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恋愛観測コミュの吉野にて

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わずかに開いた障子から月光が射し入っている。闇の中をまっすぐに伝わった光は、沢木の上に跨った静香の後頭部を照らしていた。下から見上げる沢木の目に、静香の頭の輪郭がおぼろな光の輪の中に浮かび上がって見えた。 

浴衣の前をはだけたまま沢木の上に乗り、体を沈めた静香は、そのままじっと動かずにいた。沢木が動くそぶりをみせると、じっとしててと小さく言った。

代わりに月が動き、時を刻んだ。沢木は、熱く軟らかなものにつつまれたまま目を閉じていた。動きがないなずなのに、細波のように次々と快感が立ち上がってくる。石鹸や化粧品の香りではない肉の内側から匂い立つようなものが沢木の鼻腔を満たし、欲望を高めていく。

ふいに静香が歌うように言った。

「あの日」

えっ、と沢木が目を開けようとすると、目を閉じててと静香がささやいた。

「あの日、わたしが瞳さんの部屋に電話しても誰も出なかった。買い物にでも出かけたのかなと思い、しばらくたってからまたかけてみたの。でもやっぱり返事がない。何かあったのかなとロビーに降りてみることにした。部屋を出てエレベーターのところまで来ると、あなたの部屋の方からガチャという鍵の音がしたの。あなたが出てくるのかなと見ていると、ドアは開かなかった。だから鍵を閉めた音だったんだとわかったの。普通ならそのまま下に降りたのだろうけど、何となく気になってドアのとこまで行ってみた。すると中からあのときの声が聞こえてきたの。驚いて立ちすくんでいると、声はますます大きく、激しくなっていった。わたしは頭の中が真っ白になって、なにも考えられなくなった。しばらくしてようやく息がつけたので、わたしは自分の部屋に戻っていったの」

沢木が何か言おうとするのを制して、静香は右手の人差し指を彼の唇に当てた。

「いいの。なにも言ってくれなくていい。あなたはあなたの考え方、生き方を実践したのだから、そのことについてわたしにとやかく言う権利はないわ。ただ、あなたは自分のすることに誇りを持ってほしい。たとえそれがインモーラルなことであろうと、人道にもとることであろうと、あなたが自分で決めてやることには全て誇りを持ってほしい。あなたが石で打たれ、八つ裂きの刑に処せられることになろうと、それが自分の為したことの結果なら、最後まで誇りを持って死んでほしいの。あなたがそれを約束してくれるなら、わたしは一生あなたと共に生きていくわ。さっきわたしが同志と言ったのは、そういう意味よ」

沢木にとって予測できないことではなかった。静香がなにも気づかないわけがなかった。しかしあの時のおれにとっては欲望が勝っていた。瞳の気持ちがわかった時点で中断し、時間をずらし場所を新たにして思いを遂げることもできただろう。そうしなかったのは、その一瞬しか信じないという自分を選択したからか。そもそも静香以外の女に心惹かれること自体が、おれという人間をよく表している。浮気な心は男女を問わずあると思うし、それは自然なことだ。でも、そういうことではなく、おれが他の女性に向かうのは、多分向かうのではなく逃げ込むのだ。一人の異性と徹底的に向き合おうとせずに、青い鳥を探そうと逃げ出すのだ。滝行のときに先導者がこう話してくれた。人は魂と魂を摺り合わせ、余分な垢をこすり落として魂を浄化する。滝行とは人の代わりに水がその役割を果たすことだと。おれは摺り合わそうにも、肝心の自分の魂とやらを実感できないできたと思う。だから他者との摺り合わせの行為を最初から放棄していたのだ。おれは以前静香に、自分自身への信頼を無くすときは私が私でなくなるときだから、そんなことはあり得ないと断言したことがある。あれは事実を述べたというよりも願望だった。おれは自分を信頼してなんかいない。なぜなら、信頼を向ける自分というものがよくわからないからだ。

静香の重みとふくよかな肉の感触が広瀬の腰に隙間なく密着していた。沢木と交わったまま、静香は細かく細かく微妙な動きを続けていた。

「気を出してみて」と静香が言った。

「あなたの先端からわたしの中に気を出してみて」

沢木は見ることと話すことを禁じられていた。ただ聴くことと嗅ぐことしかできなかった。その分感覚的なことに集中できた。彼は言われるままにイメージしてみた。

「ああ、そう」と静香がせつなそうに呻く。

「そう、そう」

その声とともに沢木の快感も高まっていく。

「セックスは激しさだけじゃないわ。静けさの中にこそほんとの激しさがあるのよ。ねえ、わかる?」

わかる? と言われて、沢木はどう反応していいかわからずに、静香の太股に置いた両手に力を込めた。

「ねえ、このまま動かずにどちらが長く保つか勝負しましょ。どちらが先にいかせるかではないのよ。あなたから出た気はわたしの中を巡ってまたあなたに戻っていくわ。そこに通い合うものが生まれるの。いわば魂同士のセックスといえるかもしれない。自分がいくことと相手がいくことはイコールなの。そこに分断はないわ。でも、あえて勝負なの。長く保ったほうが勝ちよ。これはゲームだから」

静香はそう言って、体の力をさらに抜いていった。

なにか熱いものが頭頂から入り、背骨を伝わって尾てい骨あたりまで下った。その熱い固まりは沢木の下半身全体に広がったあと一点に集約され、盛り上がり、静香の中に流れ込んでいく。そんな循環を沢木は感じていた。性器の微細な動きが、何倍も何十倍にもなった快感として体と脳を震わせた。その気持ちよさに沢木は思わず呻き声をあげる。勝負よと言った静香の意図はよくわからない。できるだけ長く楽しもうということだろうか。そんなことはもうどうでもいい、と沢木は思った。唐突に性器の付け根の奧深くに生じた小さな快楽の芽は、急激に膨張して射精前の収縮に向かっていった。

それを察したのかどうか、静香は沢木の耳元に口を寄せて甘くささやいた。

「中で出してもいいわ」

その声を聞き、意味をとった途端に、沢木は堪えきれずに射精を始めた。下腹を震わせ呻き声を上げるさなかに、沢木は奇妙な敗北感を感じた。ただ単にゲームに負けたというよりも、もっと違う何か重大な勝負に敗れたような気がした。

沢木の射精を受けた静香は保っていた全てのものを解放し、オーガズムへと突入していった。そして沢木の上で全身を痙攣させ、止むことのない声を上げつづけた。

コメント(7)

ありがとう、ニック。
照れ照れでございます。
静香の言っていたことに興味があれば「タントラ / セックス、愛、そして瞑想への道」(和尚=バグワン・シュリ・ラジニシ・著)という本が参考になりますよ。
創作コラボも読んでいただいてるとか。嬉しいです。

ところで、いいセックスしてますか?
☆コナツさま
ありがとう。
エロスの巨匠に誉められちゃった。万歳!万歳!万歳!
いや、マジな話嬉しいっす。

コナツさまの「桜心中」はとってもヌケるんですが、なにか?(笑)

やはり女性の書く官能小説は、きますね、きてますね、MAOさん、じゃなくてマリックさん。
ちょっとかないませんよ。

三人称での官能小説を楽しみにしてます。
☆濡れたrubyの唇、、、略して、るびるさん(←おいおい、勝手に略すなヨ)

はじめまして。
読んでいただいてありがとうございます。
嬉しいです。
そしてあなたの唇を拝見して悶絶死寸前の快楽を堪能させていただきました。
ありがとうございました。
これからよろしく!

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