首都圏では中学受験熱が高まっています。首都圏模試センターの推定によると、2023年の私立・国立中学受験者数は、5万2,600人と過去最多となりました。中学受験をする理由は人それぞれですが、誰もができるわけではありません。特にお金の問題が大きいのは言うまでもないでしょう。そこで、「中学受験をするにはいくら必要?」、「私立中学の学費はいくら?」、「世帯年収がいくらあれば中学受験が可能?」の3つの疑問にお答えします。

  • 首都圏で「中学受験」するにはいくらかかる?

    首都圏で「中学受験」するにはいくらかかる?

首都圏で中学受験をする子はどのくらいいる?

首都圏模試センターの調べによると、首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)で、私立・国立中学を受験する小学生は5万2,600人、公立中高一貫校を受験する小学生は1万7,386人となっています。このうち約6,700人が私立・国立中学と公立中高一貫校を併願していると推定しています(2023年調査)。

2023年の首都圏の小学校卒業生数は29万4,574人となっており、4~5人に1人が中学受験をしていることになります。

私立・国立中学受験者数の過去20年間の推移をみると、2007年に5万500人でピークを記録した後は、2014年まで減少し続け、そこから再び増加に転じ、9年連続で増加しています。2023年の5万2,600人は過去最多です。

ここまで首都圏で中学受験が過熱している理由はさまざま考えられますが、私立中学校の教育内容が魅力的だったり、エリアによっては公立中学校よりレベルの高い環境で過ごせたりと、学校への評価が高いことが一つあります。他には、中学受験をすると、高校受験や大学受験の負担が少なくなることも理由となります。根底には将来不安があるため、先行き不透明な状態でいくよりも、早いうちからある程度将来が約束されたコースに子どもを進ませたいという親の思いがあるのではないでしょうか。今後も中学受験熱は高まっていくでしょう。

中学受験をするにはいくら必要?

中学受験で気になるのが費用です。中学受験をする場合、小学校4年からそのための塾に通わせるケースが多いようです。

首都圏の大手塾の料金を参考に、小学4年生から6年生までの3年間、塾に通った場合の費用をみてみましょう。

*中学受験のための塾の費用

  • 入会金2~3万円
  • 4年生 月謝2~4万円 年間40〜60万円
  • 5年生 月謝3~6万円 年間60〜80万円
  • 6年生 月謝4~8万円 年間80〜120万円

月謝の他に、夏期講習や冬期講習などの季節講習、志望校対策などの特別講習の費用、教材費、テスト代などが別途かかってきます。

これらを含めると、4年生で年間40〜60万円、5年生で年間60〜80万円、6年生で年間80〜120万円程度かかり、トータルで180~260万円ほどかかると見込まれます。

*受験の費用

この他に、受験費用もみておかなければなりません。

東京都の「令和5年度都内私立中学校の学費の状況」によると、私立中学の検定料の平均額は2万3,897円です。1人あたりの平均出願校数は、前出の首都圏模試センターによると、6.92となっているので、2万4,000円×7校とすると、16万8,000円かかります。交通費なども考えて、10~20万円見積もっておくといいでしょう。

以上のことから中学受験のための費用はおよそ200~300万円と考えられます。

私立中学の学費はいくら?

中学受験は、合格したら終わりではありません。中学入学後に本格的にお金がかかってきます。文部科学省「令和3年度子どもの学習費調査」によると、私立中学校に通った場合、年間の学習費の総額は143万6,353円になります。学習費総額とは、入学金や授業料、修学旅行費、学校納付金、制服などの学校に通うために必要な「学校教育費」と「学校給食費」、塾や習い事などの「学校外活動費」をすべて足した金額です。中学校の3年間では430万3,805円になります。一方、公立中学校の3年間の学習費は161万6,317円なので、私立中学校は公立中学校の約2.7倍の費用がかかることになります。

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    私立中学校の学費 出所: 文部科学省「令和3年度子どもの学習費調査-結果の概要」をもとに筆者作成

私立中学校の学年ごとの費用をみてみると、1学年180万6,991円、2学年121万8,559円、3学年127万8,255円となります。1学年は入学金や制服代などがかかるので、費用がかさみます。初年度のみかかる費用を除けば、毎月10万円ほど教育費に支出することになります。

世帯年収がいくらあれば中学受験が可能?

私立中学の多くは、中高一貫校として高校も同様の学費がかかってきます。高校の場合、授業料無償化による国や自治体の助成がありますが、所得制限があるので、中学受験を考えるような高所得世帯は助成を受けられない可能性があります。

実際、私立中学校に子どもを通わせている世帯の年収はどのくらいなのか、文部科学省「令和3年度子どもの学習費調査」からみてみましょう。

*公立・私立中学校に通っている世帯の年収

公立中学校に通う子どもがいる世帯と、私立中学校に通う子どもがいる世帯のそれぞれの世帯年収を段階に区切って、その割合をグラフにしました。

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    公立中学校に通う子どもがいる世帯と、私立中学校に通う子どもがいる世帯のそれぞれの世帯年収 出所: 文部科学省「令和3年度子どもの学習費調査」をもとに筆者作成

公立中学校に通わせている世帯年収で一番割合が多いのは「600万円~799万円」の世帯であり、次に「400万円~599万円」の世帯となっています。

一方、私立中学校に通わせている世帯年収で一番多いのは「1200万円以上」の世帯で、40.1%と約4割を占めています。私立中学校の場合、世帯年収が上がるに従って割合が増えています。ただし、見方を変えれば、6割が年収1200万円未満の世帯ともいえるので、他の方法でも検証してみましょう。

*家計収支から可能な年収を求める

総務省「家計調査 家計収支編 2022年」を参考に、4人世帯(夫婦と子ども2人)の家計収支の平均額を出してみます。

参考にしたのは、二人以上の世帯(勤労者世帯)の住宅ローン返済世帯の世帯主の年齢が40~44歳の1ヵ月間の収入と支出です。

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    4人世帯(夫婦と子ども2人)の家計収支の平均額 ※金額は概算です

実収入が72万円なので、世帯年収は864万円になります。ここでは教育費は2万円になっていますが、私立中学に通うとなると、先述したように1人につき毎月10万円の教育費がかかります。ここで示した家計収支は子どもが2人いる世帯なので、2人とも私立中高一貫校に通うと仮定すると、同時期に同額の学費がかかってくると想定しなければなりません。つまり教育費に毎月20万円かかる計算です。

資金計画を立てる際は、教育費だけに比重を置くわけにはいきません。住宅資金や老後資金なども考えていかなければなりません。そのため、支出のバランスは崩さずに、教育費を捻出する必要があります。つまり増えた教育費分、収入を増やせばいいわけです。

月18万円増やすためには、年額で216万円収入を増やす必要があります。この場合可処分所得でなければならないので、年収にするとおよそ1,130~1,170万円となります。

この例は子ども2人のケースなので、1人であれば、求められる年収はもう少し低くなります。ただ、首都圏では、住居費がこれ以上に多くかかるケースが考えられるので、個別に家計収支を出してみて、教育費にいくら支出できるのか確認してみるといいでしょう。

年収で諦める必要はない

中学受験にかかる費用とその後の学費、さらに、中学受験が可能な世帯年収を考察してみました。世帯年収については、1,000万円以上ないと中学受験は無理なのかと思われたでしょうが、あくまでも実現しやすい年収であって、私立中学に通う家庭の4割は世帯年収1,000万円未満の世帯です。私立高校は高校授業料無償化によって学費を抑えられます。また、学校が独自に設けている奨学金制度などもあります。成績に自信がある子は特待生制度も狙えます。子どもの将来を考えて、中学受験がベストな選択であると思うなら、年収にとらわれずに進学させるのも一つの方法です。その際は、子どもの希望ややる気も確認しましょう。一番良くないのは、周りがみんな受験しているからという理由で、マネープランも立てずに受験させるパターンです。中学受験は本人も親もかなりの労力を費やします。現状を把握して、中学受験が必要かどうか、子どものやる気はどうか、お金の面でもしっかり検討してから決めましょう。