浮気調査に人探し、盗聴盗撮器の発見、いじめやストーカー被害の対策など、人間関係にまつわる様々な悩みやトラブルの調査活動をおこなう探偵社。日頃からモメゴトの数々を最前線で目撃してきた探偵たちが、特に印象に残っている依頼を激白します!

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別れさせ屋は、疲労困憊した人を緊急救助することもある

「別れさせ屋」と聞いて思い浮かべるのは、不倫や復縁といった訳アリな男女の恋愛模様ではないでしょうか。私たちのところにやってくる依頼者の多数派はやはり、この不倫、復縁、略奪にまつわるお悩みや願望を持っていらっしゃいます。

世間のステレオタイプなイメージは、既婚男性と独身女性の不倫で、なかなか奥さんと離婚してくれない男性に業を煮やした女性が、ハンカチを握りしめて泣きながら、あるいは愛憎と悔しさと嫉妬に歯軋りし唇噛み締めて別れさせ屋に駆け込んでくる、そんなドラマのようなシーンかもしれません。確かにそのようなパターンは少なくありません。

そして、別れさせ屋とはダークグレーな仕事、平和な家庭や愛を壊す不倫者の味方といった目で見る方もいらっしゃいます。しかしながら、我々スタッフが、打つ手がなく疲労困憊している方を緊急救助するこんなケースもあるのです。

「ロミオメール」は突然始まった

「あれからもう〇ヶ月だね。君も十分反省して僕のことが恋しくて仕方ないんだろう。さあ、もう意地を張らず戻っておいで。僕という花園の門は、今も君が戻ってきて僕の胸で安らかな寝息を立てられるよう、開いているよ。不誠実な君を許してあげよう。僕達の愛は何も変わらない」

こんなLINEが、浮気、借金、働かない、浪費、家事や育児への協力拒否、完全に義実家の味方をする、モラハラなどの原因で別れた元夫からきたら……そうです。これぞ、最近噂のロミオメールです。
※ ロミオメールとは、過去に付き合っていた男性が復縁を求めて、突然女性にメールまたはLINEなどで送ってくるメッセージのことですが、何を勘違いしているのか、別れた原因や現状を棚上げし、引くほど甘いセリフが満載(プラス自分の都合のみ)な文章なのが特徴です。

サレ夫、サレ妻、エネ夫、ロミオメール……、SNSや某掲示板などでは、このような単語が飛び交っています。これらは全て、夫婦間の問題を表しています。今回、我々に別れさせ工作をご依頼されたのは、4ヶ月前に離婚するまでサレ妻だった真美さん(仮名)です。なるほど、元夫と浮気相手の女性を別れさせたいんだと思ったあなた! そうではないんです。憔悴した顔の真美さんの相談内容は、ロミオと化した元夫の和久さんが自分のことを諦めるようにして欲しいというものでした。

真美さんと、2歳年上の和久さんは、職場恋愛の末、2年前に結婚しました。結婚前の同棲は、女手一つで真美さんを育ててくれた厳しい母が大反対したことから見送られ、交際半年でのスピード婚でした。恋愛経験が少なかった真美さんの目には、フランクで社交的でリードしてくれる和久さんは頼もしく映りましたが、そのフランクさが無神経さ、社交的なのは浮気癖、リードしてくれたように見えたのは単なる自分勝手だと気づくまでにそう時間はかかりませんでした。

真美さんは結婚を機に退職し、別の職場で派遣社員として働き始めましたが、共働きにも関わらず和久さんは家事のサポートどころか、食べたお菓子の袋や飲んだビールの缶すらそのまま、服は脱ぎ散らかしたまま、家ではTVを観るかスマホでゲームに興じるだけという体たらく。そして何かにつけ、真美さんを軽んじる発言が増えていきました。同時に帰りが遅い日や、休日の一人での外出も頻繁になりました。

妻の後輩や取引先など複数の女性と関係を持っていた夫

真美さんが、和久さんのスマホやSNSを調べたところ、完全にクロ。和久さんは職場の女性社員と不倫していました。そして更に酷いことには、不倫相手の女性は真美さんの後輩であり、結婚前から和久さんは社内や取引先の複数の女性と関係を持っていたことも判明しました。

不倫がバレても最初はシラを切り、容姿や夫婦生活への不満を真美さんの至らなさのせいにしようとする和久さんの姿に、耐えていた真美さんも目が覚め、離婚を決心しました。「お前なんかいらない。出て行けよ。俺は今日からここで〇〇(不倫相手)と暮らすから。」と放言した和久さん。

そんな和久さんから冒頭のようなロミオメールが届き始めたのは、離婚から2ヶ月半経った頃です。自分磨きには余念がないが家事を一切やらず、おねだり癖のある略奪彼女と、小学生並みに手がかかり、自分のことしか考えてない和久さんでは、同棲部屋はあっという間に汚部屋と化し、マンションや車のローン支払も今では滞るように。「便利だった」真美さんとヨリを戻そうという、浮気男の魂胆が丸見えです。

拒否しても通じないロミオはもはやただのストーカー

最初こそ驚いた真美さんですが、「〜して欲しい、〜してもらいたい、〜を負担して欲しい」という勝手な要求の数々に怒りが込み上げました。「この男は、自分のしたことや言ったことを覚えていないのか。どのツラ下げて、よくも抜け抜けと……」真美さんはかなり厳しい口調で、二度と関わらないでほしいと通告しました。

ところが、どこかで頭でも打ったのかと思うほど、ロミオ化した和久さんには話が通じません。LINEをブロックしても、メール、SNS、SMSから、あるいはわざわざ作った新しいアカウントから、または共通の知人を通じて、全くへこたれず真美さんにコンタクトを取ってきます。内容も、ロミロミしさが増すばかり。誕生日、記念日、クリスマス……そういった日には、職場や自宅に、「二人の思い出のラミネート写真」、「自作の歌」、「ポエムが綴られたカード」、「100均のタグがついた造花の花束」など嬉しくないプレゼントも届けられるように。

拒否しても通じないこの不気味さはロミオの特徴ですが、真美さんにとっては最早ただのストーカーです。夫婦であった以上、職場も実家も知られているわけですから、真美さんが、この先エスカレートしたらどうしようと不安を感じるのも当然のことであります。

別れさせ屋は‟粘着剥がし“に使える

別れさせ屋というと、どうしても諦められない執着心の強い依頼者が、最終手段として利用するものという印象が強いと思います。ですがこの事例のように、悪意や執着をもって粘着してくるストーカーや虐め(ハラスメント)を円満に断ち切る切り札としてもご利用いただけるということは、ぜひ広く知られて欲しいと思います。

この事例を読んでドン引きされた方も少なくないと思いますが、実はこのように「へばりつく」人は増えています。依存、執着、ストーキングといった気質を持つ人が増えているとなんとなく感じている方も多いのではないでしょうか。モンスターペアレント、モンスタークレーマーなどや、社会や学校のいじめ、パワハラ、モラハラも、ある意味、粘着行為だと言えるでしょう。

真美さんの依頼に対しては、いくつかの工作プランが考えられます。ここで詳細はお話しできませんが、和久さんの興味がよそに向くようにしたり、元妻へのストーキングどころではない状況を生み出したり……。本当に本当に苦しい。自分では解決できない。または身の危険を感じる。そんな時、あなたは誰に相談しますか。警察、弁護士、共通の知人、身内、上司、カウンセラー……色々な選択肢がありますが、我々別れさせ屋も、合法的かつ柔軟性の高い解決法なのです。

このように別れさせ屋に持ち込まれる相談・依頼内容は様々です。別れさせ屋は弁護士事務所の法律相談とは異なります。こんな依頼は無理だよね……と思う前に、一度相談だけでもしていただければ、あなたの苦しみや執着が解決に向かって動き出すかもしれません。