から引退する意向を述べた。保守党は5月27日、トロントで党首選を行い、正式な党首を決定する。

 ハーパー前首相(前党首)は、フェイスブックで彼女を賞賛した。
「私は首相として、彼女を政権で最も複雑かつ挑戦的なポストに就けた。重い責任にもかかわらず、彼女は暖かくチャーミングな姿勢とアルバータ・ユーモアを保持し続けた。」
「彼女は、女性の権利のための情熱的な提唱者であった。女性の地位担当大臣として、国連で10月11日を国際ガールズデイとする決議を後押しした。」
 彼女が野党党首として最初に挑んだ党首討論で、ジャスティン・トルドー首相に「首相がカナダのために行動しないとき、私が何をするのだろうと首相が思うなら、こう言うだろう。“Just watch me.”」と発言した。これは十月危機のとき父ピエール・トルドー首相が、国民の権利を制限する戒厳令を施行したとき語った有名な言葉である。

 ロナ・アンブローズはアルバータ州バレービューに生まれ、ビクトリア大学とアルバータ大学で学んだ。政界に入る前から、女性に対する暴力を撲滅する運動に従事していたが、2004年の連邦議会選挙で初当選した。新人議員だった彼女は、ケン・ドライデン社会開発大臣(※往年のホッケースター)の提唱する保育プランに反発し、「働く女性が求めているのは自ら選択する権利だ。私たちに何をすべきか指図する白人の年寄りは要らない」と言って注目を浴びた。そして保守党が2006年に政権を奪取すると、彼女はまず環境大臣、次いで枢密院議長、政府間関係大臣、労働大臣、西部経済多様化大臣、公共事業・政府業務大臣、女性の地位担当大臣、厚生大臣を歴任した。

 2015年に政権を失った保守党は、人心と資金を失い、疲れ果てていた。暫定党首に就いた彼女が取り組んだことは、党首選をフェアに進めることと、党を刷新することだった。
 先住民の女性が多数行方不明になっている問題について、ハーパー前首相は熱心に取り組もうとしなかった。だがアンブローズ党首は、ジョディ・ウィルソン=レイボールド法務大臣(※女性)に会い「できることは何でもする、これは党派を超えた問題だから」と言って協力を約束した。
 また彼女が党首でいる間に、保守党は長年訴えてきた同性婚廃止の方針を撤回した。
「性的嗜好に関係なく、保守党はすべての保守派を歓迎する。あなたが小さな政府、安い税金、均衡予算と個人の自由を支持するなら、我が党はあなたを必要とする。」
 2017年度第1四半期において、保守党は4万2500人から530万ドルの献金を受けた。これは与党自由党の、3万1812人から280万ドルより多い。
 C-337号法案は、彼女が個人提出したものである。これは、新任の裁判官に性的暴行プログラムの履修を義務づけるもので、与党自由党も最終的に賛成し、15日に下院を通過した。これはおそらく、野党党首として彼女が与党に勝利する最後になるだろう。


写真:下院で引退演説を終え、トルドー首相と抱き合うロナ・アンブローズ暫定党首。
アンブローズ暫定党首は、政界引退後はウッドロー・ウィルソン国際学術センターのカナダ研究所に勤めます。
大事なことを書き忘れました。
保守党は2015年の総選挙のとき、トルドー党首が政界入りする前にロン毛だったのを「素敵な髪」と揶揄する広告を打った。
総選挙敗北後にアンブローズが党首になると、人々はブロンドの長い髪を「素敵な髪」とおちょくり返した。
 5月27日に行われた保守党党首選で、アンドリュー・シェア前下院議長が当選した。
 「イケメン王子」トルドー首相の人気は高く、保守党は誰が党首でも勝てないと言われ、本命のジェイソン・ケニー前国防大臣やピーター・マッケイ前法務大臣らは出馬せず「中継ぎ」選びと揶揄された。小粒揃いと言われた党首選は、最終的に13人が出馬したが、マクシム・ベルニエ元外務大臣が鉄板の本命と目された。
 今回党首選は従来と異なり、一人ずつ足切りする方法ではなく、最大10人までの候補に順位をつけて投票し、まず第1回投票では1位のみの票数を数え、過半数に満たない場合は第2回投票で2位の票数を加え、過半数に達するまで行う方法だった。第12回投票ではベルニエ候補40.4%・シェア候補38.4%・エリン・オトゥール候補21.3%と、ベルニエ候補が第1回投票からトップを走り続けていたが、最終投票でシェア候補50.9%・ベルニエ候補49.1%と逆転された。

 当選したシェア新党首は、次のように述べた。
「我が党は、常に納税者を代表する。オタワのインサイダーではなく。」
「トルドー自由党は、セルフィーを撮らせることに熱中し、その政策が中流階級を傷つけ、助けなくても気にかけない。サニー・ウェイズは金にならない。」
 ベルニエ候補は、大規模な支出削減、連邦政府の健康保険からの撤退、供給管理システムの終了、CBCとCRTCの摘発を主張したが、あまりに過激であった。彼は第2・第3候補の票を十分獲得できなかった。
 シェア候補は、財政赤字を2年で解消、言論の自由を擁護していない大学への助成金カットなどを主張したが、より穏健であった。
 党が放棄した中絶反対を主張するブラッド・トロスト議員は、14.3%を獲得して4位に入り、影響力の誇示に成功した。彼ら社会保守主義は、依然として党内に勢力を持ち続ける。
 炭素税導入を主張したマイケル・チョン元政府間関係大臣は、9.1%を獲得して5位に入り、レッド・トーリー健在を示した。
 「カナダの価値」論争をひき起こしたケリー・リーチ前労働大臣は、7.9%の6位に終わった。彼女の早々な脱落は、保守党が移民に対し開かれた党であることを示した。

 38歳で閣僚経験のないダークホースの当選を、トロント・スター紙は“Andrew who?”と報じた。同紙は1976年の進歩保守党党首選のとき、35歳で無名のジョー・クラーク氏が当選すると“Joe who?”と報じている。このフレーズは終生彼に付きまとったが、彼は39歳で総選挙に勝利し首相になっている。クラーク氏が倒した相手は、現首相の父ピエール・トルドーだった。奇跡は再び起きるだろうか。
 アンドリュー・シーア新党首(38歳)は、オタワで生まれたカトリック教徒である。初めオタワ大学で学び、後に妻となるジル夫人と知り合ってから中西部で暮らすようになり、レジャイナ大学でも学んだ。サスカチュワン州レジャイナ=カペル選挙区選出、当選5回。閣僚経験はなく、下院副議長と議長を務めた。
 メディアは彼を「笑顔のあるハーパー」と評した。彼は自身を、社会保守主義と定義する。だが党首選では「あらゆる保守派を歓迎する」と称し、社会保守主義のテーゼを掲げることを回避した。
 彼が党首選で掲げた政策は、財政赤字を2年で解消、炭素税廃止、犯罪厳罰化、憲法への財産権明記、言論の自由を保障しない大学への助成金カット、子供たちを私立校に通わせる親への税額控除、イスラム教から転向し死の危険のある中東のキリスト教徒の難民優先などである。
 彼の過去の言動を見れば、社会保守主義者としての特徴は明らかだ。彼は、医師の安楽死幇助を認めたC-14号法案に反対投票した。彼は妊娠中絶合法化に反対投票し、また中絶を行うヘンリー・モーゲンテイラー医師がオーダー・オブ・カナダ勲章を授与されたときも「オーダー・オブ・カナダの質を下げた」と語っている。2004年には同性婚認可に反対投票し、2006年には同性婚廃止法案に賛成投票した。
 だがそのような個人的信条にもかかわらず、彼は妊娠中絶の禁止や、同性婚廃止、安楽死幇助の禁止などの法制化を支援しないと公言している。これは、カナダ同盟と進歩保守党の2つの保守政党を合併させ新党結成したハーパー前首相が、2つの勢力の融和に心を砕いた結果としてこれらの問題を政治日程に載せないとしたことに似ているが、シーア党首がこれらの問題について投票の自由は保障すると公約したことは、これに圧力をかけたハーパー前首相と異なるところだ。シーア党首は銃所持者の権利を擁護するが、その権利を拡大はしない。彼はマリファナ合法化には賛成ではないが、「ひとたびそれが合法化されれば、それに関連する人が多く出て来る。我々は党として、非常に現実的でなければならない」と述べている。

 社会保守派は党首選に勝てなかったが、負けもしなかった。党が放棄した中絶反対を堂々と主張したブラッド・トロスト議員は、4位に入り健闘した。第1回投票で彼が獲得した8.4%と、ピエール・ルミュー議員が獲得した7.4%を合わせると、社会保守主義は16%近くを集めたことになる。
 ルミュー候補が脱落したとき、彼の票の28%がシーア候補に、わずか6%がベルニエ候補に行った。トロスト候補が脱落したときは、彼の票の57%がシーア候補に、27%がベルニエ候補に行ったことが、両者の差を詰めた。最後にオトゥール候補が脱落したとき、彼の票の59%がシーア候補のものになったが、僅差で逆転するにはそれで十分だった。
 ベルニエ候補の斬新の政策は、多くの党員と資金を集めることには成功したが、彼らはベルニエ候補に投票しなかったようだ。シーア候補の勝因は、社会保守派の支援を受けたことと、穏健な発言で党内で幅広い支持を集めたことだ。保守党は、ハーパー路線の継続を選んだのである。
 党首選が終わって間もないが、トロスト議員は早くも「新党首がゲイ・プライドのパレードに参加するなら、その資質に疑問符が付く」と牽制した。
 野党は、ベルニエ氏の当選を予測していた。彼の公約は、不可能なことばかり。外相時代に暴力団関係者だった女性と交際し、彼女の家に機密文書を置き忘れて辞任した彼は、ツッコミどころ満載で大歓迎だっただろう。だが結果は、えくぼのあるチャーミングな笑顔の若者だった。
 新民主党元スタッフのイアン・キャプスティック氏は、ツイターでこう述べた。
「10ラウンドにもなってゲイの男性を排除するなんて、2017年にそんなことができるのか?」
 自由党のパブロ・ロドリゲス議員は、こう総括した。
「結局のところ、極右の社会保守派と極右の経済保守派との戦いで、極右の社会保守派が勝ったということだ。」
 自由党のアダム・ボーン議員は、次のように批判した。
「間違えてはならない。これはこの25年間で、全ての市民権進歩に反対投票した人物である。」
「彼は、思想警察になりたがっている人物である。」


図:ハーパー二世、トルドー二世に馬鹿にされる。
 今回党首選で採用された優先投票システムは、保守合同の際、小所帯だった進歩保守党が巨大なカナダ同盟に飲み込まれるのを阻止するため、導入が約束されていたものである。だが結果は、地域対立がなかったことを示している。ベルニエ候補はアルバータ州・マニトバ州・ケベック州で勝ったが、シーア候補はブリティッシュコロンビア州・サスカチュワン州・オンタリオ州と東部で勝った。なんと、アルバータにもケベックにも推されていない人が当選したのである。むしろ地域性よりも、政策の違いで争った党首選だった。
 本命が辞退したせいか、立候補者が多くなりすぎ、10位まで順位をつけられるにもかかわらず、知らない候補が多いため10位まで順位をつけなかった党員がいたと思われる。それでも接戦となった党首選は、13人の候補のうちの一人が過半数に達するまで、13回の投票を必要とした。つまりは、党の命運を決定的に左右した最後の方の投票には、参加していない党員が多くいた可能性がある。
 ケリー・リーチ元労働大臣は1月23日、次の総選挙に出馬せず引退すると発表した。
「政治家として過ごした時間は、本当に恩恵だった。シムコー-グレイ選挙区の有権者には、支援していただいたことを感謝し続けるだろう。」
 彼女は、議員としての残りの任期を最後まで勤める意向を述べた。

 ケリー・リーチ議員は1970年マニトバ州ウィニペグに生まれ、クイーンズ大学・トロント大学・ダルハウジー大学で学び外科医となった。2011年に下院議員に初当選し、ハーパー内閣で女性の地位担当大臣と労働大臣を務めた。
 2017年には保守党党首選に立候補し、移民申請者に「カナダの価値」審査をすべきと提唱して論争を巻き起こした。6位に敗退した彼女は、シーア党首が構想した影の内閣から外された。


図:ケリーの「カナディアン・バリュー・ビレッジ」。

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